図 1. 乳癌の内分泌療法とその耐性機序 AIはより適切なホルモン療法として, 閉経後患者の進行再発治療や術後補助療法で抗エストロゲン剤より優先されることとなった 卵巣機能の遮断は閉経前 ER 陽性乳癌に対する有効な治療戦略の一つであるが, エストロゲン枯渇耐性の獲得は ER 陽性乳癌でホルモン療法

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図 1. 乳癌の内分泌療法とその耐性機序 AIはより適切なホルモン療法として, 閉経後患者の進行再発治療や術後補助療法で抗エストロゲン剤より優先されることとなった 卵巣機能の遮断は閉経前 ER 陽性乳癌に対する有効な治療戦略の一つであるが, エストロゲン枯渇耐性の獲得は ER 陽性乳癌でホルモン療法耐性が進展し, 腫瘍がより悪性化する上で重要なステップといえる エストロゲン枯渇耐性の機序は, いくつかの施設でエストロゲンを除去した培地で長期間培養された細胞を用いて研究されてきた [4~6] これまでの報告では, 耐性株は MAPKや PI3K/Aktシグナル経路とのクロストークや膜 ERの関与 [7] によってエストロゲン過敏性を獲得することが示唆されている しかし, 正確なメカニズムは十分理解されているとはいえず, また耐性に関係する他のメカニズムが存在するかという点も含め, 多くの疑問が残されている 筆者らはエストロゲン応答配列 ( ERE-) GFPアデノウィルス試験で再発検体を解析し, ER 活性と抗エストロゲン剤への感受性は各症例によって異なることを見出した [8] この問題に取り組むため, われわれは ER 陽性乳癌細胞株 MCF-7,T47Dを用いてAI 治療を模倣するいくつかの培養条件からコロニーを単離し, 複数の細胞株を樹立した MCF-7,T47Dには以前確立した定常的に ERE- GFPレポーター遺伝子を組み込んだ細胞を親株として使用した [9] この細胞は ER 活性を反映して GFPが発現するため, 生細胞において蛍光をみることで ER 活性を評価することができる このシステムを用いて AI 耐性を模倣する6 種類のクローン株を樹立し, その性質を解明した 今回われわれはこれらの複数の AI 耐性メカニズムを概観し, AI 耐性乳癌に対する次治療としてのフルベストラントや mtor 阻害剤の有効性にも触れる 再発乳癌におけるAI 治療後のER 活性 AI 無効化における ERの関与を解明するため, AI 治療後の再発腫瘍の ER 活性を筆者らが開発した ERE-GFPアデノウィルス試験で分析した [8~10] 10 例中 5 例では有意な ER 活性を示し, そのほとんどはフルベストラントなどの抗エストロゲン剤に対して程度の差はあれ, 感受性をもっていた ( 未投稿データ ) この結果, 再発例において AI 耐性の機序は単一ではなく, 二次ホルモン療法の感受性も様々であることが示された これは臨床において観察される治療反応性とよく一致する 複数のAI 耐性機序をモデル化する細胞の樹立 AI 耐性機序の研究では,ERE-GFPを組み込んだMCF-7 ( E10), T47D( TE8) から異なる耐性機序を示す6 種類の耐性株を樹立した ( 図 2 ) これらの耐性株の特徴を解明することで, AI 耐性の機序は3つのカテゴリーに分類されることが明らかになった ( 図 3 ) まず第 1にアロマターゼに依存しない経路によるエストロゲン生合成やエストロゲン様作用をもったアンドロゲン代謝産物の供給によって,AIの効果が回避されるもの(Type4,5 細胞 ) である 第 2に細胞内リン酸化シグナル経路を経由した ERのエストロゲン非依存的活性化に関係するもの ( Type1 細胞 ), そして三番目は ER 非依存的に増殖するメカニズムを獲得するもの ( Type2, 3, 6 細胞 ) である 以下これらのメカニズムについて解説する ERに対するアロマターゼ非依存的リガンドの合成第一の耐性メカニズム ( Type4 細胞 ) の例では, E10 細胞は3カ月間ステロイド除去かつテストステロン添加の条 日本内分泌 甲状腺外科学会雑誌第 32 巻第 2 号 69

図 2. 樹立した耐性機序の異なる 6 種類の乳癌細胞株 図 3. エストロゲン非依存性 (AI 耐性 ) のメカニズム OATP:organic anion transporter peptides, STS:steroid sulfatas e 件で培養された ( AI 治療条件を模倣している ) 生存細胞のなかから GFP 発現をモニターすることで ER 活性を示す安定的なバリアントを選択した このバリアント細胞株ではアンドロゲンや 5α-androstane-3β,17 β-diol(3 β -diol) によってエストロゲン応答配列が誘導され, 細胞が増殖した [ 11] この細胞株では HSD3B1の発現が上昇, アンドロゲン受容体 ( AR) の発現が低下してアンドロゲン過剰条件へ適応し,3β-HSD type1によってジヒドロテストステロン ( DHT) が 3β-diolに変換されていることが判明した 異所性の HSD3B1 発現や ARの抑制の結果, アンドロゲン過剰条件へと適応したものである 間質細胞との共培養で局所的なアンドロゲンからのエストロゲン産生を模倣したところ, この細胞株では親株 E10より AIに対する感受性が低かった この結果から, アンドロゲン代謝物はエストロゲン様効果をもち, 生存や増殖をサポートしていることが示唆された ( 図 3A ) さらにわれわれは, 原発乳癌でもこのメカニズムが機能しているものがあり, 補助ホルモン療法への感受性に関与している可能性が認められ た [ 12] ER 陽性乳癌におけるアンドロゲン代謝物依存的細胞増殖は AI 耐性機序において, なんらかの役割を果たしていることが示唆される 細胞内リン酸化シグナル経路によるERの活性化 MCF-7-E10 細胞を3カ月ステロイド枯渇培地で培養すると, 生存細胞内に ERE-GFPの発現がみられる細胞とみられない細胞のコロニーが出現した 生細胞でGFPをみながらこれらを単離し, 別々にクローン化することでエストロゲン枯渇耐性 ( EDR) 細胞株を樹立し, その結果, 高い ER 活性をもつ3つのバリアントと ER 活性をもたない3 つのバリアントが得られた [ 13] ERE-GFP 陽性の3つの EDR 細胞株では ERの過剰発現といくつかの ER 標的遺伝子の高い発現がみられた さらに, 細胞内リン酸化シグナル経路の解析では, 他の報告と同様, リン酸化 ERα(Ser167) とAkt(T308) の著しい変化が認められた [14~16] 包括的リン酸化プロテオミクスでも同じく, Akt 経路が ERα のリン酸化に寄与する可能性が示された 結果として, PI3K/ 70 日本内分泌 甲状腺外科学会雑誌第 32 巻第 2 号

図 4. ER 陽性乳癌の治療標的 Akt 経路によって ERがリン酸化されて活性化することがこの細胞の増殖に重要であることが示唆された ( 図 3B ) ER 非依存的増殖メカニズムの獲得一方, GFP 陰性細胞株の3つのバリアントは ER 活性を失っており, 前述の3つのGFP 陽性細胞と同様にクローン化すると,c-Jun N-terminal kinase(jnk) の恒常的活性化が示された これは ERE-GFP 陰性 EDR 細胞でみられ, JNK 阻害剤によって抑制された IGF-1R 特異的阻害剤は JNKのリン酸化を消失させたことにより, 新しいシグナル経路である IGF-IR/JNK 経路が ER 非依存的 MCF-7 細胞の増殖に重要であるようだ ( 図 3C ) これらの結果により ER 陽性乳癌細胞は同時に2つ以上の耐性機序を獲得しうることが示唆された これは複数の耐性メカニズムが一つの腫瘍内で同時に出現しうることを示しており, 患者個人においても異なる耐性メカニズムが同時に存在しうることを意味する さらに, われわれは AI 耐性として別種の ER 陽性乳癌細胞株であるT-47Dから, 前述の耐性株とは異なる安定的バリアント細胞を樹立した [ 17] 本耐性細胞株では ARと PSAが過剰発現し, エストロゲンによっては増殖が刺激されず, ERの発現もみられなかった これらの細胞ではアンドロゲンによって著しく増殖が誘導された 加えて, マイクロアレイの結果から, 親株に比してバリアント細胞ではアンドロゲン誘導性遺伝子発現プロファイルが著しく高発現していることが認められた ( 図 3D ) そこで,21 例の原発巣と AI 耐性後の転移巣のペア検体で免疫染色を行い, 免疫染色結果では PSAと Ki67が有意に上昇し, ERとプロゲステロン受容体 ( PgR) がいくつかの症例では転移巣において原発巣より低下していることを観察した [ 17] ER 陽性乳癌でも症例によっては ER 依存性から AR 依存性へと 腫瘍細胞が変化することで AI 耐性が出現することが示唆された AR 阻害剤は特定の患者群では有効である可能性が示唆された AI 耐性乳癌の治療戦略臨床的に AI 耐性を獲得した乳癌の多くは ER 陽性を維持しており, 現在, AI 耐性乳癌には抗エストロゲン剤であるフルベストラントが多くの場合で使用されている フルベストラントはタモキシフェン同様, 抗エストロゲン剤として ERの機能を阻害すると同時に, タモキシフェンと異なり, ERを分解する作用も有する [ 18] フルベストラントの第 3 相臨床試験である CONFIRM 試験は閉経後 ER 陽性進行再発乳癌を対象に, フルベストラントを2 種の濃度群 ( 250mg 対 500mg) で比較した試験であり, フルベストラント 500mgは忍容性の点で問題なく, 全生存 ( OS) を延長するという結果であった [19] フルベストラントは前述の AI 耐性乳癌細胞株のなかで, ER 陽性を保っている Type1,4,5 細胞には強い増殖抑制効果を示したのに対し, ER 陰転化したType2,3,6 細胞には無効であった つまり, ER 依存性 AI 耐性機序 ( アロマターゼ非依存的リガンド供給やエストロゲン非依存的 ER 活性化 )( 図 1 ) はフルベストラントに感受性をもっているが, ER 非依存的 AI 耐性機序 ( ER 非依存的増殖 ) では無効であることを示す結果であった これまでの AI 耐性獲得後の乳癌治療はホルモン剤の単剤投与が治療の柱であったが, 基礎研究の結果から AI 耐性乳癌に対する臨床上の治療戦略を考えると, ERが陽性のままであれば, ERシグナル経路と他の増殖推進経路を同時に標的とすることが重要であると考えられる ( 図 4 ) なかでも ER 陽性乳癌では PIK3CAの変異が 28~ 47% みられており [20],PI3K/Akt/mTOR 経路は ERシグナル経路 日本内分泌 甲状腺外科学会雑誌第 32 巻第 2 号 71

との間にクロストークが存在すること, また AI 耐性乳癌ではしばしば PI3K/Akt/mTORシグナル経路の亢進がみられていることから, この経路は重要なターゲットであると考えられている mtor 阻害剤エベロリムスは, 非ステロイド型 AI 耐性の進行再発乳癌において, ステロイド型 AIエキセメスタンとの併用によりエキセメスタン単剤投与と比較し無増悪生存期間を有意に延長する結果となった ( BOLERO2 試験 )[ 21] 同薬剤は全生存では差がつかなかったものの [22], その臨床効果は病勢のコントロールに有益であると報告されている [ 23] AIとエベロリムスの併用は, ホルモン剤と分子標的治療の併用という新たな標準治療の先駆けとして注目され, 現在は同様の薬剤の臨床試験が多く組まれている なかでも, PI3Kを標的とする阻害剤は有効性が期待される薬剤であり, 特にサブユニット特異的 PI3K 阻害剤は汎 PI3K 阻害剤と比較し, 薬剤効果と有害事象の忍容性の点で優れた効果を発揮すると考えられている [ 24] 問題は, ER 陽性乳癌では多くの症例で PI3CAの遺伝子変異がみられるにも関わらず, それが PI3K 阻害剤効果のバイオマーカーにはなっていないことである [25] エベロリムスにおいても同様にバイオマーカーの特定は問題となっており, 基礎研究において, 著者らの PI3K/Akt/mTORシグナル経路が亢進している全てのタイプの AI 耐性細胞に対しても, エベロリムスは高い抗腫瘍効果を示したが, 臨床的にはより薬剤効果の期待できる患者群を選別するマーカーによる治療適用が必要であると考えられる その他, 細胞周期抑制剤やHDAC 阻害剤, プロテアソーム阻害剤など異なるコンセプトに基づいた薬剤も新規治療ターゲットとして検討されている なかでも, CDK4/6 阻害剤 Palbociclibは閉経後 ER 陽性進行 再発乳癌における一次治療として, AI 剤レトロゾール単剤と比較し, 併用療法で有意に無増悪生存期間を延長した ( PALOMA-1 試験 )[ 26] しかし, 同試験で設定されたバイオマーカーによる薬剤効果の期待できる群の選別は想定と逆の結果となり, バイオマーカー研究の難しさを露呈することとなった [26] さらに,IGF,MET,Src,MAPKなど他のシグナル経路 [24,27] をターゲットにする阻害剤もまた, 多くは抗エストロゲン剤との併用で臨床試験が施行され始めてきている しかし, 標的の増加がホルモン療法を進歩させるとは単純にいえず, 基礎研究において ER 陽性乳癌の治療標的候補となる薬剤は非常に多く報告され, 各種分子標的治療薬はホルモン療法耐性乳癌に対する有望な戦略の一つと期待されてはいるが, バイオマーカーによる治療対象の選別や, より効果的な薬剤の組み合わせの決定など, 臨床でより効果的に使用するには多くの課題が残されている 本邦でも既に, mtor 阻害剤エベロリムスは AI 剤エキセメスタンとの併用で適応可能となったが, 今後, AI 耐 性乳癌治療においては内分泌治療薬と分子標的薬の併用が主流となると思われる しかし, どのような順序で, どのように各種内分泌治療薬と新規分子標的薬を組み合わせたら良いのか, 大規模な臨床試験だけでなく, in vitro, in vivo 両面からの細胞内での作用機序を考慮した基礎研究も重要であろう 新たなコンパニオンバイオマーカーを見出し, いかに費用対効果を挙げ, 患者の利益に繋げていくか, さらなる基礎と臨床の連携した研究が必要とされる 文献 1. Strasser-Weippl K, Goss PE : Advances in adjuvant hormonal therapy for postmenopausal women. J Clin Oncol 23 : 1751-1759, 2005 2. Riggins RB, Schrecengost RS, Guerrero MS, et al. : Pathways to tamoxifen resistance. Cancer Lett 256 : 1-24, 2007 3. Baum M, Buzdar A, Cuzick J, et al. : Anastrozole alone or in combination with tamoxifen versus tamoxifen alone for adjuvant treatment of postmenopausal women with earlystage breast cancer : results of the ATAC (Arimidex, Tamoxifen Alone or in Combination) trial efficacy and safety update analyses. Cancer 98 : 1802-1810, 2003 4. Yue W, Wang JP, Conaway MR, et al. : Adaptive hypersensitivity following long-term estrogen deprivation : involvement of multiple signal pathways. J Steroid Biochem Mol Biol 86 : 265-274, 2003 5. Sabnis GJ, Jelovac D, Long B, et al. : The role of growth factor receptor pathways in human breast cancer cells adapted to long-term estrogen deprivation. Cancer Res 65 : 3903-3910, 2005 6. Martin LA, Farmer I, Johnston SR, et al. : Elevated ERK1/ ERK2/estrogen receptor cross-talk enhances estrogenmediated signaling during long-term estrogen deprivation. Endocr Relat Cancer 12(Suppl1) : S75-84, 2005 7. Santen RJ, Song RX, Masamura S, et al. : Adaptation to estradiol deprivation causes up-regulation of growth factor pathways and hyper sensitivity to estradiol in breast cancer cells. Adv Exp Med Biol 630 : 19-34, 2008 8. Gohno T, Seino Y, Hanamura T, et al. : Individual transcriptional activity of estrogen receptors in primary breast cancer and its clinical significance. Cancer Med 1 : 328-337, 2012 9. Yamaguchi Y, Takei H, Suemasu K, et al. : Tumor-stromal interaction through the estrogen-signaling pathway in human breast cancer. Cancer Res 65 : 4653-4662, 2005 10. Matsumoto M, Yamaguchi Y, Seino Y, et al. : Estrogen signaling ability in human endometrial cancer through the cancer-stromal interaction. Endocr Relat Cancer 15 : 451-463, 2008 11. Hanamura T, Niwa T, Nishikawa S, et al. : Androgen metabolite-dependent growth of hormone receptor-positive 72 日本内分泌 甲状腺外科学会雑誌第 32 巻第 2 号

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