相続の対策について ( 平成 22 年 10 月 1 日の法令による ) <1> 対策を分類する 1) タイミングごとに 対策 ( 方法 ) が分かれる 生前における対策 直前における対策 相続発生後における対策 2) 目的別に 対策 ( 方法 ) が分かれる 評価を下げるための対策 ( 節税その1) 税率を下げるための対策 ( 節税その2) 納税力を確保するための対策 争族 とならないための対策 上記を分類 整理したマトリックス 生前 ( 直前含む ) 発生後 申告後 評価を下げるための対策 ( 節税その1) A-1 B-1 税率を下げるための対策 ( 節税その2) A-2 B-2 C 納税力を確保するための対策 A-3 B-3 争族 とならないための対策 A-4 B-4 <2> 留意事項 1) 我が家にとって必要なのは どの目的の対策か 実は 大切なことは 争族 とならないための対策が最も大事 次に納税力を確保するための対策が重要 2 次相続まで考慮してプランを作るべき 2) まず 試算 をすることから始まる 相続人の確認 財産の確認 * 絶対に残したい財産 と 処分可能な財産 の分類 整理 3) 対策は実行しなければ意味が無い 出来ることからやっていく 4) 対策のデメリットも理解する 5) 対策実行後のフォローも大切 節税は その1もその2も 改正によって効果が変動する! 社会環境変化への対応策を考える必要がある 6) 税務調査を受けることを前提に対策を考える 1
<A-1> 生前 & 評価を下げるためポイント : 1 相続税法の 特例 を効果的に使う 要件に注意 2 実質価値より相続税評価が低くなる資産にシフトする 不動産の評価は 売却時価 ( 収益還元価値ではない ) 3 父の財産を今以上に増やさない ( 所得を分散する ) 4 財産そのものを移す 1) 遺言書の作成 小規模宅地の特例 配偶者の税額軽減 は分割が確定しないと使えない 2) 金融資産を投資して ( 借り入れして ) 賃貸用不動産を取得する 通常 建物は投資額より評価が下がる 更に 貸家は借家権が控除できる また 土地の評価額は 実績価格の80% 以下になることが多い さらに 貸家の敷地は 評価が下がる ( 下記 13の場合 ) * 建築主に注意する建築主の候補 1 父 2 子 3 法人 次の3) 参照 3) 子が出資した法人に 土地を貸す 無償返還届 により 賃貸借でも借地権課税なし * 法人が借地権を20% 持つことになる 退職金の非課税枠を使える可能性がある 4) 生前贈与 通常贈与か 相続時精算課税制度を使うか * 将来 相続税評価額が上がることが確実なものは 精算課税制度が有利 証拠を残す * 契約書を作り確定日付印を付す 贈与税の申告を行う 通帳に記録を残すなど 生前 3 年以内の贈与は相続税の対象となる 相続人以外に贈与すべき 収益物件を贈与する 所得税対策にもなる場合が多い 居住用財産について 贈与税の配偶者控除 の適用を受けて贈与する 争族 の種にならない工夫を 2
5) その他 仏壇や墓地は 生前に父の資金から購入しておくべき 居住用財産について 贈与税の配偶者控除 の適用を受けて贈与する 同族会社の株式については 要注意 3
<A-2> 生前 & 税率等を下げるためポイント : 1 相続税は 基礎控除がある (5000 万円 +1000 万円 法定相続人の数 ) 2 相続税は 超過累進課税である 相続人の数が増えたほうが有利 1) 養子 15 年改正で 孫養子は2 割加算の対象となった 実子あり :1 人まで 実子なし :2 人まで 税務計算上 法定相続人の数の修正を行う * いわゆる 連れ子養子 は規制の対象外 * 民法上は あくまでも養子が相続人であることには違いは無い 遺贈 よりも 登録免許税や不動産取得税も安くなる 実子がいない場合に養子縁組すると 相続順位が変動する * 兄弟姉妹が複数いる場合など 結果的に法定相続人が減る場合 税金が高くなる 2) 生前に 贈与その他の方法で分配する 相続税は 累進課税であるから財産総体が減れば税率は下がる 3) 遺言書の作成 孫に遺贈する 一代とばす効果がある ( ただし 2 割加算 となる ) 4
<A-3> 生前 & 納税力確保ポイント : 1 推定相続人の財産を増やす 2 現金化し易い財産も残す 3 延納 ( 又は借入 ) を可能にするような財産活用 1) 生前贈与 相続人固有の財産が多ければ 納税力が高まる 2) 生命保険の活用 非課税枠 (500 万円 法定相続人の数 ) までは 加入を検討すべき 3) 土地の測量 ( 境界確認 ) や担保物件の整理 物納するにせよ 売却するにせよ 父の資金で行っておくべき * 意外に費用がかかる * 隣地との境界確定も 父の代でやっておくと助かる 残すべきものと処分可能なものを区分しておく ( 共有物や抵当権付きの物件は 売却や物納が困難 ) 4) 土地を有効活用する ( 貸家を建てるなど ) 納税力の観点から納税用に残すべき資産をしっかり区分してから行うこと 土地の評価は 収益還元方式ではない 時価に見合う収益を上げるべき 法人を経由すると 複数の相続人に納税資金を貯めさせやすい * 推定相続人の金融資産を増やす結果になることが望ましい * 行為 計算の否認規定に留意する 5) 不良資産 の整理 貸地 納税力の観点からは 不良資産である * 父の代に 借地人と交渉して売却可能な資産に転換していくことが必要 同族会社の株式 同族会社への貸付金 5
<A-4> 生前 & 争族 対策 1) 遺言書を作成しておく 極力 公正証書 にするべき 家訓 や 今後の生活指針 など 財産に関すること以外も書いてよい 実際には 遺言と異なる分割協議をすることも可能 2) 財産の内容を オープンに子に伝えておく 疑心暗鬼にならないで済むように 3) 生前贈与は要注意 特別受益と寄与分は水掛け論になり易い 4) 節税 を優先しすぎない 相続後の相続人の生活が成り立つようにプランすることが重要 * 建物と借入金の評価差額を使った節税策は やり過ぎると大変 養子縁組は要注意 土地の有効活用が行き過ぎの場合 分割しづらくなる * 残すべき資産と処分可能な資産 6
<B-1> 発生後 & 評価を下げるため 1) 適法範囲内で最大の評価減を適用する 税理士選びは重要なポイント 時には 不動産鑑定士に評価を依頼する 分割の方法によって 評価が下がる場合もある 2) 期限内 ( なるべく早く ) 分割を確定させる 配偶者の税額軽減が使える 小規模宅地の特例 * 財産の受取人によって 控除額が変化することに注意 農地等の相続税の納税猶予および特定事業用資産の特例が使える 3) 同族会社がある場合 死亡退職金の検討 7
<B-2> 発生後 & 税率等を下げるため 1) <B-1>に集約した 8
<B-3> 発生後 & 納税力確保 1) 納付の方法の選択 現金一括 できなければ 延納( 又は借入 ) か 物納( 又は売却 ) 延納 物納 は期限内の申請が要件 平成 18 年改正により 厳しくなった 申告 納付期限はあっという間に来る 2) 不良資産 の処理 貸地は要注意 同族会社の株式 同族会社への貸付金 3) 分割しづらい財産の場合 現金による 代償分割 を活用する 預金の本数が多いときも 活用すると便利である 代物分割 になると 譲渡所得税が課税されることになる 法定相続分以上に受け取ると 贈与 となる 4) 相続税の提出期限から3 年以内に譲渡した場合 相続税の取得費加算 の適用ができる 相続税の納税資金ねん出のためにも 譲渡による所得税を少なくする 5) 法人を持っている場合には 死亡退職金も検討する 6) 連帯納付義務に注意 他の相続人の納税力にも注意が必要である 7) 次の相続のことを検討しておく 今回の納税額は高くなっても 通算すると節税になる可能性あり 9
<B-4> 発生後 & 争族 対策 1) 分割協議の場に 父が同席している と想像しながら協議する 2) 第三者 ( おじ おば 外部専門家 ) を同席させる 3) 次世代のことを考える 将来 いとこ同士の共有は不自然 次の相続の納税のことを考える 4) 分割が期限内に完了しない場合の税務上のデメリットを理解する 配偶者の税額軽減が使えない 小規模宅地の特例が使えない * 誰が相続するか によって控除割合が変化することにも注意 物納できない 譲渡した場合の 相続税の取得費加算 は相続税の提出期限から3 年以内に譲渡した場合のみ 5) 預金関係は 分割確定前は 相続人全員の合意がないと 支払いに充てられない 預金を下ろすのにも 相続人全員の合意が必要 * 各種の納税や借り入れの返済に間に合わないことがないよう注意する 6) 自宅等を取得する人を先に決める 生活の根拠であるから 決めやすい 7) 収益物件を取得する人を先に決める 相続人固有の納税力が低い人に収益物件を相続させ その後順次決めていく 10
<C> 申告書提出後の対策 1) 分割協議のやり直しは 原則として贈与と認定される 交換 贈与 売却などの手段を専門家に相談すべき 相続人が新たに現れた など特別な事情がある場合には 専門家に相談すべき 2) 遺産に漏れがあった場合 修正申告の義務がある 調査があることを予見して修正した場合 とそうでない場合 罰金類が異なる 3) 遺産を過大に計算していた場合 原則として 申告期限から1 年 ( 嘆願により5 年 ) まで 還付請求が出来る ( 更正の請求 ) 4) 相続税の取得費加算 は相続税の提出期限から 3 年以内に譲渡した場合のみ 5) 税務調査に備える 申告書作成に使った資料類を無くさない 11
相続税の税率 14 年以前 15 年以降 法定相続分に応ずる取得金額率 (%) 控除額 ( 千円 ) 法定相続分に応ずる取得金額率 (%) 控除額 ( 千円 ) 8000 千円以下 10-10000 千円以下 10-16000 千円以下 15 400 30000 千円以下 15 500 30000 千円以下 20 1,200 50000 千円以下 20 2,000 50000 千円以下 25 2,700 1 億円以下 30 7,000 1 億円以下 30 5,200 3 億円以下 40 17,000 2 億円以下 40 15,200 3 億円超 50 47,000 4 億円以下 50 35,200 20 億円以下 60 75,200 20 億円超 70 275,200 贈与税の税率 ( 相続時精算課税制度不選択の場合 ) 14 年以前 15 年以降 基礎控除後の金額率 (%) 控除額 ( 千円 ) 基礎控除後の金額率 (%) 控除額 ( 千円 ) 1500 千円以下 10-2000 千円以下 10-2000 千円以下 15 75 3000 千円以下 15 100 2500 千円以下 20 175 4000 千円以下 20 250 3500 千円以下 25 300 6000 千円以下 30 650 4500 千円以下 30 475 10000 千円以下 40 1,250 6000 千円以下 35 700 10000 千円超 50 2,250 8000 千円以下 40 1000 10000 千円以下 45 1400 15000 千円以下 50 1900 25000 千円以下 55 2650 40000 千円以下 60 3,900 1 億円以下 65 5,900 1 億円超 70 10,900 12