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APR. JUL. AUG. MAY JUN. 2

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衛生管理マニュアル 記載例


Microsoft PowerPoint - 資料3【厚労省】【1102差し替え】151117ノロウイルス【リスコミ名古屋,横浜】.pptx

初めに:

2. トイレの後には必ず手洗いをしましょう! 調査から 15.4% の方がトイレの後に手を洗わないことがあるという結果が得られました ( 小便後又は大便後に手を洗うのどちらかを選択しなかった方 どちらも選択しなかった方 トイレで手を洗わないを選択した方 の合計 ) Q10 特にこれからの季節に流行す

平成 30 年東京都食中毒発生状況 ( 速報値 ) 平成 30 年 8 月 31 日現在 8 月末までの都内の食中毒の発生状況が 東京都から公表されました 昨年と比較すると 件数では 30% 増 患者数では 46% 減となっています 最近 10 年間の平均と比較すると 患者数はほぼ同じですが発生件数

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極地研 no174.indd

胃腸炎による入院患者の管理胃腸炎患者の症状が重くて 入院することがあります 入院患者の管理をしなければいけないことが 病院小児科の特異的なところだと思いますので その点に重点を置いてこれからお話しします 胃腸炎の患者が入院しなければいけない時には多くの患者が脱水になっているため 適切な補液が最も重要

本文

平成29年度感染症対策研修会(基礎編)

手洗いについて できてる? 手を洗う機会 ( 利用者 入所者 ) 来所時 食事前後 トイレ後 外出後 粘土など共有のリハビリ用品等を触った後 動物を触った後 手が汚れてしまった後 手を洗う機会 ( 看護 介護職員 ) 来所時 ( 通勤後 ) 調理時 配膳時 食事介助時 薬を扱う時 トイレの手伝い後

contents

はじめに 高齢者施設等で抵抗力が低い利用者をケアするには 介護スタッフの感染予防が必要です 施設は重度の利用者が中心になり さまざまな基礎疾患を抱えているため 感染しやすい状態の方が急増しています 介護スタッフが感染源にならないための予防策と 介護スタッフ自身の安全なケアの方法が重要となってきます

目 次 1. はじめに 1 2. 組成および性状 2 3. 効能 効果 2 4. 特徴 2 5. 使用方法 2 6. 即時効果 持続効果および累積効果 3 7. 抗菌スペクトル 5 サラヤ株式会社スクラビイン S4% 液製品情報 2/ PDF


滋賀県のHACCP推進の取組み

目について以下の結果を得た 各社の加熱製品の自主基準は 衛生規範 と同じ一般生菌数 /g 以下 大腸菌 黄色ブドウ球菌はともに陰性 未加熱製品等の一般生菌数は /g 以下であった また 大腸菌群は大手スーパーの加熱製品については陰性 刺身などの未加熱製品については

日本トイレ協会メンテナンス研究会報告レポート〔第139回〕

 

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PowerPoint プレゼンテーション

菌名原因食品及び感染したときの症状特徴 黄色ブドウ球菌 原因食品 : 弁当 おにぎりなど潜伏期間 :1~5 時間症状 : 吐き気 おう吐 下痢 腹痛などの症状が現れます ヒトや動物の化膿した傷口やおできなどに存在し 食品に付着し増殖するときに毒素を作ります 毒素は熱や乾燥に強い性質があります ウエル

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熊本県感染症情報 ( 第 14 週 ) 県内 165 観測医の患者数 (4 月 4 日 ~4 月 10 日 ) 今週前週今週前週 インフルエンザ 百日咳 0 0 RS ウイルス感染症 10 8 ヘルパンギーナ 6 5 咽頭結膜熱 A 群溶血性連鎖球菌咽頭炎 感染性胃腸炎

家庭や施設における二次感染予防ガイドブック

10/3~10/9 今週前週今週前週 インフルエンザ 7 1 百日咳 1 0 RS ウイルス感染症 ヘルパンギーナ 咽頭結膜熱 A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎 感染性胃腸炎 流行性耳下腺炎 ( おたふくかぜ ) 急性出

ファクトシート 作成日 : 平成 23 年 11 月 24 日 エルシニア症 (Yersiniosis) 1 エルシニア症とは エルシニア症は Yersinia 属菌の中で一般的に食中毒菌として知られる Yersinia enterocolitica と仮性結核菌として知られる Yersinia p

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事例を通して考える 感染拡大防止対策

有明海・八代海総合調査評価委員会 委員会報告書 別添資料

Microsoft PowerPoint - 食中毒って何?

食中毒予防と 食品の安全確保

ノロウイルス対策緊急タスクフォース最終報告書

感染症の基礎知識

~ 目次 ~ 1. 手洗いマニュアル 2. 原材料の保管管理マニュアル 3. 加熱調理食品の中心温度及び加熱時間の記録マニュアル 4. 調理器具等の洗浄 殺菌マニュアル 5. 厨房設備等の衛生管理マニュアル

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放射線部

(病院・有床診療所用) 院内感染対策指針(案)

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Microsoft Word - 【要旨】_かぜ症候群の原因ウイルス

6/10~6/16 今週前週今週前週 インフルエンザ 2 10 ヘルパンギーナ RS ウイルス感染症 1 0 流行性耳下腺炎 ( おたふくかぜ ) 8 10 咽頭結膜熱 急性出血性結膜炎 0 0 A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎 流行性角結膜炎 ( はやり目 )

生活衛生営業 HACCP ガイダンス ( 旅館業用 ) 導入手引書 旅館業用衛生管理点検表 1 個人衛生管理点検記録個人衛生管理は 従事者の感染症対策を中心に基準条例 8 の従事者に係る衛生管理の項目を始業時点検として次の項目を確認する (1) 従事者は 下痢 嘔吐等の体調不良がないことを確認し 症

請求記号:DVD 70- -1  栄光のフィレンツェ・ルネサンス  1 夜明け   55分 

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( 別記報告様式 1 ) 記載例 2 感染症等 ( 疑 ) 発生報告票 1 報告年月日 平成 1 9 年 4 月 1 日 ( 日 ) 1 5 時 0 0 分現在 2 施設等の名称 学校法人 函館学院 函館保健所幼稚園 ( 種 別 ) ( 私立幼稚園 ) 4 報 告 者 職 氏 名 園 長 名 函 館

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Microsoft PowerPoint - リーダー養成研修(通所)NO1 

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インフルエンザ等感染症に対する健康危機管理について 呉特別支援学校には, 慢性心疾患や慢性呼吸器疾患等, 感染症に罹患すると重症化するリスクのある児童生徒 が在籍しています また, 体調不良を自分で訴える事や, 咳エチケット等の衛生管理をする事が難しい児童生徒 も多数おり, 感染が拡大しやすい状況と

2015壺溪塾表1表4_0105

PowerPoint プレゼンテーション

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肝臓の細胞が壊れるる感染があります 肝B 型慢性肝疾患とは? B 型慢性肝疾患は B 型肝炎ウイルスの感染が原因で起こる肝臓の病気です B 型肝炎ウイルスに感染すると ウイルスは肝臓の細胞で増殖します 増殖したウイルスを排除しようと体の免疫機能が働きますが ウイルスだけを狙うことができず 感染した肝

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感染対策マニュアル

特別支援学校における介護職員等によるたんの吸引等(特定の者対象)研修テキスト

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生活衛生営業 HACCP ガイダンス ( 食肉販売業用 ) 導入手引書 本ガイダンスでは まず メニュー調査表 と 調理工程表 によりそれぞれの施設の 危害要因分析 を行い 次にこの手引書の 衛生管理点検表 を HACCP の考え方を取り入れた 衛生管理計画 とし それを用いて モニタリング 記録の

1 施設設備の衛生管理 1-1 食品取扱室の清掃及び保守点検 < 認証基準 > 床 内壁 天井 窓 照明器具 換気扇 手洗い設備及び排水溝の清掃手順 保守点検方法が定められていること 床及び排水溝の清掃は1 日に1 回以上 その他の清掃はそれぞれ清掃の頻度の記載があること 保守点検頻度の記載があるこ

 集団発生時の対応

年次別 主な病原体別の食中毒事件数の推移 * 腸管出血性大腸菌を含む

④愛顔(えがお)つなぐえひめ国体・えひめ大会 食品衛生対策実施要領(案)【別紙1】.doc

Microsoft Word - (反映)180531ノロウイルスに関するQA

感染症対策

DNA/RNA調製法 実験ガイド

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もあるため 調理室内へは持ち込まないようにすることを理解させることが重要である その他 調理室内の網戸の破れによる不適が 26.8% の施設で見られた これは前年度とほぼ同値であり 改善が進んでいない 網戸の破れはハエなどの衛生害虫等の侵入経路になる可能性があるため 早急な補修が望まれる 一方 調理

表 2 衛生研究所 保健所別菌株検出数 ( 医療機関を含む ) 内訳 衛生研究所保健所試験検査課県中支所会津支所郡山市いわき市 総計 喫食者 接触者 従事者食品 3 3 拭きとり総計 遺伝子型別解析遺伝子型別解析は, デンカ生研の病

第33回 ESRI-経済政策フォーラム

Microsoft Word - 届出基準

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生食用鮮魚介類等の加工時における殺菌料等の使用について 平成 25 年 3 月食品安全部 1. 経緯食品への添加物の使用については 食品衛生法第 11 条第 1 項に基づく 食品 添加物等の規格基準 ( 昭和 34 年厚生省告示第 370 号 以下 規格基準 という ) の第 2 添加物の部において

特別養護老人ホーム愛敬苑 感染症及び食中毒防止のための指針 1. 総則特別養護老人ホーム愛敬苑 ( 以下 施設 という ) は 生活者及び利用者 ( 以下 生活者 という ) の使用する食器及びその他の設備について 衛生管理に努め 衛生上必要な措置を講ずるとともに 医薬品及び医療用具の管理を適正に行

衛生法規に関する知識 問題 1 クリーニング業法に規定する営業者の衛生措置についての記述のうち 誤ってい るものはどれか 一つ選んでその番号を回答欄に記入しなさい 1 洗たく物の洗たくをするクリーニング所に 業務用の機械として 洗たく機 及び乾燥機をそれぞれ少くとも一台備えなければならない 2 クリ

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HCR NEWS 飛まつ感染の予防対策 : 咳エチケット 飛まつ感染の感染予防として 最も期待できるのは 咳エチケット です 1 咳やくしゃみをする場合はハンカチ タオル ティッシュなどで口を覆い 周囲の人に飛まつを浴びせないようにする 2 ハンカチ タオル ティッシュがない場合は手のひらではなく

鹿児島県感染症発生動向調査事業 感染症のホームページアドレス 咽頭結膜熱の報告数は, 前週と同数の 59 人 ( 定点当たり 報告数 1.09) でした 保

⑥愛顔(えがお)つなぐえひめ国体・えひめ大会 食品衛生対策実施要領(案)【別紙2】.doc

東京都微生物検査情報 第37巻第6号

緑膿菌 Pseudomonas aeruginosa グラム陰性桿菌 ブドウ糖非発酵 緑色色素産生 水まわりなど生活環境中に広く常在 腸内に常在する人も30%くらい ペニシリンやセファゾリンなどの第一世代セフェム 薬に自然耐性 テトラサイクリン系やマクロライド系抗生物質など の抗菌薬にも耐性を示す傾

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サルモネラ食中毒とは? 症状は? 食後 6~48 時間で おう吐 腹痛 下痢 発熱など 乳幼児や高齢者は 症状が重くなることもある 原因になりやすい食品は? 加熱不足の卵 肉などが原因になりやすい 生の肉に使った包丁で切った調理済みの食品も原因に 害虫やペットが 菌を食品に付けてしまうことも ( 農

( 株 ) 京浜予防医学研究所 KML メールニュース VOL.5 ( 株 ) 京浜予防医学研究所よりお知らせ致します! 2006 年 1 月 27 日発行 寒に入り例年になく厳しい寒さが続いておりますが 先生方におかれましてはお風邪など召しておら

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感染対策の基礎知識 1 感染対策の原則 感染成立の 3 要因への対策と 病原体を 1 持ち込まない 2 持ち出さない 3 拡げないが基本です 感染成立の 3 要因と感染対策 感染症は 1 病原体 ( 感染源 )2 感染経路 3 宿主の 3 つの要因が揃うことで感染します 感染対策においては これらの

衛生管理マニュアル 記載例

Transcription:

ウイルス性胃腸炎の現状と対策 ノロウイルスの電子顕微鏡像 微生物部ウイルス研究科森功次

食中毒とウイルス ウイルスによる食中毒がなぜ減らないか ウイルス性胃腸炎の発生要因 食材の汚染調理従事者の関与汚染箇所に残存したウイルスからの感染 発生予防 拡大防止に関するポイント

東京都で発生した食中毒事例の胃腸炎ウイルス ノロウイルス サポウイルス ロタウイルス ノロウイルスサポウイルス ロタウイルス 報告年 1972 1979 1974 潜伏期間 約 36 時間 40 数時間 約 3 日

ヒトのノロウイルスは現在のところ人工的に培養できない ノロウイルスの検出 電子顕微鏡でウイルス粒子を探す 特異抗体によりウイルス抗原を検出 陰性 陽性 ウイルス粒子の殻の中にあるウイルス遺伝子を検出

( 件 ) 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 ( 件 ) 2000 1800 1600 1400 1200 1000 800 600 400 200 0 事件数 2000 年 2002 年 2004 年 2006 年 2008 年 2010 年 2012 年 患者数 2000 年 2002 年 2004 年 2006 年 2008 年 2010 年 2012 年 ウイルス性食中毒と細菌性食中毒の推移 ( 東京都 :2000 年 ~2012 年 ) : ウイルス性食中毒 : 細菌性食中毒 ( 東京都福祉保健局 東京都食中毒概要 より )

120 100 集団胃腸炎事例におけるウイルス検出状況 ( 東京都 :2009-2012 年 ) 2009 年 2010 年 2011 年 2012 年 80 60 40 20 0 No V SaV RVA RVC No v+ SaV Nov+AstV NoV;AdV NoV+RVC AstV RVA+AstV SaV+AstV SaV+RVA AstV+AdV NoV+SaV+AstV negative

集団胃腸炎事例におけるウイルス検出状況 ( 東京都 :2013 年 ) 事例数 ( 件 ) 80 70 60 50 40 30 20 10 0 Jan. Feb. Mar. Apr. May Jun. Jul. Aug. Sep. Oct. Nov. Dec. NoV SaV RVA NoV;AdV negative

ウイルスによる食中毒がなぜ減らないか

ノロウイルス患者 1 人から何人に拡がるか? 再生産数 再生産数 (reproduction number) 感染者 1 人から発生する感染者数 経過日数ノロウイルス感染時における再生産数の推移 Heijne JCM ら Emerging Infectious Diseases, 2009 より引用

施設別平均発症者数および発症率 高齢者 保育園 医療 小学校 全施設 施設 機関 施設数 60 49 28 21 166 平均発症者数 ( 利用者 ) 24.4 ±12.9 27.9 ±14.5 20.9 ±11.5 45.7 ±38.7 28.1 ±20.4 ( 職員 ) 6.2±4.7 3.0±3.3 5.1±3.9 0.8±0.9 4.3±4.2 平均発症率 ( 利用者 ) 37.4 31.6 29.4 25.4 32.3 ( 職員 ) 21.6 10.6 20.3 2.4 14.6 ( 東京都健康安全研究センターノロウイルス対策緊急タスクフォース調査研究に関する論文 2009 より )

ノロウイルス感染の特徴 ノロウイルスは食品中や環境では増殖しない 大量のウイルス (1 億個以上 /g) が含まれる糞便を排出する時期がある 複数の人を感染させる感染源となる 人には少量 (100 個以下 ) のウイルスで感染が成立 ( 腸管出血性大腸菌 O157 より少ない ) わずかに汚染されたところも感染源となりうる

ノロウイルスをはじめとしたウイルス性食中毒がなぜ減らないか ウイルス自体が変化していく まだあまり認識されていない 夏季でもウイルス性胃腸炎は発生ふけんせい症状のない不顕性感染者が感染源となる可能性 不顕性感染者 : 下痢や腹痛などの胃腸炎症状はないが ウイルスに感染しているため 糞便中にウイルスを多量に排泄する 予防および拡大防止に関する正確な情報が伝わっていない

ウイルス性集団胃腸炎の発生要因

ノロウイルス食中毒における発生要因 事例数 ( 件 ) ( 東京都 2000 年 ~2011 年 2011 年東京都食中毒概要より ) 70 60 50 40 30 20 10 0 2000 年 2002 年 2004 年 2006 年 2008 年 2010 年二枚貝類調理従事者由来不明

ウイルス性胃腸炎の発生要因 食材そのものがウイルスに汚染されていた 二枚貝類 : 生息する水中でウイルスを取り込み体内に蓄積 a a a a b b 山本ら : 日本食品微生物学会雑誌 2006,21-26 より引用 a : 上皮組織にあるウイルス粒子 b : 結合組織にあるウイルス粒子 ノロウイルスに汚染された二枚貝類の生食や加熱不足により感染 発症 その他 表面汚染された果物 野菜類でも感染の報告

ウイルス感染価 (TCID 50 /100μL(log)) 8 7 6 5 4 3 2 1 0 沸騰水によるウイルスの感染力の減少 ( 代替ウイルスを用いた検討 ) 1 3 5 10 15 20 30 経過時間 (sec) ウイルスは熱がとおった時点から感染力が減少

加熱によるウイルスの感染力の減少 ( 代替ウイルスを用いた検討 ) 設定温度 ( ) 55 60 65 70 75 80 85 到達時 経過時間 ( 分 ) 0.5 1 3 5 10 :100 万分の 1 以下に減少 :1 万分の 1 以下に減少 : 減少は 1 万分の 1 未満

加熱温度 ( ) 温度と加熱時間による感染価の減少 100 90 90 80 85 70 60 50 10 100 1000 10000 : 感染価 1/10000 に減少 加熱開始からの経過時間 (sec) : 感染価 1/10000000 以下に減少 : 中心温度が設定温度に到達

ノロウイルス食中毒における発生要因 ( 東京都 2011 年食中毒概要より ) カキなどの二枚貝類の生食 42.9% カキフライ等の加熱不足を含む 調理従事者が症状がありながら従事 16.3% 調理従事者からウイルスを検出 40.8% 調理従事者の関与する割合が大きい 多くは不顕性感染していた調理従事者の関与が推定される

ウイルス性胃腸炎の発生要因 調理従事者の関与 症状がありながら調理作業に従事 調理従事者がウイルスに不顕性感染していた 調理場を汚染させた 手洗い設備の不備 調理の過程で食品を汚染させた 共用する施設の器具等を汚染し 二次的に食品を汚染させた

調理従事者の関与 * 不顕性感染者 下痢や腹痛などの胃腸炎症状はないが ウイルスに感染しているため 糞便中にウイルスを多量に排泄する

不顕性感染者の出現 ウイルスに汚染された食品の喫食 生カキ等ウイルスに汚染されていた食品の喫食 ウイルスを保有する調理従事者や施設などから二次的に汚染された食品の喫食 日常生活を通じた接触 育児 介護 清掃 看護 ( 感染者やウイルスに汚染された器具 施設などを介する ) ウイルスの暴露 感染して発症 感染しても発症しない不顕性感染 非感染

発症者と不顕性感染者における糞便中のウイルス遺伝子量の比較 10 11 10 10 10 9 10 8 10 7 10 6 10 5 10 4 10 3 ノロウイルス 10 7 10 6 10 5 10 4 10 3 サポウイルス 100 100 未満発症者不顕性未満発症者不顕性感染者感染者

調理従事者の関与 * 手洗いの不備

ウイルスはトイレットペーパーを通過するか 1 枚 検出数 親指人指し指中指薬指小指

ウイルス汚染されたドアノブを介して食品が汚染されるか? ウイルスをつけた手でドアノブを操作してドアノブをウイルス汚染させる 別の人にドアノブを操作してもらう その人にキャベツの千切りをとりわけてもらう (10 回 ) キャベツのウイルス検査

手をきれいにするには? 石けん等で泡立てて 流水により手をすすぐ 速乾性消毒剤を手にすりこむ ウェットティッシュ等で手をぬぐう ノロウイルスを対象とする場合 速乾性消毒剤よりも石けん類を利用した手洗いが有効な対策である

遺伝子量 石けん類による手洗い 10 7 10 6 速乾性消毒剤による擦式消毒 10 7 10 6 10 5 10 5 10 4 10 4 10 3 10 2 10 3 10 2 10 10 1 未満 10 7 1 未満 10 10 2 10 3 10 4 10 5 10 6 TCID 50 /100μl 手洗いなし流水のみ消毒用 EtOH クロルヘキシジンヨード化合物トリクロサン第四級アンモニウム化合物フェノール誘導体 ウェットティッシュによる清拭 1 未満 1 未満 10 10 2 10 3 10 4 10 5 10 6 TCID 50 /100μl 手洗いなしクロルヘキシジン第四級アンモニウム化合物ヨード化合物 10 6 10 5 10 4 10 3 10 2 10 1 未満 1 未満 10 10 2 10 3 10 4 10 5 10 6 TCID 50 /100μl : 処理なし : クロルヘキシジン : 安息香酸 : 第四級アンモニウム塩 :PHMB

効果的に手をきれいにするには (%) 100 10 1 0.1 石けんによるもみ洗い 10 秒 + 流水すすぎ 15 秒 0.1% 石けんによるもみ洗い 30 秒 + 流水すすぎ 15 秒 0.05% 石けんによるもみ洗い 10 秒 + 流水すすぎ 15 秒 2 セット 0.002% 0.01 0.001 手洗いなし 流水すすぎ 15 秒 1% 石けんによるもみ洗い 60 秒 + 流水すすぎ 15 秒 0.003%

ウイルス性胃腸炎の発生要因 汚染箇所に残存したウイルスからの感染 施設内でおう吐 その汚染箇所に残存したウイルスから 歩行等により発生する塵埃を介した感染 従事者の衣服の汚染 施設へのウイルスの持ちこみ その他に水を介して ( 簡易水道による事例 ) 塩素滅菌機の故障

ふきとり によるウイルス除去効果の比較 市販の塩化ビニール製床材にウイルス液をスポット ふきとり操作後に床材に残った量を比較 1 スポット直後および乾かした後に水でぬらしたペーパータオルでふきとる ふきとり 1~3 回 ウイルス検査 2 乾かした後に水や塩素系漂白剤を噴霧してペーパータオルでふきとる 噴霧 (1.2mL) ふきとり 1~3 セット ウイルス検査

水でぬらしたペーパータオルを用いたふき取り操作によるウイルス除去効果 ふきとり前 スポット直後 100 乾かした後 100 ふきとり後の残存率 (%) 1 回目 2 回目 3 回目 0.4 0.005 0.003 5.7 1.4 0.8 残存率 (%) 100 10 1 0.1 : スポット直後 ( ぬれた状態 ) : 乾かした後 0.01 0.001 ふきとり前 1 回目 2 回目 3 回目

塩素系漂白剤の噴霧によるウイルス除去効果 ふきとり前 水 100 次亜塩素酸ナトリウム溶液 100 100 ふきとり操作後の残存率 (%) 残存率 (%) 10 1 0.1 0.01 : 水 : 塩素系漂白剤 (200mg/L) 0.001 ふきとり前 1 回目 2 回目 3 回目

ウイルス性胃腸炎の 発生予防 拡大防止に関するポイント

食中毒予防の3 原則 病原体をつけない 病原体をふやさない 病原体をやっつける 食中毒予防 6つのポイント 食品の購入 食品の保存 下準備 調理 食事 残った食品

ウイルス性胃腸炎の発生予防 拡大防止に関するポイント 確実なウイルスの不活化 (85~90 90 秒の加熱 塩素系漂白剤処理など ) 手洗いなど手指衛生の徹底 ウイルス除去による施設 器具の清浄化 不顕性感染者が関与する可能性の認識