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4 身体活動量カロリズム内に記憶されているデータを表計算ソフトに入力し, 身体活動量の分析を行った 身体活動量の測定結果から, 連続した 7 日間の平均, 学校に通っている平日平均, 学校が休みである土日平均について, 総エネルギー消費量, 活動エネルギー量, 歩数, エクササイズ量から分析を行った

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あった AUCtはで ± ng hr/ml で ± ng hr/ml であった 2. バイオアベイラビリティの比較およびの薬物動態パラメータにおける分散分析の結果を Table 4 に示した また 得られた AUCtおよび Cmaxについてとの対数値

ータについては Table 3 に示した 両製剤とも投与後血漿中ロスバスタチン濃度が上昇し 試験製剤で 4.7±.7 時間 標準製剤で 4.6±1. 時間に Tmaxに達した また Cmaxは試験製剤で 6.3±3.13 標準製剤で 6.8±2.49 であった AUCt は試験製剤で 62.24±2

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3. 安全性本治験において治験薬が投与された 48 例中 1 例 (14 件 ) に有害事象が認められた いずれの有害事象も治験薬との関連性は あり と判定されたが いずれも軽度 で処置の必要はなく 追跡検査で回復を確認した また 死亡 その他の重篤な有害事象が認められなか ったことから 安全性に問

(3) 摂取する上での注意事項 ( 該当するものがあれば記載 ) 機能性関与成分と医薬品との相互作用に関する情報を国立健康 栄養研究所 健康食品 有効性 安全性データベース 城西大学食品 医薬品相互作用データベース CiNii Articles で検索しました その結果 検索した範囲内では 相互作用

調査 統計 歯科心身症患者における自律神経機能の評価 - 心拍変動に対する周波数解析を用いた検討 - 1, 三輪恒幸 * 天神原亮 ) 小笠原岳洋 ) 渡辺信一郎 ) 亀井英志 ) 1) 東京歯科大学臨床検査学研究室 ) 長栄歯科クリニック 抄録目的 : 長栄歯科クリニックでは 歯科心身症が疑われる

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項目 表 1 被験者背景 全体男性女性 人数 ( 人 ) 年齢 ( 歳 ) 40.0 ± ± ± 12.2 平均値 ± 標準偏差

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宗像市国保医療課 御中

す しかし 日本での検討はいまだに少なく 比較的小規模の参加者での検討や 個別の要因との関連を報告したものが殆どでした 本研究では うつ病患者と対照者を含む 1 万人以上の日本人を対象とした大規模ウェブ調査で うつ病と体格 メタボリック症候群 生活習慣の関連について総合的に検討しました 研究の内容

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148 國田祥子 う しかし, 携帯電話の表示領域は一般的に紙媒体で読まれる文章の表示領域よりも明らかに小さい また, 國田 中條 (2010) は紙媒体としてA4に印刷したものを用いている これは, 一般的な書籍と比較すると明らかに大きい こうした表示領域の違いが, 文章の読みやすさや印象に影響を

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問題 近年, アスペルガー障害を含む自閉症スペク トラムとアレキシサイミアとの間には概念的な オーバーラップがあることが議論されている Fitzgerld & Bellgrove (2006) 福島 高須 (20) 2

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検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( ピンク ) 血液 6 ml 血清 I 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 茶色 )

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られる 糖尿病を合併した高血圧の治療の薬物治療の第一選択薬はアンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬とアンジオテンシン II 受容体拮抗薬 (ARB) である このクラスの薬剤は単なる降圧効果のみならず 様々な臓器保護作用を有しているが ACE 阻害薬や ARB のプラセボ比較試験で糖尿病の新規

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PRESS RELEASE (2014/2/6) 北海道大学総務企画部広報課 札幌市北区北 8 条西 5 丁目 TEL FAX URL:

TDM研究 Vol.26 No.2

Transcription:

高齢者の生涯スポーツ実践における身体運動と組み合わせる牛乳飲用習慣の形成が免疫応答と認知機能へ及ぼす効果 北海道大学大学院教育学研究院人間発達科学分野 : 水野眞佐夫 1. 研究の目的本研究は 運動習慣が未形成である高齢者の男女を対象として 軽強度運動である生涯スポーツ実践の構築を目指した 26 週間にわたる健康ボウリング教室において 週 1 回のリーグ戦プレー時における牛乳飲用が及ぼす安静時の自律神経機能 免疫機能 認知機能 全身疲労感 そして メンタルヘルスへの効果を明らかにすることを目的とした (1) 作業仮説 1. 毎回のボウリングプレー時における牛乳飲用は 非アミノ酸含有スポーツドリンク飲用と比較して 試技中の集中力を高める一方で試技後の全身疲労感を軽減するとともに気分変化の高揚を認めてメンタルヘルスの維持 増進を誘導する (2) 作業仮説 2. ボウリングプレー時の牛乳飲用は 非アミノ酸含有スポーツドリンク飲用と比較して 安静時における交感神経 副交感神経機能のバランスと免疫機能 並びに 認知機能へ及ぼす改善効果が高い 2. 研究方法 2.1. 研究対象者本研究は 北海道ボウリング場協会が後援する札幌市 ( 北区 白石区 ) 室蘭市 旭川市 帯広市の 5 施設において開催される高齢者を対象とした 生涯スポーツ 健康ボウリング教室 の参加者 216 名 ( 男性 69 名 女性 147 名 ) を対象とした ( 平均年齢 66 歳 55-84 歳 ) ボウリング時に摂取する補助栄養の効果は 8 名 ( 男性 4 名 女性 4 名 ) を対象として実施した ( 年齢 61-68 歳 身長 147-171 cm 体重 44-67 kg ) 本研究は 北海道大学教育学研究院倫理委員会の承認を得て 対象者に研究の目的 内容 方法等の説明を行い 文書による同意を得た上で実施した 2.2. 実験プロトコル運動習慣の形成に関連した健康づくりを含むボウリングの理論と実技から構成される健康ボウリング教室 (6 週間 ) の開催第 1 週目 (0 週 ) 連続して開催される第 1 タームとする 10 週間のリーグ戦最終日 (16 週後 ) 及び 第 2 タームとする 10 週間のリーグ戦最終日 (26 週後 ) において 安静時における自律神経活動指標の測定と認知機能の評価 及び 質問票による身体活動量と心の健 129

康度の評価を実施した また リーグ戦日前後を含む 3 日間における栄養調査を思い出し記述法を用いた調査票を回収した ボウリングプレー時の集中度と全身疲労感の主観的評価は 第 1 タームと第 2 ターム リーグ戦ゲーム前後に毎回測定を実施した 各ターム リーグ戦最終日にはプレー前の安静時において 唾液採取による免疫機能と生体ストレスマーカーの測定を実施した ボウリングプレー時における補助栄養飲用は 第 1 タームにおいて対象者を無作為に牛乳 ヨーグルト群と非アミノ酸含有スポーツドリンク群の 2 群に分け 第 2 タームにおいて飲用物を交差する 2 条件交差法を用いた 牛乳群における補助栄養はタンパク質 17.0g 糖質 24.3g 脂質 20.3g を含有する 500ml 飲料 (398kcal, よつ葉牛乳 よつ葉乳業 ) プラセボ群は糖質置換による非アミノ酸含有飲料として タンパク質 0g 糖質 33.5g 脂質 0g を含有する 500ml 飲料 (135kcal ポカリスエット 大塚製薬) をプレー開始前と試技中に数回に分割して経口摂取した 2.3. 自律神経活動指標の測定安静時における自律神経機能の評価は 加速度脈波測定器 (TAS9 パルスアナライザープラス YKC Tokyo Japan) を用いて 非利き手人差し指における心拍変動パワースペクトル (HRV) 解析を実施した 測定により得られたパワースペクトルのうち 低周波成分 (Low-Frequency(LF)0.04~0.15Hz) と高周波成分 (Hi-Frequency(HF)0.15~0.4Hz) 及び 総パワー(Total Power:TP) を求め HF を副交感神経活動 TP を総自律神経活動の評価指標とする また LF/HF 比を求めて 交感神経活動の評価基準とした 2.4. 認知機能の評価安静時における認知機能の評価は カラーワードテストを用いて実施した カラーワードテストは 文字の意味と異なる色のついた色名単語の色を発音する際に 単に色を発音するよりも反応が遅くなる現象 ( ストループ効果 ) を用いたテストであり 選択的注意能力の指標として提唱されている 本研究では 最初に 4 種類の色のカラーパッチ ( 円形 ) を 48 個配列し その色名を発音させた ( 色読み課題 ) その後続けて 色名と表記の色の異なる語を 48 語配列し その色名を発音させた ( 干渉課題 ) 学習効果を抑制するために, 3 種類の問題を用意し ランダムに組み合わせて実施した 対象者にはできるだけ早く正確に読むことを指示するとともに 実験開始前に練習用として用意した 24 個の色読み課題と 24 語の干渉課題の問題を用いて, 全ての対象者において練習を 1 回試行した 48 個 ( 語 ) から構成された色読み課題と緩衝課題の発 130

音開始から終了までにかかった時間と誤答数をそれぞれ測定した 本研究では 色読み課題と緩衝課題のそれぞれの回答時間 色読み課題の解答時間と緩衝課題の解答時間の差 ( ストループ干渉量 ) 及び 誤答数を認知機能の指標として用いた 2.5. 免疫機能と生体ストレスマーカーの評価牛乳 ヨーグルトの摂取を組み合わせた運動習慣の形成が免疫機能と生体ストレスマーカーへ及ぼす効果について サリベットを用いた唾液採取により免疫機能の指標として免疫グロブリンの一つである唾液 IgA 濃度 及び 生体ストレス指標として唾液コルチゾール濃度と唾液クロモグラニン A 濃度を測定した 各指標の測定は臨床検査機関に委託して実施した 2.6. 質問票調査身体活動量アンケート (International Physical Activity Questionnaire; IPAQ) を使いて 3 階段 ( 歩く 中等度運動 強い運動 ) による運動強度と運動時間から1 週間当たりの運動量 ( エクササイズ ) を測定した 心の健康度の指標として 日本語版 General Health Questionnaire(GHQ28) を用いることとする 日本語版 GHQ28 により 身体的症状 不安と不眠 社会的活動障害 うつ傾向 の 4 因子に対する尺度得点と総合点を計算して評価した ボウリングプレー時における全身疲労感の主観的評価は Visual Analogue Scale(VAS) 法を用いて実施した 集中度の評価は 目盛の無い 10cm の直線状において, 左端が集中が全くできない状態, 右端が ( 想定できる範囲の ) 最大の集中力を発揮できる状態とし, 集中度の水準をマークさせた 同様に全身疲労感の評価は 左端が全身疲労感が全くない状態, 右端が ( 想定できる範囲の ) 最大の全身疲労感の状態とし, 全身疲労感の状態をマークさせて長さ (cm) を測定した 2.7. 統計処理各指標の群間の経時的変化について対応のある二元配置分散分析を行い 分散分析により有意差が認められた場合は, 下位検定として Tukey 補正法を用いて差異を同定した 統計学的有意水準は 5% 未満とした 3. 結果と考察 3.1. 牛乳飲用がゲーム集中度と全身疲労感へ及ぼす効果週 1 回 10 週間のボウリング リーグ戦を 1 タームとした 20 週間に及ぶ 2 タ 131

ームのリーグ戦において 被検者を無作為に 2 群化して 2 種類の飲料の摂取順番を相殺して分析を行った その結果 ゲーム時における集中度 ( 牛乳 4.1± 3.3 cm スポーツドリンク 3.5±2.9 cm) とゲーム前後の全身疲労感の平均値の評価 ( 図 1) では 牛乳とスポーツドリンクの両条件間の差は認められなかった 一方 牛乳飲用条件では翌日に全身疲労感がすでに軽減されているのに対して スポーツ飲料飲用条件では翌日は全身疲労感が停滞し 2 日後に有意に軽減する結果を得た ( 図 1) 乳タンパク質を構成する分岐鎖アミノ酸の摂取効果として 試技中の中枢性疲労感の軽減 集中度の増加を予想したが ボウリング 3 ゲームの運動強度程度では期待された効果は誘導されなかったと考えられる 一方 3 ゲーム試技によって誘導された中枢性 及び 末梢性の疲労感は 牛乳とスポーツドリンクの摂取の比較において ゲーム当日は同程度であっても 牛乳飲用により速やかな回復をもたらすことが示唆される結果であった 3.2. 牛乳飲用が免疫機能と生体ストレスマーカーへ及ぼす効果免疫機能の指標である唾液 IgA 濃度は スポーツ飲料飲用条件においては統計学的に有意な変化は認められなかったのに対して 牛乳飲用条件においては 80% の増加を示した ( 図 2) 生体ストレスマーカーである唾液コルチゾール濃度と唾液クロモグラニン A 濃度蛋白換算値において 10 週間のリーグ戦前後では変化がなく また 両飲用条件間で有意な差は認められなかった ( 図 3) 以上の結果から 10 週間のリーグ戦ボウリング試技と組み合わせた牛乳飲用は 非アミノ酸含有スポーツドリンク飲用と比較して 免疫機能の更新を誘導することが示唆された 3.3. 牛乳飲用が認知機能 自律神経機能とメンタルヘルスへ及ぼす効果カラーワードテストを用いて認知機能の評価を行った結果 色読み課題と緩衝課題に対する回答時間 誤答数 及び 回答時間差 ( ストループ干渉量 ) において牛乳飲用条件とスポーツドリンク飲用条件との間に有意な変化は認められなかった ( 図 4) 同様に 安静時における自律神経機能( 図 5) とメンタルヘルスの評価においても 牛乳飲用条件とスポーツドリンク飲用条件との間に有意な変化は認められなかった 3.4. まとめボウリングプレー時における牛乳飲用は 非アミノ酸含有スポーツドリンク飲用と比較して 翌日と 2 日後の全身疲労感を軽減することが判明した 一方で 牛乳飲用が試技中の集中力を高めるとともに気分変化の高揚を認めてメン 132

タルヘルスの維持 増進を誘導するとした仮説を支持する結果は 本研究では得られなかった ボウリングプレー時の牛乳飲用は スポーツドリンク飲用と比較して 安静時における免疫機能の向上を誘導することが明らかとなった しかし 牛乳飲用による交感神経 副交感神経機能のバランスと認知機能へ及ぼす改善効果は 認められなかった 今後の課題として ボウリングプレー時における牛乳飲用の習慣化が日常生活における牛乳乳製品の摂取状況に変化を与えるのか また もし運動と組み合わせた牛乳乳製品の摂取以外の生活場面での牛乳乳製品の摂取量の増加が期待される時 ボウリングプレー時の全身疲労感と安静時における免疫機能の指標に及ぼす効果についての検討が重要であることが明らかとなった 133

図 1.Visual Analog Scale 法による全身疲労感の推移 ( 平均値 ±SD, n=8) ゲーム前と比較しての有意差 (p<0.05), ** ゲーム後と比較しての有意差 (p<0.01) 134

図 2. 免疫機能の指標としての唾液 IgA 濃度へ及ぼす飲用条件の効果 ( 平均値 ± SD, n=8) ** 飲用前と比較しての有意差 (p<0.01) 135

図 3. 生体ストレスマーカーとしての唾液コルチゾール濃度と唾液クロモグラニン A 濃度蛋白換算値へ及ぼす飲用条件の効果 ( 平均値 ±SD, n=8) 色読み課題干渉課題ストループ干渉 図 4. 認知機能の指標としてのカラーワードテスト ( 色読み課題と干渉課題 ) 回答時間とストループ干渉量 (2 課題の回答時間差 ) へ及ぼす飲用条件の効果 ( 平均値 ±SD, n=8) 136

図 5. 自律神経機能の指標へ及ぼす飲用条件の効果 ( 平均値 ±SD, n=8) 137