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F F 作成諏訪赤十字病院消化器科太田裕志

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32 子宮頸癌 子宮体癌 卵巣癌での進行期分類の相違点 進行期分類の相違点 結果 考察 1 子宮頚癌ではリンパ節転移の有無を病期判定に用いない 子宮頚癌では0 期とⅠa 期では上皮内に癌がとどまっているため リンパ節転移は一般に起こらないが それ以上進行するとリンパ節転移が出現する しかし 治療方法

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佐賀県肺がん地域連携パス様式 1 ( 臨床情報台帳 1) 患者様情報 氏名 性別 男性 女性 生年月日 住所 M T S H 西暦 電話番号 年月日 ( ) - 氏名 ( キーパーソンに ) 続柄居住地電話番号備考 ( ) - 家族構成 ( ) - ( ) - ( ) - ( ) - 担当医情報 医

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原発不明がん はじめに がんが最初に発生した場所を 原発部位 その病巣を 原発巣 と呼びます また 原発巣のがん細胞が リンパの流れや血液の流れを介して別の場所に生着した結果つくられる病巣を 転移巣 と呼びます 通常は がんがどこから発生しているのかがはっきりしている場合が多いので その原発部位によ

消化性潰瘍(扉ページ)

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10,000 L 30,000 50,000 L 30,000 50,000 L 図 1 白血球増加の主な初期対応 表 1 好中球増加 ( 好中球 >8,000/μL) の疾患 1 CML 2 / G CSF 太字は頻度の高い疾患 32

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モノクローナル抗体とポリクローナル抗体の特性と

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気管支学 Vol 41, No 4

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< お知らせとお願い > ご参加の皆様へ 1) 参加受付は8:30より開始いたします 2) ご来場の際はなるべく公共交通機関をご利用いただきますようお願い申し上げます ( 駐車券の発行はございません ) 3) 参加費は5000 円です ご発表者の皆様へ ご発表セッション開始時刻の30 分前までに 会

洗浄 消毒 スコープおよび周辺機器の洗浄 消毒は 消化器内視鏡ガイドライン ( 日本消化器内視鏡 学会 ) に準じて行うこと 5) 判定 部位 所見の部位を記載する 食道 ( 上部 中部 下部 食道胃粘膜接合部 ) 胃 ( 穹窿部 噴門部 体上部 体中部 体下部 胃角部 前庭部 ) ( 大弯 小弯

イルスが存在しており このウイルスの存在を確認することが診断につながります ウ イルス性発疹症 についての詳細は他稿を参照していただき 今回は 局所感染疾患 と 腫瘍性疾患 のウイルス感染検査と読み方について解説します 皮膚病変におけるウイルス感染検査 ( 図 2, 表 ) 表 皮膚病変におけるウイ

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2 どのような Hp 抗体検査キットを使えばよいのですか? 日本国内での使用には日本人株由来の抗原を用いたキットが適しています 最近では, 従来の EIA 法のキット以外にも, 簡便かつ迅速に多くの検体を処理 できる汎用性の高いラテックス (LIA) 法のキットも各社から市販されています 解説 1.

Title [ 症例報告 ] 内視鏡的に切除し得た胃 inflammatory fibr polyp の 1 例 諸喜田, 林 ; 金城, 福則 ; 仲吉, 朝史 ; 仲宗根, 啓樹 ; 新村 Author(s) 昇 ; 金城, 渚 ; 幸地, 昭彦 ; 大城, 淳一 ; 斎藤, 厚 ; 真喜我喜屋

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胃がんの内視鏡的治療 ( 切除 ) とは胃カメラを使ってがんを切除する方法です. 消化器内科 胃がん 治癒 胃がん切除

2章 内視鏡 病理 一方 画像の明るさとしては BLI BLI-bright FICE 通常 白色光観察 とな り 中景から遠景の非拡大観察で胃炎を診断するには BLI-bright モード が適して いると考えられます 2 3 FICE BLI による胃炎診断 また 最近 LASEREO システム

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250 山口医学第 60 巻第 6 号 (2011) 胸部 ~ 骨盤部造影 CT 検査 : 直腸後壁の壁肥厚を認めるが, 明らかなリンパ節腫大や肝転移 遠隔転移は認めない ( 図 2). 生検結果 ( 当院 ): 腫瘍細胞は中型の類円形で, 細胞質が乏しく, 充実性胞巣を形成している. 角化や明らか

性黒色腫は本邦に比べてかなり高く たとえばオーストラリアでは悪性黒色腫の発生率は日本の 100 倍といわれており 親戚に一人は悪性黒色腫がいるくらい身近な癌といわれています このあと皮膚癌の中でも比較的発生頻度の高い基底細胞癌 有棘細胞癌 ボーエン病 悪性黒色腫について本邦の統計データを詳しく紹介し

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付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 ): 施設 UICC-TNM 分類治療前ステージ別付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 原発巣切除 ): 施設 UICC-TNM 分類術後病理学的ステージ別付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 UIC

1. 来院経路別件数 非紹介 30 他疾患経過 10 自主受診観察 紹介 20 他施設紹介 合計 患者数 割合 12.1% 15.7% 72.2% 100.0% 27.8% 72.2% 100.0% 来院経路別がん登録患者数 がん患者がどのような経路によって自施設を受診し

3. 胃がんの診断について胃透視や上部消化管内視鏡検査により病変を検出するとともに病変の範囲や深さを詳細に観察し 内視鏡検査で採取します生検標本を病理組織学的に診断します 拡大内視鏡検査によりさらに詳細に観察したり 超音波内視鏡検査により病変の深さを観察します また 腹部超音波検査や CT 検査など

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情報提供の例

4. 膵腫瘤存在診断 A) 確診 1 粋の明らかな異常エコー域 ( 注 ) 2 粋の異常エコー域が以下のいずれかの所見を伴うもの a) 尾側膵管の拡張 b) 膵内または膵領域の胆管の狭窄ないし閉塞 c) 膵の限局性腫大 B) 疑診 1 膵の異常エコー域 2 膵領域の異常エコー域 3 膵の限局性腫大

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様式1

表 1. 罹患数, 罹患割合 (%), 粗罹患率, 年齢調整罹患率および累積罹患率 ; 部位別, 性別 A. 上皮内がんを除く ; 部位別, 性別 B. 上皮内がんを含む 表 2. 年齢階級別罹患数, 罹患割合 (%); 部位別, 性別 A. 上皮内がんを除く B. 上皮内がんを含む 表 3. 年齢

EBウイルス関連胃癌の分子生物学的・病理学的検討


1 早期癌 表在癌の病態 食道癌は消化器癌の中でも予後不良の癌の代表であったが診断および集学的治療の進歩により予後が向上してきた. 特に早期癌の状態で発見できれば, その予後は大いに期待できるのみならず, 標準治療であるリンパ節郭清を伴う胸部食道切除に比し, 身体への侵襲が極めて小さい内視鏡的治療に

8 整形外科 骨肉腫 9 脳神経外科 8 0 皮膚科 皮膚腫瘍 初発中枢神経系原発悪性リンパ腫 神経膠腫 脳腫瘍 膠芽腫 頭蓋内原発胚細胞腫 膠芽腫 小児神経膠腫 /4 別紙 5( 臨床試験 治験 )

付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 ): 施設 UICC-TNM 分類治療前ステージ別付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 原発巣切除 ): 施設 UICC-TNM 分類術後病理学的ステージ別付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 UIC

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 小川憲人 論文審査担当者 主査田中真二 副査北川昌伸 渡邉守 論文題目 Clinical significance of platelet derived growth factor -C and -D in gastric cancer ( 論文内容の要旨 )

院内がん登録における発見経緯 来院経路 発見経緯がん発見のきっかけとなったもの 例 ) ; を受けた ; 職場の健康診断または人間ドックを受けた 他疾患で経過観察中 ; 別の病気で受診中に偶然 がん を発見した ; 解剖により がん が見つかった 来院経路 がん と診断された時に その受診をするきっ

付表 登録数 : 施設 部位別 総数 1 総数 口腔咽頭 食道 胃 結腸 直腸 ( 大腸 ) 肝臓 胆嚢胆管 膵臓 喉頭 肺 骨軟部 皮膚 乳房 全体


Vol 夏号 最先端の腹腔鏡下手術を本格導入 東海中央病院では 平成25年1月から 胃癌 大腸癌に対する腹腔鏡下手術を本格導入しており 術後の合併症もなく 早期の退院が可能となっています 4月からは 内視鏡外科技術認定資格を有する 日比健志消化器外科部長が赴任し 通常の腹腔 鏡下手術に

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かった また患者の黒色便が消失したこともあり, 微小な病変が凝固因子製剤の補充により改善した可能性があると考え今回はこれ以上の追加精査は行わず, 再度増悪時にダブルバルーン内視鏡などを考慮する方針とし, 患者は 1 月 14 日に名大病院を退院した 患者は退院後も定期的に名大病院血液内科外来を受診し

目次 全部位の概要 - 部位別登録数 - 年齢階級 部位別登録数 - 来院経路 部位別登録数 - 患者住所 部位別登録数 - 症例区分 部位別登録数 - 発見経緯 部位別登録数 部位別詳細

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図 1 H. pylori と発生 0.4 の発見率となります 図 1 7 さらに H. pylori との発生に関して は組織学的 内視鏡的に詳細に検討されて 図 3 H. pylori と胃粘膜 未感染 表層性胃炎 C います以前は H. pylori が関与するのは分 萎縮性胃炎 軽度萎縮 中

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2017 年 8 月 9 日放送 結核診療における QFT-3G と T-SPOT 日本赤十字社長崎原爆諫早病院副院長福島喜代康はじめに 2015 年の本邦の新登録結核患者は 18,820 人で 前年より 1,335 人減少しました 新登録結核患者数も人口 10 万対 14.4 と減少傾向にあります

平成 29 年度細胞検査サーベイ報告 細胞 ( フォトサーベイ ) はじめに 今回の細胞検査は例年どおりフォトサーベイを行った 昨年度同様 各設問につき判定区分と推定病変を設け 回答していただくようにした また回答状況をよりよく把握するために わからないとした理由や細胞所見などを書いていただける欄を

2. 転移するのですか? 悪性ですか? 移行上皮癌は 悪性の腫瘍です 通常はゆっくりと膀胱の内部で進行しますが リンパ節や肺 骨などにも転移します 特に リンパ節転移はよく見られますので 膀胱だけでなく リンパ節の検査も行うことが重要です また 移行上皮癌の細胞は尿中に浮遊していますので 診断材料や

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1.中山&内田 P1-9

ベセスダシステム2001の報告様式 ーASC-US、ASC-Hの細胞像と臨床的意義ー

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1. ストーマ外来 の問い合わせ窓口 1 ストーマ外来が設定されている ( はい / ) 上記外来の名称 対象となるストーマの種類 7 ストーマ外来の説明が掲載されているページのと は 手入力せずにホームページからコピーしてください 他施設でがんの診療を受けている または 診療を受けていた患者さんを

Transcription:

2018 年 4 月 野拡 内視鏡研究会 信州 学医学部附属病院内視鏡センター菅智明 症例 1 79 歳女性 粘膜下腫瘍様の形態を呈する小型深部浸潤 腸癌 ( 症例 提 : 新潟 学胃 学総合病院消化器内科橋本哲 ) 読影者 : 野市 病院 藤 野 字病院徳竹 スクリーニング検査で行われた 腸内視鏡検査で 横行結腸の病変を指摘さ れた 自覚症状なく 身体所見に異常なし 既往歴と家族歴にも特記事項なし 藤は通常光とインジゴカルミン散布像で 粘膜下腫瘍様の隆起を伴う不整 型の陥凹性病変であり 陥凹はびらん 上皮性の変化を疑う部位は認めず 腫瘍 よりも炎症性疾患を疑うと読影した 徳竹は 1cm 前後の きさの病変で 病 変部に壁の硬化を認め 粘膜下の強い線維化を 唆する所見と読影した 陥凹部 の周囲粘膜は正常 pit が保たれ 窩間部の開 が無いため 同部の隆起は粘膜下 の深い部分から押し上げていると判断した 上皮性腫瘍を積極的に疑う部分は 指摘できず 悪性リンパ腫は鑑別に上がるが 硬い病変であることから否定的 SM MP に浸潤する低分化癌の可能性があり 多臓器癌の転移も鑑別に上がる

と読影した NBI 拡 とピオクタニン拡 所見の読影に移ったが 藤は診断に変更はな かった 徳竹はピオクタニン拡 所見で陥凹部分に散在する細かい点状 pit は 低分化型腺癌の浸潤によって立ち枯れている正常腺管である可能性があると指 摘した また 若年であれば endometriosis の可能性はあるが本症例では否定的 周囲臓器からの直接浸潤は 病変が小範囲であることから否定的とコメントし た 昭和 学の三澤は 病変の境界が明瞭であるので炎症よりも腫瘍を疑い 陥 凹底に残存する pit からは非上皮性よりも上皮性腫瘍を疑うと述べた 深達度は sm mp あるいは ss の可能性もある深い癌であり 特殊型の癌の可能性もある と述べた EUS では 徳竹は mp に及ぶ腫瘍の浸潤を疑うと読影した 症例提 の橋本がその後の経過について述べた sm 浸潤を伴う分化型癌と考 え 2 ヶ月後に外科手術を行ったところ por2, sig, tub2, muc 高度のリンパ管 浸潤とリンパ節転移を伴う進行癌であった 深達度は周辺隆起の部分は sm 陥 凹部は 部分 mp で 一段深い陥凹部は ss だった インジゴカルミン散布像で は陥凹部に数ヶ所の小孔を認めていたが その部分は muc の粘液が排泄される

小孔だったと解説した 病理解説の静岡がんセンター下田は 腸では胃の未分化癌 ( 特に sig) の様 に 上皮内で正常腺管の間に癌が入り込んで窩間部が開くという事はあまりな い 陥凹部にはほとんど腺管構造は残っていないが 2 ヶ月経っているので 精 査時の内視鏡所見をこの病理標本で解説する事は困難と述べた 症例 3 87 歳女性 性質の異なる 2 つのコンポーネントとして観察された除 菌後発見胃癌 ( 症例提 : 金沢医療センター 村仁志 ) 読影者 : まつもと医療センター松本病院宮林 新潟県立がんセンター小林 5 年前に早期胃癌に対して ESD H.pylori 除菌が行われて経過観察中に今回 の胃病変を指摘された 特に自覚症状はなく 血液検査の異常も認めない 初めに 通常光とインジゴカルミン散布像の読影を宮林が行った 萎縮性の胃 粘膜を背景として 胃体下部小湾後壁に 1.5cm 径の隆起性上皮性病変 ( 腺腫あ るいは低異型度胃癌疑い ) を指摘した 小林は 萎縮領域内の病変であり 分化 型の粘膜内癌と診断した NBI 拡 像は 小湾側の Part A と後壁側の Part B に分けて読影され 宮林は

両方とも分化型腺癌と読影した 小林は 両方とも表面構造が不明瞭化した部分 が癌であると指摘し Part A では WOS を認めるため Part B とは組織型が異 なる可能性があるが 両方とも tub1 であろうと意見を述べた 佐久医療センタ ーの高橋は Part A は tub1 Part B の茶色の窩間部が広がっている部分は表面 非腫瘍で その下に手繋ぎの tub2 が広がっている可能性があると意見を述べた 魚沼基幹病院の八木は Part A の方が B よりも腺管密度が高いように見え Part B の病変内に light blue creast が見える部分は除菌後の変化で非腫瘍粘膜が乗っ ている可能性があると述べた 提 者の 村は 術前診断を以下のように述べた Part A は DL (+), V: absent, S: irregular, WOS(+) であり腸型の分化型癌を疑い 生検で tub1 と診断された Part B は DL(+), V: absent, S: irregular だが癌の確信度は低く Part A とともに ESD を行って判断する方針とした ESD 標本の病理組織像では Part A は比較 的密な tub1 の癌であり 免疫染色から胃腸混合型と判断した Part B は表層が 胃型の tub1 で 粘膜固有層内には腫瘍 / 非腫瘍の判断が難しい胃底腺様組織が 存在した Part A と B の間には非腫瘍が存在し 二つの癌が併存したと思われ た

静岡がんセンターの下田は Part A は胃型の形質が強い胃腸混合型 Part B は粘膜固有層内に通常の胃底腺構造をとらない MUC6 陽性の異常組織があり MIB-1 陰性だが mucous neck cell と壁細胞の性質を持った胃底腺型癌の初期 像ではないか意見を述べた その最表層も癌であり 一部に非腫瘍上皮が混在し ているが それが除菌による影響かどうかは不明であると述べた 症例 6 60 歳台女性 色調領域を伴う 道の不整形陥凹性病変 ( 症例提 : 佐久医療センター高橋亜紀子 ) 読影者 : 仙台厚生病院前田 岡 字病院竹内 2 年前に 道の 色陥凹性病変を指摘され 生検でメラノーシスと判断され た その後 半年ごとに EGD 再検されてきたが 精査加療目的に佐久医療セン ターへ紹介となった 最初に 前医で行われた 2 年前 1.5 年前 半年前の EGD 写真について読影 が行われた 前田は 境界明瞭な陥凹性病変で内部に濃淡のある強い 色調の変 化を伴っており 悪性 色種を疑うが い経過があり典型的でないと意見を述 べた 竹内は やや不整形の発 陥凹の周辺に 色調変化を認めるが 悪性 色

腫は 色に濃淡があり隆起や平坦を呈する事が一般的であり 鑑別では下位に なる SCC にメラノーシスを伴った病変が疑われると述べた 次に 佐久医療センターの内視鏡写真 ( 非拡 の白色光 NBI) の読影が行わ れた 前田は 陥凹部の 部分は非腫瘍の扁平上皮が被覆して肛門側にはびらん がある 色の色調変化は陥凹の外側にも染み出し様に広がって 陥凹外側にも 若干の隆起を伴っている SCC を疑う所見無く やはり悪性 色腫を疑う 道の他の部位には発 調変化があるが 色変化は見られないと述べた 竹内は 病変部が脱気した状態で盛り上がるが 空気を入れると伸びるので軟らかい印 象がある SCC の所見は指摘できず 悪性 色腫の可能性が高いように思うと 述べた 総合犬山中央病院の小澤は 癌の所見は無く 道の前壁病変であり 前医では見られなかった粘膜下からの圧排所見があるため 炭粉沈着症による リンパ節炎が 道に穿破した病変を疑うと意見を述べた 佐久医療センターの拡 内視鏡所見の読影では 前田は 観察範囲に SCC を 疑う IPCL を認めず 悪性 色腫として 盾しない内視鏡像ではあるが 時間の 経過で増 していない点から否定的と述べた 以上より 小澤の意見に同意する と内視鏡診断を変更した 竹内は 陥凹部は炎症 再生の変化で非腫瘍扁平上皮

が覆っており 観察範囲に見える NBI は IPCL type A である 本例のように 色部分に濃淡があることは悪性 色腫で認める所見だが 陥凹性病変であり病 変部全体の隆起している事を考慮すると炭粉沈着症によるリンパ節炎の 道穿 破という意見に同意すると述べた 佐久医療センターの高橋の解説では 検査時 には病変を正面視するために空気を抜いて写真を撮っていたためこのような写 真になったが 空気伸展は良好で明らかな病変部の外部圧排像や壁の硬化は無 かったと情報提供があった ヨード散布像では 前田は主病変とその付近に不整 形の明瞭な不染帯を複数認める事を指摘し 竹内は SCC の EP 癌を強く疑うと 述べた 主病変の中央部は再生上皮に覆われているとこれまで読影していたが ヨード不染である理由は説明できないと前田が述べた 佐久医療センターの術前診断は主病変 melanosis with SCC EP/LPM 副病変 SCC EP であり 生検無しで ESD を施行した 主病変と副病変を一括切除し 病理組織所見では主病変の陥凹部分は基本的に SCC EP/LPM であり 部分に melanosis を認め 内部の白色部分には epidermization を認めた 副病変は全て EP 癌であり melanosis や epidermization は認めなかった 病理解説は信州 学の太田浩良が行った この 道癌は通常の SCC とは異な

り 表層にきれいに分化していく性質があり このような epidermization( 扁平 上皮表面の厚い角化層 ) を伴っている 表皮に類似した腫瘍であるため 同部に melanocyte が集まっていることに関係している可能性があるとコメントした 佐久医療センターの小山は melanoma と melanosis を伴った SCC との鑑別 について解説した melanoma は表面近くまで melanoma 細胞が存在するが melanosis は基底膜付近にだけ存在する 本症例では 白色光で く見えている 部分が NBI では見えないことからも 色物が深い所に存在する事がわかるの で これは melanosis と診断する根拠になると述べた