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日臨外会誌 74(8),2220 2227,2013 症 例 下行結腸まで陥入する腸重積を発症した虫垂粘液嚢胞腺癌の 1 例 神鋼病院外科 三浦晋上原徹也浅利建吾長谷川寛古角祐司郎石井正之 症例は34 歳, 女性. 左上腹部痛を主訴に来院した. 造影 CTで虫垂粘液嚢腫を先進部として下行結腸まで陥入した腸重積を認めた. 注腸造影検査で腸重積は盲腸まで整復できたが, 完全には整復できなかった. 大腸内視鏡検査では盲腸に虫垂開口部を中心に隆起した粘膜下腫瘍を認めた. 腹腔鏡補助下にて手術を開始した. 腹腔内を観察すると腹水や腹膜播種はなく, 脾臓 肝臓などの腹腔内臓器に病変を認めなかった. 虫垂は盲腸へ陥入していた. 術前の画像診断で嚢胞内に石灰化を伴う充実成分を認めたので悪性腫瘍の可能性を考慮して, 腸重積を完全に整復しないまま回盲部切除 D2 リンパ節郭清を施行した. 病理診断は虫垂粘液嚢胞腺癌であり, 陥入鞘の盲腸の筋層まで粘液の浸潤を認めていた. 無理に整復した場合は粘液の漏出や播種を併発する可能性を否定できない. 術後は経過良好で 7 日目に退院した. 術後 2 年経過したが無再発で生存している. 索引用語 : 虫垂粘液嚢胞腺癌, 腸重積, 腹腔鏡下手術 緒言虫垂粘液嚢腫は虫垂切除症例の約 0.07~0.3% 1)2) にみられる比較的まれな疾患である. 術前に虫垂粘液嚢胞腺腫や過形成などの良性疾患と悪性疾患の虫垂粘液嚢胞腺癌を鑑別することが困難な上に, 粘液が腹腔内に漏出すると予後不良な腹膜偽粘液腫を併発することがある. 治療は切除が第一である. 手術では粘液が漏出しないような愛護的な操作が重要となる. 今回われわれは下行結腸まで陥入する腸重積を契機にみつかり, 完全に整復しないまま腹腔鏡補助下で回盲部切除を施行した虫垂粘液嚢胞腺癌の 1 例を経験したので文献的考察を加えて報告する. 症例患者 :34 歳, 女性. 主訴 : 腹痛, 嘔吐. 既往歴 家族歴 : 特記すべきことなし. 現病歴 :2010 年 8 月, 腹痛を主訴に近医を受診した. 抗菌薬による加療で症状は一時改善していたが,10 日後に腹痛 嘔吐を訴えて近医を再診した. 腹部超音波 2013 年 3 月 21 日受付 2013 年 4 月 24 日採用 所属施設住所 651-0072 神戸市中央区脇浜町 1-4 -47 検査で左上腹部に腹腔内腫瘤を指摘され, 精査加療目的で当院を紹介されて受診となった. 入院時現症 : 身長 162cm, 体重 44kg, 腹部は平坦 軟で左側腹部に軽度の圧痛を認めたが, 反跳痛や筋性防御は認めなかった. 同部に弾性硬で可動性のある腫瘤を触知した. 腸雑音はやや減弱していた. 入院時検査所見 : 血液検査では特記すべき異常所見を認めなかった. 腫瘍マーカーもCEA 1.6ng/m, CA19-9 19U/ml と上昇を認めなかった. 腹部造影 CT 所見 : 下行結腸内に直径約 5 cmの嚢胞性腫瘤を認めた. 腫瘤には茎を認め, 上行結腸へと連続しており, 腫瘤を先進部とした腸重積と診断した. 嚢胞内は石灰化を伴う充実成分を認めた (Fig. 1). 注腸造影検査所見 : 腸重積の先進部は下行結腸に存在した. 注腸造影により上行結腸まで整復された. 盲腸下極に直径約 5 cmの隆起性病変を認め, 虫垂や回腸は造影されなかった (Fig. 2). 大腸内視鏡所見 : 盲腸に虫垂開口部を中心に隆起した粘膜下腫瘍を認めた (Fig. 3). 手術所見 : 腸重積を発症した虫垂粘液嚢腫との術前診断で手術を施行した. 術前の画像所見で腸重積先進部の嚢胞性病変の内部に不均一な充実性成分を認めていたため, 悪性疾患の可能性を考慮していたが, 術前 178

8 号 腸重積を発症した虫垂粘液嚢胞腺癌の 1 例 2221 Fig. 1 腹部造影 CT 下行結腸内に直径約 5 cm の嚢胞性腫瘤を認めた b 腫瘤には茎を認め 上行結腸へと連続しており 腫瘤を先進部とした腸重積と診断した a 嚢胞内は石灰化を伴 a b う充実成分を認めた c d c d a b Fig. 2 注腸造影検査 腸重積の先進部は下行結腸に存在した a 注腸造影により上 行結腸まで整復された 盲腸下極に直径約 5 cm の隆起性病変を認め 虫垂 回腸は造 影されなかった b の造影 CT では #201 #202 #203のリンパ節腫大を 肝臓などの腹腔内臓器に病変を認めなかった 上行結 認めなかった 臍下にカメラポート 右側腹部に 5 腸は回盲部から肝弯曲にいたるまで後腹膜にほとんど mm ポート 左上腹部に 5 mm ポート 左下腹部に 固定されていない状態であった 虫垂は盲腸へ陥入し 12mm ポートを挿入した 腹腔内を観察すると癒着は ていた 術中所見でも #201 #202 #203のリンパ節 なく 腹水や腹膜播種を認めなかった また 脾臓 腫大を認めなかった 悪性腫瘍の可能性を考慮して 179

2222 日本臨床外科学会雑誌 a Fig. 3 74 巻 b 大腸内視鏡 盲腸に虫垂開口部を中心に隆起した粘膜下腫瘍を認めた a b Fig. 4 手術所見 虫垂は盲腸へ陥入して重積していた a 回結腸動静脈の処理を先行した b 右結腸間膜を授動してから 回盲部を授動した c 重積を整復しないまま回盲部を体外に誘 a b 導して回盲部切除 D2 郭清を施行した d c d non-touch isolation の概念に基づき 内側アプローチ めなかったことから D2 郭清を施行した 再建は機能 で支配血管である回結腸動静脈の根部処理を先行し 的端端吻合を施行した 手術時間は 2 時間30分 術中 た カメラポートの創を頭側へ約 5 cm 延長して小開 出血量は20ml であった Fig. 4 腹した 粘液が漏出しないように重積を整復しないま 切除標本 虫垂根部は球形に腫大して盲腸内に突出 ま回盲部を体外に誘導して回盲部切除を施行した 郭 していた 嚢胞壁は石灰化を伴い肥厚しており 内部 清については術前に悪性疾患の確定診断がついていな はゼラチン様の粘液で満たされていた Fig. 5 かったこと 術前評価と術中所見でリンパ節腫大を認 180 病理所見 虫垂粘膜には粘液産生に富む高度な異型

8 号 腸重積を発症した虫垂粘液嚢胞腺癌の 1 例 2223 Fig. 5 切除標本 虫垂根部は球形に腫大して盲腸内に突出していた a b 嚢胞壁は石灰化 a b を伴い肥厚しており 内部はゼラチン様の粘液で満たされていた c d c d 細胞を認め 虫垂粘液嚢胞腺癌と診断された 腺癌の されているが 遠隔転移としては脾臓が多いとの報告 浸潤は虫垂の筋層までであったが 粘液は盲腸の粘膜 がある6 また 嚢腫の穿孔により腫瘍細胞と粘液が 下層まで達しており SI と判断した 最終診断は SI ly1 腹腔内へ散布されると腹膜偽粘液腫 psudomyxoma v0 ppm0 pdm0 prm0 N0 0 /20 H0 M0 P0 peritonei をきたす その予後は不良で 5 年生存率は Stage Ⅱであった Fig. 6 53 75 10年生存率は10 32 7 8 と報告されてい 術後経過 術後 7 日目に退院した 術後 2 年経過し る たが無再発で生存している 考 虫垂粘液嚢腫には特異的な症状はなく 右下腹部の 察 腫瘤触知 不快感 疼痛を訴えることもあるが 無症 虫垂粘液嚢腫は Rokitansky3 が1866年に初めて報告 状で偶発的に発見されることも多い 画像所見として した疾患で 虫垂の開口部が何らかの原因で閉塞し は腹部造影 CT や腹部超音波検査で虫垂に粘液貯留を 虫垂の内腔に生産された無菌的な粘液により嚢胞性腫 疑う嚢胞性病変を認める 大腸内視鏡検査では虫垂根 瘤を形成した状態と定義される 虫垂切除症例の0.07 部がドーム状に隆起し 開口部からは粘液の流出を認 0.3 1 2 と報告されており 比較的まれな疾患であ める場合がある 注腸造影検査では虫垂は造影されず る 組織学的には過形成 mucosal hyperplasia 粘 盲腸末端の壁外性圧排像を認める 術前の良悪性の診 液嚢胞腺腫 mucinous cystadenoma 粘液嚢胞腺癌 断は困難なことが多いが 嚢胞内部に乳頭状の隆起や mucinous cystadenocarcinoma に分類され その 結節を認める場合は虫垂粘液嚢胞腺癌の可能性が高い 頻度は19.5 52.5 27.7 と報告されている 本 とされる9 本例では画像所見で腸重積先進部の嚢胞 例は粘液嚢胞腺癌であり 原発性虫垂癌の約40 を 性病変の内部に不均一な充実性成分を認め 悪性疾患 占める リンパ行性転移や血行性転移はまれであると の可能性を考慮していたが 大腸内視鏡検査での生検 4 5 181

2224 日本臨床外科学会雑誌 74 巻 Fig. 6 病理所見 虫垂粘膜には粘液産生に富む高度な異型細胞を認める a H.E. 20 b a b H.E. 100 粘液塊は盲腸の粘膜下層まで達していた c H.E. 20 c は施行できず 術前の確定診断はつかなかった 血中 7 例とも上行結腸または横行結腸であり 下行結腸ま CEA の 上 昇 は 虫 垂 粘 液 嚢 胞 腺 腫 で31.6 46.9 で陥入したのは本例だけであった 虫垂粘液嚢胞腺癌 10 11 虫垂粘液嚢胞腺癌で61.5 71.0 11 12 と報告 以外の虫垂粘液嚢腫による腸重積の報告例をみても先 されており 良悪性判断の指標にはならない 本例で 進部が明記されている報告例のなかで下行結腸まで陥 は術前の血中 CA19-9と CEA の上昇は認めなかった 入したのは本例だけであった 上行結腸の後腹膜への 虫垂粘液嚢腫は本例のように腸重積を発症すると腹 固定がほとんどなかったことが下行結腸まで重積が進 痛 腫瘤触知などの症状を訴えるが 腸閉塞を合併す んだ原因と考えられる ることは少ない13 画像所見としては腹部造影 CT や 虫垂粘液嚢腫の治療は手術による切除が第一選択で 腹部超音波検査にて陥入した腸管と腸間膜の脂肪層 ある 嚢腫の破裂や穿孔によって腹膜偽粘液腫を発症 が 腸重積の長軸が断層面に平行であれば層状に 垂 する可能性があるため 手術操作は粘液を漏出させな 直であれば同心円状に描出される 注腸造影検査では いように十分な注意が必要である 切除範囲は過形成 蟹爪状の陰影欠損を認める 医中誌で 虫垂粘液嚢腫 虫垂粘液嚢胞腺腫であれば虫垂切除または盲腸部分切 虫垂粘液嚢胞腺腫 虫垂粘液嚢胞腺癌 と 腸重積 除 虫垂粘液嚢胞腺癌であれば D2 以上の郭清を伴っ をキーワードに検索したところ 1983年から2012年12 た回盲部切除または右半結腸切除が必要との報告があ 月までで虫垂粘液嚢腫が原因となった腸重積は50例 る22 しかし 最近の報告でも術前診断率は66.7 4 会議録除く の報告があるが 虫垂粘液嚢胞腺癌が であり 術前の画像所見で良悪性の判断がつかなかっ 14 20 原因となった腸重積は 7 例であった Table 1 た場合の術式選択は難しい 十分なインフォームドコ 平均年齢は61.8歳で男女比は 1 6 と女性に多い 高 ンセントを施行したうえで 術前に悪性を疑う所見が 齢の女性の方が腸管の後腹膜への結合が緩く 腸重積 ない場合は盲腸部分切除を先行して病理所見によって を起こしやすいとの報告がある 腸重積の先進部は は追加切除を検討する 悪性を疑う所見がある場合は 21 182

8 号 腸重積を発症した虫垂粘液嚢胞腺癌の 1 例 2225 Table 1 本邦における腸重積を合併した虫垂粘液嚢胞腺癌の症例 報告者 報告年年齢性別 先進部 腸重積の整復 術式 T N 観察期間 1 松原ら 1994 56 女 上行結腸 術前に整復 結腸右半切除 M N0 9 カ月 2 塩田ら 1995 67 女 上行結腸 術前に整復 結腸右半切除 (D3) SM N0 不明 3 Sato et al 2001 76 女 上行結腸 術中に整復 虫垂切除後, 結腸右半切除 (D3)MP N0 23カ月 4 木村ら 2002 79 男 上行結腸 術中に整復 回盲部切除術 (D2) SE N0 7 カ月 5 鳥越ら 2007 43 女 横行結腸 術前に整復 腹腔鏡下回盲部切除 M N0 不明 6 遠藤ら 2008 61 女 横行結腸 術前に整復 回盲部切除術 (D2)? N0 9 カ月 7 小西ら 2011 78 女 横行結腸 術前に整復 結腸右半切除 (D3) M N0 7 カ月 8 Our Case 34 女 下行結腸途中まで整復 腹腔鏡下回盲部切除 (D2) SI N0 2 年 (Tは進達度,N はリンパ節転移 ) Table 2 本邦における腹腔鏡下手術を施行した虫垂粘液嚢胞腺癌の症例 報告者 報告年年齢性別 術前診断 術式 T N 観察期間 1 稲山ら 2003 77 女虫垂粘液嚢腫 腹腔鏡下回盲部切除?? 24カ月 2 東原ら 2005 57 女 炎症性腫瘤 腹腔鏡下右結腸切除 M N0? 3 早川ら 2006 45 女 虫垂癌 腹腔鏡下結腸右半切除 (D3)SI N0 13カ月 4 鳥越ら 2007 43 女虫垂粘液嚢腫 腹腔鏡下回盲部切除 M N0? 5 太田ら 2011 63 男虫垂粘液嚢腫腹腔鏡下回盲部切除 (D2) M N0 30カ月 6 川口ら 2011 58 女虫垂粘液嚢腫腹腔鏡下回盲部切除 (D2) SS N0 12カ月 7 宮本ら 2011 79 女 急性虫垂炎 腹腔鏡下回盲部切除 (D2) SE N0 16カ月再発 8 Our Case 34 女虫垂粘液嚢腫腹腔鏡下回盲部切除 (D2) SI N0 24カ月 (T は進達度,N はリンパ節転移 ) 虫垂粘液嚢胞腺癌はリンパ行性転移はまれとされているが, 回盲部切除 D2 郭清以上の術式を施行するのが現時点では妥当と考える 19)22)23). 本例では術前に悪性疾患を疑う画像所見を認めたが, 術前の確定診断がついていなかったこと, 術前所見と術中所見で明らかなリンパ節転移を認めなかったことから回盲部切除 D2 郭清を術式として選択した. 開腹手術か腹腔鏡下手術かについては現時点で一定の見解はないが, 近年虫垂粘液嚢胞腺癌に対する腹腔鏡下手術の報告が散見される. 医中誌で 虫垂粘液嚢胞腺癌, 腹腔鏡下手術 で検索したところ詳細がわかるものは 7 例であった (Table 2) 18)24)~29). 術式は回盲部切除が 5 例と多く, 結腸右半切除を施行した 2 例のうち 1 例は虫垂先端の腫瘍が上行結腸に浸潤した症例であった. 術後の観察期間は12~30カ月で, 1 例が16カ月で卵巣転移と腹膜播種をきたしているが, 他の症例では観察範囲内で再発を認めていない. 虫垂粘液嚢腫に対する腹腔鏡下手術の検討では72 例で粘液漏 出を認めず, 安全に手術が可能であったとの報告もある 4). 虫垂粘液嚢胞腺癌に対する腹腔鏡下手術は腹膜偽粘液腫や腹膜播種, 遠隔転移の有無など腹腔内を検索できる利点があるが, 術中操作による粘液や腫瘍細胞の腹腔内への漏出もあるため, その適応には慎重な検討が必要である. 腸重積を合併した腫瘍の治療方針については種々の意見がある. 虫垂粘液嚢胞腺癌に腸重積が合併した 7 例を検討すると全例で術前または術中に腸重積が整復されていた. 本例では術前の注腸造影検査, 大腸内視鏡検査によって腸重積の先進部は下行結腸から盲腸まで後退していたが, 完全には整復できなかった. 手術操作でも粘液の漏出を避けるために, 整復しないまま回盲部切除を施行した. 病理所見では腫瘍の浸潤は虫垂筋層までであったが, 粘液は陥入鞘である盲腸の粘膜下層にまで浸潤を認めており, 無理に整復した場合は粘液の漏出や播種を併発する可能性を否定できない. 腫瘍を切除する前に腸重積を整復することは切除 183

2226 日本臨床外科学会雑誌 74 巻 範囲を縮小できるかもしれないが, 無理な整復は根治性を損なう恐れがある. 腸重積を合併した腫瘍は術前の整復に固執するべきではないと考える. 結語腸重積を併発した虫垂粘液嚢胞腺癌に対して腸重積を完全に整復しないまま腹腔鏡補助下にて回盲部切除を施行できた症例を経験した. 文献 1)Moreno SG, Shmookler BM, Sugarbaker PH : Appendiceal mucocele : contraindication to laparoscopic appendectomy. Surg Endosc 1998 ; 12 : 1177-1179 2)Blair NP, Bugis SP, Turner LJ, et al : Review of pathologic diagnosis of 2, 216 appendectomy specimens. Am J Surg 1993 ; 165 : 618-620 3)Rokitansky KF : Beitaraegezur Erkankungender Wurmfortsazentzundung. Wien Med Presse 1866 ; 26 : 428-435 4) 山本誠士, 奥田準二, 田中慶太朗他 : 虫垂粘液嚢腫の 9 例. 日臨外会誌 2012;73:395-399 5) 長谷和生, 望月英隆, 上銘外喜夫他 : 虫垂粘液嚢胞腺腫. 別冊日本臨牀領域別症候群シリーズ, 消化管症候群 ( 下巻 ), 日本臨牀社, 大阪,1994, p738-741 6) 宮本英雄, 沖田浩一, 草間律他 : 脾転移を伴った虫垂粘液嚢胞腺癌による腹膜偽粘液腫の 1 例. 日消外会誌 2006;39:377-383 7)Gough DB, Donohue JH, Schutt AJ, et al : Pseudomyxomaperitonei : long-term patient survival with an aggressive regional approach. Ann Surg 1994 ; 219 : 112-119 8)Smith JW, Kemeny N, Caldwell C, et al : Pseudomyxomaperitonei of appendiceal origin. The Memorial Sloan-Kettering Cancer Center experience. Cancer 1992 ; 70 : 396-401 9) 小高明雄, 金丸洋, 高田伸他 : 術前診断しえた虫垂粘液嚢胞腺癌の 1 例. 日消外会誌 1993; 26:2362-2366 10) 赤坂義和, 花村典子, 木田英也他 : 高 CEA 血症を呈した虫垂粘液嚢腫の1 例. 日臨外医会誌 1997;58:419-424 11) 福岡秀敏, 伊藤重彦, 吉永恵他 : 虫垂粘液嚢胞の画像所見 自験例 7 例の検討. 臨外 2003; 58:247-249 12) 高島正樹, 増田亮, 田中勲他 : 長期虫垂炎様症状を呈した虫垂粘液嚢胞腺癌の 1 例. 日臨外会誌 1999;60:767-771 13) 檜垣栄治, 久世真悟, 京兼隆典他 : 虫垂粘液嚢腫による腸重積の 1 例. 日臨外会誌 2008;69: 2912-2916 14) 松原俊樹, 浦口貴, 丸尾啓敏他 : 腸重積症にて発症した虫垂粘液嚢胞腺癌の 1 例. 日臨外医会誌 1994;55:430-434 15) 塩田摂成, 西江浩, 水田誠他 : 腸重積症をきたした悪性虫垂粘液嚢腫に上行結腸癌が併存した 1 例. 日臨外医会誌 1995;56:1397-1401 16)Sato H, Fujisaki M, Takahashi T, et al : Mucinous cystadenocarcinoma in the appendix in a patient with nonrotation. Surg Today 2001 ; 31 : 1012-1015 17) 木村雅美, 長谷川格, 三浦秀元他 : 腸重積症を発症した虫垂粘液嚢胞腺癌の 1 例. 日臨外会誌 2002;63:2494-2498 18) 鳥越貴行, 藍澤喜久雄, 佐野文他 : 腸重積をきたした虫垂粘液嚢胞腺癌の 1 例. 日臨外会誌 2007;68:2275-2278 19) 遠藤出, 三角俊毅 : 腸重積を契機に発見された虫垂粘液嚢胞腺癌の 1 例. 日臨外会誌 2008; 69:3200-3203 20) 小西啓, 小池浩志, 山口明浩他 : 虫垂粘液嚢胞腺癌によって腸重積をきたした 1 症例. 臨外 2011;66:1563-1566 21) 中村文隆, 道家充, 成田吉明他 : 盲腸癌による高齢者の腸重積症の 1 例. 日臨外会誌 1998; 59:2859-2863 22) 岩崎甫, 松峰敬夫, 高橋正樹 : 原発性虫垂癌 症例報告と病理組織型の再検討. 日臨外医会誌 1976;37:66-72 23)Stephenson JB, Brief DK : Mucinous appendicaltumors (clinical review). J Med Soc N J 1985 ; 82 : 381-384 24) 稲山久美, 福田保, 中野綾子他 : 血清および粘液中のCEAが高値を示した虫垂粘液嚢胞腺癌の 2 例. 日消誌 2003;100:685-690 25) 東原宣之, 味村俊樹, 安達実樹他 : 腹腔鏡補助下結腸右半切除術を施行した虫垂粘液嚢胞腺癌の 1 例. 日臨外会誌 2005;66:1099-1104 26) 早川善郎, 入野田崇, 目黒英二他 : 上行結腸への 184

8 号 腸重積を発症した虫垂粘液嚢胞腺癌の 1 例 2227 穿通を認めた虫垂粘液嚢胞腺癌に対し腹腔鏡下大腸切除を施行した 1 例. 臨外 2006;61:1397-1400 27) 太田裕之, 塚山正市, 藤岡重一他 : 虫垂粘液嚢胞腺癌に対して腹腔鏡下回盲部切除術を施行した 1 例. 臨外 2011;66:505-508 28) 川口耕, 國場幸均, 中西正芳他 : 虫垂粘液嚢胞腺癌に対する腹腔鏡下手術の経験. 日内視鏡外会誌 2011;16:337-342 29) 宮本健志, 福長徹, 木村正幸他 : 腹腔内化学療法を施行後に被嚢性腹膜硬化症を来した虫垂癌の 1 例. 日消外会誌 2011;44:1024-1030 MUCINOUS CYSTADENOCARCINOMA OF THE APPENDIX WITH INTUSSUSCEPTION IN THE DESCENDING COLON Susumu MIURA, Tetsuya UEHARA, Kengo ASARI, Hiro HASEGAWA, Yujiro KOKADO and Masayuki ISHII Division of Surgery, Shinko Hospital A 34-year-old woman presenting with left upper abdominal pain came to our hospital. Computed tomography scan showed intussusception in the descending colon induced by a cystic tumor of the appendix. Gastrografin enema repositioned the cystic tumor to the cecum, but, the intussusception was not completely reduced. Laparoscopy-assisted ileocecal resection and regional lymph node dissection were performed without complete reduction of the intussusception. During the laparoscopic surgery, we paid close attention to avoid intraperitoneal dissemination of neoplastic cells and mucoid material. The pathological diagnosis was mucinous cystadenocarcinoma of the appendix (SI ly1 v0 N0) which was invading the submucosal layer of the cecum. In this case, complete reduction of the intussusception may have caused pseudomyxoma peritonei. It is possible to perform laparoscopic surgery to treat mucinous cystadenocarcinoma of the appendix with intussusception. It is not necessary to reduce the intussusception completely when it is induced by cystadenocarcinoma of the appendix. Key words:appendical mucinous cystadenocarcinoma,intussusception,laparoscopic surgery 185