第6章 循環器系

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漢方薬

身体全体をめぐる血管網 人体は約60兆もの細胞で構成 神経細胞 身体全体をめぐる血管網 総延長距離10万kmの旅路 地球の約2週半 約60兆の細胞へ 血液は栄養と酸素を全身の細胞に供給 細胞からは老廃物と二酸化炭素を血液へ 2

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COヘモグロビン濃度と一酸化炭素中毒 より

生物 第39講~第47講 テキスト

1 アドレナリンってなんだ アドレナリンって何だろう 普段は温厚な人たちでも 草野球の試合になると いつになく興奮し 闘争意識をむきだしにして激しいファイトを展開することがある そんな時 人の体内では 副腎という臓器の髄質部分からアドレナリンやノルアドレナリンというホルモンが分泌されているのだ アド

心不全検査の結果 E さんは心臓発作によって心不全になっていたことがわかりました しかし さらに治療をおこなえば症状をコントロールできそうだということもわかりました 心不全とは? 心臓は精巧な筋肉のポンプです 脳や腎臓などの器官が必要とする血液が 心臓のはたらきによって高い血圧で動脈に押し出されます

1 正常洞調律 ;NSR(Normal Sinus Rhythm) 最初は正常洞調律です P 波があり R-R 間隔が正常で心拍数は 60~100 回 / 分 モニター心電図ではわかりにくいのですが P-Q 時間は 0.2 秒以内 QRS 群は 0.1 秒以内 ST 部分は基線に戻っています 2 S

スライド 1

スライド 1

1 ムを知ることは, 治療介入時の注意点を知る上で重要である. つまり, 臓器の組織還流を維持するために腎での水と Na 保持作用は重要な代償機構である. 利尿薬投与によって体液量を減少させれば, 浮腫は減少するが, 同時に組織還流も減少するため, その程度によっては臓器障害をきたしうることをよく理

Clinical Training 2007

血圧を決める要素 血圧は 心臓から出る血液の量と血管の硬さによって決まります 血圧 心臓から出る = 血液の量 ( 心拍出量 ) 血管の硬さ ( 末梢血管抵抗 )

心房細動1章[ ].indd

ただ太っているだけではメタボリックシンドロームとは呼びません 脂肪細胞はアディポネクチンなどの善玉因子と TNF-αや IL-6 などという悪玉因子を分泌します 内臓肥満になる と 内臓の脂肪細胞から悪玉因子がたくさんでてきてしまい インスリン抵抗性につながり高血糖をもたらします さらに脂質異常症

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生理学 1章 生理学の基礎 1-1. 細胞の主要な構成成分はどれか 1 タンパク質 2 ビタミン 3 無機塩類 4 ATP 第5回 按マ指 (1279) 1-2. 細胞膜の構成成分はどれか 1 無機りん酸 2 リボ核酸 3 りん脂質 4 乳酸 第6回 鍼灸 (1734) E L 1-3. 細胞膜につ

循環器 Cardiology 年月日時限担当者担当科講義主題 平成 23 年 6 月 6 日 ( 月 ) 2 限目 (10:40 12:10) 平成 23 年 6 月 17 日 ( 金 ) 2 限目 (10:40 12:10) 平成 23 年 6 月 20 日 ( 月 ) 2 限目 (10:40 1

第5章 体液

01 表紙

06. 【送付】プレスリリース原稿 LCZ696

埼玉医科大学電子シラバス

細胞の構造

1. 期外収縮 正常なリズムより早いタイミングで心収縮が起きる場合を期外収縮と呼び期外収縮の発生場所によって 心房性期外収縮と心室性期外収縮があります 期外収縮は最も発生頻度の高い不整脈で わずかな期外収縮は多くの健康な人でも発生します また 年齢とともに発生頻度が高くなり 小学生でもみられる事もあ

心臓血管外科カリキュラム Ⅰ. 目的と特徴心臓血管外科は心臓 大血管及び末梢血管など循環器系疾患の外科的治療を行う診療科です 循環器は全身の酸素 栄養供給に欠くべからざるシステムであり 生体の恒常性維持において 非常に重要な役割をはたしています その異常は生命にとって致命的な状態となり 様々な疾患

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各論 心血管内分泌

エントリーが発生 真腔と偽腔に解離 図 2 急性大動脈解離 ( 動脈の壁が急にはがれる ) Stanford Classification Type A Type B 図 3 スタンフォード分類 (A 型,B 型 ) (Kouchoukos et al:n Engl J Med 1997) 液が血管

心臓静脈動脈体循環 心臓の働き 肺循環 心臓は 全身に血液を送り出すポンプの働きをしています 生命維持に必要な酸素や栄養素などを含む血液を 拍動によって肺や全身へめぐらせます 肺循環心臓と肺のあいだをめぐる血液循環です 肺で酸素を取り入れ 二酸化炭素を放出します 体循環心臓と全身のあいだをめぐる血液

恒久型ペースメーカー椊え込み術

心臓血管外科手術説明書 国立病院機構東京医療センター心臓血管外科 様

問 21 細胞膜について正しい記述はどれか 問 31 発汗について誤っている記述はどれか A 糖脂質分 が規則正しく配列している A 体温の上昇を防ぐ B イオンに対して選択的な透過性をもつ B 汗腺には交感神経が分布する C タンパク質分 の 重層膜からなる C 温熱性発汗には 脳 質が関与する

市民大学ふじみ野 「体調の変化をどう捉えるか」

日本の糖尿病患者数は増え続けています (%) 糖 尿 25 病 倍 890 万人 患者数増加率 万人 690 万人 1620 万人 880 万人 2050 万人 1100 万人 糖尿病の 可能性が 否定できない人 680 万人 740 万人

り ( 狭窄といいます ) 血管が急にけいれんして狭くなったり( 攣縮 ) 血の塊( 血栓 ) が出来て詰まってしまうことがあります 冠動脈が狭く十分に心臓の筋肉に血液が供給されない状態で 胸が締め付けられるような感覚 痛みなどを伴った場合 狭心症とよび 循環器専門施設で冠動脈の状態をカテーテルで調

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( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 花房俊昭 宮村昌利 副査副査 教授教授 朝 日 通 雄 勝 間 田 敬 弘 副査 教授 森田大 主論文題名 Effects of Acarbose on the Acceleration of Postprandial

心不全とは?(Fig.3) 心機能低下に起因する循環不全 と定義され 心臓が全身の組織における代謝の必要量に応じて 血液を十分駆出できない状態です 発症の仕方により 急性心不全 (acute heart failure:ahf) と慢性心不全 (chronic heart failure:chf)

心臓血管外科・診療内容

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概要 214 心室中隔欠損を伴う肺動脈閉鎖症 215 ファロー四徴症 216 両大血管右室起始症 1. 概要ファロー四徴症類縁疾患とは ファロー四徴症に類似の血行動態をとる疾患群であり ファロー四徴症 心室中隔欠損を伴う肺動脈閉鎖 両大血管右室起始症が含まれる 心室中隔欠損を伴う肺動脈閉鎖症は ファ

心房細動の機序と疫学を知が, そもそもなぜ心房細動が出るようになるかの機序はさらに知見が不足している. 心房細動の発症頻度は明らかに年齢依存性を呈している上, 多くの研究で心房線維化との関連が示唆されている 2,3). 高率に心房細動を自然発症する実験モデル, 特に人間の lone AF に相当する

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虎ノ門医学セミナー

られる 糖尿病を合併した高血圧の治療の薬物治療の第一選択薬はアンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬とアンジオテンシン II 受容体拮抗薬 (ARB) である このクラスの薬剤は単なる降圧効果のみならず 様々な臓器保護作用を有しているが ACE 阻害薬や ARB のプラセボ比較試験で糖尿病の新規

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解剖学 1

219 土田泰聖 和田拓真 小野寺昇 図 1 実験プロトコル 3. 統計統計処理は, 統計ソフトMacintosh 版 Statview-J5.0を用いて行った. 測定によって得られた数値は,( 平均値 ± 標準偏差 ) で示した. 測定値の比較には, 対応のあるt 検定を用いた. 統計的な有意水準

1 疾患別医療費札幌市国保の総医療費に占める入院医療費では 悪性新生物が 21.2% 循環器疾患が 18.6% となっており 循環器疾患では 虚血性心疾患が 4.5% 脳梗塞が 2.8% を占めています 外来医療費では 糖尿病が 7.8% 高血圧症が 6.6% 脂質異常症が 4.3% となっています

2

2019/7/9 市民公開講座 2019 健やかな高齢社会を生きるために心臓を守ろう ~ 心不全を知るコトから始めよう ~ 藤枝市立総合病院循環器内科渡辺明規 2019 年 7 月 7 日藤枝市民会館 1

運動療法の効果 運 動療 法は 心 臓手 術を受けるに至った 冠 動脈 疾 患の危険因子を減らす2次予防だけでなく 手術を受けたことによるいろいろな問題点を改善します 1 運動能力 体力が向上します 心臓手術後の運動療法は運動能力を改善させます 弁膜症の場合 弁置換術によって心機能は正常化しま すが

重要な説明事項_H1-4_A

大学教職員の心臓検診の現状 * 和井内由充子 大学保健管理センターの主要業務のひとつに 健康診断とそれに基づく健康管理がある 突然 死にもつながる心疾患の早期発見と管理は重要 である 大学生の心疾患管理に関しては以前報 告 1-6) した 大学のもうひとつの主要構成員で ある教職員の管理の現状を今回

微小粒子状物質曝露影響調査報告書


検査項目情報 6154 一次サンプル採取マニュアル 4. 内分泌学的検査 >> 4E. 副腎髄質ホルモン >> 4E016. カテコールアミン3 分画 カテコールアミン3 分画 [ 随時尿 ] catecholamines 3 fractionation 連絡先 : 3764 基本情報 4E016

今日勉強すること 1. 脊髄と脳幹の構造 2. 自律神経一般的の性質 3. 臓器別にみた自律神経の作用 4. 自律神経反射の例

障害程度等級表 心臓機能障害 1 級 心臓の機能の障害により 自己の身辺の日常生活活動が極度に制限されるもの 2 級 - 3 級 心臓の機能の障害により 家庭内での日常生活活動が著しく制限されるもの 4 級 心臓の機能の障害により 社会での日常生活活動が著しく制限されるもの

カテーテルアブレーション治療のご説明

胸痛の鑑別診断持続時間である程度の鑑別ができる 数秒から1 分期外収縮筋 骨格系の痛み 心因性 30 分以内 狭心症食道痙攣 逆流性食道炎 30 分以上 急性心筋梗塞 解離性大動脈瘤 肺塞栓症 急性心膜炎自然気胸 胸膜炎胃 十二指腸潰瘍 胆嚢炎 胆石症帯状疱疹 急性心筋梗塞の心電図変化 R P T

活 動 報 告

年301 番 循環器系の疾患 (Cardiovascular Disease) 責任者: 石原正治主任教授 坂口太一主任教授 内科学循環器内科 朝倉正紀教授 峰隆直特任准教授 内藤由朗講師 赤堀宏洲講師 奥原祥貴講師 織原良行助教 正井久美子助教 増山理特別招聘教授 伊賀幹二非常勤講師 駒村和雄非常

メディカルスタッフのための腎臓病学2版


5. 死亡 (1) 死因順位の推移 ( 人口 10 万対 ) 順位年次 佐世保市長崎県全国 死因率死因率死因率 24 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 位 26 悪性新生物 350

Fig.2 死因死亡数 ( 人 ) 全死因 悪 性 新 生 物 (1) 心 疾 患 (2) 肺 炎 (3) 脳 血 管 疾 患

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肥満者の多くが複数の危険因子を持っている 肥満のみ約 20% いずれか 1 疾患有病約 47% 肥満のみ 糖尿病 いずれか 2 疾患有病約 28% 3 疾患すべて有病約 5% 高脂血症 高血圧症 厚生労働省保健指導における学習教材集 (H14 糖尿病実態調査の再集計 ) より

1 ししつ脂質 いじょうしょう へ 高脂血症から 脂質脂質異常症 医療法人将優会クリニックうしたに 理事長 院長牛谷義秀 脂質異常症とは 血液中に含まれる LDL( 悪玉 ) コレステロールと中性脂肪中性脂肪のどちらか一方 あるいは両方が過剰の状態 または HDL( 善玉 ) コレステロールが少ない

高位平準動物看護概論動物機能形態学対面学習確認テスト 問題 1: 脳幹の役割として正しいのはどれか 1 学習 知覚 認知 運動 感覚などの高次機能に関わる 2 呼吸 心臓 嚥下の働きなど 生命にかかわる基本的な機能を維持する 3 からだの働き バランス 姿勢の制御を行う 4 末梢の各器官で得た情報を

2 慢性心不全の症状は 慢性心不全では交感神経が活発になったままとなりますので 脈が速く 不整脈が出やすくな ります この症状が 動悸 です また 呼吸が浅く速いこと 肺での酸素の交換が悪くなって いるので呼吸が荒くなることも特徴で この症状が 息切れ です さらに 手足の筋肉や血管 いひろうかん

離床プレアドバイザー認定試験問題 ( 一部解答例付属 ) インストラクター問題は非公開 このページでは 離床プレアドバイザー認定試験に実際に出題された問題 ( 一部 ) および解答例を PDF ファイル形式で掲載します 試験レベル把握 学習にお役立て ください なお 掲載された問題 解答例についての

老衰 2% 日本における主な死因 : 動脈硬化性疾患は 25% その他 33% 悪性新生物 ( ガン ) 26% 自殺 3% 不慮の事故 3% 肺炎 8% 脳血管疾患 ( 脳卒中など ) 11% 脳心血管系疾患 25% 心疾患 ( 心筋梗塞など ) 14% 厚生労働省 平成 15 年度人口動態統計

山梨県生活習慣病実態調査の状況 1 調査目的平成 20 年 4 月に施行される医療制度改革において生活習慣病対策が一つの大きな柱となっている このため 糖尿病等生活習慣病の有病者 予備群の減少を図るために健康増進計画を見直し メタボリックシンドロームの概念を導入した 糖尿病等生活習慣病の有病者や予備

標準的な健診・保健指導の在り方に関する検討会

死亡率(人口10 万対1950 '55 '60 '65 '70 '75 '80 '85 '90 ' 心血管系疾患 ( 動脈硬化による ) とがんが死亡の大 部分を占める 脳血管疾患 悪性新生物 結核 心疾患 )肺炎 50 不慮の事故自殺 0 肝疾患昭和

監修 作成作成ご協力者 氏名 有本貴範 所属 山形大学医学部内科学第一講座助教

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科目名授業方法単位 / 時間数必修 選択担当教員 人体の構造と機能 Ⅱ 演習 2 単位 /60 時間必修 江連和久 北村邦男 村田栄子 科目の目標 人体の構造と機能 はヒトの体が正常ではどうできていてどう働くのかを理解することを目的とする この学問は将来 看護師として 病む ということに向き合う際の

狭心症と心筋梗塞 何を調べているの? どのように調べるの? 心臓の検査虚血チェック きょけつ の きょうさく狭窄のチェック 監修 : 明石嘉浩先生聖マリアンナ医科大学循環器内科

病気のはなし48_3版2刷.indd

Microsoft PowerPoint - 2.医療費プロファイル 平成25年度(長野県・・

超音波セミナー「症例から学ぶ」 ~こんな技術・知識が役立った!!検査から報告書作成まで~ 心臓領域

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d 運動負荷心電図でSTの低下が0.1mV 以上の所見があるもの ( イ ) 臨床所見で部分的心臓浮腫があり かつ 家庭内での普通の日常生活活動若しくは社会での極めて温和な日常生活活動には支障がないが それ以上の活動は著しく制限されるもの又は頻回に頻脈発作を繰り返し 日常生活若しくは社会生活に妨げと

受給者番号 ( ) 患者氏名 ( ) 告示番号 72 慢性心疾患 ( ) 年度小児慢性特定疾病医療意 書 新規申請用 経過 ( 申請時 ) 直近の状況を記載 2/2 薬物療法 強心薬 :[ なし あり ] 利尿薬 :[ なし あり ] 抗不整脈薬 :[ なし あり ] 抗血小板薬 :[ なし あり

5 直腸診 : 消化管出血による貧血からの起立性失神を疑う場合に施行 6 外傷の有無 : 失神して転倒した際に外傷を合併していないか全身を評価する 検査 12 誘導心電図検査を全例に行う その他に必要に応じて血液検査 心エコー 胸部 X 線写真 頭部単純 CT 大血管造影 CT 脳波 妊娠反応 抗け

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Ⅰ. ヒトの遺伝情報に関する次の記述を読み, ~ に答えなさい 個体の形成や生命活動を営むのに必要な ( a ) は, 真核生物の細胞では主に核 の中で染色体を形成している 通常, ₁ 個の体細胞には同じ大きさと形の染色体が 一対ずつあり, この対になっている染色体を ( b ) といい, 片方の染

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M波H波解説

心障害により心拍出量が十分に得られない (N A) と 拡張終期圧と容積が増加し Frank-Starling の法則により 収縮力が増加し血液を排出しようとする (A B) しかし これにより静脈圧が上昇し 肺うっ血による呼吸困難が生じる さらに 交感神経の亢進により 末梢血管抵抗の増加と心拍数の

心臓血管外科手術説明書 国立病院機構東京医療センター心臓血管外科 様

ピルシカイニド塩酸塩カプセル 50mg TCK の生物学的同等性試験 バイオアベイラビリティの比較 辰巳化学株式会社 はじめにピルジカイニド塩酸塩水和物は Vaughan Williams らの分類のクラスⅠCに属し 心筋の Na チャンネル抑制作用により抗不整脈作用を示す また 消化管から速やかに

Transcription:

心蔵の生理循 -9 心筋の特性平滑筋不随意筋 心筋 横紋筋骨格筋随意筋 刺激伝道系と心電図 (ECG) P 波 QRS 波 T 波 心房の興奮 心室の興奮の始まり 心室興奮の終わり 12 誘導心電図 6つの肢誘導 (Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ,aVR,aVL,aVF) と6つの胸部誘導 (V1~6) から成り 心臓の電気活動を 12 の方向から記録する 不整脈 心肥大 狭心症 心筋梗塞などの心疾患の診断に不可欠な検査である 心電図の肢誘導では電極を右手 左手 左足に付け さらに不関電極 ( アース ) を右足につける 右手 左手の電位の記録を第 Ⅰ 誘導 右手 左足を第 Ⅱ 誘導 左手 左足を第 Ⅲ 誘導と呼ぶ ( 誘導は全部で12 個ありますが 残りの9つの誘導は今のところ資格試験には出ていません ) 心臓の調律 心拍数と不整脈心臓の拍動は 右心房にある洞 ( 房 ) 結節が規則的に電流を発生し これが刺激伝導系を経て心臓全体に伝わることによって生じる このように洞結節が 心臓拍動の調律 (rhythm) を発生させている状態を洞調律という 心臓の調律を発生する部位をペースメーカーと呼ぶ 正常では洞結節がペースメーカーである 正常な心拍数は1 分間に 70 前後であり 60(or 50)/ 分未満を除脈 100/ 分以上を頻脈という 心拍数は運動 発熱 精神的興奮 甲状腺ホルモンなどで増加するが 短期的には一定であり 心臓の調律は規則正しい 心臓の調律が不規則になった状態を不整脈という 不整脈には多くの種類があるが 大きく頻脈性不整脈と除脈性不整脈とに分けられる 心拍数が吸息時にやや速く 呼息時にやや遅くなることを呼吸性不整脈という

心周期と心音循 -10 心臓周期は収縮期と拡張期から成る 1 音から2 音までが収縮期 2 音から次の1 音までが拡張期である 心拍数が 60/ 分のときは収縮期 : 拡張期 1:2だが 心拍数が増加すると主に拡張期が短縮する 1 音 : 僧帽弁と三尖弁の閉じる音 + 心筋収縮の音 2 音 : 大動脈弁と肺動脈弁の閉じる音 心雑音 : 心臓弁膜症や先天性心疾患 ( 心奇形 ) などで心雑音を生じる 心雑音は収縮期雑音と拡張期雑音とに大別される 左房圧 左室圧と大動脈圧 A: 僧帽弁の閉鎖 (1 音 ) B: 大動脈弁の開放 C: 大動脈弁の閉鎖 (2 音 ) D: 僧帽弁の開放

心拍出量循 -11 1 回拍出量 70 ml 毎分拍出量 5 L/min 心機能の調節交感神経促進 ( 収縮力 心拍数 ) 心臓血管中枢 ( 延髄 ) 副交感神経 (= 迷走神経 ) 抑制 ( 収縮力 心拍数 ) 延髄の心臓血管中枢は 心機能の調節と血管の調節とを連動して行う 正常な 12 誘導心電図

血管循 -12 血管の構造と性質 基本構造 : 内膜 中膜 外膜の 3 層から成る 内膜と中膜の間に内弾性板 中膜と外膜の間に外弾性板がある 内膜には血管内皮があり 中膜には血管平滑筋と弾性線維がある 外膜は結合組織からなる 血管 性質 構造の特徴 機能 大動脈 太い動脈 弾性血管 中膜は弾性繊維に富む 動脈圧の平滑化 細動脈 (0.5mm 以下 ) 抵抗血管 中膜は血管平滑筋に富む 血圧と局所の血流量の調節 毛細血管 (0.01mm) 交換血管 1 層の内皮細胞と基底膜からなる ガス 物質の交換 静脈 容量血管 弾性繊維 平滑筋は少ない 血液の貯留 ( 血液の 75%) 弁が存在 ( 特に下肢静脈 ) 特定の臓器の血流量はその臓器の血管の収縮 弛緩で調節される 冠循環と脳循環心拍出量にしめる割合 血流量の予備能 エネルギー 心臓 5%(250ml/min) 4~5 倍 脂肪酸 脳 15%(750ml/min) ( ) ブドウ糖 腎 20%(1000ml/min) 心筋の酸素消費が増えると 冠動脈の血流量は最高 4~5 倍に増える 動脈硬化粥状硬化 ( アテローム硬化 )= 狭義の動脈硬化中膜硬化細動脈硬化 コレステロール 高血圧と密接な関係 高血圧と密接な関係 虚血性心疾患 = 狭心症 心筋梗塞 アテローム硬化による冠動脈の狭窄 閉塞が原因 冠動脈疾患ともいう 脳卒中 = 脳梗塞 脳出血 くも膜下出血

血圧循 -13 血圧とは心臓 血管内の血液の圧力をいう 体循環の血圧は左心室で 肺循環の血圧は右心室で作り出され この血圧の勾配によって血液が流れる 体循環では下記の順に血圧が低下してゆく 左心室 = 大動脈 動脈 > 細動脈 > 毛細血管 > 細静脈 > 静脈 大静脈 = 右心房臨床で血圧というときは 動脈の血圧 ( 動脈圧 ) を指す 収縮期血圧 = 最高血圧 拡張期血圧 = 最低血圧 脈圧 = 収縮期血圧 - 拡張期血圧 平均血圧 = 拡張期血圧 +1/3 脈圧血圧を記録 ( 口述 ) するときは 収縮期血圧を先に 拡張期血圧をあとに書く ( 言う ) 例 :120/80 血圧の単位は mmhg( ミリメーター水銀 ミリメーター マーキュリー ) を用いる 血圧の分類と高血圧の定義血圧が高ければ高いほど動脈硬化が進行し 脳卒中や虚血性心疾患などを発症しやすい 診察室での血圧が 140/90mmHg 以上になると明らかに脳卒中や心疾患が増えるので これを高血圧と定義しているが 最近では 診察室血圧よりも家庭血圧が重要であると考えられている 家庭血圧では 135/85mmHg 以上が高血圧である 高血圧 : 最高血圧 140mmHg 以上 または最低血圧 90mmHg 以上 ( 診察室血圧 ) 最高血圧 135mmHg 以上 または最低血圧 85mmHg 以上 ( 家庭血圧 ) 低血圧 : 最高血圧が 100mmHg 未満

高血圧と脳梗塞循 -14 血圧と年齢 血圧の自己測定

血圧の調節循 -15 血圧 = 心拍出量 x 血管抵抗血圧は心拍出量と血管抵抗の積であり 心拍出量は循環血液量と心機能によって決まる 血管抵抗は 血管が収縮すると上がり 血管が拡張すると下がる すなわち 循環血液量増加 心機能の亢進 血管収縮 (= 血管抵抗増加 ) によって血圧は上昇する A 圧受容器反射による血圧調節 ------ 頸動脈洞 大動脈弓血圧が上昇すると頸動脈洞と大動脈弓の圧受容器がこれを感知して延髄の心臓血管中枢に信号を伝える 心臓血管中枢は副交感神経 ( 迷走神経 ) を介して 血管拡張 心拍出量低下 心拍数低下を起こし 血圧を下げる B 自律神経による血圧調節( 神経性調節 )------- 交感神経と副交感神経延髄の心臓血管中枢は 身体の必要に応じて交感神経と副交感神経を介して全身の循環調節を行ない その一部として血圧も調節される 交感神経が優位になると血圧は上昇し 副交感神経が優位になると血圧は下降する 心臓など胸腹部内臓に分布する副交感神経を迷走神経という 交感神経の伝達物質はノルアドレナリン 副交感神経の伝達物質はアセチルコリンである 交感神経は心臓の収縮力を強め 心拍数を上げる(β1 作用 ) 交感神経は皮膚 腎臓 内臓の血管を収縮し(α1 作用 ) 骨格筋の血管を拡張させる(β2 作用 ) 交感神経は副腎髄質からアドレナリン ノルアドレナリンを放出させる 副交感神経は心臓の収縮力を弱め 心拍数を下げる 副交感神経は消化器など内臓の血管を拡張させる C 体液性因子( ホルモン ) による血圧調節 ( 体液性調節 ) (1) レニン-アンジオテンシン (-アルドステロン) 系腎血流が減少すると腎臓からレニンが血中に放出される レニンは血中のアンジオテンシノーゲンをアンジオテンシンⅠに変換し アンジオテンシンⅠはアンジオテンシン変換酵素 (ACE) によってアンジオテンシンⅡに変換される アンジオテンシンⅡは血管を収縮させ さらに副腎皮質ホルモンのひとつであるアルドステロンの分泌を促して血圧を上げる アルドステロンは 腎臓の遠位尿細管 集合管に作用して Na 水を再吸収させて体液量をふやす レニン アンジオテンシン系 レニン ACE アンジオテンシノーゲンアンジオテンシンⅠ アンジオテンシンⅡ アルドステロン 血管収縮 腎で水 Na の再吸収 血圧上昇

(2) その他のホルモン循 -16 レニン-アンジオテンシン系以外にも 下記のようなホルモンが体液量と血管収縮を調節している 体液量の調節は主に腎臓でおこなわれ 血圧が下がると尿量を減らし循環血液量を増やして血圧を上げ 逆に血圧が上がると尿量を増やして血圧を下げるように調節される 尿量を増やす作用を 利尿 ( りにょう ) 作用と呼ぶ バゾプレッシン(= 抗利尿ホルモン ADH) 下垂体後葉ホルモンのひとつ 血漿浸透圧が上がる (= 血液が濃縮する ) と腎臓の遠位尿細管 集合管に作用して水の再吸収をおこない 体液量を増やして浸透圧を下げる 血管収縮作用もある 心房性 Na 利尿ペプチド (ANP) 心房などで合成される 腎臓での Na 利尿 水利尿によって体液量を減らす 血管拡張作用もある 血圧調節物質 前述のように体内の様々な物質が血圧と循環の調節をしている 心臓の収縮力を上げる or 血管を収縮させる or 循環血液量を増やす物質は血圧を上げる方向にはたらき 逆の作用の物質は血圧を下げる方向にはたらく ひとつの物質が複数の作用を持つ場合も多い これらの物質は 神経性調節において神経終末で神経伝達物質として作用するものと 体液性調節として血中に分泌され 離れた器官で作用するもの ( 狭義のホルモン ) とに分類されるが 同一の物質が 神経性調節と体液性調節の両方にかかわる場合もあるので これらすべてを広い意味でホルモンあるいは神経体液性因子と呼ぶこともある 血圧調節に関与するホルモンを以下に列挙する