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プロトコール集 ( 研究用試薬 ) < 目次 > 免疫組織染色手順 ( 前処理なし ) p2 免疫組織染色手順 ( マイクロウェーブ前処理 ) p3 免疫組織染色手順 ( オートクレーブ前処理 ) p4 免疫組織染色手順 ( トリプシン前処理 ) p5 免疫組織染色手順 ( ギ酸処理 ) p6 免疫

<4D F736F F F696E74202D2097E189EF90B893788AC7979D95F18D902E707074>

組織所見 ( 写真 4,5): 異型上皮細胞が間質および脂肪組織に索状, 管状に浸潤して おり, 浸潤性乳管癌 ( 硬癌 ) の所見である. 設問 2 78 歳, 女性. 左乳房上 C 領域の腫瘤 選択肢 1. 線維腺腫 2. 乳管内乳頭腫 3. 乳管癌 4. 小葉癌 5. 悪性リンパ腫 写真 4

テイーチングマッペ書式

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 大道正英 髙橋優子 副査副査 教授教授 岡 田 仁 克 辻 求 副査 教授 瀧内比呂也 主論文題名 Versican G1 and G3 domains are upregulated and latent trans

32 子宮頸癌 子宮体癌 卵巣癌での進行期分類の相違点 進行期分類の相違点 結果 考察 1 子宮頚癌ではリンパ節転移の有無を病期判定に用いない 子宮頚癌では0 期とⅠa 期では上皮内に癌がとどまっているため リンパ節転移は一般に起こらないが それ以上進行するとリンパ節転移が出現する しかし 治療方法

平成 23 年度千臨技細胞診検査研究班精度管理報告 EM /classⅡ 液状検体による細胞判定とえき LBC 法を用いた標本作製の評価 君津中央病院松尾真吾 千臨技細胞診検査研究班精度管理委員

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目 次 はじめに... 独立行政法人国立病院機構北海道がんセンター臨床検査科病理主任平紀代美 Ⅰ. Liquid-based cytology(lbc) とは... 1 Ⅱ. 体腔液検体処理方法... 1 Ⅲ. 固定液の違いによる標本の違い (BD サイトリッチ レッド保存液 or BD サイトリッ

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検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( ピンク ) 血液 6 ml 血清 I 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 茶色 )

8 整形外科 骨肉腫 9 脳神経外科 8 0 皮膚科 皮膚腫瘍 初発中枢神経系原発悪性リンパ腫 神経膠腫 脳腫瘍 膠芽腫 頭蓋内原発胚細胞腫 膠芽腫 小児神経膠腫 /4 別紙 5( 臨床試験 治験 )

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各部門精度管理調査結果報告 ( 細胞検査 ) はじめに 細胞検査における精度管理調査は 日々のスクリーニング作業において誤判定を起こさないよう 自施設の判定基準が他施設と十分な同一性を保持しているかを確認することを目的としている 平成 30 年度の精度管理調査はフォトサーベイ 10 問としてた 精度

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密封小線源治療 子宮頸癌 体癌 膣癌 食道癌など 放射線治療科 放射免疫療法 ( ゼヴァリン ) 低悪性度 B 細胞リンパ腫マントル細胞リンパ腫 血液 腫瘍内科 放射線内用療法 ( ストロンチウム -89) 有痛性の転移性骨腫瘍放射線治療科 ( ヨード -131) 甲状腺がん 研究所 滋賀県立総合病

最初に事後指導項目規定をお示し致します これらは 陰性スメアに対して行っております まず 取り扱い項目は要医療 要治療の 2 項目あります 要医療扱いの細胞所見は 一つ目に 炎症を伴う強度細胞異型の見られるもの 二つ目として 萎縮像に炎症を伴った強度細胞異型の認められるもの 三つ目として 核異型の伴

豚丹毒 ( アジュバント加 ) 不活化ワクチン ( シード ) 平成 23 年 2 月 8 日 ( 告示第 358 号 ) 新規追加 1 定義シードロット規格に適合した豚丹毒菌の培養菌液を不活化し アルミニウムゲルアジュバントを添加したワクチンである 2 製法 2.1 製造用株 名称豚丹

1. Caov-3 細胞株 A2780 細胞株においてシスプラチン単剤 シスプラチンとトポテカン併用添加での殺細胞効果を MTS assay を用い検討した 2. Caov-3 細胞株においてシスプラチンによって誘導される Akt の活性化に対し トポテカンが影響するか否かを調べるために シスプラチ

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学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 佐藤雄哉 論文審査担当者 主査田中真二 副査三宅智 明石巧 論文題目 Relationship between expression of IGFBP7 and clinicopathological variables in gastric cancer (

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平成 29 年度細胞検査サーベイ報告 細胞 ( フォトサーベイ ) はじめに 今回の細胞検査は例年どおりフォトサーベイを行った 昨年度同様 各設問につき判定区分と推定病変を設け 回答していただくようにした また回答状況をよりよく把握するために わからないとした理由や細胞所見などを書いていただける欄を

Photo. 1 大脳皮質 / 圧挫標本 a) パパニコロウ染色 (Pap, 対物 40) 正常組織では, 神経細胞, 星膠細胞, 乏突起膠細胞がバランスよく出現しているが, 胞体や突起, 線維とも不明瞭である. 神経基質は微細な網目状構造として認める. b) GFAP 免疫染色 (GFAP, 対物

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馬ロタウイルス感染症 ( アジュバント加 ) 不活化ワクチン ( シード ) 平成 24 年 7 月 4 日 ( 告示第 1622 号 ) 新規追加 1 定義シードロット規格に適合した馬ロタウイルス (A 群 G3 型 ) を同規格に適合した株化細胞で増殖させて得たウイルス液を不活化し アジュバント

検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( ピンク ) 血液 6 ml 血清 I 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 茶色 )

病理 細胞検査精度管理報告 一般社団法人福島県臨床検査技師会精度管理委員病理検査 細胞検査二瓶憲俊 山崎一樹水野誠 濱屋美樹子 はじめに 今年度も 例年通り 病理検査 細胞検査ともにフォトサーベイを出題し ました また アンケートは今後の業務の参考になれば幸いです 実施項目 病理検査サーベイフォトサ

48 表1 主な術前末梢 ll検査値 GPT 311U AFP ALP l8 l IU CA n9 nil 2n9 ml 2U m1 LDII 3361U CA125 Ou lni GOT 211U CEA RBC ALB 3 7g dl Ilb l2 09dl A G 1 42 Ht

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 小川憲人 論文審査担当者 主査田中真二 副査北川昌伸 渡邉守 論文題目 Clinical significance of platelet derived growth factor -C and -D in gastric cancer ( 論文内容の要旨 )

43048腎盂・尿管・膀胱癌取扱い規約第1版 追加資料

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検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 P EDTA-2Na( 薄紫 ) 血液 7 ml RNA 検体ラベル ( 単項目オーダー時 ) ホンハ ンテスト 注 外 N60 氷 MINテイリョウ. 採取容器について 0

詳細 下記項目におきまして 所要日数を変更させていただきます 一部の項目では ご依頼曜日により所要日数が延長となりますが ご了承ください その他の検査内容に変更はありません β- トロンボグロブリン (β-tg) 2~6( 日 ) 2~4( 日 ) 血小板第 4 因子 (PF

検査項目情報 1171 一次サンプル採取マニュアル 4. 内分泌学的検査 >> 4F. 性腺 胎盤ホルモンおよび結合蛋白 >> 4F090. トータル HCG-β ( インタクト HCG+ フリー HCG-β サブユニット ) トータル HCG-β ( インタクト HCG+ フリー HCG-β サブ

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H29千臨技サーベイ 集計結果

検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( ピンク ) 血液 6 ml 血清 I 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 茶色 )

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れない 採取後 95% エタノールによって固定し パパニコロウ染色を実施した 標本は最初に細胞検査士によってスクリーニングされ 病理医によって確定診断された 細胞診標本の再評価は 著者と他 5 名の細胞検査士が行い病理医と評価した 判定はベセスダシステム 2001 に準拠し 上皮内腺癌の感度 scr

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1. ストーマ外来 の問い合わせ窓口 1 ストーマ外来が設定されている ( はい / ) 上記外来の名称 対象となるストーマの種類 7 ストーマ外来の説明が掲載されているページのと は 手入力せずにホームページからコピーしてください 他施設でがんの診療を受けている または 診療を受けていた患者さんを

子として同定され 前立腺癌をはじめとした癌細胞や不死化細胞で著しい発現低下が認められ 癌抑制遺伝子として発見された Dkk-3 は前立腺癌以外にも膵臓癌 乳癌 子宮内膜癌 大腸癌 脳腫瘍 子宮頸癌など様々な癌で発現が低下し 癌抑制遺伝子としてアポトーシス促進的に働くと考えられている 先行研究では ヒ

370 臓器固定板の素材変更による効果の検証 ~AMG 検査部病理細胞検査委員会の活動報告 ~ 渡邉俊宏 1) 高須賀聖子 2) 関口哲成 3) 穴原賢治 4) 飯田眞佐栄 1) 袴田博文 5) 上尾中央医科グループ上尾中央臨床検査研究所 1) 上尾中央医科グループ東大宮総合病院 2) 上尾中央医科

平成 28 年 2 月 1 日 膠芽腫に対する新たな治療法の開発 ポドプラニンに対するキメラ遺伝子改変 T 細胞受容体 T 細胞療法 名古屋大学大学院医学系研究科 ( 研究科長 髙橋雅英 ) 脳神経外科学の夏目敦至 ( なつめあつし ) 准教授 及び東北大学大学院医学系研究科 ( 研究科長 下瀬川徹

豚繁殖 呼吸障害症候群生ワクチン ( シード ) 平成 24 年 3 月 13 日 ( 告示第 675 号 ) 新規追加 1 定義シードロット規格に適合した弱毒豚繁殖 呼吸障害症候群ウイルスを同規格に適合した株化細胞で増殖させて得たウイルス液を凍結乾燥したワクチンである 2 製法 2.1 製造用株

解禁日時 :2019 年 2 月 4 日 ( 月 ) 午後 7 時 ( 日本時間 ) プレス通知資料 ( 研究成果 ) 報道関係各位 2019 年 2 月 1 日 国立大学法人東京医科歯科大学 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 IL13Rα2 が血管新生を介して悪性黒色腫 ( メラノーマ ) を

検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( ピンク ) 血液 6 ml 血清 I 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 茶色 )

ける発展が必要です 子宮癌肉腫の診断は主に手術進行期を決定するための子宮摘出によって得られた組織切片の病理評価に基づいて行い 組織学的にはいわゆる癌腫と肉腫の2 成分で構成されています (2 近年 子宮癌肉腫は癌腫成分が肉腫成分へ分化した結果 組織学的に2 面性をみる とみなす報告があります (1,

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質の高い病理診断のために 病理技術 診断基準の標準化を 目指した精度評価を実現します

日本脳炎不活化ワクチン ( シード ) 平成 24 年 7 月 4 日 ( 告示第 1622 号 ) 新規追加 1 定義シードロット規格に適合した日本脳炎ウイルスを同規格に適合した株化細胞で増殖させて得たウイルス液を不活化したワクチンである 2 製法 2.1 製造用株 名称日本脳炎ウイル

ス化した さらに 正常から上皮性異形成 上皮性異形成から浸潤癌への変化に伴い有意に発現が変化する 15 遺伝子を同定し 報告した [Int J Cancer. 132(3) (2013)] 本研究では 上記データベースから 特に異形成から浸潤癌への移行で重要な役割を果たす可能性がある

2017 年 8 月 9 日放送 結核診療における QFT-3G と T-SPOT 日本赤十字社長崎原爆諫早病院副院長福島喜代康はじめに 2015 年の本邦の新登録結核患者は 18,820 人で 前年より 1,335 人減少しました 新登録結核患者数も人口 10 万対 14.4 と減少傾向にあります

検査項目情報 EBウイルスVCA 抗体 IgM [EIA] Epstein-Barr virus. viral capsid antigen, viral antibody IgM 連絡先 : 3764 基本情報 ( 標準コード (JLAC10) ) 基本情報 ( 診療報酬 ) 標準コード (JLA

細胞学的検査 はじめに 参加申し込みのあった登録衛生検査所 9 施設, 一般病院等 50 施設を対象に実施した. 回答があったのは登録衛生検査所が 9 施設, 一般病院等が 50 施設で合計 59 施設, 回収率は 100% であった. また, 参加施設数は昨年に比して登録衛生検査所が同数であったが

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佐賀県肺がん地域連携パス様式 1 ( 臨床情報台帳 1) 患者様情報 氏名 性別 男性 女性 生年月日 住所 M T S H 西暦 電話番号 年月日 ( ) - 氏名 ( キーパーソンに ) 続柄居住地電話番号備考 ( ) - 家族構成 ( ) - ( ) - ( ) - ( ) - 担当医情報 医

参考資料2 平成19年度被認定者に関する医学的所見等の解析及びばく露状況調査業務報告書 医学的所見等の解析調査編

付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 ): 施設 UICC-TNM 分類治療前ステージ別付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 原発巣切除 ): 施設 UICC-TNM 分類術後病理学的ステージ別付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 UIC

1-4. 免疫抗体染色 抗体とは何かリンパ球 (B 細胞 ) が作る物質 特定の ( タンパク質 ) 分子に結合する 体の中に侵入してきた病原菌や毒素に結合して 破壊したり 無毒化したりする作用を持っている 例 : 抗血清馬などに蛇毒を注射し 蛇毒に対する抗体を作らせたもの マムシなどの毒蛇にかまれ

Ⅰ. はじめに我が国で戦後復興, 高度成長期の時代に使用した石綿の大半は輸入によるもので, これまでに輸入されたアスベストは 1,000 万トンに達した 1970 年から 1990 年にかけて年間約 30 万トンのアスベストが輸入され,8 割以上は建材に使用された また, 水道管, ガス管, 自動車



検査項目情報 トータルHCG-β ( インタクトHCG+ フリー HCG-βサブユニット ) ( 緊急検査室 ) chorionic gonadotropin 連絡先 : 基本情報 ( 標準コード (JLAC10) ) 基本情報 ( 診療報酬 ) 標準コード (JLAC10)

博士学位申請論文内容の要旨

実地医家のための 甲状腺エコー検査マスター講座

大腸癌術前化学療法後切除標本を用いた免疫チェックポイント分子及び癌関連遺伝子異常のプロファイリングの研究 

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検査項目情報 1223 一次サンプル採取マニュアル 4. 内分泌学的検査 >> 4E. 副腎髄質ホルモン >> 4E040. メタネフリン分画 メタネフリン分画 [ 随時尿 ] metanephrine fractionation 連絡先 : 3495 基本情報 4E040 メタネフリン分画分析物

検査項目情報 クリオグロブリン Department of Clinical Laboratory, Kyoto University Hospital 一次サンプル採取マニュアル 免疫学的検査 >> 5A. 免疫グロブリン >> 5A160. クリオグロブリン Ver.4 cryo

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体腔液細胞診材料を用いたセルブロック法による免疫染色の有用性 公立昭和病院検査科濱川真治, 柏崎好美, 森一磨 病理診断科清水誠一郎 はじめに 画像診断や組織生検に先立って採取される体腔液細胞診の目的は, 悪性細胞の検出のみならず, 組織型推定や原発巣推定を担うようになってきた. その背景には, 化学療法に感受性の高い卵巣漿液性腺癌や神経内分泌癌など, あるいは癌抗体療法の研究が盛んに行われている乳癌や肺癌, 大腸癌, 悪性リンパ腫等があり, 適切な治療法により治療効果が期待できる症例を見落とさないことが挙げられる. また, 中皮腫においては, 石綿による健康被害の救済に関する法律 に基づく指定疾病の認定に係る医学的判定結果の留意事項のなかで, パパニコロウ染色による形態学的特徴および免疫染色の結果について, 詳細に記載することと書かれている. そこで今回, 簡便なセルブロック作製法を紹介し, 免疫染色の有用性について実例を挙げて報告する. 細胞診塗抹材料による免疫染色 細胞診の利点は, スライドガラスに塗抹された細胞をくまなく広く拾い上げることができる点である. その拾い上げた細胞をターゲットとして, カバーガラスをはずした後に, 同一標本上で免疫染色を行うことも可能である. また細胞転写法 1) は, パパニコロウ染色標本などに出現している細胞を封入剤によって複数の標本に分割分離し, 腫瘍マーカーやリンパ球表面マーカー, 細胞増殖因子や癌抑制遺伝子産物, 細胞骨格フィラメントなどの抗原検索が可能となる. しかし, 細胞診断に用いた標本を取り崩さなければならない欠点もある セルブロック法による免疫染色の利点 一方で, 細胞塗抹標本作製後に残存する細胞を様々な方法で収集し, 組織診断と同様にホルマリン固定, パラフィン包埋ブロックを作製するセルブロック法がある. セルブロック法の利点は, 塗抹細胞標本では細胞集塊の構築が十分把握できない場合などに, 包埋 薄切といった組織学的手法にて細胞薄切連続切片を作製し, 細胞組織切片像として観察することが可能となる. また, 包埋された細胞は半永久的に保存可能であり, 今後の癌治療方針決定にも貢献できる材料となりうる. 細胞を収集する手段としては大きく分けて遠心分離細胞収集法と, 細胞凝固 固化法の 2 通りがある. 様々なセルブロック作製法を表 1 に紹介する. 表 1 各種セルブロック作製法 A. 遠心分離細胞収集法 B. 細胞凝固 固化法 遠心管法 2) クロロホルム重層法 3) ナイロンメッシュ法 4) コロジオンバック法 5)~7) 寒天法 9) セルロース法 10) アルギン酸ナトリウム法 11) グルコマンナン法 12) クライオバイアル法 8) -1-

クライオバイアルによるセルブロック作製法 クライオバイアルとは, 一次抗体などを凍結保存しておく 2ml 容量の容器である ( 図 1). 遠心分離法にて細胞を収集し, 上清を排出した後にホルマリンを重層,24 時間程度固定する. ホルマリンを排出後, クライオバイアルを切断し, そのまま脱水, パラフィン浸透工程に進む. パラフィン浸透後, 細胞塊はクライオバイアル底部から容易に剥離でき, 包埋が可能となる. 一連の操作をフローチャートに示す ( 表 2). 表 2 クライオバイアルを用いたセルブロック作製手順 1 細胞診塗抹標本作製後に残存する細胞沈渣を用いる. 2 クライオバイアル (TOHO 社 T311-2 2ml, 図 1) にキャピラリーにて細胞沈渣を 0.2ml 程度吸引回収 ( 細胞沈渣が多い場合は固定不良を防ぐため, 複数のクライオバイアルに分注 ) する. 3 蓋をして 3000rpm3 分間の遠心分離操作を行う. 4 上清部をスポイドで排出後,20% 中性緩衝ホルマリンを静かに重層 ( 細胞沈渣を舞い上げないよう ) する. 5 蓋をして約 24 時間室温で静置固定した後, ホルマリンをスポイドで排出し, カッターナイフやハサミでクライオバイアルの 0.5ml 目盛り部を目安として切断 ( 図 2) する. 6 ホルマリン固定後の沈渣は, 半球状にほぼ硬化している. 切断したクライオバイアルごとにサンプルメッシュパック ( 栄研器材 ) に入れ, ホッチキスで封をする. 7 型どおりアルコール脱水 パラフィン浸透操作に移行する. 切断したクライオバイアルの切断口は, 薬液の浸透を妨げないように横向きに設置する. 8 パラフィン浸透後の細胞塊は, 半球状を呈し, ピンセットにより比較的簡単にクライオバイアル底部から離脱する. 9 細胞塊はバッフィコート部分を包埋皿の底面に軽く押しつける様にして包埋する ( 図 3). パラフィン包埋ブロック作製後は, 臓器組織と同様に連続切片を作製することが可能となる ( 図 4). 図 1 クライオバイアル (TOHO T311-2) 一次抗体などを凍結保存する容器である 図 2 クライオバイアルの切断 クライオバイアルをカッターナイフなどで切断する -2-

図 3 細胞塊の包埋法 細胞塊の細胞層を包埋皿の底部に軽く押しつけるようにして包埋する 図 4 パラフィンブロック 臓器組織と同様に連続切片が可能となる まとめ 体腔液細胞診材料におけるクライオバイアルを用いたセルブロック法による免疫染色の有用性を紹介した. セルブロック法による免疫染色は, 良悪の判定や原発巣推定に有用な方法である. -3-

クライオバイアルを用いたセルブロック法による免疫染色の症例提示 症例 1: 腹水 臨床診断 : 骨盤内腫瘍病理診断 : 下部消化管癌疑い 粘液様物質を背景に異型細胞集塊を認める B: HE 染色 粘液様物質を背景に乳頭状の集塊を認める C: 抗 cytokeratin 20 抗体 (clone:ks20.8, ニチレイバイオサイエンス ) 細胞質が陽性となる D: 抗 CDX-2 抗体 (clone:cdx-2-88) 核が陽性となり, 下部消化管癌や卵巣癌が疑われる所見である -4-

症例 2: 胸水 既往歴 : 皮膚悪性黒色腫病理診断 : 悪性黒色腫 背景にはリンパ球や組織球を認め, その中に N/C 比の増大した異型細胞を認める B: 抗 Melan-A 抗体と抗 calretinin 抗体の 2 重染色 ニューフクシン発色 ( 赤 ): 抗 Melan-A 抗体 (clone:m2-7c10, ニチレイバイオサイエンス ) DAB 発色 ( 茶 ): 抗 calretinin 抗体 (clone:sp13, ニチレイバイオサイエンス ) 中皮細胞とほぼ同等の大きさのメラノーマ細胞が介在している 症例 3: 胸水 臨床診断 : 肺腫瘤病理診断 : 肺腺癌 組織球を背景に,N/C 比の増大した異型細胞が集塊状に出現している -5-

B: HE 染色 フィブリン様物質の中に異型細胞集塊を認める C: 抗 cytokeratin 20 抗体 (clone:ks20.8, ニチレイバイオサイエンス ) 陽性像は認められない D: 抗 cytokeratin 7 抗体 (clone:ov-tl 12/30, ニチレイバイオサイエンス ) 細胞質にび漫性に陽性を示す E: 抗 TTF-1 抗体 (clone:8g7g3/1) 核に陽性像を認め, 肺腺癌が疑われる所見である -6-

症例 4: 腹水 既往歴 : 前立腺癌病理診断 : 前立腺癌 乳頭状集塊が多数出現している B: HE 染色 集塊状に癌細胞を認める C: 抗 PSA 抗体 (polyclonal) 細胞質内に陽性像を認める D: 抗 P504S 抗体 (clone:13h4) 細胞質内に顆粒状の陽性像を示す -7-

症例 5: 胸水 既往歴 : 腎細胞癌病理診断 : 腎細胞癌 乳頭状集塊で出現している B: Papanicolaou 染色 ミラーボール状に出現している C: HE 染色 A の乳頭状集塊は充実性巣状で出現している D: HE 染色 B のミラーボール状集塊は中空状集塊として観察される -8-

E: 抗 CD10 抗体 (clone:56c6) 乳頭状集塊を縁取る様に陽性像を認め, 既往にある腎細胞癌が推定された F: 抗 CD10 抗体 (clone:56c6) 中空状集塊の外側, 内側が陽性となる -9-

症例 6: 胸水 臨床診断 : 結核性胸膜炎細胞所見 : 反応性リンパ球 核形不整を伴う異型リンパ球が散見され, 悪性リンパ腫も否定できないため, 免疫染色を施行した B: 抗 CD3 抗体と抗 CD79α 抗体の 2 重染色 ニューフクシン発色 ( 赤 ): 抗 CD3 抗体 (clone: SP7, ニチレイバイオサイエンス ) DAB 発色 ( 茶 ): 抗 CD79α 抗体 (clone:sp18, ニチレイバイオサイエンス ) 抗 CD3 抗体と抗 CD79α 抗体陽性細胞の比率は,3 対 1 程度で,T 細胞優位である C: 抗 CD4 抗体 (clone:1f6, ニチレイバイオサイエンス ) 抗 CD4 抗体陽性細胞は約 80% 程度である D: 抗 CD8 抗体 (clone:c8/144b, ニチレイバイオサイエンス ) 抗 CD8 抗体は約 20% の細胞が陽性を示したことにより, 胸水中に出現したリンパ球は反応性と判断した -10-

症例 7: 胸水 臨床診断 : 傍大動脈リンパ節腫張病理診断 : 悪性リンパ腫 (B 細胞性 ) 核形不整を伴い, 核小体の目立つ異型リンパ球が散見され, 悪性リンパ腫が疑われたため, 免疫染色を施行した B: 抗 CD20cy 抗体 (clone:l26) 約 80% 程度の異型細胞が陽性となった C: 抗 CD79α 抗体 (clone:jcb117) 抗 CD20cy 抗体と同等の染色態度を示し, 胸水中に出現した異型リンパ球は B 細胞性の悪性リンパ腫細胞と判定した -11-

症例 8: 胸水 臨床診断 : 大量胸水病理診断 : 悪性胸膜中皮腫 上皮型 球状の細胞集塊を多数認め, 多核細胞も散見される. 中皮腫細胞と腺癌細胞の鑑別のため, 免疫染色を施行した B: HE 染色 核小体の目立つ異型細胞が球状集塊を形成している C: 抗 EMA 抗体 (clone: E29) 細胞集塊の辺縁主体に陽性像を認める -12-

D: 抗 calretinin 抗体 (polyclonal, ZYMED, ニチレイバイオサイエンス code No 08-1211) 核および細胞質が陽性となる, いわゆる fried egg 状の陽性像を示す E: 抗 D2-40 抗体 (clone:d2-40) 細胞集塊の辺縁を縁取る陽性像を認める F: 抗 cytokeratin5/6 抗体 (clone:d5/16 B4) 細胞質内にび漫性の陽性像を認める G: 抗 cytokeratin 7 抗体 (clone:ov-tl 12/30, ニチレイバイオサイエンス ) 細胞質内にび漫性の陽性像を認める -13-

参考文献 1) 金子千之, 他 : エンテランニュウ封入剤を用いての細胞転写法. 臨床検査.2000,44:454 2) 福島範子, 他 : セルブロック (cell block) 法. 検査と技術.1975,3:49-54 3) 畠山重春, 他 : 液状検体よりのセルブロック標本の作り方.Medical Technology.1999,27: 613-618 4) 夏目園子, 他 : 子宮内膜細胞診におけるセルブロック法の検討.1991,30:657-661 5) 板東美奈子, 他 : コロジオンバックを用いたセルブロック作製法. 臨床検査.1994,38: 1335-1338 6) 三宅康之, 他 : 胸腹水におけるコロジオンバックを用いたセルブロック組織診の意義. 臨床検査.1997,41:595-597 7) 伊藤仁, 他 : セルブロック作製法と病理, 細胞検査への応用. 検査と技術.2002,30: 1387-1390 8) 濱川真治, 他 : クライオバイアルを用いた簡易セルブロック法. 病理技術.2004,43:534 9) 川島活彦, 他 : 寒天を用いたセルブロック法. 病理技術.1983,27:24-26 10) 牛島友則 : 細胞診断および免疫染色に有用な cell block 標本作製法. 検査と技術.2005,33: 19-26 11) 佐野順司, 他 : アルギン酸ナトリウムを用いたセルブロック法. 日臨細会誌.2004,43:534 12) 神谷誠, 他 : グルコマンナンを用いたセルブロック作製法. 病理と臨床.2006,24:871-875 -14-