甲状腺と 甲状腺がんの症状や治療法について わかりやすく解説したサイトです ぜひご覧ください 甲状腺がん ( 画面はイメージです ) 本冊子の内容は 甲状腺を専門とする医師が確認しています 甲状腺がんと診断された患者さんへ 2018 年 5 月作成 GZJP.THYC.18.04.0170
目次 甲状腺とは 3 甲状腺ホルモンとは 4 甲状腺ホルモン量の調節 6 甲状腺がんとは 8 甲状腺がんの種類 9 甲状腺とは 甲状腺は のどぼとけのすぐ下にある重さ 10 ~ 20g 程度の小さな臓器で 甲状腺ホルモン というホルモンをつくっています ちょうど 蝶が羽を広げたような形をしていますが 正常であれば外からはわかりません しかし 甲状腺の病気で腫れて大きくなると 注意深く観察したときに のどぼとけの下あたりが少し膨らんでいるのがわかり 触るとしこりを感じるようになります 甲状腺がんの検査 12 甲状腺がんの治療 13 アブレーション 14 定期的な検査 15 甲状軟骨甲状腺気管鎖骨胸骨 3
甲状腺ホルモンとは 甲状腺でつくられる 甲状腺ホルモン は 主にからだの新陳代謝を調節する重要なホルモンです 甲状腺ホルモンの量が多すぎると 新陳代謝が活発になりすぎて 食欲が出てよく食べるのに体重が減り 全身に汗をかくようになります また 興奮して活発になりますが 疲れやすく 一日中 心臓がドキドキしているように感じたりします 反対に 甲状腺ホルモンの量が少なすぎると新陳代謝が低下するため 冷え症で皮膚が乾燥し 食欲が出ないのに体重が増えるようになります また だるくて無気力になり いつも眠気を感じるようになります 甲状腺ホルモンの量が多すぎると 甲状腺ホルモンの量が少なすぎると イライラする 汗をたくさんかく 寒気がする いつも眠気を感じる たくさん食べているのに痩せている 食欲が出ないのに体重が増える 4 5
甲状腺ホルモン量の調節 ししょうか 甲状腺ホルモンがつくられるためには 脳の視床下 ぶ部というところから 甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン (TRH) が出てくる必要があります のうかすいたい TRH は脳下垂体というところに働いて 甲状腺刺激ホルモン (TSH) を放出させます TSH が甲状腺に働くことで 甲状腺ホルモンがつく り出されます 甲状腺ホルモンの量は 多くても少なくてもよくありません そのため 血液中の甲状腺ホルモンの量が少ないと TRH や TSH がたくさん出 てきて その結果 甲状腺ホルモンもたくさんつくられます しかし血 ししょうか ぶや 液中の甲状腺ホルモンの量が増えてくると この情報が視床下部かすいたい下垂体に伝わり TRH や TSH の放出が抑えられ 結果的に甲状 のう脳 腺ホルモンのつくられる量も抑えられます ししょうかぶ視床下部 抑制 ししょうかぶ視床下部 TRH TRH TSH のうかすいたい脳下垂体 抑制 のうかすいたい脳下垂体 TSH 甲状腺 甲状腺 甲状腺ホルモン 甲状腺ホルモン 甲状腺ホルモンの量が増えると TRH や TSH の放出が抑えられます 6 7
甲状腺がんとは 甲状腺が腫れる病気はいくつかありますが そのなかでも ほかの 臓器に転移する性質を持つものを 甲状腺がん といいます けっせつ甲状腺がんでは 通常 しこり ( 結節 ) 以外の症状はほとんどありませ ん しかし しこりが大きくなってくると のどの違和感や痛み 飲みさ込みにくさ 近くを通る神経を圧迫することによる声のかすれ ( 嗄声 などの症状がみられることもあります せい ) 甲状腺がんにはいくつかの種類があり しこりの大きくなる速さや 転移の起こりやすさなどが異なります 甲状腺がんの種類 にゅうとうろほう甲状腺にできるがんには 大きく分けて 乳頭がん 濾胞がん ずいようみぶんか 髄様がん 未分化がん 悪性リンパ腫 の 5 種類があります それぞれに異なった特徴を持っているため 治療法などが異なります にゅうとう乳頭がん 甲状腺がんの中で最も多いがんで 甲状腺 がんの約 85% を占めます ほかのがんに比 べ 40 ~ 50 代の比較的若い女性に多く 非常にゆっくりと進行します リンパ節への転移がみられることが多いの ですが 手術によってリンパ節を含めた甲状 腺がんの切除を行えば 生命にかかわるこ とはまれです 一般的に高齢者ほど予後が悪い傾向があり ます 8 9
甲状腺がんの種類 ろほう濾胞がん ろほう甲状腺がんの約 5 ~ 10% が濾胞がんです にゅうとう乳頭がんよりもやや高齢の人に多くみられ ます 手術によってリンパ節を含めた甲状腺 み未 ぶん分 か化がん 甲状腺がんの約 1% にみられます 未熟ながん細胞のため増えるスピードや病気の進行が速く 甲状腺のまわりの臓器に広がっ がんの切除を行えば 生命にかかわること たり 肺や骨などの遠くの臓器に転移する は少ないのですが 転移がある場合には予 など きわめて悪性度が高く予後が不良な 後があまりよくありません 転移は 近くの がんです 高齢者や男性に比較的多くみら リンパ節ではなく血液の流れにのって肺や れます 骨などの遠くの臓器に起きやすい性質があり 手術に加えて 放射線を体の外から照射す ます る治療や 薬による治療を行います 甲状腺がんの約 1 ~ 2% にみられます 甲 甲状腺の細胞ががんになったものではなく ずいようがん 髄様 状腺の細胞のなかでも カルシウムの量を調節するカルシトニンと呼ばれるホルモンを 悪性リンパ腫 血液 リンパのがんである悪性リンパ腫が甲状腺にできたものです 橋本病注 ) に長い 出す細胞ががん化したものです 遺伝が関 間かかっている高齢者に多いといわれていま 係して発生するものと 遺伝には関係なく発生するものがあります ろほう頭がんや濾胞がんよりも進行が速く リ にゅうとう乳 す 急に甲状腺全体が腫れるほか 声がかさせいすれたり ( 嗄声 ) ひどい場合には呼吸困難を起こすことがあります ンパ節のほか 肺や肝臓にも転移しやすい 放射線を体の外から照射する治療や 薬に 性質があります 手術によってリンパ節を含 よる治療を行います めた甲状腺がんの切除を行います 注 ) 橋本病 : 自己免疫の異常により 甲状腺の組織が自己抗体によって破壊され 甲状腺の働きが低下する病気 10 11
甲状腺がんの検査 甲状腺がんの治療 しょくしん甲状腺がんの診察の基本は 医師が手や指で触って診断する触診で す 健康診断やほかの病気で診察を受けたときに 甲状腺の腫れが みつかることも少なくありません ただし 触診だけでは判断できないせんしきゅういんさいぼうしんことが多いため 血液検査や超音波 ( エコー ) 検査 穿刺吸引細胞診 ( 細い針で甲状腺細胞を吸い取り 調べる方法 ) を行って詳しく調べる 甲状腺がんの治療には 手術 ( 外科治療 ) 放射線治療注 ) 薬物療法 ( ホルモン療法 抗がん剤治療 ) などがあります どの治療を行うかは 甲状腺がんの種類や進行の度合い ( 病期 ) 患者さんの状態によって選びますが 多くの場合 手術が基本となります 甲状腺をどの程度取り除くかは がんの種類やがんの大きさなどによって異なります 必要があります がんであった場合には より詳しく調べるために シン チグラフィー検査や CT 検査 必要に応じて MRI 検査などを行います 手術 ( 外科治療 ) 診察 がんかどうかを調べる検査 がんについて詳しく調べる検査 薬物療法 注 ) 放射線治療 注 ) 放射線治療には 放射線を出す物質を内服して行う治療と 放射線を体の外から照射して行う治療があります 12 13
アブレーション 甲状腺をすべて摘出する手術を受けた患者さんは がんの再発や転移の危険性を少なくするために 放射性ヨウ素 ( 放射線を出すヨウ素 ) を内服して 残った甲状腺の組織を破壊する アブレーション を行うことがあります 甲状腺が甲状腺ホルモンを作るためにヨウ素を取り込む性質を持っていることを利用した方法で 甲状腺がんに特有の治療法です 甲状腺の摘出手術アブレーション 定期的な検査 治療が終わった後も 定期的に通院して体調やがんの再発 転移がないかどうかの確認を行います 甲状腺がんの多くは生命にかかわることが少ないがんですが 10 ~ 20 年たってから再発したり転移することもあるので 長期間にわたって定期的に検査を行う必要があります 手術をした後の 1 ~ 2 年間は 3ヵ月ごと 2 ~ 3 年間は半年ごとに通院するのが一般的です 甲状腺をすべて摘出した患者さんは 甲状腺ホルモン剤を服用する必要があるため その薬の処方時期にあわせた通院になります 甲状腺を取り除きます 残った甲状腺の組織を破壊します 14 15