2010 年 5 月 14 日 vol. 25 第 9 部引当金 (1) 引当金 の部では 4 回にわたり 以下の項目について想定される主な実務上の論点に触れていきます IAS 第 37 号 引当金 偶発債務及び偶発資産 における引当金の定義 適用範囲 引当金の認識要件及び測定 リストラクチャリング引当金及び不利な契約 資産除去債務 はじめに IAS 第 37 号において 引当金は時期又は金額が不確実な負債と定義されています ここで 負債とは 過去の事象から発生した現在の債務であり これを決済するために経済的便益を有する資源が流出する結果が予想されるものをいいます 引当金は将来の支出の時期または金額が不確実であるという点が 買掛金や未払費用のような他の債務との相違点です このように IAS 第 37 号は負債性の引当金のみを取り扱っており 貸倒引当金等の資産の帳簿価額の修正となるものは対象としていません また IAS 第 37 号は未履行の契約に起因するものは対象としていません 未履行の契約とは いずれの当事者もその債務をまったく履行していないか あるいは 双方ともそれらの債務を部分的に同じ程度に履行している状態の契約をいいます ただし 未履行の契約が不利な契約に該当する場合には IAS 第 37 号の適用対象になります 不利な契約については 第 3 回において説明します なお IAS 第 37 号以外により詳細な基準書が存在する場合には 当該基準書が適用されます その具体例は以下の通りです 企業結合により引き受けられた偶発債務 (IFRS 第 3 号を参照 ) 工事契約 (IAS 第 11 号 工事契約 を参照 ) 法人所得税 (IAS 第 12 号 法人所得税 を参照 ) リース (IAS 第 17 号 リース を参照 ) しかし IAS 第 17 号は不利な契約となったオペレーティング リースの取扱いについては特に定めていないため その場合には IAS 第 37 号が適用される 従業員給付 (IAS 第 19 号 従業員給付 を参照 ) 保険契約 (IFRS 第 4 号 保険契約 を参照 ) 金融商品 (IAS 第 39 号 金融商品 : 認識及び測定 を参照 )
また 商慣行として返品の可能性がある取引形態の場合 販売当初時点で予想される返品を含んだ全ての売上を計上し 将来の返品に対応する売上総利益相当額を返品調整引当金として計上することが日本の実務において見受けられますが IFRS の適用にあたっては IAS 第 18 号 収益 に照らして販売当初時点で収益を認識することが適切かという検討が 返品調整引当金を認識するかどうかの検討に先立って必要になります 引当金の認識要件 IAS 第 37 号では 以下のすべてを満たす場合には引当金が認識されます 企業が過去の事象の結果として現在の債務 ( 法的又は推定的 ) を有している 当該債務を決済するために経済的便益を有する資源の流出が生じる可能性が高い 当該債務の金額について信頼できる見積りが可能である これらの条件が満たされない場合には 引当金を認識することはできませんが 一定の要件を満たすものは偶発債務としてその種類ごとに内容についての簡潔な説明を開示しなければならないとされています 引当金の認識及び偶発債務の開示の検討過程をフローチャートで示すと以下のようになります 判定開始 Ernst & Young ShinNihon LLC アーンスト アンド ヤングについてアーンスト アンド ヤングは アシュアランス 税務 トランザクション アドバイザリー サービスなどの分野における世界的なリーダーです 全世界の 14 万 4 千人の構成員は 共通のバリュー ( 価値観 ) に基づいて 品質において徹底した責任を果します 私どもは クライアント 構成員 そして社会の可能性の実現に向けて プラスの変化をもたらすよう支援します 詳しくは www.ey.com にて紹介しています アーンスト アンド ヤング とは アーンスト アンド ヤング グローバル リミテッドのメンバーファームで構成されるグローバル ネットワークを指し 各メンバーファームは法的に独立した組織です アーンスト アンド ヤング グローバル リミテッドは 英国の保証有限責任会社であり 顧客サービスは提供していません 新日本有限責任監査法人について新日本有限責任監査法人は アーンスト アンド ヤングのメンバーファームです 全国に拠点を持ち 日本最大規模の人員を擁する監査法人業界のリーダーです 品質を最優先に 監査および保証業務をはじめ 各種財務関連アドバイザリーサービスなどを提供しています アーンスト アンド ヤングのグローバル ネットワークを通じて 日本を取り巻く世界経済 社会における資本市場への信任を確保し その機能を向上するため 可能性の実現を追求します 詳しくは www.shinnihon.or.jp にて紹介しています 過去の事象の結果としての現在の債務を有しているか? 発生しうる債務か? お問い合わせ先新日本有限責任監査法人 IFRS 推進本部 100-0011 東京都千代田区内幸町二丁目 2-3 日比谷国際ビル Email: ifrs@shinnihon.or.jp 経済的便益を有する資源の流出が生ずる可能性が高いか? 経済的便益を有する資源の流出の可能性がほとんどないか? 2010 Ernst & Young ShinNihon LLC All Rights Reserved. 債務の金額について信頼できる見積ができるか? ( 稀 ) 本書又は本書に含まれる資料は 一定の編集を経た要約形式の情報を掲載するものです したがって 本書又は本書に含まれる資料のご利用は一般的な参考目的の利用に限られるものとし 特定の目的を前提とした利用 詳細な調査への代用 専門的な判断の材料としてのご利用等はしないでください 本書又は本書に含まれる資料について 新日本有限責任監査法人を含むアーンスト アンド ヤングの他のいかなるグローバル ネットワークのメンバーも その内容の正確性 完全性 目的適合性その他いかなる点についてもこれを保証するものではなく 本書又は本書に含まれる資料に基づいた行動又は行動をしないことにより発生したいかなる損害についても一切の責任を負いません 引当金の認識偶発債務の開示何もしない 次回は引き続き 引当金の認識要件について説明するとともに 引当金の測定についても触れます
2010 年 5 月 28 日 vol. 26 第 9 部引当金 (2) 前回に引き続き 引当金の認識に関する論点について説明します また 引当金の測定についても説明します 引当金の認識要件 1 過去の事象の結果として現在の債務 ( 法的又は推定的 ) を有している 財務諸表が取り扱うのは 企業の期末日時点の財政状態であって 将来に起こり得る財政状態ではありません したがって 将来の事業活動に関する費用に対しては 引当金を認識しません 企業の財政状態計算書 ( 貸借対照表 ) に負債として認識されるものは 期末日に存在する負債に限られ 企業の将来の活動とは関係なく 過去の事象から発生した現在の債務のみが引当金として認識されることになります 例えば 日本基準で計上が容認されている修繕引当金や特別修繕引当金は 債務性を有していないため IFRS では計上が認められていません IFRS では このような大規模な検査が実施されるときに生じた費用は 引当金として計上するのではなく 一定の条件を満たす場合には 有形固定資産の帳簿価額に含めて計上されます 訴訟のようなごく稀なケースでは 現在の債務を有しているかどうかが明確でない場合があります このような場合 利用可能なすべての証拠を考慮した上で もし 報告期間の期末日において現在の債務が存在している可能性の方が 存在していない可能性よりも高ければ 過去の事象の結果として現在の債務を有しているものとみなされます また 報告期間の期末日において現在の債務が存在していない可能性の方が存在している可能性よりも高い場合には 企業は 経済的便益を有する資源の流出の可能性がほとんどない場合を除き 偶発債務を開示することになります なお 債務には 法的債務 (*1) のみならず 推定的債務 (*2) も含まれます 日本基準には推定的債務についての明文の定めがないため 差異が生じる可能性があります 定義からも分かるように 推定的債務を引当金として認識する場合 企業がその責務を遂行するであろうという妥当な期待を惹起させるように 十分かつ詳細な方法で その決定が影響を受ける人々に報告期間の期末日より前に ( 計画の実行を開始すること又は公表を通じて ) 伝達されていなければなりません よって 経営者又は会社の機関による決定のみでは推定的債務を発生させたことにはなりません この規定に最も影響を受けるのはリストラクチャリング引当金であり 次回説明します
(*1) 法的債務 : 契約 ( 明示的又は黙示的な条件を有する ) 法律の制定又は法律のその他の運用により発生した債務 (*2) 推定的債務 : 確立されている過去の実務慣行 公表されている政策又は極めて明確な最近の文書によって 企業が外部者に対しある債務を受諾することを表明しており かつその結果 企業はこれらの責務を果たすであろうという妥当な期待を外部者の側に惹起している場合に生じる債務 引当金の認識要件 2 経済的便益を有する資源の流出可能性が高い 引当金として認識するには 現在の債務を有しているだけでなく 債務を決済するための経済的便益を有する資源の流出の可能性が高くなければなりません このような 可能性が高い という表現の解釈は 資源の流出又は他の事象が起こらない可能性よりも 起こる可能性の方が高いことを意味しています すなわち 事象の起こる確率が起こらない確率よりも高い場合であり 50% 超の確率で発生する場合が該当します 引当金の認識要件 3 債務の金額についての信頼できる見積りが可能 IAS 第 37 号は 引当金の他の認識要件を満たしている場合には 信頼できる見積りが当然にできるとの前提に立っています 極めて稀な例外を除き 企業は起こり得る結果をある程度絞り込むことができ したがって 引当金の認識に使用するための十分に信頼できる債務の見積りを行うことができると考えられます なお 信頼できる見積りができないという極めて稀な場合には 認識できない負債が存在することになりますが 当該負債は偶発債務として開示されます 引当金の測定 引当金として認識される金額は 現行の基準では 報告期間の期末日における 現在の債務を決済するために要する支出の最善の見積り となっています 現在の債務を決済するために要する支出の最善の見積り とは 報告期間の期末日の債務を決済するため 又は報告期間の期末日に債務を第三者に移転するために企業が合理的に支払う金額をいいます また 2010 年 1 月に公表された負債の測定方法についての公開草案では 負債の測定方法を 現在の債務から解放されるために合理的に支払う金額で測定されること とされました これにより 引当金の額は 下の図のように 負債をキャンセルできる場合または移転できる場合には それも併せて検討することになります 負債をキャンセル又は移転することができるか 債務を履行するために必要な資源の現在価値 以下のうち最も低い金額 債務を履行するために必要な資源の現在価値 債務をキャンセルするために必要な支出額 債務を第三者に移転するために必要な支出額
なお IAS 第 37 号全体の改訂基準は 2010 年第 3 四半期に公表が予定されており 適用は 2012 年 1 月 1 日以降に開始する年度より早い時期には適用されないことが暫定的に決定されています 貨幣の時間的価値の影響が重要な場合には 引当金額は債務の決済に必要と見込まれる支出の現在価値としなければなりません ここで 割引率は 貨幣の時間的価値の現在の市場評価とその負債に特有なリスクを反映した税引前割引率でなければなりません また 割引率は 将来キャッシュ フローの見積りにおいて調整されているリスクを反映させてはなりません 多くの場合 引当対象はキャッシュ フロー割引の結果として重要な影響が生じるほど遠い将来の事象ではないため 割引計算が必要となるケースは必ずしも多いとは限りません しかし 日本基準では引当金の割引計算に関する規定がなく 引当金の割引に関する実務が定着していないため 実務に影響を与える可能性があります 次回は リストラクチャリング引当金及び不利な契約に関する論点について説明します Ernst & Young ShinNihon LLC アーンスト アンド ヤングについてアーンスト アンド ヤングは アシュアランス 税務 トランザクション アドバイザリー サービスなどの分野における世界的なリーダーです 全世界の 14 万 4 千人の構成員は 共通のバリュー ( 価値観 ) に基づいて 品質において徹底した責任を果します 私どもは クライアント 構成員 そして社会の可能性の実現に向けて プラスの変化をもたらすよう支援します 詳しくは www.ey.com にて紹介しています アーンスト アンド ヤング とは アーンスト アンド ヤング グローバル リミテッドのメンバーファームで構成されるグローバル ネットワークを指し 各メンバーファームは法的に独立した組織です アーンスト アンド ヤング グローバル リミテッドは 英国の保証有限責任会社であり 顧客サービスは提供していません 新日本有限責任監査法人について新日本有限責任監査法人は アーンスト アンド ヤングのメンバーファームです 全国に拠点を持ち 日本最大規模の人員を擁する監査法人業界のリーダーです 品質を最優先に 監査および保証業務をはじめ 各種財務関連アドバイザリーサービスなどを提供しています アーンスト アンド ヤングのグローバル ネットワークを通じて 日本を取り巻く世界経済 社会における資本市場への信任を確保し その機能を向上するため 可能性の実現を追求します 詳しくは www.shinnihon.or.jp にて紹介しています お問い合わせ先新日本有限責任監査法人 IFRS 推進本部 100-0011 東京都千代田区内幸町二丁目 2-3 日比谷国際ビル Email: ifrs@shinnihon.or.jp 2010 Ernst & Young ShinNihon LLC All Rights Reserved. 本書又は本書に含まれる資料は 一定の編集を経た要約形式の情報を掲載するものです したがって 本書又は本書に含まれる資料のご利用は一般的な参考目的の利用に限られるものとし 特定の目的を前提とした利用 詳細な調査への代用 専門的な判断の材料としてのご利用等はしないでください 本書又は本書に含まれる資料について 新日本有限責任監査法人を含むアーンスト アンド ヤングの他のいかなるグローバル ネットワークのメンバーも その内容の正確性 完全性 目的適合性その他いかなる点についてもこれを保証するものではなく 本書又は本書に含まれる資料に基づいた行動又は行動をしないことにより発生したいかなる損害についても一切の責任を負いません
2010 年 6 月 11 日 vol. 27 第 9 部引当金 (3) 今回は リストラクチャリング引当金と不利な契約に関する論点について説明します 日本基準では いずれも明確な定めはありませんが IAS 第 37 号では 引当金に関する一般的な認識及び測定の定めに加え リストラクチャリングや不利な契約など 特定の状況に関してガイダンスを定めています リストラクチャリング引当金の認識 引当金の認識要件の 1 つとして 企業が過去の事象の結果として現在の債務 ( 法的又は推定的 ) を有していることが挙げられていますが IAS 第 37 号は 必要以上に早いタイミングでリストラクチャリング引当金を認識してしまうことを防ぐために リストラクチャリングに関する推定的債務の発生について述べています リストラクチャリングによる推定的債務は 以下の場合にのみ発生するとされています 企業が リストラクチャリングについて少なくとも以下の事項を明確にした詳細な公式計画を有していること 関係する事業の全部またはその一部 影響を受ける主たる事業所 雇用契約終結により補償を受けることになる従業員の勤務地 職種及びその概数 企業が負担する支出 当該計画が実施される時期 企業がリストラクチャリング計画を開始することによって 又はリストラクチャリングにより影響をうける人々にその主要な内容を公表することによって 企業がリストラクチャリングを実行するであろうという妥当な期待を 影響を受ける人々に惹起していること
リストラクチャリング計画の詳細を伝達することにより 顧客 仕入先又は従業員など他の当事者にリストラクチャリングが実行されるという妥当な期待を惹起していることが必要であり 単に取締役会で意思決定を行っているというだけでは推定的債務を発生させません また リストラクチャリング計画が推定的債務としての要件を満たすためには リストラクチャリングをなるべく早く開始し 計画に対する重要な変更が生じ得ないような期間内に完了するように計画されている必要があります リストラクチャリングを開始するまでに長い遅延が生じる 又はリストラクチャリングが不合理に長い期間にわたることが予想される場合は 企業が計画を変更する機会を持ちうるため 企業が現時点でリストラクチャリングをコミットしているという妥当な期待を他の人々に惹起しているとは言えないであろうとされています なお 推定的債務が発生していない場合でも IAS 第 36 号 資産の減損 に従い 減損損失が認識される可能性があることに留意することが必要です リストラクチャリング引当金と事業の売却 リストラクチャリングに伴い 事業が売却されることがありますが 事業の売却については 企業が売却を確約して初めて すなわち拘束力のある売買契約が存在して初めて債務が発生することになると定められています これは 企業がたとえ事業の売却を決定し それが公表済みであっても適用されます 従って 買手が特定された拘束力のある売買契約が締結されない限り 売却に伴う損失について引当金を認識することはできません このように 事業の売却についてはリストラクチャリングに関する他の債務の発生要件よりも厳格に定められています Ernst & Young ShinNihon LLC アーンスト アンド ヤングについてアーンスト アンド ヤングは アシュアランス 税務 トランザクション アドバイザリー サービスなどの分野における世界的なリーダーです 全世界の 14 万 4 千人の構成員は 共通のバリュー ( 価値観 ) に基づいて 品質において徹底した責任を果します 私どもは クライアント 構成員 そして社会の可能性の実現に向けて プラスの変化をもたらすよう支援します 詳しくは www.ey.com にて紹介しています アーンスト アンド ヤング とは アーンスト アンド ヤング グローバル リミテッドのメンバーファームで構成されるグローバル ネットワークを指し 各メンバーファームは法的に独立した組織です アーンスト アンド ヤング グローバル リミテッドは 英国の保証有限責任会社であり 顧客サービスは提供していません 新日本有限責任監査法人について新日本有限責任監査法人は アーンスト アンド ヤングのメンバーファームです 全国に拠点を持ち 日本最大規模の人員を擁する監査法人業界のリーダーです 品質を最優先に 監査および保証業務をはじめ 各種財務関連アドバイザリーサービスなどを提供しています アーンスト アンド ヤングのグローバル ネットワークを通じて 日本を取り巻く世界経済 社会における資本市場への信任を確保し その機能を向上するため 可能性の実現を追求します 詳しくは www.shinnihon.or.jp にて紹介しています なお 引当金の認識には至らない場合でも 事業の売却がより大きなリストラクチャリングの一環として実行されることが予定されている場合は 事業に関連する資産について IAS 第 36 号に従って 減損の有無について検討する必要があります 不利な契約 企業が不利な契約を有している場合には その契約による現在の債務を引当金として測定し 認識しなければなりません IAS 第 37 号は 不利な契約を 契約による債務を履行するための不可避的な費用が 契約上見込まれる経済的便益の受取見込額を超過している契約 と定義しています 例えば 日常的な購買注文のような契約は 相手への補償金の支払なしで解約することができるため 不利な契約には該当しません IAS 第 37 号では 企業が新しい工場に移転した後も オペレーティング リースにより継続的に賃貸している旧工場について 解約不能で かつ 工場を他の利用者に転貸することもできない契約を不利な契約の例として説明しています お問い合わせ先新日本有限責任監査法人 IFRS 推進本部 100-0011 東京都千代田区内幸町二丁目 2-3 日比谷国際ビル Email: ifrs@shinnihon.or.jp 2010 Ernst & Young ShinNihon LLC All Rights Reserved. 本書又は本書に含まれる資料は 一定の編集を経た要約形式の情報を掲載するものです したがって 本書又は本書に含まれる資料のご利用は一般的な参考目的の利用に限られるものとし 特定の目的を前提とした利用 詳細な調査への代用 専門的な判断の材料としてのご利用等はしないでください 本書又は本書に含まれる資料について 新日本有限責任監査法人を含むアーンスト アンド ヤングの他のいかなるグローバル ネットワークのメンバーも その内容の正確性 完全性 目的適合性その他いかなる点についてもこれを保証するものではなく 本書又は本書に含まれる資料に基づいた行動又は行動をしないことにより発生したいかなる損害についても一切の責任を負いません 次回は 資産除去債務について説明します
2010 年 6 月 25 日 vol. 28 第 9 部引当金 (4) 今回は 資産除去債務に関する論点について説明します 資産除去債務の構成要素 IFRS では 有形固定資産の資産除去債務 ( 解体 除却 原状回復の負債見積額 ) は IAS 第 16 号 有形固定資産 に従い 当該有形固定資産の取得原価の一部として認識され 負債は IAS 第 37 号 引当金 偶発債務及び偶発資産 に従って会計処理されます 第 2 回で詳しく説明したとおり IAS 第 37 号では 引当金は次のすべてを満たす場合に認識しなければならないとされています 企業が過去の事象の結果として 現在の債務 ( 法的または推定的 ) を有している 当該債務を決済するために 経済的便益を有する資源の流出が生じる可能性が高い 当該債務の金額について信頼できる見積りが可能である ここで推定的債務とは 次のような企業活動から発生した債務をいいます 確立されている過去の実務慣行 公表されている政策又は極めて明確な最近の文書によって 企業が外部者に対し ある債務を受諾することを表明しており かつ その結果 企業がこれらの責務を果たすであろうという妥当な期待を外部者に惹起している 日本基準では資産除去債務とは 有形固定資産の取得 建設 開発又は通常の使用によって生じ 当該有形固定資産の除去に関して法令又は契約で要求される法律上の義務及びそれに準ずるものとされています また 法律上の義務及びそれに準ずるものには 有形固定資産を除去する義務のほか 有形固定資産の除去そのものは義務ではなくとも 有形固定資産を除去する際に当該有形固定資産に使用されている有害物質等を法律等の要求による特別の方法で除去する義務も含まれます したがって IFRS の適用にあたっては 日本基準で認識した資産除去債務に追加すべき推定的債務の有無を検討する必要があります
資産除去債務の変動 資産除去債務は 以下のような要因により変動しますが こうした変動の影響の会計処理は IFRIC 第 1 号 廃棄 原状回復およびそれらに類似する既存の負債の変動 が取り扱っています キャッシュ フローの見積りの変更 割引率 ( 直近の市場を基礎とする 貨幣の時間的価値及び負債に特有リスク含む ) の変更 割引の振戻し ( 時の経過による負債の増加 ) このうち キャッシュ フローの見積りの変更と割引率の変更による負債の変動の場合の会計処理は 関連する有形固定資産の事後測定について原価モデルを採用するか 再評価モデルを採用するかによって異なります 原価モデルの場合負債の変動額は 資産の取得原価に加算又は減算します ただし 資産の帳簿価額を超えて減算することはできず 負債の減少が資産の帳簿価額を超過する部分については 即時に損益として認識します 見積りの変動が帳簿価額に加算される場合には 資産全体について IAS 第 36 号 資産の減損 に従って減損の判定を行う必要があります 再評価モデルの場合負債の減少はその他包括利益で認識し 資本の部の再評価剰余金を増額します ただし 過年度に損益として認識した再評価額が存在する場合は その損益の額の範囲までは 損益として認識します 同様に負債の増加は 当該資産に係る再評価剰余金が存在する範囲までは その他包括利益で認識して資本の部の再評価剰余金を減額し それ以外は 損益として認識します 負債の減少により資産から減額する金額は 原価モデルを採用した場合の資産の帳簿価額を上限とし それを超過する金額は損益に認識します また 割引の振戻しについては 発生時に金融費用として損益に計上しなければならず これを IAS 第 23 号 借入費用 に基づいて資産の取得原価に算入することはできません IFRS では 資産除去債務にかかる割引率は直近の市場を基礎とするため 割引率の見直しによって資産除去債務の毎期の再計算が必要になります なお 日本基準では 資産除去債務にかかる割引率は 負債計上時に決定し その後の変更は行いません ただし 将来キャッシュ フローの見積額が増加した場合は その時点の割引率を適用します また 将来キャッシュ フローの見積りの変更による調整額は 資産の帳簿価額に加減し 割引の振戻しは 発生時の費用として処理します Ernst & Young ShinNihon LLC アーンスト アンド ヤングについてアーンスト アンド ヤングは アシュアランス 税務 トランザクション アドバイザリー サービスなどの分野における世界的なリーダーです 全世界の 14 万 4 千人の構成員は 共通のバリュー ( 価値観 ) に基づいて 品質において徹底した責任を果します 私どもは クライアント 構成員 そして社会の可能性の実現に向けて プラスの変化をもたらすよう支援します 詳しくは www.ey.com にて紹介しています アーンスト アンド ヤング とは アーンスト アンド ヤング グローバル リミテッドのメンバーファームで構成されるグローバル ネットワークを指し 各メンバーファームは法的に独立した組織です アーンスト アンド ヤング グローバル リミテッドは 英国の保証有限責任会社であり 顧客サービスは提供していません 新日本有限責任監査法人について新日本有限責任監査法人は アーンスト アンド ヤングのメンバーファームです 全国に拠点を持ち 日本最大規模の人員を擁する監査法人業界のリーダーです 品質を最優先に 監査および保証業務をはじめ 各種財務関連アドバイザリーサービスなどを提供しています アーンスト アンド ヤングのグローバル ネットワークを通じて 日本を取り巻く世界経済 社会における資本市場への信任を確保し その機能を向上するため 可能性の実現を追求します 詳しくは www.shinnihon.or.jp にて紹介しています お問い合わせ先新日本有限責任監査法人 IFRS 推進本部 100-0011 東京都千代田区内幸町二丁目 2-3 日比谷国際ビル Email: ifrs@shinnihon.or.jp 2010 Ernst & Young ShinNihon LLC All Rights Reserved. 本書又は本書に含まれる資料は 一定の編集を経た要約形式の情報を掲載するものです したがって 本書又は本書に含まれる資料のご利用は一般的な参考目的の利用に限られるものとし 特定の目的を前提とした利用 詳細な調査への代用 専門的な判断の材料としてのご利用等はしないでください 本書又は本書に含まれる資料について 新日本有限責任監査法人を含むアーンスト アンド ヤングの他のいかなるグローバル ネットワークのメンバーも その内容の正確性 完全性 目的適合性その他いかなる点についてもこれを保証するものではなく 本書又は本書に含まれる資料に基づいた行動又は行動をしないことにより発生したいかなる損害についても一切の責任を負いません 今回で第 9 部 引当金 は最終回となります 次回は 企業結合及びのれん です