大腸がん手術を受けられた皆様へ 大腸がんの術後経過 安心ブックレット これからの生活アドバイス これからの診察と検査予定 地域連携クリニカルパスー活用しましょう 受診記録 受診日の日記をつけましょう 群馬県のマスコット ぐんまちゃん 群馬県がん診療連携拠点病院連絡協議会 〇〇〇〇病院〇〇科
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大腸がんの術後経過 安心ブックレット目次 ページ Ⅰ ブックレットについて 17 Ⅱ 地域連携クリニカルパスについて 18 Ⅲ 生活のアドバイス術後 1 カ月まで 20 Ⅳ 生活のアドバイス全般 23 Ⅴ 大腸がん手術後の広がり 26 Ⅵ あなたのステージを知りましょう 27 Ⅶ ステージ別にこれからの検査や治療が 28 違います Ⅷ 検診のすすめ 31 15
Ⅰ ブックレットについて このブックレットは 大腸がんを手術された患者さんとその家族の方々に安心して手術後の生活を送っていただくため利用してほしい知識と活用してほしい仕組みをまとめたものです 手術後の生活で注意していただきたいことや 一人一人の状況に合わせて外来通院し定期検査を受ける必要性の有無について 大腸癌治療ガイドライン ( 大腸癌研究会編 ) に即しながら紹介してあります 地域連携クリニカルパスは がんが克服されたと考える術後 5 年目という節目に向けて 患者さんとご家族そして医療従事者と行政機関の全員が力を合わせていく新しい仕組みです 是非 活用してみましょう 皆様が満足感ある治療をお受けになり 日々心安らかにお過ごししていただけるお手伝いになれば幸いです 16
Ⅱ 地域連携クリニカルパスについて 医療の進歩とともに専門性が細分化されてきました 大腸がんの手術には高度な専門的技術が必要です ですから急性期病院 ( 大きな総合病院など ) に専門家が集い手術を担当しています けれども急性期病院では 多くの重症患者や救急患者とそしてがんで苦しむ患者さんの診療でまるで戦場となっています 医師不足 看護師不足なども拍車をかけ 最終的には外来や手術までの待ち時間の延長や短時間の診察など患者さんの不利益につながってしまう危険性があります 多くの地域で経済的にも社会的にも医療崩壊が始まっているのが現状です そこでこの問題解決の方法として 地域連携という考え方が行政の指導で急速に広がってきました 専門的な検査や手術は急性期病院で担当し 近くの開業医をかかりつけ医とし血液検査などを担当してもらうことで患者満足度を向上することがねらいです 病院の担当医とかかりつけ医 ( 主治医 ) は連絡を取り合い 同じ検 17
査や同じ時期に診察する無駄をはぶき 大腸がん診療においての複数の医療機関が医療情報を共有しながら治療計画に沿って進めることが 2 重のチェックにもなり医療安全や医療の質を高めることにつながると考えられています さらに 患者さんや家族にとって 病院の担当医に加えて近くの先生にもかかりつけ医という主治医となってもらい日々の病気に対応してもらうことは有意義と考えられます たとえば 大腸がんで手術を受けたけれども風邪薬は飲んでいいのか? 予防接種を受けていいのか? など疑問に思うことがあるでしょう このような時こそ大腸がんについての詳しい医療情報があるかかりつけ医なら安心して直ぐに診てもらえることになるのです かかりつけ医とともに健康の増進をはかることは あなた自身のメリットなのです このように地域で連携しながら診察や検査をする日程表のことを地域連携クリニカルパスといいます 18
Ⅲ 生活のアドバイス術後 1 カ月まで リハビリテーションについてクリニカルパス ( 旅行日程表のような治療における日程表のことです ) により計画的に入院治療がなされるようになり 入院期間が 10 日間前後のことが多くなりました しかし 退院しても完全に体が元通りになっているわけではありません おおむね入院期間の 2 倍の期間のリハビリテーションが必要でしょう 前半のリハビリテーションは 朝夕の散歩を自分のペースでゆっくりとしましょう そして暴飲暴食や偏食をさけて 美味しいものを少しずつ いろいろな種類のものを無理なく食べるようにしましょう 術後にこれを食べなければならない これを飲まなければならないという食事の推奨や逆に食事の制限もありません 従来どおりに健康に良いと思う食生活を送ってください 後半のリハビリテーションは積極的に外に出て体力を養いましょう お出かけの距離を少しずつ伸ばし 心身ともにリフレッシュしましょう 温泉などもよいのでは 19
ないでしょうか しかし この時期にも無理は禁物です 最終的に数カ月のちに元の体力に戻ればいいとやさし く体を鍛えることが良いでしょう 入浴について手術後は清潔にすることが肝心です 毎日必ずシャワーや入浴をしましょう 創部もこわがらずに洗い流しましょう 創などの感染について手術から 30 日以内には手術での創などが膿んだりすることがあります 手術後のサージカルサイトインフェクション (SSI) といいます 傷口はもちろんお腹の中の感染も含めて SSI と言います SSI の場所により表層 20
深部そして腔内の 3 つに分けます 表層の SSI では 創部の表面が赤くはれだし やがて膿が出てきます 多くの場合はシャワーで洗浄することで自然に治ってきます 深部もしくは腹腔内の SSI では高熱が出てくることが多く ただちに主治医に診てもらいましょう 入院や新たな治療が必要になることもあるでしょう わからないことは積極的に病院のスタッフに聞きましょう 21
Ⅳ 生活のアドバイス全般 排便習慣の変化について大腸がんの手術を受けると 大腸は短くなっています ですから理論的には下痢になりやすい状態です しかし 実際には便秘となることも下痢になることもあります 術後から数カ月の間は不安定となりがちです 術後の排便習慣の変化は 入院による環境の変化や大腸の切除に伴う腹腔内の生理的環境変化のあらわれかもしれませんがいまだ明らかなことは分かっていません ただこの時期に下剤や止痢剤をむやみに使うことはお勧めできません 体が治ろうとする自然の経過を見守ることも大切ではないでしょうか お困りの時はぜひ主治医に相談してください 直腸を切除した手術を受けられた方は 便を出そうとすると 1 度にすべてを出すことができず便が残った感じがするため 1 時間ほどのあいだに数回トイレに通うことがしばしばあります この場合は手術後約 1 年で安定化するとされ 1 日に6 回以内の排便回数であればお 22
おむね社会生活は可能で良好な排便回数であるとされ ています 腸閉塞についておなかが張って痛い 気持ちが悪く吐く おならも便もでない この 3 つの症状は典型的な腸閉塞のときに出現します 直ちに医療機関に受診してください 多くの腸閉塞は突然に起こります ただ おなかが張ってあまり食欲がないという状態が数日前に先行することもあります 調子の悪い時には無理に食べず 1 食抜くぐらいの気持ちで腸管を休めてあげましょう 早い段階で腸閉塞の芽をつみとっておくことが予防につながる可能性があります 残念ながら術後の腸閉塞の予知や予防にあまり効果的なものがありません 一方で 漢方薬に 23
より改善効果があるとする報告もあり期待されています 腸閉塞の治療には はじめに絶食にして点滴で治す保存的療法 さらに鼻から長い管を入れて腸管の中を減圧する方法が行われます そして保存的療法に抵抗する頑固な腸閉塞に対して癒着剝離術などの手術療法が選択されます 時として腹膜炎を合併し緊急手術を要することもあり激しい痛みのある時は注意が必要です 24
Ⅴ 大腸がん手術後の広がり 大腸がんを手術でとりのぞいた後も 再発がおこるこ とがあります 大腸がんのために手術を受けた患者さ ん全体の 80% で癌を取りきることができるようになって きましたが 残念ながらそのうち 20% で再発がありまし た また大腸がんの再発について 再発の 80% が手術 後 3 年以内に生じ 5 年以内に 95% が見つかっていま す このため手術後 5 年を節目と考え 5 年生存率を手 術などの治療効果の目安としています 早期がん ( が しんじゅんんの浸潤が粘膜下層まででリンパ節転移のない場合 ) では再発することは少ないため 5 年生存率は高く がん の進行度に伴い再発率は上昇し 5 年生存率は低下し ていきます ( ステージ別の 5 年生存率はステージ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ でそれぞれ約 90% 80% 60% 10% です ) で すからステージ別に科学的に検討された検査法や治療 法があり それに従い転移や再発の予防や早期発見を することが推奨されます 25
Ⅵ あなたのステージを知りましょう 深達度 ( がんが浸潤する壁の深さ ) リンパ節転移の有無 遠隔転移 ( もともとがんのあった場所から離れた場所に飛んでいくこと ) の有無によりステージが決まります 特に手術で取り出した大腸 ( 標本 ) を顕微鏡で調べた病理結果によるステージが大切なデータとなります 病理結果によるステージにより 5 年生存率や化学療法の追加など今後の治療と観察の方法が決まります あなたのステージを主治医に必ず聞きましょう ステージ 0 がんが粘膜の中にとどまっている 初期のがんでした ステージ Ⅰ がんが大腸の壁にとどまっている 比較的早いがんでした ステージ Ⅱ がんが大腸の壁 ( 固有筋層 ) の外まで浸潤している ステージ Ⅲ がんのリンパ節転移がありました ステージ Ⅳ がんによる 遠隔転移がありました 26
Ⅶ ステージ別にこれからの検査や治療が違います ステージについて主治医にあなたの状況から該当する方針を示してもらいましょう ステージ 0 観察終了です 検診を受けましょう ステージ Ⅰ 早期がんのため 観察終了です 検診を受けましょう 進行がんのため 定期観察をすすめます ステージ Ⅱ 進行がんのため 定期観察をすすめます 若年者 低分化 他臓器浸潤 穿孔 腸閉塞 によるハイリスクのため 術後化学療法をすすめます ステージ Ⅲ 術後化学療法と定期観察をすすめます ステージ Ⅳ 術後化学療法など定期観察をすすめます 27
定期観察について大腸がんの再発や転移を早期に発見することが最大の目的です 診察や血液検査といった受診することで比較的簡単にできるものから 大腸内視鏡検査 超音波検査 X 線検査 CT 検査など大きな病院で予約をしてから後日に行われる画像検査があります これらの検査を組み合わせて再発や転移の有無を調べます 最近では CT 検査の進歩が目覚ましく 6 か月ごとに胸部から骨盤までの CT 検査をすることが推奨されます また血液検査では CEA や CA19-9 といった腫瘍マーカーというものを定期的 (3-6 か月ごと ) に測定します 大腸がんにとって腫瘍マーカーは完全なものではありませんが 異常に上昇することで再発や転移の可能性を時として画像検査より早く教えてくれる可能性があります 欧米のガイドラインに比べて日本のガイドラインでは頻回の診察や検査を推奨しています それは化学療法などの進歩により 切除不能であった転移巣が切除可能となることが経験されるようになったことによるとされ 28
ています しかし どの程度の間隔で検査することが安 全で効果的であるかはいまだ不明で この分野に関す る今後の研究が望まれています 術後化学療法について大腸がんには 5FU という抗がん剤が主に使われます 5FU は がん細胞の細胞分裂を抑制することでがん細胞の増殖を抑えたり 死滅させたりする働きをします 使い方として 飲み薬や点滴による方法があります 生活のしやすさから日本では飲み薬が多く用いられています また 複数の抗がん剤を使用する多剤併用療法もあり 携帯ポンプを使って持続的に抗がん剤を注入する方法もあります ステージⅢの患者では術後に化学療法を追加するこ 29
とで 手術単独に比べて約 10 パーセントの 5 年生存率の向上が期待できるとされています しかしステージⅡ ではそれほどの効果は期待できないとされています そのため一般的にステージⅢとハイリスクとされるステージⅡの一部からの患者さんが術後の化学療法を受ける適応と考えられています 最近では結腸と直腸がんについて全国的な臨床試験が進められており これらの研究結果が待たれています Ⅷ 検診のすすめ 大腸がん術後の定期検査を病院やかかりつけで行いますが すべての病気を診ているわけではありません 成人病の予防や他の臓器のがん検診については市町村のすすめる検診や人間ドックなどをご利用ください 検診のことでわからないときは病院の担当医やかかりつけ医 ( 主治医 ) にお尋ねください 30
発行 群馬県がん診療連携拠点病院連絡協議会 改訂版制作〇〇〇〇病院〇〇科 連絡先 〇〇〇〇病院 〇〇〇 - 〇〇〇〇 群馬県〇〇市〇〇町〇〇 - 〇〇 〇〇〇 - 〇〇 - 〇〇〇〇 初版監修伊勢崎市民病院外科保田尚邦 2010 年 11 月発行本冊子の無断転載を禁じます 31