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1 994 年 3 月 / 9 月 3 0 日 図 2 正常の ACLの MR 像 ( SE TR2000fT E20. 斜矢 状断像 ) 正常の ACLは低信号の構造で走行はほぼ直線 的である ( 矢印 ) 図 1 前十字靭帯付着部の解剖 ( 文献 1 より引用 ) A: 大腿骨外頼を頼間寓よりみた図 前十字靭帯の付着部 ( 斜線で示す ) は半月形である s: 鹿骨高原を大腿骨側から見た図 前十字靭帯の付着部 ( 斜線で示す ) は前後に細長い カーやバスケットボールなどの身体の接触 衝突を伴うスポーツの頻度が高くなる ACLtearのメカニズムの内 最も多いのは外反ストレスと腔骨内旋で 過伸展がそれに次いで多い 2) 過進展の場合その 70% は ACLの単独損傷である 内反ストレスと腔骨内旋は最も少ないが セゴン骨折 ( Segond fracture ) と呼ばれる腔骨外側部の剥離骨折を伴う 問診や関節液の採取もさることながら 徒手検査がACL tearの診断上重要な役割を果しており 放射線科医もその名前程度は知っておく必要がある 徒手検査の正診率は全身麻酔下では 100% であるが 麻酔なしでは 85% といわれている 3) testはもっとも信頼性の高い徒手検査といわれており 膝 30 度屈曲位で大腿骨を固定し 腔骨を前方へ引き出す手技である 4 ) 前方引きだしテストは膝 90 度屈曲位で大腿骨を固定し 腔骨を前方へ引き出す 新鮮例では痛みの為行なえないという欠点が ある Pivot shift 現象は腔骨を内旋し 外反ストレス下での外側腔骨関節面の大腿骨に対する前方亜脱臼あるいは整復を指し この現象を発現させる為の手技が多く報告されているの Jerk 検査 ALRI 検査 S locum 検査 N (Nak 司 jima) testなど様々なバリエーシヨンがある tearの MRI 1) 撮像法我々は次の撮像法を最低限の検査としている プロトン密度 τ2 強調像 (SE, 叩 2 0120,80, 斜矢状断 ) T2* 強調像 (SE,τ'R5 1120orGRE,TR40o. バ 'E 16,FA15, 前額断 ) 1 4-16αn スライス厚 :5mm ギャップ : 1mm, マトリックス : 斜矢状断は大腿骨外頼の内側面に平行な断面で 通常内外頼の後面を結んだ線に直行する面に対して 10-1 5 度の角度をなす ACL は4-5mm 厚スライスでは l スライスでしかみえない 矢状断像でよくみえないときは前額断あるいは横断像をみるか 前額断 f 象をもとにして矢状断像を切る 3DFT をおこなってもよ し 写真をとる時は必ず拡大することが大切である またウインドウ巾がひろくウインドウレベルの低い

146 (1 4 ) 断層映像研究会雑誌第 20 巻第 2 号 第 21 巻第 I 号合併号 図 4 腔骨の前方移動により後十字靭帯の bucklingがみられる ( 矢印 ) 図 3 前十字靭帯断裂急性期 SE 法, TR2000 斤 E20, SE 法, TR2000 汀 E80, 斜矢状断像 ) ( 上 ) A: 前十字靭帯の大腿骨側は不連続で シグ ナルの上昇もみられる ( 矢印 ) ( 下 ) B: 靭帯断裂部に一致して液体の貯留がみら れる ( 矢印 ) ( すなわち白っぽしつ写真のほうが診断しやすい 2) 正常の ACL 正常の AC L はスピンエコー法では低信号の帯状の 構造だが l 本のひもではなく複数のコラーゲン線維 の束のあつまりである ( 図 2 ) 特に腔骨付着部付近 では急対 t 束が前後に広がるのでよく観察できる ACLt 回同 直接所見 ACL 句釘の直接所見は靭帯の連続性の消失 走行異 常 信号強度の上昇であるめ ( 図 3A, B ) 斜矢状断のみで診断できることもあるが 自信がも てない時は 前額断や横断 f 象も参考にするとよし 受傷後 1 ヶ月までを急性期と呼んでいるが この時期 には断裂部に出血と浮腫による腫癖が形成される これはプロトン密度強調像では中信号 T2 強調像で 高信号となる 外頼の partial ave raging を AC L tear による断裂部の腫癌形成と間違えることがある ただし前者は T2 強調像で低信号である ぶ 断裂後 1 ヶ月以上経過すると慢性期の ACL tear と呼 浮腫や出血は消退しているが 靭帯の走行が直 線的でなく後方に向って凸になったり 靭帯の一部 ( 多くは腔骨 1~ IJ) だけが同定できるなどの所見がみら える ACLt, 伺同 間接所見 正常の後十字靭帯 ( PCL ) は後方に向って凸のゆ るやかな弧を描くが AC L が断裂すると腔骨が大腿 骨に対して前方に移動するために PC L が折れ曲がっ たようになることがある これを PCL の buckling と呼 んでいる 3) ( 図 4) 0 ACL が intact の場合で もおこりう るので せない T1 この所見だけを根拠に ACLtear の診断はくだ 外傷によって生ずる骨髄内の地図状の異常信号で プロトン密度強調像で低信号 T2 強調像で高信 号である η えられている ある 2) 骨髄内の出血 浮腫を反映するものと考 受傷のメカニズムにより好発部位が 外反ストレスによる場合は大腿骨外頼の中 1 13 腔骨 外側頼の後ろ 1 13 にみられ ( 図 5 ) 過伸展による場合 は大腿骨遠位端 腔骨近位端の前方に生ずる ( 図 6 )

1994 年 3 月 /9 月 30 日 図 5 前十字靭帯損傷に合併した外反ストレスによる bone ( SE 法, TR2000/80, 斜矢状断像 ) 大腿骨外頼中 1/3 座骨外側頼中 1/3 に高信号領域がみられる ( 矢印 ) 図 6 前十字靭帯損傷に合併した過伸展による bone ( SE 法, TR2000/80, 斜矢状断像 ) 座骨近位端の前 1/3tこ高信号領域がみられる ( 矢印 ) bruiseがないからといって ACL tear を否定することはできないが それがあった時は ACL tearのある可能性はかなり高いのでac Lの走行 連続性に充分注意する必要がある 8) 4. 合併損傷 ACL tearの 70% に合併損傷がみられるお 半月板断裂先にも述べたように 半月板は腔骨の前方亜脱臼の二次的抑制機構となっているので ACL に断裂が 図 7 前十字靭帯断裂に合併した内側半月板のパケツ柄断裂 ( 上 ) SE 法 TR2000/20, 斜矢状断 ( 下 ) SE 法 TR500/15, 前額断像斜矢状断像 ( A ) では頼間寓に偏位した半月板の一部が後十字靭帯 ( ム ) と同一のスライスで見られる ( 矢印 ) この為後十字靭帯が二つあるように見える 前額断では頼間寓に偏位した半月板の一部 ( 矢印 ) があきらかで 半月板外側部 ( ム ) は正常よりも小さい おこると 腔骨が前方に亜脱臼する時に半月板は腔骨 大腿骨の頼部の聞に挟まれ その結果生ずる勢断力によって半月板後角に断裂を生ずる 半月板断裂の基準は関節面に達する線状の異常信号であるが 関節面に達しているか否かの判断が容易でないこともある ACL tear に合併する半月板損傷は外傷性なので縦断裂のことが多い Acute tearには外側半月板の後角の断裂が合併しやすいのに

断層映像研究会雑誌 第 20 巻第 2 号第 21 巻第 l 号合併号 対し chro nic tear で は内側半月板の断裂 特に バケツ柄断裂が多い バケツ柄断裂は半月の長軸に 沿った縦断裂で頼間簡寄りの半月板片が頼問簡に向 って偏位すると丁度バケツとバケツの柄のようにみ えることからこの名がある ととは ACL tear に合併する ( 図 7A, B ) 内側側副靭帯断裂 ( MCLtear ) バケツ柄断裂のほとん tear は外反ストレスによることが多いので 側側副靭帯断裂の合併頻度は高い 前十字靭帯断裂 半月板損傷 内側側副靭帯損傷の合併を不幸な三徴 ( 凶 1happy 出 ad ) あるいは 0' s 出 ad と呼んで いる MR 所見は基本的には ACL tear と同様で 靭帯 の不連続化 信号強度の上昇がみられる セゴン ( S 句 ond ) 骨折 ( 陥,ter ョ J 腔骨の外側関節包付着部の剥離骨折のことで 較的稀な骨折である 原因はスキー バスケットボ ールなどのスポーツ外傷で 受 f 易機転は内旋 内反 ストレスといわれている 内 比 前十字靭帯の断裂を高率 ( 75-100% ) に合併する 9, 10) 半月板損傷や他の膝靭帯 損傷の合併も稀ではない ACL 再建術後の MRI AC L の再建材料は様々で 自家組織 ( 膝蓋腿 腸 腔靭帝 半腿様筋健 薄筋腫 ) 人工材料 ( Dacron, Gore-tex, Le 副会 Keio ) 等が使われている 再建材料の 種類が多いのはいずれも一長一短でこれぞといった 材料のないことの表れであるが そのなかでいわゆ る go ld standard とされているのが 腿蓋腿中 1 /3 を使 った再建術である 米国の報告では 膝蓋腿で靭帯再建をおこなった 場合 再建靭帯は MRI で低信号帯となるとされてい る l り Howe ll らは再建靭帯の遠位 2/3 に信号強度の上昇が みられた例を報告し これは腔骨側の骨孔の位置が 理想的な位置よりも前方にあるので頼間簡の天井に 靭帯が当たる ( irnpingement) 為と述べている 1 2) 我々の経験 ( 膝蓋腿 ) では 全く低信号帯を認め ない例は術後成績が不良なことが多かったが 成績 の良好な群にも再建靭帯の一部分のみが低信号であ る症例もあった したがって オリジナル十字靭帯 に対する断裂の診断基準を再建靭干背にそのまま適用 することはできないと考えている 1 3) 本論文の要旨は第 22 回断層映像研究会において教 育講演として発表した 参考文献 Feagin, Jr, Ligam 巴 n ts, Tr eatm 巴 nt Livingstone, York, pp179-1 95,l988 Remer, Fitzgerald, 12:901-915, M 出 k, Reicher, JII, Knee, Press, York, pp93-111, Strobel, Stedtfeld, Berlin, pp99 1 65, 1990 5) 広谷速人 田中清介 監訳整形外科シラパス 自己研修のための最新知識南江堂東京 pp321-328, B 巴 rqui st, System, Pr 巴 ss, pp195-251, JH, Detection, classification, 182:221-224, 8) 大和実 山岸恒雄 小林剛 : 前十字靭帯断裂 に伴う b on e brui se の MR imaging 日医放会誌 53 (1), 23-27, GW, MW, 467-469, AB, H, Rub 巴 nstein Th 巴 Sego nd m 句 or ligam 巴 n to u s 1163-11 67, Rak, Schaefer, 553-6, 1991 Howell, Berns, 43, Yamato, 604-607, 1992