宇宙機搭載ソフトウエア開発のアセスメント

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Transcription:

SPI-JAPAN2009 セッション :1A 現場 / 他部門との協調 No.3 宇宙機搭載ソフトウエア開発の アセスメント ( 独 ) 宇宙航空研究開発機構 情報計算工学センター (JAXA/JEDI) 古石 ゆみ < 共著 > ( 独 ) 宇宙航空研究開発機構情報 計算工学センター (JAXA/JEDI) 宮本 祐子 NEC 東芝スペースシステム株式会社 岩崎 正明 ( 株 )SRA 小嶋 勉

Agenda 1. Motivation : 背景 動機 1 宇宙機開発の特徴 2 なぜ アセスメントか? 3 今回の課題とねらい 2. Implementation : アセスメントの実施 1 実施計画 2 実施準備 ~ 文書レビューでの工夫 3 インタビューでの工夫 3. Result : 実施結果と考察 1 アセスメント実施結果 2 考察 ~アセスメントによる副次的効果 ~ 3 考察 ~ 今後の課題 ~

Agenda 1. Motivation : 背景 動機 1 宇宙機開発の特徴 2 なぜ アセスメントか? 3 今回の課題とねらい 2. Implementation : アセスメントの実施 1 実施計画 2 実施準備 ~ 文書レビューでの工夫 3 インタビューでの工夫 3. Result : 実施結果と考察 1 アセスメント実施結果 2 考察 ~アセスメントによる副次的効果 ~ 3 考察 ~ 今後の課題 ~

1. Motivation : 背景 動機 1 宇宙機システム開発の特徴 システムは 1 つだけのオーダーメイド 実環境でテストできない ソフトウエアは 機器の CPU に組込まれる 搭載ソフト 比較的小規模

1. Motivation : 背景 動機 1 宇宙機システム開発の特徴 高信頼性システム 高品質ソフトウエア <JAXA/JEDI の取り組み > アセスメント手法やモデルの開発 ソフトウエア開発標準の定義 搭載ソフトウェア品質保証プログラム標準 (JMR-009A) ソフトウエア開発標準

1. Motivation : 背景 動機 2 なぜ アセスメントか? 従来の 監査 がソフトウエアにマッチしない 監査はプロダクト中心の確認 (HW の文化 ) 監査は基本的に減点法 (= アラ探し ) SW の場合 プロセス も見るべきでは? SW 開発プロセスを扱うことの難しさ SW 開発プロセスは 組織や人の微妙な関わりで形成されていく ルールを作ることは比較的簡単? だが 現場で使えるルールなのか?( 遵守に値するのか?) プロセスが現場にどの程度定着しているのか? 定着しないとすれば それは何故か? SW 開発にフィットする方法が他にあるはず!

1. Motivation : 背景 動機 3 今回の課題とねらい 本質的な改善につなげるためのアセスメント アセスメント手法の検討 どの程度 どんなやり方で プロセスを実施しているかを確認する そのために モデルに照らし合わせた評価にしない で識別できる問題ではないはず 弱み / 強みを識別し 現場のプロセス改善につなげることが重要

Agenda 1. Motivation : 背景 動機 1 宇宙機開発の特徴 2 なぜ アセスメントか? 3 今回の課題とねらい 2. Implementation : アセスメントの実施 1 実施計画 2 実施準備 ~ 文書レビューでの工夫 3 インタビューでの工夫 3. Result : 実施結果と考察 1 アセスメント実施結果 2 考察 ~アセスメントによる副次的効果 ~ 3 考察 ~ 今後の課題 ~

2. Implementation : アセスメントの実施 1 実施計画 (1/2) アセスメント対象開発対象システム : 地球観測衛星 開発対象組織 : 開発メーカ アセスメント対象時期 : ソフトウエア開発開始直後 アセスメント実施体制 JAXA/ 開発メーカ / 支援企業混合のアセスメントチーム 支援企業からリードアセッサ 開発メーカから開発経験者をメンバーとして選出 10 人体制 ( 大人数 ) アセスメントチーム リードアセッサ ( 支援企業 ) メンバー (JAXA) ( 開発メーカ ) 受審者 ( 開発メーカ )

2. Implementation : アセスメントの実施 1 実施計画 (2/2) アセスメント実施の目的 SW 開発の準備状況を確認 弱み 強みを抽出し 改善につなげる アセスメントモデル JAXA-PAM を使用する あくまでも 窓 = 視点 切り口

2. Implementation : アセスメントの実施 2 実施準備 ~ 文書レビューでの工夫 (1/2) アセスメントチェックリストの考案と活用 PAM と適用文書の要求事項との対応づけにより PAM の理解 ( 解釈 ) を深める BP 毎にチェックポイントを設定 文書レビュー対象を予めピックアップ 開発現場を理解するための 文書レビュー 単なる エビデンス ではない ドキュメント名ではなく のような情報が記載されているドキュメント を探す 効率的なインタビューをするための 文書レビュー インタビューにおけるアセッサー側の理解度を示し しゃべりやすい環境をつくる

2. Implementation : アセスメントの実施 3 インタビューでの工夫 ドキュメントレビュー結果からインタビューポイント 現場の言葉で聞く うんざり の撲滅 繰り返しや形式的な質問を避ける 流れ を重視 ( 答えによって臨機応変に ) 会話の脱線も Welcome! 語ってもらう 気づいてもらう インタビュー後 アセスメントチーム内で振り返り インタビュー直後に良かった点 / 反省点を情報共有し 次回のインタビューに活かす

Agenda 1. Motivation : 背景 動機 1 宇宙機開発の特徴 2 なぜ アセスメントか? 3 今回の課題とねらい 2. Implementation : アセスメントの実施 1 実施計画 2 実施準備 ~ 文書レビューでの工夫 3 インタビューでの工夫 3. Result : 実施結果と考察 1 アセスメント実施結果 2 考察 ~アセスメントによる副次的効果 ~ 3 考察 ~ 今後の課題 ~

3. Result : 実施結果と考察 1 アセスメント実施結果 工夫メリットデメリット 3 社混合のアセスメントチーム アセスメントチェックリストの考案と活用 ドキュメントレビューに重点 インタビュー当日に振り返り マルチな視点からチェック ドキュメントレビューが効率的 モデル信仰の払拭 プロジェクト向けにカスタマイズされたアセスメント 記入することで理解が深まる インタビューポイントに焦点があたる インタビュー内容を消化できる アセスメントのやり方を改善していける アセッサ側に同じ部門の同僚がいると受審者が話しにくい 大人数でチーム内の情報共有に工数がかかる 情報量が多すぎる 全体を見通しにくい 工数をかけすぎ 時間がかかる クタクタ

3. Result : 実施結果と考察 2 考察 ~アセスメントによる副次的効果 ~ プロセスに対する意識向上 開発メーカ側 : インタビューを通して プロセスの意義を再認識できた JAXA 側 : アセスメントチェックリストやインタビューシートの作成を通して 現場でのプロセス実装への理解を深めることができた 何かが変わるかも? という期待 現場は 改善したい と思っている 改善のきっかけを作ってくれるかも?

3. Result : 実施結果と考察 3 考察 ~ 今後の課題 ~ 1. アセスメント手法における課題 2. アセスメントモデルの課題 やっぱりモデルは分かりにくい! そもそも日本向けではない また宇宙のソフトウエア開発には合わない JAXA-PAM の整備 明日の発表 ( セッション 4C: 金子さん ) に乞うご期待 3. 定着させるための課題 プロセス改善サイクルの <Check> 機能として アセスメントを定着させるには どんな 仕掛け が必要か? 例えば 制度化?

ご静聴ありがとうございました koishi.yumi@jaxa.jp miyamoto.yuko@jaxa.jp m-iwasaki@kd.jp.nec.com t-kojima@sra.co.jp