東南アジア航路 韓中航路 日韓航路等において スペース交換 航路の合理化 新航路の共同開設などについて加盟船社同士が協調することで 競争力の回復を図ることを目的としている KSP は 2017 年 11 月の第 1 弾では東南アジア航路で 3 隻 釜山 - 博多 門司航路で 4 隻の撤退 2018

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資料 3-1 国際コンテナ戦略港湾政策について 平成 30 年 11 月 6 日関税 外国為替等審議会関税分科会国土交通省港湾局

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表紙-裏表紙-低

表 1 隻数ベースのコンテナ船隊構成 船型 ( 隻数 単位 : 隻 ) Total 1,000TEU 未満 1,000 以上 3,000 未満 パナマックス (3,000 以上 ) ポストパナマックス (3,000 以上 8,000TEU 未満 ) 8,000 以上 12,000 未満 12,000

平成27年度 北陸地域国際戦略チーム 幹事会 現代版北前船航路の形成に向けて

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資料 4 H24 北陸地域国際物流戦略チーム幹事会 日本海側拠点港における取り組み状況 金沢港 七尾港 平成 25 年 3 月 8 日 石川県

東アジアへの視点

目次 1. 大阪港の概要 1 大阪港の概要 大阪港の位置 大阪港の取扱貨物量 外貿コンテナ貨物の取扱状況 大阪港の再編計画 2. 対象事業の概要 5 整備目的 事業の主な経緯 整備対象施設の概要 事後評価に至る経緯 3. 費用対効果分析 7 便益項目の抽出 需要の推計 便益計測 荷主の輸送コストの削

説明用パワーポイント

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外航コンテナの国内フィーダ輸送実績(20年度報告)

輸送量 (kg) 海上分担率 図 1 に 07~14 年の日本発米国向けトランジスタ輸送の海上 航空輸送量と海上分担 率の推移を示す 800, , , , , , , ,

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パンフレット

Microsoft Word - ①外航コンテナフィーダ輸送実績(24年度報告P1~3)★

前回の御指摘概要 1 CY カットタイムの短縮 < 諸外国の現状 > 北米 欧州等が 24 時間をルール導入 北米向け貨物の書類のカット日はタイが 3 日前 台湾 3 日前 ベトナム 48 時間 南中国 香港 48 時間 韓国 48 時間 ( 日本は書類 貨物共に 3 日前 ) 荷主からもらったデー

Ⅰ. 世界海運とわが国海運の輸送活動 1. 主要資源の対外依存度 わが国は エネルギー資源のほぼ全量を海外に依存し 衣食住の面で欠くことのでき ない多くの資源を輸入に頼っている わが国海運は こうした海外からの貿易物質の安定輸送に大きな役割を果たしている 石 炭 100% 原 油 99.6% 天然ガ

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にかかるコストをまかなえればよいという発想で安い運賃をオファーし 古紙 スクラップ 穀物 パルプなどの輸送を行っていたという話を聞かせていただいたことがある その際にはコンテナ回送の代わりに運賃を極端に低くして貨物を運んだり リーファーコンテナでも電源を入れずにドライコンテナと同じようにして運用する

平成18年8月31日

世界各地域の港湾におけるコンテナ取扱個数の推移 TEU 年から 2014 年までの 10 年間で世界の港湾におけるコンテナ取扱個数は 2.2 倍に増加 日本は 1.3 倍

11 月 01 日 阪神港国際コンテナ戦略港湾推進事務局( 準備室 ) を大阪港埠頭 公社内に設置 平成 23 年 03 月 31 日 改正港湾法の公布 平成 23 年 04 月 1 日大阪港埠頭株式会社及び神戸港埠頭株式会社が新外貿法の指定を受 け 本格的に業務開始 阪神港国際コンテナ戦略港湾推進

目次 1. 事業の概要 1 (1) 事業の目的 1 (2) 事業の経緯 5 (3) 事業の概要 6 2. 投資額及び整備期間 7 (1) 投資額 ( 事業費 ) 7 (2) コスト縮減結果 7 (3) 整備期間 7 3. 事業の必要性等 8 (1) 本整備事業による効果 8 (2) 定量的な効果 9

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目 次 1 はじめに 1 2 経営理念 1 3 基本方針 2 4 経営目標 3 5 経営環境の認識 4 6 中期的重要施策と推進策 5 2

める 40

コンテナ戦略港湾に寄港する欧州基幹航路を週3便に増やす し 阪神国際港湾株式会社が設立され 同年11月28日に国土 とともに 北米基幹航路のデイリー寄港を維持 拡大する こ 交通大臣が同社を港湾運営会社として指定した同年12月26 とを設定し 概ね10年以内に 国際コンテナ戦略港湾におい 日には同社

PowerPoint Presentation

目次 1. 事業概要 (1) 新潟港の概要 1 (2) 事業の目的 2 (3) 整備内容 3 2. 事業の効果の発現状況 (1) 便益の抽出 4 (2) 便益計測の考え方 5 (3) その他の効果 8 (4) 費用便益分析結果 9 3. 社会経済情勢の変化 事後評価結果 対応

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, 35, コ

英国においてコンテナ取扱量で世界トップ 100 に入るフェリックストゥ ロンドン サウサンプトンという主要コンテナ港湾はいずれもロンドン近郊の島南部に集中している 英国港湾のコンテナ取扱量は約 1,000 万 TEU であるが 上記 3 港で全体の約 75% を取り扱っており 重複した背後圏の需要を

平成18年8月31日

大規模震災発生に備えたサプライチェーンの構築を目指して 別紙 -3 浅見尚史 2 齋藤輝彦 1 舟川幸治 1 1 渡邉理之 1 港湾空港部港湾物流企画室 ( 新潟市中央区美咲町 1-1-1). 2 国土交通省港湾局技術企画課 ( 千代田区霞が関 2-1-3) 東日

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資料 2-2(1) 小樽港本港地区 臨港道路整備事業 再評価原案準備書説明資料 平成 21 年度北海道開発局

トラックドライバー不足が東北地域の物流に及ぼす影響の検討 資料(案)

コスト ( 比率 ) 輸送日数 航空機 10 3 RORO 船 ( 博多 ~ 上海間 ) 4 4 ( 東京 ~ 博多間の国内輸送を加算 ) コンテナ船 1 10 また 国土交通省港湾局が 5 年ごとに実施する 全国輸出入コンテナ貨物流動調査 (2013 年 11 月 ) によれば 船種別のコンテナ貨

平成20年度国家予算

韓進海運の経営破綻について 〇韓国の2 大海運企業であった韓進海運 ( 船腹量世界第 8 位 *) が 2016 年 8 月 30 日にソウル中央地方裁判所に法定管理申請 *2016 年 4 月時点し 経営破綻 〇近年 競争激化等による運賃低迷で昨年来業績が急激に悪化 今年上半期に巨額赤字を計上 韓

( 外航 ) 就航船舶運航便数船名航路寄港地積荷運航会社代理店船種 大連 - 青島 - 福山 - 高松 - 水島 ( 月 )- 広島 - 大連 - 青島 上海 - 福山 - 水島 ( 火 )- 高松 - 岩国 - 上海 上海 - 福山 - 水島 ( 金 )- 広島 - 徳山 - 上海 化学薬品石材

年 年 に設定した 世界合計 の輸出金額は 年 3 兆 2,310 億ドルから 年 6 兆 1,930 億ドル 年 14 兆 6,520 億ドルと 4.5 倍に拡大した後 年秋のリーマンショックを契機として 2009 年には前年の約 3/4 に急激に落ち込み その後 徐々に回復が進み 年 16 兆

戦略提言 四国における効率的なコンテナ貨物輸送のあり方編 平成 28 年 8 月追加 背景 (1) はじめに 平成 19 年 3 月に四国国際物流戦略チームにおいて 戦略提言 及び提言に基づく 施策の取組体系 が策定されてから 9 年が経過したが この間 以下に述べるように四国を取り巻く社会経済情勢

数値目標 事業開始前 ( 現時点 ) 平成 28 年度 (1 年目 ) 平成 29 年度 (2 年目 ) 平成 30 年度 (3 年目 ) 港湾取扱貨物量 556 万トン 4 万トン 0 万トン 20 万トン 観光入込客数 2,899.4 万人回 -9.5 万人回 1.9 万人回 1.9 万人回 7

3. 海運主権の喪失 振り回される釜山新港 韓進海運破綻後 新しい同盟である2Mが荷役費の引き下げを要求しながらターミナルを圧迫したことにより 2 埠頭 (PNC) との契約が失敗に終わったが代わりに1(HJNC) 3(PNIT) 埠頭と契約したことでBPAの積み替え費用は26 億ウォンの増加が予想

徳山下松港コンテナ定期就航状況 平成 30 年 10 月末現在 名 運航船社 民生輪船有限公司上海分公司 (MINSHENG 船舶代理店使用船舶開設年月便数寄港曜日寄港地利用岸壁主要取扱品目備考会社名問合せ先船種船名総トン数重量トン数満載喫水コンテナ積載個数 H7.6 1

日本海側拠点港の対象 < 対象港湾 > 日本海側に存在する国際拠点港湾及び重要港湾 26 港 < 対象機能 > 1. 輸送モード 国際海上コンテナ 国際フェリー 国際 RORO 船 外航クルーズ( 定点クルーズ 背後観光地クルーズ ) 国際定期旅客 2. 貨物 原木 その他の貨物 資料 : 国土交通

Microsoft Word - ①外航コンテナフィーダ輸送実績(24年度報告)★

横浜港海外代表定期報告書

( 別紙 1) 1. 取引形態図 繊維製品 インボイス輸入者 買手 B 社 ( 本邦 ) 貨物代金支払 輸出者 売手 S 社 (X 国 ) 運賃 HDS チャージ支払 船社 C 社 ( 本邦 ) 2. 取引概要 (1) 買手 ( 輸入者 )B 社 ( 以下 買手 という ) は 本邦所在の船社 C

常陸那珂港区に新たな 国際フィーダーサービスが開始されました 常陸那珂港区において 7月1日 日 に新たな国際フィーダーサービスが開始されました このサービスは 世界最大のコンテナ運航会社であるマースクラインによる国際フィーダー サービスで 現在就航している井本商運 のフィーダー船を利用し 常陸那珂

平成 28 年 10 月 31 日 各位 会社名川崎汽船株式会社代表者代表取締役社長村上英三 ( コード番号 9107 東証 名証各 1 部 福証 ) 問合せ先 IR 広報グループ長床並喜代志 (TEL ) 会社名株式会社商船三井代表者代表取締役社長池田潤一郎 ( コード番号

確実に縮小する国内の石油市場 1 我が国の石油製品需要は ピーク時の 1999 年から 3 割減少 2030 年までに更に約 2 割減少する見込み 我が国の石油精製能力と石油製品需要量の推移 我が国の石油製品需要量の見込み 石油精製能力 ( 万 BD)

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済州島特別船舶登録制度船舶投資会社

国土技術政策総合研究所 研究資料

国内コンテナ・フィーダーに関する研究

極東ロシアロシア訪問 ( 飛鳥 Ⅱ) ( 平成 22 年 9 月 1 日 ~9 月 2 日 ) 平成 22 年 3 月に締結した ロシア沿海地方との包括的な友好協定の具体的な交流の形として 秋田県知事を団長とする訪問団が約 700 名の県民とともに 大型客船 飛鳥 Ⅱ に乗って極東ロシアを訪問しまし

平成 27 年共同研究の成果について ポイント 以下 1~3 については 平成 27 年 7 月 ~11 月の動向です 1 北極海航路を横断した船舶の航行数 北極海航路( ロシア側 ) を横断した船舶は24 航行 ( 前年は31 航行 ) 前年の航行数はノルウェーの研究機関 CHNLの分析結果 2

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欧米系物流事業者との競合状況 (1) 8.0% 東アジア域内航路におけるシェア (%) 7.0% 6.0% 5.0% 4.0% 3.0% 2.0% 1.0% 0.0% 7.1% 6.5% 5.5% 4.4% 4.2% 4.0% 3.1% 2.7% 2.6% 2.5% 1.9% 1.2% 1.0% 日

日本 中国間コンテナ荷動きの動向について 掲載誌 掲載年月 : 日刊 CARGO1206 日本海事センター企画研究部研究員松田琢磨 はじめに ( 公財 ) 日本海事センターでは 日本 中国間コンテナ荷動き ( 以下日中航路 ) のトンベース荷動き量を算出し 11 年 5 月から毎月発表している 今回

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目次 1. 指定引取場所の適正配置原則について 2.A B 両グループの指定引取場所の現状について 3. 指定引取場所の A B 共有化のメリットについて 4. 指定引取場所の A B 共有化に伴う統合のメリットについて 5. 指定引取場所の A B 共有化 統合について留意すべき点 6. 離島にお

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[ 参考 ] 地震以降の神戸発着の旅客 フェリーの輸送実績では 既存航路について 高速船やフェリーの発着港シフト 神戸抜港などがあった [ 神戸港復興記録 ~ 阪神 淡路大震災を乗り越えて ~ 神戸市港湾整備局 (1997/5),p.65] 04) 海外では 船会社が神戸港向け ( 神戸港経由を含む

企業物流短期動向調査 ( 日通総研短観 ) 調査結果 ( 抜粋 ) (2008 年 9 月調査 ) 2008 年 10 月 株式会社日通総合研究所 ホームページはこちら

企業物流短期動向調査 ( 日通総研短観 ) 調査結果 ( 抜粋 ) (2008 年 12 月調査 ) 2009 年 1 月 株式会社日通総合研究所 ホームページはこちら

沖縄を中心とした我が国のクルーズ市場は今後も成長していくと考えて差し支えないだろ う 日本におけるクルーズ船 未利用者 の選好クルーズ市場のさらなる活性化のためには 新規乗客の開拓が必要である そこで クルーズ船の潜在需要である未利用者がクルーズ船に何を求めているのか分析した結果を紹介したい クルー

PowerPoint プレゼンテーション

秋田沿海州航路就航促進支援事業補助金交付要綱

2015 年 1 月 1 日時点 2015 年 4 月 1 日時点 China Shipping (CSCL)/UASC VSA CKYHE 9.4% grouping (Cosco/K Line/Yangming /Hanjin/Evergr een) 25.2% Other services 0

175 第 56 回土木計画学研究発表会 講演集 国際フェリー RORO 船輸送に関わる動向分析と犠牲量モデル構築 渡部富博 1 佐々木友子 2 井山繁 3 1 正会員京都大学経営管理大学院港湾物流高度化講座特定教授 ( 前国土技術政策総合研究所港湾研究部長 ) ( 京都市左京区吉

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四国地方 主要8行の預金・貸出金等分析(2017年第2四半期(中間期)決算)

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平成18年8月31日

このときにも多くの滞船が起こるなど物流に大きな混乱が生じた 一転して前回 08 年の改定交渉では 米国の景気低迷で荷動きが減少し始めていたこともあり 物流の混乱はほとんどみられなかった なお 本件はコンテナターミナルにおける労使協約改定交渉であり 西岸の穀物ターミナルの協約改定についても ILWU

研究成果報告書

第 70 回経営 経済動向調査 公益社団法人関西経済連合会 大阪商工会議所 < 目次 > 1. 国内景気 2 2. 自社業況総合判断 3 3. 自社業況個別判断 4 4. 現在の製 商品およびサービスの販売価格について 8 参考 (BSI 値の推移 ) 11 参考 ( 国内景気判断と自社業況判断の推

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< 業種別 > 2 製造業主要判断 の推移 製造業 29/ /3 見込 /6 予想 < 製造業 > 当期 は 8.0( 前期比 -1.7) 当期 は 9.1( 同 -8.9) 当期 は 5

別紙 Ⅰ 対象事業の概要環境影響評価法 ( 平成 9 年法律第 81 号 以下 法 という ) 第 15 条に基づき 事業者である国土交通省関東地方整備局及び横浜市から 平成 30 年 6 月 22 日に送付のあった環境影響評価準備書 ( 以下 準備書 という ) の概要は次のとおりである 1 事業

< 海外事情調査 > フィリピン国機動性向上のための RRTS 開発実行可能性調査を終えて 2006 年 8 月より 2007 年 11 月に至る 1 年 4 ヶ月の間 ( 独 ) 国際協力機構開発調査 フィリピン国機動性向上のための RRTS 開発実行可能性調査 ( 団長 : 岡田靖夫顧問 ) が

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Transcription:

韓国海運事業者の再編とわが国地方港湾への影響 掲載誌 掲載年月 : 日刊 CARGO 201806 日本海事センター企画研究部 専門調査員渡邊壽大 はじめに韓国では 韓国海運連合 (KSP) が 2017 年 8 月に結成され 加盟船社によって航路の合理化が行われている KSP が最も優先的に合理化を進めているのは 韓国 ベトナム間など東南アジアとを結ぶ航路であるが 今後は日韓航路にも影響が出てくる可能性が高いとされる 釜山港湾公社によると 日本 - 釜山間のコンテナ輸送量 ( 往復航合計 ) は 17 年実績で 294.2 万 TEU( 空コンテナ含む ) これは日本全体の外貿コンテナ輸送量の 15% 以上の輸送量 (16 年実績は 16.2%) を占める ( グラフ参照 ) これは 日本企業によって釜山新港背後団地への投資が積極的に行われたことも影響しており 背後団地には現在外国企業 90 社が進出しているが うち 50 社が日本企業となっている KSP 加盟船社のほとんどが加盟している韓国近海運送協議会 (KNFC) 加盟船社が占める日韓航路での輸送シェアは 2017 年実績で 65% と高い そのため 日韓航路において韓国船社による航路の統合が行われると 船社間競争の抑制による海上運賃上昇が予想される 特に日韓航路を利用しているのは 5 大港と博多港を除いた地方港湾 ( 日本 - 釜山間の 68% が地方港での取り扱い ) である 日韓航路の地方港湾発着貨物の 60% 以上は釜山でトランシップされており 日韓航路が地域経済における重要な産業基盤になっており 日韓航路の海上運賃上昇は地域の産業立地にも大きな影響を与えると考えられる そこで 著者は KSP を中心とした韓国の海運産業において 今後どのような動きがあるのかを韓国船社等関係者へのインタビュー調査を行った 本稿ではその結果を整理し KSP に関する現状を述べるとともに 日本の地方港湾に与えうる影響と地方港湾が対処すべき課題についてについて検討する KSP 設立の経緯とこれまでの合理化の動向東アジアのコンテナ海運会社は転換期に直面しており 日本では世界第 6 位のシェアを持つオーシャン ネットワーク エクスプレス (ONE) が 2018 年 4 月からサービスを開始し 中国では COSCO が OOCL を買収して世界第 3 位の地位を得ようとしている その一方で 2016 年には 当時世界第 7 位の規模を誇っていた韓進海運が破産し 海運業の国際競争力が大きく低下した韓国では 隣国でのこのような動きに対する危惧 さらには韓進海運の二の舞を避けるため 政府主導のもと 韓国船社 14 社 ( 表を参照 ) による KSP が 2017 年 8 月に結成された 各種報道によると KSP は韓国船社同士での競争が過熱化している

東南アジア航路 韓中航路 日韓航路等において スペース交換 航路の合理化 新航路の共同開設などについて加盟船社同士が協調することで 競争力の回復を図ることを目的としている KSP は 2017 年 11 月の第 1 弾では東南アジア航路で 3 隻 釜山 - 博多 門司航路で 4 隻の撤退 2018 年 1 月の第 2 弾では韓国 -インドネシア航路 5 航路のうち 1 航路の休止と 4 隻の撤退 同年 3 月の第 3 弾では韓国 -ベトナムハイフォン間の 13 航路のうち 1 航路の休止と 2 隻の撤退をこれまでに発表している インタビュー調査結果 航路集約の状況今回インタビューを行った複数の韓国船社からは 航路合理化の優先順位が東南アジア航路 韓中航路 日韓航路の順番であること 現在は東南アジア航路の合理化がテーマとなっていること 日韓航路については今のところ主な合理化の対象となっていないということについて共通の回答を得た 東南アジア航路については 一部でマイナス運賃が発生しているケースがあり KSP 加盟船社としては競争の激化を和らげ 供給を減らすことで一定の運賃水準を確保したいという思いが強かったようである 日韓航路については KSP 結成以前に他社との共同運航を各社が進めてきた背景があるため 合理化の優先順位も低いということであった しかし 船社によっては北海道や日本海の航路で合理化を検討しているほか 現在 日韓航路のサービスを提供している韓国船社の数が多すぎると考えている関係者もいた 政府の支援策と船舶のリプレイス韓国紙の報道によると 韓国政府は海運会社に 3 兆ウォン ( 約 3,000 億円 ) 以上の政策資金を融資して船を購入することにし 大手造船 3 社が毎年 3,000 人以上を採用する内容の 造船 海運発展案 を発表したとのことである この政策に関連して 今後船舶のリプレイスが行われる予定があるかどうかについて尋ねたところ 今回インタビューをした船社では当該政策に関連した船舶の新規購入やリプレイスは予定していないということであった ある船社はこの政府発表について 金額が過大であるし 返済の必要なお金であることから 現在の韓国船社にとって受け取ったところで有効に使えるかどうかという問題があるのではないかということであった 他方 日韓航路の投入船については 上記の政策とは関係なく 各社とも船舶の大型化を検討しており 700~1,000TEU へ順次リプレイスを行うということで 大型化に伴って他社との共同運航や 頻度を減らすことは考えられるということであった KSP の今後の展開 KSP の今後の動向について尋ねたところ 各社とも今後についてはわからないというこ とであった 韓中航路については参入している中国船社との関係もありそう簡単に進まな

いと考えられているほか 日韓航路についても約 60 港でのサービスがあり サービスの集約は容易ではないという またインタビューを行った船社によると KSP は船会社同士の仲介をすることが主たる目的であり 海運同盟のように共通して運賃を決めたり アライアンスのようにスロットを共有しているわけでもなく 加盟各社の独立性は非常に強いという また KSP の事務局長は公務員であるが 民間企業である各船社に対して KSP がどこまで影響を及ぼせるのかについて疑問を呈する関係者もいた とはいえ 現在韓国を経由する新規航路については KSP での合議で了承を得る必要があり 他社の反対があれば実現が難しく サービス拡充の足かせと考え 外国船社と組んで韓国を経由しない航路でのサービスの拡充を検討している船社もあった なお KSP のこのようなスキームは 需給調整に当たる可能性がある点にも注意が必要である KSP は競争制限を通じた需給調整を想定したスキームであり 競争法の観点からは微妙な存在である 特に韓国船社による輸送シェアが高い日韓航路で競争を制限すれば 需給調整機能が働きやすい 各国の競争法当局が KSP に対してどのような対応を取るかは注視する必要がある 地方港の対応策インタビューでは KSP の今後の動向については不透明であるが 船舶の大型化 またはそれに伴う共同運航の進行よる寄港頻度の低下は避けられず 将来的に日韓航路における地方港の選択は進むと考えられるとの回答が大半であった コンテナ輸送はコモディティ化が進行し どの船社であってもサービスは基本的に同質であるが 韓国船社間の競争がさらに抑制されることで運賃上昇を招く可能性が高い さらに 大型化に伴う寄港頻度の低下は荷主にとって利便性の低下を意味する このような状況の中で 地方港湾が対応すべき課題について検討してみたい 安定して一定の貨物を確保できる港湾であれば KSP の活動を通じた韓国船社による競争抑制で抜港や寄港頻度が減る場合であっても 韓国以外の船社の寄港や 釜山を経由しない新規航路の開設を目指すことができる そのため 地方港にとっては貨物量を確保することが輸送コストの面でも 利便性の面においても何より重要である 貨物量を確保するために地方港湾が行っているインセンティブ助成について インタビューを実施した船社からは 1 港湾によって輸出と輸入のバランスが大きく異なることから リポジショニングに関するインセンティブ助成 2 港湾荷役事業者の人手不足によってその日のうちに揚げ降ろしが終わらないことがあるため 港湾荷役事業者へのインセンティブ助成 3 港湾によっては背後圏が広いこともあるため トラック事業者へのインセンティブ助成など 多様な助成内容を望む声があった このように船社や荷主には 地方港湾発

着の物流を確保するためにインセンティブ助成を重視する声があるが 本稿では各港湾の 事情に基づいた政策実施の重要性について考えてみたい 船の大型化は避けられないことはすでに述べたが ある船社では日韓航路で 2022 年までに全船 1,000TEU 以上の船にリプレイスする予定があるとしている そういった船社のサービスは一部の水深の浅い港へは寄港できなくなるため追加的な港湾投資や 港湾によっては より深いバースへ配置換えすることで韓国船社の船舶を寄港させる必要が出てくる 他方で 今回インタビューを行ったある韓国船社は 1,000TEU という規模は日韓航路に投入するには大きすぎると考えており 寄港 1 回ごとの揚げ降ろしで実入りコンテナ 100 本あれば航路として維持できるということであった とはいえ この基準を満たせない場合は 港湾管理者から船社へのインセンティブ助成によって寄港したとしても 貨物量がないとサービスを停止するほかないほか 運航スケジュールに遅れが出ている場合 そのような港湾が抜港の候補になってしまう 実際抜港は頻繁に行われており 貨物の集まらない港では 最大でスケジュールが 3 週間遅れることもあるという 貨物を確保するためには 背後圏地域を知り 地域における荷主特性 近隣港湾との競争 地域別の将来人口動態等を考慮したうえで 今後の港湾需要がどこに どれだけあるのかを正確に把握するエリアマーケティングの精緻化が求められる そのような分析に基づいて 将来確保できる可能性のある貨物を見極め 港湾整備を検討することで 地域によっては 1,000TEU の船舶に対応する追加的な港湾投資ではなく 安定的な貨物確保のために背後圏を拡大する道路整備を行うことが 地域産業の維持にとってメリットが大きい可能性もある そうすればおのずとポートセールスのあり方も変わってくる エリアマーケティングは港湾管理者の多くが実施しているが より現実味のあるエリアマーケティングと それに沿った港湾政策の実施について期待したい

グラフ 日本 - 釜山間のコンテナ貨物流動の推移 ( 単位 :1,000TEU) 350 300 250 200 150 100 50 0 54.6 24.7 79.3 73.7 11.1 84.9 164.1 9.80% 平成 29 年 5 月 46.2 25.7 72 68.9 7.4 76.3 148.2 11.10% 平成 29 年 4 月 50.2 25.5 75.6 66.3 8.7 75 150.7 6.30% ( 日刊 CARGO および釜山港湾公社のデータから筆者作成 ) 表 KSP 加盟船社 現代商船南星海運東進商船汎洲海運天敬海運パンオーシャン興亜海運 高麗海運東暎海運斗宇海運長錦商船太榮商船韓星海運 SM 商船