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学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 植村法子 論文審査担当者 主査横関博雄副査星治北川昌伸 論文題目 Anatomical and histological study to determine the border of sole skin ( 論文内容の要旨 ) < 要旨 > 掌蹠部は 他の部位と比べて皮膚が厚い 色素が少ないなどの性質を持つ特殊部位である このため 手指や足趾の皮膚欠損に対しては 足の内果下部や土踏まずからの植皮が広く行われている しかし 足のどの位置から足底皮膚の性状となるのか正確に定義されていない 今回われわれは 屍体足部の皮膚を用いて 表皮 真皮の厚み 掌蹠部皮膚に特異的に発現するCytokeratin 9 メラニンの発現 真皮での弾性線維および膠原線維の割合について検討した Cytokeratin 9 は 内果および外果から 内果 外果間距離の約 20% 底側の位置から発現していた 皮膚の厚み メラニンの発現 弾性線維の割合もほぼ同じ位置で変化していた よって Cytokeratin 9が発現している部分が足底皮膚であると考えた その境界は 内果もしくは外果と足底接地面のほぼ中間に位置し 皮膚の浸軟が目安となる 内果下部の皮膚は手指および足趾の背側に 土踏まずの皮膚は手指および足趾の腹側に移植するのが望ましい < 緒言 > 手指や足趾の皮膚欠損に対しては 内果下部や土踏まずからの植皮が広く行われている 手掌側へ植皮する場合の採皮部としては 土踏まずが優れていると言われているが 内果下部から採皮されることも多い Websterは 1955 年に内果下部からの採皮を報告しており その後多数の報告があるが 足のどの位置から 足底皮膚の性状を示すかについては 詳しい研究がなされていない 本研究の目的は 足底皮膚の境界について明らかにすることである 掌蹠部の皮膚の性状については 古くから研究が行われている 特徴として 主に 皮膚が厚いこと メラニン色素が少ないことが挙げられる また 掌蹠部に特異的に発現するケラチンとして Cytokeratin 9( 以下 CK9) が知られている 真皮では 膠原線維と弾性線維の太さや性状の違いが 荷重への抵抗力に影響しているとされる これらの知見から われわれは 足底皮膚の境界を決定する因子が何であるかを検討した < 方法 > 解剖実習体 12 体の右足 12 側を用いて検討を行った 男性 6 体 女性 6 体 死亡時の年齢は 平均 - 1 -

83.8 歳 (73 91 歳 ) であった 解剖体において 内果の再突出点から 足底を通り 外果の再突出点までの最短距離を計測した 同部位で 約 1cmの幅で帯状に皮膚を採取した 採取した皮膚は 長さ2.5cm 毎にパラフィン包埋し 厚さ4μmに薄切した 画像解析は オールインワン顕微鏡 BZ-9000を用いて画像を撮影し ImageJソフトを使用し行った 解析方法は Bhawanの報告に従った まず 画像をRGBカラーに分割し 目的とするパラメーターについて最もコントラストが得られるRed 画像を使用し 画素の輝度分布を分析した CK9の解析以外は 内果 外果の距離の10% 毎の位置で解析した まず 皮膚の角層 非角層 ( 基底層 顆粒層 ) 真皮の厚みの計測を行った 次に表皮の検討を行った マウスIgGモノクローナル抗体を用いて CK9の免疫組織染色を行った CK9の発現し始める位置を 内果側から計測した また メラニン色素が黒色に染まるフォンタナマッソン染色をおこなった 画像解析で 単位長さあたりのメラニン含有量 ( メラニンインデックスとする ) を計測した 最後に 真皮の検討を行った 弾性線維を黒紫色に 膠原線維を赤色に染色するエラスチカワンギーソン染色を行った 画像解析で 単位面積あたりの弾性線維および膠原線維の割合を計測した 統計学的解析は JMP 統計ソフトを用いて行った フリードマン検定による多重比較をおこなった < 結果 > 内果 外果間距離は平均 19.4 cm(17.5 20.5 cm) であった 皮膚の厚み : 角層 非角層 真皮いずれも 内果および外果から足底に向かって徐々に厚くなった 角層と非角層は 内果より0% の位置が最も薄く 角層は平均 19 ± 6.8 μm 非角層は平均 37 ± 11.4 μmであった また内果より50% の位置がもっとも厚く 角層は平均 213 ± 124.9 μm 非角層は平均 157 ± 40.2 μmであった 足底中央に相当する40% 50% 60% の位置は 内果もしくは外果側より有意に厚みが大きかった 真皮は 表皮に比べ緩やかに 足底に向かって厚くなった 内果より80% の位置が最も薄く平均 504 ± 177.7 μm 内果より 40% の位置が最も厚く平均 1239 ± 263.8 μmであった 40% の位置は 20% 80% および90% の位置より 有意に厚みが大きかった CK9の発現 :CK9は内果より平均 38.9 ± 8.5 mmの位置から発現し始め 外果より平均 42.0 ± 3.9 mmの位置で発現を認めなくなった これは 内果より約 21% 底側 外果より約 22% 底側の位置である 肉眼的には CK9 発現位置は皮膚が浸軟し白くなっている部分に相当した また 足底の接地面と内果もしくは外果の中間の位置に相当した メラニンインデックス : メラニンの発現は 個人差が多かった 平均値では 80% の位置が最も高く 10.3 ± 16.3であり 50% の位置が最も低く 0.06 ± 0.06であった 足底中央の50% と60% の位置は 内果側より有為にメラニンインデックスが小さかった 標本での変化を見ると 平均して25 ± 7.1% と75 ± 4.2% の位置で急激に変化をしていた これは CK9 発現位置よりやや足底側である 真皮の弾性線維 膠原線維の割合 : 弾性線維の割合は 内果および外果から足底に向かって徐々 - 2 -

に少なくなった 足底中央の30% 40% 50% および60% では 内果もしくは外果側より有意に低値であった 一方 膠原線維の割合は 位置による変化が少なく 有意差も認めなかった < 考察 > 掌蹠部の皮膚は 他の部位と比べて厚い 色素が少ない性質などの特殊な性質を持つ 掌蹠部や手指や足趾の皮膚欠損に対しては 足の内果下部や土踏まずからの植皮が広く行われていが 足のどの位置から足底皮膚の性状となるのかは正確に定義されていない 今回われわれは 屍体足部の皮膚を用いて 組織学的 免疫組織学的検討を行った 表皮 真皮の厚みは 内果 外果側から足底に向かって 徐々に厚くなっていた また 真皮よりも表皮の方が変化が大きかった 足底の厚い皮膚は荷重と関係すると考えられている しかし 本研究では 土踏まずは非荷重部であるが 同じ非荷重部である内果下部よりも皮膚が厚かった 土踏まずの表皮の厚さは 表皮細胞の性質によると考えている 掌蹠部皮膚に特異的に発現するCK9は 足底の境界を決める鍵となるタンパク質であると考えている CK9は 内果および外果から 内果 外果間距離の約 20% 底側の位置から発現していた その位置は 皮膚の浸軟とほぼ一致し ランドマークとしては 内果もしくは外果と足底接地面のほぼ中間が目安となる 色素が少ないことも 掌蹠部皮膚の大きな特徴である 本研究では メラニンインデックスとして評価を行ったが その値は個体差が大きかった しかし どの個体でも 内果 外果から足底に向かって急激に変化していた 急激に変化する位置は 平均して内果から25 ± 7.1% と75 ± 4.2% の位置であった これはCK9 発現位置よりやや底側である 真皮では 内果 外果側から足底に向かって 弾性線維の割合が減少していた 特に 内果から 20% と30% の間 および70% と80% の間で 急激に変化していた まとめると 皮膚の厚み メラニンの発現 弾性線維の割合はほぼ同じ位置で変化していることがわかった その位置は CK9が発現しはじめる部分と同じかやや底側であった CK9の発現している部分が足底皮膚であると考えられる 臨床的には全層採皮が行われるが 一次縫合が可能であるとの理由で 内果下部を恵皮部とすることが多い 土踏まずの皮膚を恵皮部とすると 縫縮できず二段階植皮が必要となる場合が多い これは 真皮の弾性が足底で少ないためであり 本研究結果に矛盾しない しかし 組織学的に内果下部と土踏まずは異なる性状であり 内果下部の皮膚は手指および足趾の背側に 土踏まずの皮膚は手指および足趾の腹側に移植するのが望ましい 足底恵皮部の一次縫合が困難であることの対策としては 分層採皮も行われている < 結論 > CK9の発現している範囲が足底であると考えられる その境界は 内果もしくは外果から 内果外果間距離の約 20 25% 底側の位置である 内果もしくは外果と足底接地面のほぼ中間に位置し 皮膚の浸軟が目安となる 内果下部の皮膚は手指および足趾の背側に 土踏まずの皮膚は手指および足趾の腹側に移植するのが望ましい - 3 -

論文審査の要旨および担当者 報告番号乙第 2349 号植村法子 論文審査担当者 主査横関博雄副査星治北川昌伸 ( 論文審査の要旨 ) 1 論文内容掌蹠の皮膚は他の部位の皮膚と比べて皮膚が厚い 色素がすくないなど特殊な性質を持つ皮膚である 一方 足のどの部位から足底の皮膚の正常になるのかは明らかになっていない そこで申請者は死体の足の皮膚を用いて 表皮 真皮の厚さ 掌蹠のみに発現する Cytokeratin9 メラニンの発現 真皮における弾性線維 膠原線維の割合を検討した その結果 Cytokeratin9 は内果 外果から内果 外果間距離の訳 20% 足底側の位置から発現していた 皮膚の厚さ メラニンの発現 弾性線維の割合もほぼ同じ位置であった 以上の結果から内果 外果と足底接着面のほぼ中間に境界が存在することが推測された 掌蹠の皮膚の境界部が明らかになることは植皮上非常に重要なことであり臨床的に意義のある研究と考えられた 申請者は自らの言葉で研究の背景と目的 研究方法 結果の解釈と意義 今後の課題などについての発表を行い 本研究が申請者自身の高度な研究能力とその基礎となる豊富な学識に基づき実践されたものであることが確認された 2 論文審査 1) 研究目的の先駆性 独創性掌蹠の皮膚と他の部位の境界部を明らかにしたことは臨床上非常に重要なことであり臨床的に意義のある研究と考えられ独創的で評価に値する 2) 社会的意義本研究で得られた結果は 1. 足底の皮膚が内果 外果と足底接着面のほぼ中間に境界が存在することが推測されたことは解剖学上非常に有意義である 2. 掌蹠の皮膚の境界部が明らかになることは皮膚の植皮をする上で非常に重要なことであり臨床的に意義のある研究と考えられた 3) 研究方法 倫理観この研究には死体の足の皮膚を用いて 表皮 真皮の厚さ 掌蹠のみに発現する Cytokeratin9 メラニンの発現 真皮における弾性線維 膠原線維の割合を検討した 本手法は十分な解剖学的知識と外科的技術の裏付けのもとに遂行されており 申請者の研究方法に対する知識と技術力が十分に高いことが示されると同時に 本研究が極めて周到な準備の上に行われてきたことが窺われる ( 1 )

3 審査結果以上を踏まえ 本論文は博士 ( 医学 ) の学位を申請するのに十分な価値があると認められた ( 2 )