新規遺伝子ARIAによる血管新生調節機構の解明

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図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

生物時計の安定性の秘密を解明

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別紙 < 研究の背景と経緯 > 自閉症は 全人口の約 2% が罹患する非常に頻度の高い神経発達障害です 近年 クロマチンリモデ リング因子 ( 5) である CHD8 が自閉症の原因遺伝子として同定され 大変注目を集めています ( 図 1) 本研究グループは これまでに CHD8 遺伝子変異を持つ

報道発表資料 2006 年 4 月 13 日 独立行政法人理化学研究所 抗ウイルス免疫発動機構の解明 - 免疫 アレルギー制御のための新たな標的分子を発見 - ポイント 異物センサー TLR のシグナル伝達機構を解析 インターフェロン産生に必須な分子 IKK アルファ を発見 免疫 アレルギーの有効

( 図 ) IP3 と IRBIT( アービット ) が IP3 受容体に競合して結合する様子

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Microsoft Word - 【最終】Sirt7 プレス原稿

前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

スライド 1

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図 1 マイクロ RNA の標的遺伝 への結合の仕 antimir はマイクロ RNA に対するデコイ! antimirとは マイクロRNAと相補的なオリゴヌクレオチドである マイクロRNAに対するデコイとして働くことにより 標的遺伝 とマイクロRNAの結合を競合的に阻害する このためには 標的遺伝

Microsoft Word - プレスリリース最終版


Microsoft Word - 01.doc

Microsoft Word CREST中山(確定版)

Microsoft Word - 1 糖尿病とは.doc

報道関係者各位 平成 26 年 1 月 20 日 国立大学法人筑波大学 動脈硬化の進行を促進するたんぱく質を発見 研究成果のポイント 1. 日本人の死因の第 2 位と第 4 位である心疾患 脳血管疾患のほとんどの原因は動脈硬化である 2. 酸化されたコレステロールを取り込んだマクロファージが大量に血

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 花房俊昭 宮村昌利 副査副査 教授教授 朝 日 通 雄 勝 間 田 敬 弘 副査 教授 森田大 主論文題名 Effects of Acarbose on the Acceleration of Postprandial

法医学問題「想定問答」(記者会見後:平成15年  月  日)

報道発表資料 2006 年 8 月 7 日 独立行政法人理化学研究所 国立大学法人大阪大学 栄養素 亜鉛 は免疫のシグナル - 免疫系の活性化に細胞内亜鉛濃度が関与 - ポイント 亜鉛が免疫応答を制御 亜鉛がシグナル伝達分子として作用する 免疫の新領域を開拓独立行政法人理化学研究所 ( 野依良治理事

エネルギー代謝に関する調査研究

今後の展開現在でも 自己免疫疾患の発症機構については不明な点が多くあります 今回の発見により 今後自己免疫疾患の発症機構の理解が大きく前進すると共に 今まで見過ごされてきたイントロン残存の重要性が 生体反応の様々な局面で明らかにされることが期待されます 図 1 Jmjd6 欠損型の胸腺をヌードマウス

平成24年7月x日

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Microsoft Word - (最終版)170428松坂_脂肪酸バランス.docx

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論文の内容の要旨

研究背景 糖尿病は 現在世界で4 億 2 千万人以上にものぼる患者がいますが その約 90% は 代表的な生活習慣病のひとつでもある 2 型糖尿病です 2 型糖尿病の治療薬の中でも 世界で最もよく処方されている経口投与薬メトホルミン ( 図 1) は 筋肉や脂肪組織への糖 ( グルコース ) の取り

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研究の背景と経緯 植物は 葉緑素で吸収した太陽光エネルギーを使って水から電子を奪い それを光合成に 用いている この反応の副産物として酸素が発生する しかし 光合成が地球上に誕生した 初期の段階では 水よりも電子を奪いやすい硫化水素 H2S がその電子源だったと考えられ ている 図1 現在も硫化水素

ヒト脂肪組織由来幹細胞における外因性脂肪酸結合タンパク (FABP)4 FABP 5 の影響 糖尿病 肥満の病態解明と脂肪幹細胞再生治療への可能性 ポイント 脂肪幹細胞の脂肪分化誘導に伴い FABP4( 脂肪細胞型 ) FABP5( 表皮型 ) が発現亢進し 分泌されることを確認しました トランスク

研究内容 心不全は 心臓の筋肉が障害されることにより心臓のポンプ機能が低下し 肺や全身の臓器に必要な血液量を送り出すことができない病態です 心不全患者の一部において 左心房の血圧の上昇が肺に血液を送り出す動脈 ( 肺動脈系 ) に影響し 肺動脈の収縮や肥厚 ( リモデリング ) が引き起こされ 肺高

共同研究チーム 個人情報につき 削除しております 1

ただ太っているだけではメタボリックシンドロームとは呼びません 脂肪細胞はアディポネクチンなどの善玉因子と TNF-αや IL-6 などという悪玉因子を分泌します 内臓肥満になる と 内臓の脂肪細胞から悪玉因子がたくさんでてきてしまい インスリン抵抗性につながり高血糖をもたらします さらに脂質異常症

糖鎖の新しい機能を発見:補体系をコントロールして健康な脳神経を維持する

Peroxisome Proliferator-Activated Receptor a (PPARa)アゴニストの薬理作用メカニズムの解明

のと期待されます 本研究成果は 2011 年 4 月 5 日 ( 英国時間 ) に英国オンライン科学雑誌 Nature Communications で公開されます また 本研究成果は JST 戦略的創造研究推進事業チーム型研究 (CREST) の研究領域 アレルギー疾患 自己免疫疾患などの発症機構

Microsoft Word - 【変更済】プレスリリース要旨_飯島・関谷H29_R6.docx

1. Caov-3 細胞株 A2780 細胞株においてシスプラチン単剤 シスプラチンとトポテカン併用添加での殺細胞効果を MTS assay を用い検討した 2. Caov-3 細胞株においてシスプラチンによって誘導される Akt の活性化に対し トポテカンが影響するか否かを調べるために シスプラチ

Mincle は死細胞由来の内因性リガンドを認識し 炎症応答を誘導することが報告されているが 非感染性炎症における Mincle の意義は全く不明である 最近 肥満の脂肪組織で生じる線維化により 脂肪組織の脂肪蓄積量が制限され 肝臓などの非脂肪組織に脂肪が沈着し ( 異所性脂肪蓄積 ) 全身のインス

報道発表資料 2006 年 6 月 21 日 独立行政法人理化学研究所 アレルギー反応を制御する新たなメカニズムを発見 - 謎の免疫細胞 記憶型 T 細胞 がアレルギー反応に必須 - ポイント アレルギー発症の細胞を可視化する緑色蛍光マウスの開発により解明 分化 発生等で重要なノッチ分子への情報伝達

脳組織傷害時におけるミクログリア形態変化および機能 Title変化に関する培養脳組織切片を用いた研究 ( Abstract_ 要旨 ) Author(s) 岡村, 敏行 Citation Kyoto University ( 京都大学 ) Issue Date URL http

山梨県生活習慣病実態調査の状況 1 調査目的平成 20 年 4 月に施行される医療制度改革において生活習慣病対策が一つの大きな柱となっている このため 糖尿病等生活習慣病の有病者 予備群の減少を図るために健康増進計画を見直し メタボリックシンドロームの概念を導入した 糖尿病等生活習慣病の有病者や予備

RNA Poly IC D-IPS-1 概要 自然免疫による病原体成分の認識は炎症反応の誘導や 獲得免疫の成立に重要な役割を果たす生体防御機構です 今回 私達はウイルス RNA を模倣する合成二本鎖 RNA アナログの Poly I:C を用いて 自然免疫応答メカニズムの解析を行いました その結果

報道発表資料 2007 年 4 月 30 日 独立行政法人理化学研究所 炎症反応を制御する新たなメカニズムを解明 - アレルギー 炎症性疾患の病態解明に新たな手掛かり - ポイント 免疫反応を正常に終息させる必須の分子は核内タンパク質 PDLIM2 炎症反応にかかわる転写因子を分解に導く新制御メカニ

日本の糖尿病患者数は増え続けています (%) 糖 尿 25 病 倍 890 万人 患者数増加率 万人 690 万人 1620 万人 880 万人 2050 万人 1100 万人 糖尿病の 可能性が 否定できない人 680 万人 740 万人

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2019 年 3 月 28 日放送 第 67 回日本アレルギー学会 6 シンポジウム 17-3 かゆみのメカニズムと最近のかゆみ研究の進歩 九州大学大学院皮膚科 診療講師中原真希子 はじめにかゆみは かきたいとの衝動を起こす不快な感覚と定義されます 皮膚疾患の多くはかゆみを伴い アトピー性皮膚炎にお

関係があると報告もされており 卵巣明細胞腺癌において PI3K 経路は非常に重要であると考えられる PI3K 経路が活性化すると mtor ならびに HIF-1αが活性化することが知られている HIF-1αは様々な癌種における薬理学的な標的の一つであるが 卵巣癌においても同様である そこで 本研究で

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肥満者の多くが複数の危険因子を持っている 肥満のみ約 20% いずれか 1 疾患有病約 47% 肥満のみ 糖尿病 いずれか 2 疾患有病約 28% 3 疾患すべて有病約 5% 高脂血症 高血圧症 厚生労働省保健指導における学習教材集 (H14 糖尿病実態調査の再集計 ) より

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 大道正英 髙橋優子 副査副査 教授教授 岡 田 仁 克 辻 求 副査 教授 瀧内比呂也 主論文題名 Versican G1 and G3 domains are upregulated and latent trans

糸球体で濾過されたブドウ糖の約 90% を再吸収するトランスポータである SGLT2 阻害薬は 尿糖排泄を促進し インスリン作用とは独立した血糖降下及び体重減少作用を有する これまでに ストレプトゾトシンによりインスリン分泌能を低下させた糖尿病モデルマウスで SGLT2 阻害薬の脂肪肝改善効果が報告

生理学 1章 生理学の基礎 1-1. 細胞の主要な構成成分はどれか 1 タンパク質 2 ビタミン 3 無機塩類 4 ATP 第5回 按マ指 (1279) 1-2. 細胞膜の構成成分はどれか 1 無機りん酸 2 リボ核酸 3 りん脂質 4 乳酸 第6回 鍼灸 (1734) E L 1-3. 細胞膜につ

標準的な健診・保健指導の在り方に関する検討会

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2

学位論文の要約

平成14年度研究報告

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の活性化が背景となるヒト悪性腫瘍の治療薬開発につながる 図4 研究である 研究内容 私たちは図3に示すようなyeast two hybrid 法を用いて AKT分子に結合する細胞内分子のスクリーニングを行った この結果 これまで機能の分からなかったプロトオンコジン TCL1がAKTと結合し多量体を形

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の感染が阻止されるという いわゆる 二度なし現象 の原理であり 予防接種 ( ワクチン ) を行う根拠でもあります 特定の抗原を認識する記憶 B 細胞は体内を循環していますがその数は非常に少なく その中で抗原に遭遇した僅かな記憶 B 細胞が著しく増殖し 効率良く形質細胞に分化することが 大量の抗体産

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わが国における糖尿病と合併症発症の病態と実態糖尿病では 高血糖状態が慢性的に継続するため 細小血管が障害され 腎臓 網膜 神経などの臓器に障害が起こります 糖尿病性の腎症 網膜症 神経障害の3つを 糖尿病の三大合併症といいます 糖尿病腎症は進行すると腎不全に至り 透析を余儀なくされますが 糖尿病腎症

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るが AML 細胞における Notch シグナルの正確な役割はまだわかっていない mtor シグナル伝達系も白血病細胞の増殖に関与しており Palomero らのグループが Notch と mtor のクロストークについて報告している その報告によると 活性型 Notch が HES1 の発現を誘導

平成 29 年 6 月 9 日 ニーマンピック病 C 型タンパク質の新しい機能の解明 リソソーム膜に特殊な領域を形成し 脂肪滴の取り込み 分解を促進する 名古屋大学大学院医学系研究科 ( 研究科長門松健治 ) 分子細胞学分野の辻琢磨 ( つじたくま ) 助教 藤本豊士 ( ふじもととよし ) 教授ら

第6号-2/8)最前線(大矢)

2015 年 11 月 5 日 乳酸菌発酵果汁飲料の継続摂取がアトピー性皮膚炎症状を改善 株式会社ヤクルト本社 ( 社長根岸孝成 ) では アトピー性皮膚炎患者を対象に 乳酸菌 ラクトバチルスプランタルム YIT 0132 ( 以下 乳酸菌 LP0132) を含む発酵果汁飲料 ( 以下 乳酸菌発酵果

一次サンプル採取マニュアル PM 共通 0001 Department of Clinical Laboratory, Kyoto University Hospital その他の検体検査 >> 8C. 遺伝子関連検査受託終了項目 23th May EGFR 遺伝子変異検

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研究の背景 ヒトは他の動物に比べて脳が発達していることが特徴であり, 脳の発達のおかげでヒトは特有の能力の獲得が可能になったと考えられています この脳の発達に大きく関わりがあると考えられているのが, 本研究で扱っている大脳皮質の表面に存在するシワ = 脳回 です 大脳皮質は脳の中でも高次脳機能に関わ

汎発性膿疱性乾癬のうちインターロイキン 36 受容体拮抗因子欠損症の病態の解明と治療法の開発について ポイント 厚生労働省の難治性疾患克服事業における臨床調査研究対象疾患 指定難病の 1 つである汎発性膿疱性乾癬のうち 尋常性乾癬を併発しないものはインターロイキン 36 1 受容体拮抗因子欠損症 (

PRESS RELEASE (2014/2/6) 北海道大学総務企画部広報課 札幌市北区北 8 条西 5 丁目 TEL FAX URL:

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2. 手法まず Cre 組換え酵素 ( ファージ 2 由来の遺伝子組換え酵素 ) を Emx1 という大脳皮質特異的な遺伝子のプロモーター 3 の制御下に発現させることのできる遺伝子操作マウス (Cre マウス ) を作製しました 詳細な解析により このマウスは 大脳皮質の興奮性神経特異的に 2 個

遺伝子の近傍に別の遺伝子の発現制御領域 ( エンハンサーなど ) が移動してくることによって その遺伝子の発現様式を変化させるものです ( 図 2) 融合タンパク質は比較的容易に検出できるので 前者のような二つの遺伝子組み換えの例はこれまで数多く発見されてきたのに対して 後者の場合は 広範囲のゲノム

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ルグリセロールと脂肪酸に分解され吸収される それらは腸上皮細胞に吸収されたのちに再び中性脂肪へと生合成されカイロミクロンとなる DGAT1 は腸管で脂質の再合成 吸収に関与していることから DGAT1 KO マウスで認められているフェノタイプが腸 DGAT1 欠如に由来していることが考えられる 実際

2. 看護に必要な栄養と代謝について説明できる 栄養素としての糖質 脂質 蛋白質 核酸 ビタミンなどの性質と役割 およびこれらの栄養素に関連する生命活動について具体例を挙げて説明できる 生体内では常に物質が交代していることを説明できる 代謝とは エネルギーを生み出し 生体成分を作り出す反応であること

この研究成果は 日本時間の 2018 年 5 月 15 日午後 4 時 ( 英国時間 5 月 15 月午前 8 時 ) に英国オンライン科学雑誌 elife に掲載される予定です 本成果につきまして 下記のとおり記者説明会を開催し ご説明いたします ご多忙とは存じますが 是非ご参加いただきたく ご案

糖尿病診療における早期からの厳格な血糖コントロールの重要性

Microsoft Word - 運動が自閉症様行動とシナプス変性を改善する

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1. 背景血小板上の受容体 CLEC-2 と ある種のがん細胞の表面に発現するタンパク質 ポドプラニン やマムシ毒 ロドサイチン が結合すると 血小板が活性化され 血液が凝固します ( 図 1) ポドプラニンは O- 結合型糖鎖が結合した糖タンパク質であり CLEC-2 受容体との結合にはその糖鎖が

上原記念生命科学財団研究報告集, 31 (2017)

インスリンが十分に働かない ってどういうこと 糖尿病になると インスリンが十分に働かなくなり 血糖をうまく細胞に取り込めなくなります それには 2つの仕組みがあります ( 図2 インスリンが十分に働かない ) ①インスリン分泌不足 ②インスリン抵抗性 インスリン 鍵 が不足していて 糖が細胞の イン

ストレスが高尿酸血症の発症に関与するメカニズムを解明 ポイント これまで マウス拘束ストレスモデルの解析で ストレスは内臓脂肪に慢性炎症を引き起こし インスリン抵抗性 血栓症の原因となることを示してきました マウス拘束ストレスモデルの解析を行ったところ ストレスは xanthine oxidored

Wnt3 positively and negatively regu Title differentiation of human periodonta Author(s) 吉澤, 佑世 Journal, (): - URL Rig

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記 者 発 表(予 定)

Transcription:

[PRESS RELEASE] No.KPUnews290004 2018 年 1 月 24 日神戸薬科大学企画 広報課 脂肪細胞のインスリンシグナルを調節し 糖尿病 メタボリック症候群の発症を予防 する新規分子の発見 日本人男性の約 30% 女性の約 20% は肥満に該当し 肥満はまさに国民病です 内臓脂肪の蓄積はインスリン抵抗性を引き起こし 糖尿病 メタボリック症候群の発症に繋がります 糖尿病 メタボリック症候群は脳卒中 心筋梗塞発症のリスクを数倍 10 倍程度高めることが知られています その一方で 過体重 軽度肥満の人は痩せている人や正常体重の人と比べて長生きするという報告もあり この現象は 肥満パラドックス と言われています 肥満パラドックスが本当に存在するかは議論のあるところですが 同じ肥満であっても糖尿病やメタボリック症候群を発症しない いわゆる 健康な肥満 は存在し 健康な肥満 の人は正常体重の健常人と同等の生命予後であることが報告されています しかし 何が 不健康な肥満 と 健康な肥満 の差を作り出しているのかは 未だ解明されていません 肥満に伴って脂肪組織が病的に肥大すると 脂肪細胞におけるインスリン作用が減弱します この脂肪細胞のインスリン作用不全が糖尿病 メタボリック症候群発症の引き金になると考えられていますが その詳細なメカニズムは解明されていませんでした 今回私達はFamily with sequence similarity 13, member A (Fam13a) という分子が正常の脂肪細胞におけるインスリン作用に重要な役割を果たしており 肥満時にはFam13a の発現が減少する結果 脂肪細胞のインスリン作用不全が起こり 糖尿病 メタボリック症候群が引き起こされることを発見しました 一方 脂肪細胞でFam13aを高発現させたマウスは太っても糖尿病やメタボリック症候群になりにくいことがわかりました この論文が米国科学アカデミー紀要 Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America (PNAS) の1 月 29 2 月 2 日号電子版に掲載されますので 報告いたします

今回の発見から 肥満に伴う Fam13a の減少度合いの違いが 不健康な肥満 と 健康な 肥満 の差を生んでいる可能性が考えられ Fam13a を活性化する薬の開発や遺伝子治療 は 糖尿病 メタボリック症候群の全く新しい治療法として大変期待されます 発表者 神戸薬科大学 / 臨床薬学研究室准教授池田宏二教授江本憲昭 研究成果のポイント 私たちは 正常の脂肪細胞に多く発現し 肥満時にその発現が著しく減少する新規分子 Fam13a を発見しました Fam13a はインスリンシグナル伝達を仲介する IRS1( 用語解説 1) のタンパク分解を阻害し インスリンが正常に作用するために重要な働きを有していることがわかりました Fam13a を欠失したマウスは通常食を与えて太っていない状態においても軽度のインスリン作用不足を示し 高脂肪食を与えて肥満を誘導するとより重度なインスリン抵抗性を示しました Fam13a を脂肪細胞で高発現させたマウスは耐糖能 インスリン感受性が良く維持されて太ってもメタボリック症候群になりにくいことがわかりました 研究の背景 40 歳以上の日本人男性の2 人に1 人 女性の5 人に1 人がメタボリック症候群またはその予備群と考えられ その数は合わせて2000 万人近くに上ると推定されています 糖尿病 メタボリック症候群は脳卒中 心筋梗塞になるリスクを数倍以上高めることが知られており 脳卒中と心疾患を合わせると 日本人の死亡原因の24% を占め 死因の第一位である癌 (29%) とほぼ同等です 一方 肥満しても糖 エネルギー代謝の異常を来さない 健康な肥満 が存在することも報告されていますが そのメカニズムは良くわかっていません 研究の内容 我々は肥満に伴って脂肪細胞が機能不全に陥る分子メカニズムを解明するために 正 常の脂肪細胞で多く発現し 肥満時には発現が減少する新しい分子の探索を行い 新規

遺伝子 Fam13a を発見しました Fam13a は太っていない健常マウスの脂肪組織で多く発現する一方 肥満マウスの脂肪組織ではその発現レベルが正常の10% 未満まで減少し この発現減少には小胞体ストレスや酸化ストレスが影響していることがわかりました 血糖を下げるホルモンであるインスリンがその作用を発揮するためには細胞表面にあるインスリン受容体に結合し そのシグナルを細胞内へ正常に伝達する必要があります IRS1 ( 用語解説 1) はインスリン受容体の直下でシグナル伝達を仲介する分子であり インスリンが正常に作用するために必須の分子です IRS1 はタンパク質のセリン スレオニン残基がリン酸化されると細胞内でプロテアソーム ( 用語解説 2) により分解されます 一方 PP2A( 用語解説 3) は IRS1 のタンパク質のセリン スレオニン残基からリン酸を除去し IRS1 のタンパク分解を阻害することが知られていました 我々は Fam13a が IRS1 と PP2A の両方と結合し 両者の架け橋となることで IRS1 をタンパク分解から保護する結果 インスリンシグナルを正常に維持していることを発見しました 次に我々は Fam13a を遺伝的に欠損したマウスを作成しました Fam13a がないマウスは肥満していない状態でも軽度のインスリン作用不全を示しました 高脂肪食を与えると Fam13a を欠損したマウスは野生型と同様に肥満しましたが 脂肪組織のインスリンシグナルが更に減弱し 肥満に伴う耐糖能障害 インスリン抵抗性が顕著に増悪することがわかりました 一方 脂肪細胞で Fam13a を高発現させたマウスでは脂肪組織のインスリンシグナルが増強しており 肥満に伴う耐糖能障害 インスリン抵抗性が軽減し メタボリック症候群になりにくいことがわかりました 以上 Fam13a は脂肪細胞において IRS1 の発現量を維持することでインスリンシグナルを良好に保ち 全身の糖 エネルギー代謝を正常に維持するために必須の分子であることを明らかとしました 考察と治療への応用 肥満 メタボリック症候群は先進国のみならず 一部の途上国でも増加の一途を辿っており その健康被害は甚大です 今回の研究成果から 肥満に伴って脂肪細胞中の Fam13a が減少すると脂肪細胞のインスリンシグナルが減弱し 脂肪細胞のインスリン作用不全が引き起こされることがわかりました その結果 全身のインスリン抵抗性 耐糖能障害が誘導され 糖尿病 メタボリック症候群を発症すると考えられます 脂肪細胞で Fam13a を高発現するマウスはいわゆる 健康な肥満 の特徴を示したことから肥満に伴う Fam13a の減少度合いの差が 健康な肥満 と 不健康な肥満 の違いを生み出している可能性が考えられました 脂肪細胞における Fam13a 発現 活性の増強は糖尿病 メタボリック症候群に対する全く新しい治療 予防法になると期待されます

用語解説 (1)IRS1 Insulin receptor substrate 1 (IRS1) はインスリンで刺激されたインスリン受容体に結合し チロシン残基のリン酸化によって活性化されて PI3K/Akt など下流のシグナル伝達分子の活性化を引き起こす その結果 糖の取り込みや脂肪の分解抑制などインスリン作用が発揮される (2) プロテアソームプロテアソームはタンパク質の分解を行う酵素複合体であり ユビキチンによって標識されたタンパク質を特異的に分解する プロテアソームによるタンパク分解は炎症反応や細胞分裂 低酸素に対する反応など様々な生体反応が発揮されるために重要な役割を果たしている (3)PP2A Protein phosphatase 2A(PP2A) はリン酸化されたセリン スレオニン残基からリン酸基を除去する脱リン酸化酵素の1つである 多くの細胞内シグナルはシグナル伝達物質のリン酸化の連鎖により伝達されているため PP2A は広範なシグナル伝達経路の制御に関わっている 発表雑誌 雑誌名 :Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America (2018 年 1 月 29 2 月 2 日号電子版に掲載予定 ) 論文名 : Family with sequence similarity 13, member A modulates insulin signaling in adipocytes and preserves systemic metabolic homeostasis 参照 URL Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 誌ウェブページ (http://www.pnas.org/)

<< 本件に関するお問合わせ先 >> 神戸薬科大学臨床薬学研究室准教授池田宏二電話 : 078-441-7537( 研究室直通 ) E-mail: ikedak@kobepharma-u.ac.jp 神戸薬科大学企画 広報課 電話 078-441-7505 E-mail: kikaku@kobepharma-u.ac.jp

食生活の乱れ運動不足 脂肪細胞で Fam13a が減少すると インスリン作用不全 メタボリック症候群 脂肪細胞で Fam13a が減少しないと 動脈硬化 狭心症 心筋梗塞 脳卒中 健康な肥満?? 3 ー 10 倍ほど発症しやすくなる!