また カスタムメイドの 1Fr 電極カテーテルを用いて in vivo で心臓電気生理学検査を施行し His 束心電図記録を行った さらに ex vivo の検討として 摘出心を Langendorff 還流し 電位感受性色素 (di 4-ANEPPS) および高速 CMOS カメラシステムを用いて

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1. Caov-3 細胞株 A2780 細胞株においてシスプラチン単剤 シスプラチンとトポテカン併用添加での殺細胞効果を MTS assay を用い検討した 2. Caov-3 細胞株においてシスプラチンによって誘導される Akt の活性化に対し トポテカンが影響するか否かを調べるために シスプラチ

1. 期外収縮 正常なリズムより早いタイミングで心収縮が起きる場合を期外収縮と呼び期外収縮の発生場所によって 心房性期外収縮と心室性期外収縮があります 期外収縮は最も発生頻度の高い不整脈で わずかな期外収縮は多くの健康な人でも発生します また 年齢とともに発生頻度が高くなり 小学生でもみられる事もあ

るが AML 細胞における Notch シグナルの正確な役割はまだわかっていない mtor シグナル伝達系も白血病細胞の増殖に関与しており Palomero らのグループが Notch と mtor のクロストークについて報告している その報告によると 活性型 Notch が HES1 の発現を誘導

東邦大学学術リポジトリ タイトル別タイトル作成者 ( 著者 ) 公開者 Epstein Barr virus infection and var 1 in synovial tissues of rheumatoid 関節リウマチ滑膜組織における Epstein Barr ウイルス感染症と Epst

( 続紙 1 ) 京都大学 博士 ( 薬学 ) 氏名 大西正俊 論文題目 出血性脳障害におけるミクログリアおよびMAPキナーゼ経路の役割に関する研究 ( 論文内容の要旨 ) 脳内出血は 高血圧などの原因により脳血管が破綻し 脳実質へ出血した病態をいう 漏出する血液中の種々の因子の中でも 血液凝固に関

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く 細胞傷害活性の無い CD4 + ヘルパー T 細胞が必須と判明した 吉田らは 1988 年 C57BL/6 マウスが腹腔内に移植した BALB/c マウス由来の Meth A 腫瘍細胞 (CTL 耐性細胞株 ) を拒絶すること 1991 年 同種異系移植によって誘導されるマクロファージ (AIM


脳組織傷害時におけるミクログリア形態変化および機能 Title変化に関する培養脳組織切片を用いた研究 ( Abstract_ 要旨 ) Author(s) 岡村, 敏行 Citation Kyoto University ( 京都大学 ) Issue Date URL http

1 正常洞調律 ;NSR(Normal Sinus Rhythm) 最初は正常洞調律です P 波があり R-R 間隔が正常で心拍数は 60~100 回 / 分 モニター心電図ではわかりにくいのですが P-Q 時間は 0.2 秒以内 QRS 群は 0.1 秒以内 ST 部分は基線に戻っています 2 S

論文の内容の要旨

Mincle は死細胞由来の内因性リガンドを認識し 炎症応答を誘導することが報告されているが 非感染性炎症における Mincle の意義は全く不明である 最近 肥満の脂肪組織で生じる線維化により 脂肪組織の脂肪蓄積量が制限され 肝臓などの非脂肪組織に脂肪が沈着し ( 異所性脂肪蓄積 ) 全身のインス

様式 C-19 科学研究費補助金研究成果報告書 平成 22 年 6 月 16 日現在 研究種目 : 若手研究 (B) 研究期間 :2008~2009 課題番号 : 研究課題名 ( 和文 ) 心臓副交感神経の正常発生と分布に必須の因子に関する研究 研究課題名 ( 英文 )Researc

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結果 この CRE サイトには転写因子 c-jun, ATF2 が結合することが明らかになった また これら の転写因子は炎症性サイトカイン TNFα で刺激したヒト正常肝細胞でも活性化し YTHDC2 の転写 に寄与していることが示唆された ( 参考論文 (A), 1; Tanabe et al.

子として同定され 前立腺癌をはじめとした癌細胞や不死化細胞で著しい発現低下が認められ 癌抑制遺伝子として発見された Dkk-3 は前立腺癌以外にも膵臓癌 乳癌 子宮内膜癌 大腸癌 脳腫瘍 子宮頸癌など様々な癌で発現が低下し 癌抑制遺伝子としてアポトーシス促進的に働くと考えられている 先行研究では ヒ

Untitled

ルグリセロールと脂肪酸に分解され吸収される それらは腸上皮細胞に吸収されたのちに再び中性脂肪へと生合成されカイロミクロンとなる DGAT1 は腸管で脂質の再合成 吸収に関与していることから DGAT1 KO マウスで認められているフェノタイプが腸 DGAT1 欠如に由来していることが考えられる 実際

平成14年度研究報告

化を明らかにすることにより 自閉症発症のリスクに関わるメカニズムを明らかにすることが期待されます 本研究成果は 本年 京都において開催される Neuro2013 において 6 月 22 日に発表されます (P ) お問い合わせ先 東北大学大学院医学系研究科 発生発達神経科学分野教授大隅典

のとなっています 特に てんかん患者の大部分を占める 特発性てんかん では 現在までに 9 個が報告されているにすぎません わが国でも 早くから全国レベルでの研究グループを組織し 日本人の熱性痙攣 てんかんの原因遺伝子の探求を進めてきましたが 大家系を必要とするこの分野では今まで海外に遅れをとること

を示しています これを 2:1 房室ブロックと言います 設問 3 正解 :1 ブルガダ型心電図正解率 96% この心電図の所見は 心拍数 56/ 分 P-P 間隔 R-R 間隔一定の洞調律 電気軸正常です 異常 Q 波は認めません ST 部分をみると特に V1 V2 誘導で正常では基線上にあるべき

Wnt3 positively and negatively regu Title differentiation of human periodonta Author(s) 吉澤, 佑世 Journal, (): - URL Rig

糖鎖の新しい機能を発見:補体系をコントロールして健康な脳神経を維持する

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関係があると報告もされており 卵巣明細胞腺癌において PI3K 経路は非常に重要であると考えられる PI3K 経路が活性化すると mtor ならびに HIF-1αが活性化することが知られている HIF-1αは様々な癌種における薬理学的な標的の一つであるが 卵巣癌においても同様である そこで 本研究で

られる 糖尿病を合併した高血圧の治療の薬物治療の第一選択薬はアンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬とアンジオテンシン II 受容体拮抗薬 (ARB) である このクラスの薬剤は単なる降圧効果のみならず 様々な臓器保護作用を有しているが ACE 阻害薬や ARB のプラセボ比較試験で糖尿病の新規

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現し Gasc1 発現低下は多動 固執傾向 様々な学習 記憶障害などの行動異常や 樹状突起スパイン密度の増加と長期増強の亢進というシナプスの異常を引き起こすことを発見し これらの表現型がヒト自閉スペクトラム症 (ASD) など神経発達症の病態と一部類することを見出した しかしながら Gasc1 発現

図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

study のデータベースを使用した このデータベースには 2010 年 1 月から 2011 年 12 月に PCI を施行された 1918 人が登録された 研究の目的から考えて PCI 中にショックとなった症例は除外した 複数回 PCI を施行された場合は初回の PCI のみをデータとして用いた

Clinical Training 2007

今後の展開現在でも 自己免疫疾患の発症機構については不明な点が多くあります 今回の発見により 今後自己免疫疾患の発症機構の理解が大きく前進すると共に 今まで見過ごされてきたイントロン残存の重要性が 生体反応の様々な局面で明らかにされることが期待されます 図 1 Jmjd6 欠損型の胸腺をヌードマウス

研究成果報告書

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考えられている 一部の痒疹反応は, 長時間持続する蕁麻疹様の反応から始まり, 持続性の丘疹や結節を形成するに至る マウスでは IgE 存在下に抗原を投与すると, 即時型アレルギー反応, 遅発型アレルギー反応に引き続いて, 好塩基球依存性の第 3 相反応 (IgE-CAI: IgE-dependent

4氏 すずき 名鈴木理恵 り 学位の種類博士 ( 医学 ) 学位授与年月日平成 24 年 3 月 27 日学位授与の条件学位規則第 4 条第 1 項研究科専攻東北大学大学院医学系研究科 ( 博士課程 ) 医科学専攻 学位論文題目 esterase 染色および myxovirus A 免疫組織化学染色

3. 研究結果 1) ヒト ips 細胞から 3 次元的な心臓組織モデルを作製したはじめに ヒト ips 細胞から心筋細胞を分化誘導し 温度感受性培養皿注 4 を用いて細胞シートを作製することにより 細胞 5-6 層からなる 3 次元的構造を作りました しかし心筋細胞のみのシートでは TdP は発生

新規遺伝子ARIAによる血管新生調節機構の解明

ASC は 8 週齢 ICR メスマウスの皮下脂肪組織をコラゲナーゼ処理後 遠心分離で得たペレットとして単離し BMSC は同じマウスの大腿骨からフラッシュアウトにより獲得した 10%FBS 1% 抗生剤を含む DMEM にて それぞれ培養を行った FACS Passage 2 (P2) の ASC

能性を示した < 方法 > M-CSF RANKL VEGF-C Ds-Red それぞれの全長 cdnaを レトロウイルスを用いてHeLa 細胞に遺伝子導入した これによりM-CSFとDs-Redを発現するHeLa 細胞 (HeLa-M) RANKLと Ds-Redを発現するHeLa 細胞 (HeL

抑制することが知られている 今回はヒト子宮内膜におけるコレステロール硫酸のプロテ アーゼ活性に対する効果を検討することとした コレステロール硫酸の着床期特異的な発現の機序を解明するために 合成酵素であるコ レステロール硫酸基転移酵素 (SULT2B1b) に着目した ヒト子宮内膜は排卵後 脱落膜 化

統合失調症発症に強い影響を及ぼす遺伝子変異を,神経発達関連遺伝子のNDE1内に同定した

糸球体で濾過されたブドウ糖の約 90% を再吸収するトランスポータである SGLT2 阻害薬は 尿糖排泄を促進し インスリン作用とは独立した血糖降下及び体重減少作用を有する これまでに ストレプトゾトシンによりインスリン分泌能を低下させた糖尿病モデルマウスで SGLT2 阻害薬の脂肪肝改善効果が報告

恒久型ペースメーカー椊え込み術

心房細動の機序と疫学を知が, そもそもなぜ心房細動が出るようになるかの機序はさらに知見が不足している. 心房細動の発症頻度は明らかに年齢依存性を呈している上, 多くの研究で心房線維化との関連が示唆されている 2,3). 高率に心房細動を自然発症する実験モデル, 特に人間の lone AF に相当する

博士学位論文審査報告書

ヒト脂肪組織由来幹細胞における外因性脂肪酸結合タンパク (FABP)4 FABP 5 の影響 糖尿病 肥満の病態解明と脂肪幹細胞再生治療への可能性 ポイント 脂肪幹細胞の脂肪分化誘導に伴い FABP4( 脂肪細胞型 ) FABP5( 表皮型 ) が発現亢進し 分泌されることを確認しました トランスク

心房細動1章[ ].indd

公募情報 平成 28 年度日本医療研究開発機構 (AMED) 成育疾患克服等総合研究事業 ( 平成 28 年度 ) 公募について 平成 27 年 12 月 1 日 信濃町地区研究者各位 信濃町キャンパス学術研究支援課 公募情報 平成 28 年度日本医療研究開発機構 (AMED) 成育疾患克服等総合研

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計画研究 年度 定量的一塩基多型解析技術の開発と医療への応用 田平 知子 1) 久木田 洋児 2) 堀内 孝彦 3) 1) 九州大学生体防御医学研究所 林 健志 1) 2) 大阪府立成人病センター研究所 研究の目的と進め方 3) 九州大学病院 研究期間の成果 ポストシークエンシン

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学位論文の要約

別紙 < 研究の背景と経緯 > 自閉症は 全人口の約 2% が罹患する非常に頻度の高い神経発達障害です 近年 クロマチンリモデ リング因子 ( 5) である CHD8 が自閉症の原因遺伝子として同定され 大変注目を集めています ( 図 1) 本研究グループは これまでに CHD8 遺伝子変異を持つ

妊娠認識および胎盤形成時のウシ子宮におけるI型IFNシグナル調節機構に関する研究 [全文の要約]

スライド 1

更生相談・判定依頼のガイド

骨形成における LIPUS と HSP の関係性が明らかとなった さらに BMP シグナリングが阻害されたような症例にも効果的な LIPUS を用いた骨治癒法の提案に繋がる可能性が示唆された < 方法 > 10%FBS と 抗生剤を添加した α-mem 培地を作製し 新生児マウス頭蓋骨採取骨芽細胞を

83.8 歳 (73 91 歳 ) であった 解剖体において 内果の再突出点から 足底を通り 外果の再突出点までの最短距離を計測した 同部位で 約 1cmの幅で帯状に皮膚を採取した 採取した皮膚は 長さ2.5cm 毎にパラフィン包埋し 厚さ4μmに薄切した 画像解析は オールインワン顕微鏡 BZ-9

の遺伝子の変異が JME 患者家系で報告されていますが ( 表 1) これらは現在のところ 変異の報告が一家系に留まり多くの JME 家系では変異が見られない もしくは遺伝学的な示唆のみで実際の変異は見つかっていないなど JME の原因遺伝子とはまだ確定しがたいものばかりです 一方 JME の主要な


学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 神谷綾子 論文審査担当者 主査北川昌伸副査田中真二 石川俊平 論文題目 Prognostic value of tropomyosin-related kinases A, B, and C in gastric cancer ( 論文内容の要旨 ) < 要旨

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解禁日時 :2019 年 2 月 4 日 ( 月 ) 午後 7 時 ( 日本時間 ) プレス通知資料 ( 研究成果 ) 報道関係各位 2019 年 2 月 1 日 国立大学法人東京医科歯科大学 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 IL13Rα2 が血管新生を介して悪性黒色腫 ( メラノーマ ) を

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本研究の目的は, 方形回内筋の浅頭と深頭の形態と両頭への前骨間神経の神経支配のパターンを明らかにすることである < 対象と方法 > 本研究には東京医科歯科大学解剖実習体 26 体 46 側 ( 男性 7 名, 女性 19 名, 平均年齢 76.7 歳 ) を使用した 観察には実体顕微鏡を用いた 方形

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報道発表資料 2006 年 4 月 13 日 独立行政法人理化学研究所 抗ウイルス免疫発動機構の解明 - 免疫 アレルギー制御のための新たな標的分子を発見 - ポイント 異物センサー TLR のシグナル伝達機構を解析 インターフェロン産生に必須な分子 IKK アルファ を発見 免疫 アレルギーの有効

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の活性化が背景となるヒト悪性腫瘍の治療薬開発につながる 図4 研究である 研究内容 私たちは図3に示すようなyeast two hybrid 法を用いて AKT分子に結合する細胞内分子のスクリーニングを行った この結果 これまで機能の分からなかったプロトオンコジン TCL1がAKTと結合し多量体を形

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インプラント周囲炎を惹起してから 1 ヶ月毎に 4 ヶ月間 放射線学的周囲骨レベル probing depth clinical attachment level modified gingival index を測定した 実験 2: インプラント周囲炎の進行状況の評価結紮線によってインプラント周囲


博士の学位論文審査結果の要旨

博士学位申請論文内容の要旨

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統合失調症モデルマウスを用いた解析で新たな統合失調症病態シグナルを同定-統合失調症における新たな予防法・治療法開発への手がかり-

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検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 P EDTA-2Na( 薄紫 ) 血液 7 ml RNA 検体ラベル ( 単項目オーダー時 ) ホンハ ンテスト 注 外 N60 氷 MINテイリョウ. 採取容器について 0

のと期待されます 本研究成果は 2011 年 4 月 5 日 ( 英国時間 ) に英国オンライン科学雑誌 Nature Communications で公開されます また 本研究成果は JST 戦略的創造研究推進事業チーム型研究 (CREST) の研究領域 アレルギー疾患 自己免疫疾患などの発症機構

共同研究チーム 個人情報につき 削除しております 1

の感染が阻止されるという いわゆる 二度なし現象 の原理であり 予防接種 ( ワクチン ) を行う根拠でもあります 特定の抗原を認識する記憶 B 細胞は体内を循環していますがその数は非常に少なく その中で抗原に遭遇した僅かな記憶 B 細胞が著しく増殖し 効率良く形質細胞に分化することが 大量の抗体産

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50% であり (iii) 明らかな心臓弁膜症や収縮性心膜炎を認めない (ESC 2012 ガイドライン ) とする HFrEF は (i)framingham 診断基準を満たす心不全症状や検査所見があり (ii) は EF<50% とした 対象は亀田総合病院に 年までに初回発症

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学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 小泉章子 論文審査担当者 主査下門顕太郎 副査荒井裕国 吉田雅幸 論文題目 Genetic defects in a His-Purkinje system transcription factor, IRX3, cause lethal cardiac arrhythmias ( 論文内容の要旨 ) < 要旨 > 心室細動は心臓突然死 (SCD) の最も主要な原因であり 1000 人に1 人の割合で起こるといわれている SCD は冠動脈疾患の際出現する心室細動 (VF) に伴うことが最も多いが 5-10% の症例で SCD や VF が正常心機能心で出現し 特発性心室細動 (IVF) といわれる IVF の機序はいくつかの特殊なケースを除いて殆ど知られていない 心房は上位から下位へ電気的シグナルが伝播するが 心室の電気的シグナルは心尖部から心基部へと上昇する 心室には特別な伝導ネットワークである His-Purkinje 系があり 心臓不整脈および SCD に関係している可能性が示唆されるが His-Purkinje 系と VF の機序や遺伝学的関連は知られていない Irx3 は Iroquois homeobox 転写因子の一員で 心臓では His-Purkinje 系に選択的に発現し その遺伝的欠損により正常心筋において His-Purkinje 系の機能不全を起こすことが報告されている 我々は Irx3 ノックアウトマウス (Irx3 -/- ) を用いてその不整脈原性について検証した Irx3 -/- マウスには心機能は正常であったが Irx3 -/- マウスが特に交感神経活動の高い時に高率に心室性不整脈および房室伝導障害を示すことを発見した そのメカニズムとして His-Purkinje 系におけるギャップジャンクションチャネルである Cx40 と Na チャネルである Scn5a の発現が低下していることが示された さらに IVF 患者 130 例における IRX3 遺伝子のスクリーニングを施行した その結果 2 例に IRX3 の新規遺伝子変異を認め これらの症例はいずれも運動中に VF 発作を生じていた 臨床例で認められた遺伝子変異をマウス Irx3 を用いて作成し 心筋細胞に遺伝子導入すると 野生型 Irx3 の遺伝子導入では Cx40 と Scn5a の発現が誘導されたのに対し 変異型 Irx3 では発現誘導が減弱していた 以上より IRX3/Irx3 の機能異常は His-Purkinje 系の伝導障害を来し IVF に関連することが明らかとなった < 方法 > マウスにおける in vivo および ex vivo の検討野生型 (WT) マウス Irx3 +/- Irx3 -/- マウスにおいてイソフルレン麻酔下に体表心電図および心臓超音波検査を施行した また テレメトリー送信機を植え込み 通常活動時 水泳による運動負荷 Isoproterenol 投与 心筋梗塞作成後 の種々の条件で経時的に心電図記録を行った - 1 -

また カスタムメイドの 1Fr 電極カテーテルを用いて in vivo で心臓電気生理学検査を施行し His 束心電図記録を行った さらに ex vivo の検討として 摘出心を Langendorff 還流し 電位感受性色素 (di 4-ANEPPS) および高速 CMOS カメラシステムを用いて膜電位の変化を観察する オプティカルマッピングを施行した また マウス心室組織より定量的 RT-PCR Western blotting 免疫組織染色を施行した 患者設定および突然変異の検出 IVF Brugada 症候群 (BS) 早期脱分極症候群(ERS) Short QT 症候群 (SQTs) を含む VF を経験した患者 130 名のゲノム DNA を血液サンプルより分離後 PCR 施行した後にダイレクトシークエンスを行い IRX3 の遺伝子変異の検索を行った 健常対照者として VF の既往のない 250 名からも同様に IRX3 のシークエンスを施行した In vitro 解析マウス心房細胞由来の細胞株である HL-1 細胞 および新生仔マウス心室筋細胞を使用した マウス Irx3 の野生型 (WT) および作成した変異体を pcdna3.1+ベクターあるいはアデノウィルスベクター (pad-cmv-dest) にサブクローニングして上記細胞に遺伝子導入を行った 遺伝子導入 2 日後の細胞を回収し定量的 RT-PCR を施行した < 結果 > 不整脈原性が Irx3 -/- マウスにおいて増加する Baseline の解析では Irx3 -/- マウスは WT に比して QRS 幅の有意な延長を認めた また心臓超音波検査では解剖学的異常や心機能の異常は見られなかった テレメトリー送信機をマウスに植え込んで活動時の心電図を記録したところ Irx3 -/- および Irx3 +/- では夜間に高度房室ブロックや心室性期外収縮 心室頻拍が認められた これらは WT では見られなかった この不整脈イベントは マウスの活動時間帯である夜間に多く出現したことから 交感神経亢進に関連して不整脈が出現していると思われた 次に交感神経亢進を来しうる状況下で記録を行った β 受容体刺激薬である isoproterenol(0.05mg/kg,i.p.) 投与 水泳による運動負荷では Irx3 -/- にのみ心室頻拍 房室ブロックが記録された さらに 急性期心筋梗塞モデルを作成すると 発生から 24 時間以内に Irx3 -/- マウスでのみ持続性心室頻拍が見られた Ex vivo でランゲンドルフ還流心を観察すると 心外膜における興奮伝播は WT マウスと比べ Irx3 -/- マウスで著明に遅かった Isoproterenol(10nM) を灌流液に投与すると Irx3 -/- マウスでは心拍数の上昇に伴って房室ブロックが出現し その後心室頻拍が認められた これらの表現型の分子メカニズムを探索したところ Irx3 -/- おいて左室心内膜直下での Cx40 および SCN5a の発現低下が mrna およびタンパクレベルで認められた 免疫組織染色では WT は Purkinje 線維に一致する 左室心内膜直下の層で Cx40 の発現が見られたのに対し Irx3 -/- では Cx40 の発現はほとんど見られなかった 固有心室筋に発現する Cx43 の発現には差は認められなかった IRX3 遺伝子欠損が IVF 患者において見られた次にヒト IRX3 遺伝子変異と欠致死性不整脈との関連を検討した IRX3 遺伝子のエクソンのシークエンス解析を IVF BS ERS および SQTs の発端者 130 例 コントロールとして健常人 - 2 -

250 例を対象に施行した IVF 群の 2 家系において IRX3 遺伝子に 2 種類の新規突然変異が発見された この 2 家系において 既知の Brugada 関連遺伝子として報告のある 13 遺伝子 ( SCN5A GPD1-L CACNA1C CACNB2 KCNE3 SCN1B SCN3B,KCNJ8,MOG1 HCN4,KCND3 KCNE5 SLMAP) におけるエクソンのシークエンス解析を施行したが 変異は認めなかった 家系 1 の発端者 51 歳男性は アイススケート中に VF が発症した 本症例では IRX3 遺伝子に 1262G>C の点突然変異を認め アミノ酸では 421 のアルギニンがプロリンへ置換された (R421P) 同症例は心電図では type1 の Brugada 型心電図波形を呈し 同じ遺伝子変異をもつ父親に完全房室ブロック 息子に完全右脚ブロックが見られた 一方 母親と娘において同変異は認めず 心電図所見は正常であった 家系 2 の発端者は 15 歳男性 通学中に VF を発症 心電図で Brugada 型心電図や早期再分極などの心電図所見はなかった 発端者 祖母 母において 1453C>A の点突然変異を認め 485 残基のプロリンがスレオニンに置換する変異 (P485T) を認めた 祖母は原因不明の失神の既往があるも 父 母 姉 兄には SCD や VF 失神のエピソードはなかった R421P および P485T の突然変異は健常者 250 例には認めず 既知の 1000 ゲノムデータベースにおいても報告はなかった IRX3 突然変異は Cx40 および Scn5a の発現低下を引き起こす続いて我々は臨床例で認められた IRX3 の突然変異体の機能を検討した ヒト IRX3 遺伝子とマウス Irx3 遺伝子の配列は高度に保存され 突然変異部位もマウスでも保存されていた マウス Irx3 における R426P( ヒトで R421P に相当 ) P491T( ヒトで P485T に相当 ) の変異体を作成し アデノウィルスまたは pcdna3 発現ベクターを用いて HL-1 細胞および新生児マウス心筋細胞に遺伝子導入を行い Cx40 と Scn5a の発現を Irx3 発現量で規格化して定量評価した WT Irx3 を遺伝子導入したところ Cx40 と Scn5a の発現は著明に増加した しかし R426P および P491T の変異体 Irx3 を導入したところ Cx40 と Scn5a の発現誘導は WT に比して有意に小さかった < 結論 > IVF などによる SCD は正常機能の心臓でも出現し 予測が困難である 我々は IVF 患者において 転写因子である IRX3 の遺伝的欠損を発見した IRX3 は His-Purkinje 系に特異的に発現する転写因子であり Irx3 -/- マウスは心臓の解剖学的異常や収縮力異常を伴わず心室の fast conduction の障害のみを来し 主として交感神経活動亢進時に心室頻拍が出現した 現在までに 少なくとも 13 種類の遺伝的欠損が Brugada 症候群や早期再分極症候群を含めた IVF に関連すると報告されている 今回明らかとなった IRX3/Irx3 の遺伝的欠損は His-Purkinje 系に特異的に伝導障害を来す点で 既存の報告とは異なる 心臓の転写因子の遺伝的欠損と心臓不整脈の関連は Nkx2.5 や Tbx5 が心臓奇形を伴い報告されているが IRX3/Irx3 突然変異は形態的な異常なしに電気生理学的特性にのみ影響を与えているという点が特徴的である よって IRX3 突然変異は正常機能の心臓における VF および IVF を引き起こす遺伝的危険因子といえる Irx3 -/- マウスの Scn5a Cx40 の発現低下 および心室伝導系障害による QRS 間隔の延長はすでに報告されている しかし Irx3 -/- マウスにおける不整脈原性は今回が初の報告となる Irx3 -/- マウスの不整脈は主に夜間活動時に出現し さらに β 刺激薬である isoproterenol 投与下 運動 - 3 -

中 心筋梗塞急性期において観察された 臨床例でも夜間睡眠中などではなく 日中活動時に VF が生じており マウスにおける所見と矛盾はない Irx3 機能異常による不整脈は交感神経活動亢進下でのみ出現するといえ 運動に関連する突然死を説明することができる Irx3 は Cx40 と Scn5a の発現を増加させる Irx ファミリーは通常 負の制御因子として働く そのため Irx3 の直接のターゲットが未知の負の制御因子である可能性は否定できない Cx40 Scn5a の mrna 発現が Irx3 -/- で低下することからも 発見された 2 種の IRX3/Irx3 突然変異が loss-of-function として働くことを示唆している 結論として IRX3 の遺伝的欠損およびそれに起因する His-purkinje 系の機能障害は IVF 発症に伴う著明な遺伝的リスクであると言える 一見正常に見える心臓で特に交感神経緊張状態において 心臓突然死のリスク管理や予防的治療を今後改善させることが期待される - 4 -

論文審査の要旨および担当者 報告番号甲第 4937 号小泉章子 論文審査担当者 主査下門顕太郎 副査荒井裕国 吉田雅幸 ( 論文審査の要旨 ) 1. 論文内容本論文は His-Purkinje 系に特異的に発現している転写因子 IRX3の遺伝子異常が致死性不整脈を引き起こすことを 同遺伝子の欠損マウスを用いた研究および特発性心室細動を起こした患者の遺伝子検索により明らかにしたものである 2. 論文審査 1) 研究目的の先駆性 独創性心臓突然死の主要な原因である特発性心室細動 (IVF) の機序は殆ど知られていない 心室の刺激伝導系である His-Purkinje 系と IVF の関係が示唆されているものの詳細は不明である 申請者は His-Purkinje 系に特異的に発現する転写因子 IRX3に注目し同遺伝子と IVF の関係を明らかにしようとしたもので 先駆的な研究といえる 2) 社会的意義本研究の主要な成果は以下のとおりである (1) Irx3 -/- マウスが特に交感神経活動の高い時に高率に心室性不整脈および房室伝導障害を示すことを発見し そのメカニズムが His-Purkinje 系におけるギャップジャンクションチャネルである Cx40 と Na チャネルである Scn5a の発現の低下であることを示した (2) IVF 患者 130 例における IRX3 遺伝子のスクリーニングを施行し 2 例に IRX3 の新規遺伝子変異を認めた (3) 臨床例で認められた遺伝子変異をマウス培養心筋細胞の IRX3 遺伝子に導入し IRX3 の遺伝子変異が Cx40 や Scn5a の発現低下をきたすことを確認した 基礎研究で得られた知見を実際の臨床例でも確認した研究で 学問的価値も臨床的価値も極めて高いと考える 3) 研究方法 倫理観電気生理学的手法 免疫組織学的手法から人の遺伝子解析さらには遺伝子導入まで 研究目的遂行のため必要な幅広い研究方法が用いられており 極めて正統的な研究と評価できる 研究倫理的な面でも問題がない ( 1 )

4) 考察 今後の発展性申請者は IRX3 の遺伝的欠損およびそれに起因する His-Purkinje 系の機能障害は IVF のリスクであり 本研究結果が心臓突然死のリスク管理や予防的治療法の開発に有用であると考察している 今後の臨床的な展開とともに 類似の機序の発見につながると期待される 3. 審査結果博士 ( 医学 ) の学位授与に値する論文であると判断する ( 2 )