日本は BMD には欠かせない早期警戒衛星からの情報を米軍に頼っている そのこともあり 今後は グアムを含めた日本駐留の米 BMD 部隊を束ねる防空作戦司令部が日本国内にできたこ とで BMD での日米一体化をさらに進めることが課題である BMD での日米一体化における課題は どこにあるか 日米防衛

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新 日米防衛協力のための指針 ( ガイドライン )

大綱コンセプトの変遷 初めて策定した 51 大綱 (1976 年策定 ) においては 自らが力の空白となって我が国周辺地域における不安定要因とならないよう 必要最小限度の防衛力を保有するという考え方 すなわち 基盤的防衛力構想 を採用 その後 東西冷戦の終結といった国際情勢の変化 より安定した安全保

自衛隊の新たな統合運用体制への移行計画 米軍の変革と世界的な態勢の見直しといった 日米の 役割 任務 能力に関連する安全保障及び防衛政策における最近の成果と発展を 双方は認識した 1. 重点分野 この文脈で 日本及び米国は 以下の二つの分野に重点を置いて 今日の安全保障環境における 多様な課題に対応

日米同盟:

JEGS は英語版が正文である JEGS 仮訳中の用語が日本の関係法令上の用語と同一だとしても その定義は必ずしも一致するとは限らない 2018JEGS バージョン 1.1 日本環境管理基準 国防省 日本環境管理基準 2018 年 4 月 バージョン 1.1 ( 改訂 :2018 年 12 月 )

I. 集団的自衛権 A. 集団的自衛権とは集団的自衛権は 国際連合の成立の際に 初めて国際法上で創設され 国連憲章第 51 条に明文化された権利である 具体的には 自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を 自国が直接攻撃されていないにもかかわらず 実力をもって阻止する権利 であり 日本政府もこの

また 前提となる衝突や紛争といった脅威が不明確であり 在日米軍 海兵隊の出動が見込まれる事例をはじめ 具体的な説明がなく 抽象的である このような内容では 県外移設 ができない理由が説明されているとは言えず 県民の納得のいくものではない 鳩山前総理は 昨年 5 月の記者会見において 何とか県外に見つ

普天間飛行場代替施設の建設は 2014 年までの完成が目標とされる 普天間飛行場代替施設への移設は 同施設が完全に運用上の能力を備えた時に実施される 普天間飛行場の能力を代替することに関連する 航空自衛隊新田原基地及び築城基地の緊急 時の使用のための施設整備は 実地調査実施の後 普天間飛行場の返還の

Security declaration

安全保障会議 ( 現行 ) の概要 ( 構成 ) 委員長 : 内閣官房長官 委 安全保障会議 ( 構成 ) 議長 : 内閣総理大臣 事態対処専門委員会 内閣総理大臣の諮問に基づき 以下の事項を審議 国防の基本方針 防衛計画の大綱 対処基本方針 武力攻撃事態 / 周辺事態等への対処 / 自衛隊法第 3

Microsoft PowerPoint 追加配備住民説明用資料(セット版)

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前提 新任務付与に関する基本的な考え方 平成 28 年 11 月 15 日 内 閣 官 房 内 閣 府 外 務 省 防 衛 省 1 南スーダンにおける治安の維持については 原則として南スー ダン警察と南スーダン政府軍が責任を有しており これを UNMISS( 国連南スーダン共和国ミッション ) の部

平和安全法制などの整備法整備の経緯 図表 Ⅱ 閣議決定 の概要と法制整備 閣議決定 の項目 概要 法制整備 警察や海上保安庁などの関係機関が それぞれの任務と権限に応じて緊密に協力して対応す 治安出動 海上 1 武力攻撃に 至らない るとの基本方針の下 対応能力を向上させ連携を強化するな

(日)Brig Gen Cornish Speech (J, final).docx

2 各国の動向 米国 : 世界最大の総合的な国力 中露等との 戦略的競争 同盟国等に対し 防衛のコミットメントを維持するとともに 責任分担の増加を要求 NATO: ハイブリッド戦 への対応 国防費を増加 中国 : 透明性を欠いた軍事力の強化 新領域の優勢確保を重視 一方的な現状変更の試み 東シナ海で

第 4 回日豪外務 防衛閣僚協議 日本とオーストラリア : 平和と安定のための協力 共通のビジョンと目標 1. 玄葉光一郎日本国外務大臣, 森本敏日本国防衛大臣, ボブ カー オーストラリア外務大臣, スティーブン スミス オーストラリア国防大臣は,9 月 14 日にシドニーにおいて会談し, 地域的

それぞれについて 現地の状況はおおむね次のようなことです 1 岩国市も山口県も 普天間基地の移設の見通しが立たないうちの先行移駐は認めない としてきましたが 政府から 2+2 の前記共同声明を伝えられ 沖縄の負担軽減を目に見える形で実現したい と迫られた福田良彦市長は 11 月に沖縄を視察し 12

ている これに加えて 中国は 軍の艦艇や航空機による太平洋への進出を常 態化させ 我が国の北方を含む形で活動領域を一層拡大するなど より 前方の海空域における活動を拡大 活発化させている こうした中国の軍事動向等については 我が国として強く懸念してお り 今後も強い関心を持って注視していく必要がある

れにMINUSTAH 軍事部門司令部において行われる企画及び調整の分野並びに我が国のMINUSTAHに対する協力を円滑かつ効果的に行うための連絡調整の分野における国際平和協力業務を行わしめるとともに 自衛隊の部隊等により ハイチ地震の被災者の支援等の分野における国際平和協力業務を実施することとする

視察前の グァム統合軍事開発計画分析 注: グァム統合軍事開発計画とは 2006 年 9 月に米国防総省がHPで公開した計画 沖縄と米本土から9,700 人の海兵隊とその家族 8,550 人がグァムに移転するとされている 日米両政府はHP 掲載後 1 週間で 正式な決定ではない としてHP 上から削

緊急・緊要として実施すべき事項(緊急提言)

2 マイケル マクデビット加藤洋一 望を持たせる兆候となる しかし その一方で 北朝鮮が長い間にわたり核開発計画を放棄してこなかった長い歴史を振り返れば 今後 北朝鮮が再び深刻な挑発に走ることを なお考えないわけにはいかない とりわけ もし北朝鮮の核とミサイルの能力が 抑制を受けないまま野放しとなれ

防衛計画の大綱に向けた提言

品質マニュアル(サンプル)|株式会社ハピネックス

三衆議院議員稲葉誠一君提出自衛隊の海外派兵 日米安保条約等の問題に関する質問に対する答弁書一について1 我が国が安全保障理事会の常任理事国となるためには 国連憲章の改正が必要であるが 安全保障理事会の常任理事国は 国連憲章の改正についても いわゆる拒否権を有しており 一般的にいつて 国連憲章の改正に

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CV-22 オスプレイの横田飛行場への配備について CV-22 の配備について 平成 30 年 9 月 19 日北関東防衛局 スケジュール 米側からは 5 機のCV-22を本年 10 月 1 日に配備し 残り5 機については 具体的な配備の計画は未定ですが 2024 年頃までに10 機の配備を行う予

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ISO9001:2015内部監査チェックリスト

Rodrigo Domingues UNDP Borja Santos Porras/UNDP Ecuador UNDP Kazakhstan 2

新たな防衛計画の大綱に向けた提言

Taro-中間報告書(他国地位協定調査)【180602修正版】

第4日米同盟の強化同盟強化の基盤となる取組 第 2 節 第 2 節 同盟強化の基盤となる取組 1 同盟強化の経緯 日米両国は 1960( 昭和 35) 年の日米安保条 約締結以来 民主主義の理想 人権の尊重 法の支配 そして共通の利益を基礎とした強固な同盟関係を築いてきた 1978( 昭和 53)

ISO9001:2015規格要求事項解説テキスト(サンプル) 株式会社ハピネックス提供資料

わが国の次期大綱では そういった戦略環境の大きなランドスライド ( 地滑り ) にともない 第 1 に基盤的防衛力構想から脱却した 日本の戦略の根底的見直し 第 2 に 今ある危機 への対処のための 南西シフト に言及しなければならない 基盤的防衛力構想からの脱却 - 日本の戦略の根底的見直し 日本

NSS-summary

26 X 1.X バンド レーダー設置の必要性と京丹後市への配備決定 X BMD PAC-3 BMD

11



朝日 TV 2015/4/18-19 原発政策安倍内閣は 今後の電力供給のあり方について検討しているなかで 2030 年時点で 電力の 2 割程度を 原子力発電で賄う方針を示しています あなたは これを支持しますか 支持しませんか? 支持する 29% 支持しない 53% わからない 答えない 18%

日本語パンフ(最終セット)修正

わが国の防衛産業政策の確立に向けた提言 2009 年 7 月 14 日 ( 社 ) 日本経済団体連合会 本年 4 月 北朝鮮が国連安全保障理事会の決議に違反して長距離弾道ミサイルを発射し 5 月には地下核実験を行うなど 北東アジアの安全保障環境は緊迫化している こうした安全保障環境のもとにおいて 防

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縄における負担軽減については 私から普天間飛行場の5 年以内の運用停止をはじめとする基地負担の軽減に関する沖縄県の要望と これに対する日本側の取り組みについて説明を行いました ヘーゲル長官からは沖縄県民の思いを理解しつつ 日本側の取り組みに対し引き続き協力していく旨の発言がありました 沖縄の負担軽減

謝辞

-400 の射程は約 400 kmと言われている 島嶼を占領した敵部隊がこのミサイルを配備している場合 この防空網の圏外から攻撃しなければ甚大な被害を被る 現在保有する精密誘導爆弾だけで上陸部隊を撃退するとなれば それはまるで 特攻隊 に近い 敵より長射程のミサイルでもって乗員の安全を最大限確保しつ

外国の防衛政策など8 平成 26 年版防衛白書諸第 Ⅰ 部 わが国を取り巻く安全保障環境 第1 章QDR などについて議会で証言するヘーゲル国防長官 14( 平成 26) 年 3 月 米国防省 HP (1) 安全保障認識今回の QDRは 将来の国際的な安全保障環境について 国際的なパワーバランスの変

1 自衛隊に対する関心 問 1 あなたは自衛隊について関心がありますか この中から 1 つだけお答えください 平成 30 年 1 月 関心がある ( 小計 ) 67.8% 非常に関心がある 14.9% ある程度関心がある 52.9% 関心がない ( 小計 ) 31.4% あまり関心がない 25.9%

目 次 1. 改訂の趣旨 1 2. 宇宙開発利用の特性 意義及び課題 1 3. 昨今の防衛省の取組 2 4. 防衛省の宇宙開発利用に関する基本方針 3 ⑴ 宇宙空間に対する考え方 3 ⑵ 統合機動防衛力 の構築に資する宇宙開発利用のあり方 3 ⑶ 今後の重点的な取組 4 ア.3 つの視点に係る取組

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後を絶たない米軍人 軍属による道路交通法違反事件に対する意見書 沖縄警察署は 7 月 4 日午前 4 時 30 分 米空軍嘉手納基地所属の二等軍曹 (27 歳 ) を北谷町美浜の町道で酒を飲んで車を運転したとして 道路交通法違反 ( 酒気帯び運転 ) の疑いで現行犯逮捕した 同署によると 呼気から基

この審査において点検を行っているのは 次の項目である 政策の実施により得ようとする効果はどの程度のものかなど 具体的に特定され ているか ( 事前評価の結果の妥当性の検証について ) 事前評価については 政策効果が発現した段階においてその結果の妥当性を検証すること等により得られた知見を以後の事前評価

2 新中期防の意義 防衛力整備は 最終的には各年度の予算に従い行われるが 国の防衛が国家存立の基盤であるとともに 装備品の研究開発や導入 施設整備 隊員の教育 部隊の練成などは短期になし得ないことなどを考えれば 防衛力整備は 具体的な中期的見通しに立って 継続的かつ計画的に行うことが必要である この

2章諸外国の防衛政策など10 平成 28 年版防衛白書第第 Ⅰ 部 わが国を取り巻く安全保障環境 アフガニスタンにおいても 15( 同 27) 年 10 月 オバマ大統領は16( 同 28) 年末までに撤収予定であった計画を見直し 同年中は現在の9,800 人の態勢を維持し 17( 同 29) 年以

防衛関係予算のポイント 30 年度予算編成の基本的な考え方 1. 中期防対象経費については 中期防衛力整備計画 に沿って 周辺海空域における安全確保 島嶼部に対する攻撃への対応 弾道ミサイル攻撃等への対応等に重点化を図るとともに 装備品の調達の効率化等を通じてメリハリある予算とする 2. 防衛関係費

インド洋におけるテロ対策海上阻止活動及び海賊行為等対処活動に対する補給支援活動の実施に関する特別措置法案要綱

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テロ対策海上阻止活動に対する補給支援活動の実施に関する特別措置法案要綱

[ 指針 ] 1. 組織体および組織体集団におけるガバナンス プロセスの改善に向けた評価組織体の機関設計については 株式会社にあっては株主総会の専決事項であり 業務運営組織の決定は 取締役会等の専決事項である また 組織体集団をどのように形成するかも親会社の取締役会等の専決事項である したがって こ

どのような便益があり得るか? より重要な ( ハイリスクの ) プロセス及びそれらのアウトプットに焦点が当たる 相互に依存するプロセスについての理解 定義及び統合が改善される プロセス及びマネジメントシステム全体の計画策定 実施 確認及び改善の体系的なマネジメント 資源の有効利用及び説明責任の強化

2章諸外国の防衛政策など71 平成 29 年版防衛白書第第 Ⅰ 部 わが国を取り巻く安全保障環境 への転換を宣言し その新たな統治のビジョンとして外交問題などを含む今後の全ての決定は 米国の労働者とその家族に利益をもたらすために行われるとした また 同大統領は 古くからの同盟を強化するとともに新しい

自衛隊の補給支援活動に関する特別世論調査 の要旨 平成 21 年 3 月内閣府政府広報室 調査時期 : 平成 21 年 1 月 22 日 ~2 月 1 日調査対象 : 全国 20 歳以上の者 3,000 人有効回収数 ( 率 ):1,684 人 (56.1%) 1 補給支援活動の認知度 平成 21

( 別紙 ) 平成 31 年度以降に係る防衛計画の大綱 Ⅰ 策定の趣旨我が国は 戦後一貫して 平和国家としての道を歩んできた これは 平和主義の理念の下 先人達の不断の努力によって成し遂げられてきたものである 我が国政府の最も重大な責務は 我が国の平和と安全を維持し その存立を全うするとともに 国民

周辺の有事の際の対応に関し次の基本的な考え方を確認した (1) 両国の防衛協力は 日本の安全保障及び地域の平和と安定にとって不可欠である (2) 日本防衛のため そして日本周辺エリアで抑止力を行使し事態が起これば対応するため 米国は前方展開軍を維持し 必要な際は兵力を強化する (3) 米国は 日本防

平成 31 年度防衛関係費 ( 概算要求 ) 等について 平成 3 0 年 9 月 防衛省

SGEC 附属文書 理事会 統合 CoC 管理事業体の要件 目次序文 1 適用範囲 2 定義 3 統合 CoC 管理事業体組織の適格基準 4 統合 CoC 管理事業体で実施される SGEC 文書 4 CoC 認証ガイドライン の要求事項に関わる責任の適用範囲 序文

駐留軍関係離職者等臨時措置法の改正について ( 報告 ) 駐留軍関係離職者等臨時措置法の改正について労働政策審議会職業安定分科 会雇用対策基本問題部会において審議した結果 下記のとおり結論を得たので 報告する 平成 29 年 12 月 7 日 雇用対策基本問題部会 部会長鎌田耕一 職業安定分科会 分

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日本は 2004 年 12 月に 平成 17 年度以降に係る防衛計画の大綱 ( 以下 新大綱 ) を策定し 将来の防衛力の構想を明らかにした これに沿って自衛隊はさまざまな変革を進めつつある 第 1 は 組織 制度の改革による既存の能力の有効活用である それを端的に表しているのが 新大綱で示された

新たな防衛計画の大綱 中期防衛力整備計画 ~ 統合機動防衛力 の構築に向けて ~ - 目次 - Ⅰ 戦略 大綱 中期防の位置付け等 2 Ⅱ 我が国を取り巻く安全保障環境 10 Ⅲ 我が国の防衛の基本方針 16 Ⅳ 防衛力の在り方 26 Ⅴ 防衛力の能力発揮のための基盤 43 Ⅵ 中期防衛力整備計画


1 日目のシナリオから得られた結論 北朝鮮の挑発に効果的に対処するには 日米韓 3カ国の調整が不可欠であるこのシナリオは日本海の韓国作戦地域外で発生したうえに 3カ国から派出された艦船や航空機がいずれも難民を乗せた船に到達できる距離にいたため 各国とも直ちに3カ国で調整することの必要性を認識した こ

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A: 最近の韓国での出来事だとか 日本での出来事などについて率直に意見交換をしたわけでございますが 私が感じたのは長官の話を通じて 韓国のこの平和と朝鮮半島の平和と安定 これは日本にとっても安全保障上 大変重要なことでございまして 韓国の防衛政策も伺えましたけど 非常にしっかりとしたものであります

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( 別紙 ) 中期防衛力整備計画 ( 平成 23 年度 ~ 平成 27 年度 ) Ⅰ 計画の方針平成 23 年度から平成 27 年度までの防衛力整備に当たっては 平成 23 年度以降に係る防衛計画の大綱 ( 平成 22 年 12 月 17 日安全保障会議及び閣議決定 ) に従い 即応性 機動性 柔軟

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撃のリスクが 全ての地域と加盟国に影響する可能性があることに懸念を表明し 民間航空に対するテロ攻撃について深刻な懸念を表明しそしてそのような攻撃を強く非難し 民間航空が 外国人テロ戦闘員による輸送手段として用いられる可能性があることにまた懸念を表明し そして 1944 年 12 月 7 日にシカゴで

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はじめに 日本の平和と安全を維持し その存立を全うすることは 政府 の最も重要な責務です また 日本の安全保障政策を高い透明性をもって示すことも政府が果たすべき役割です 日本は 戦後 70 年以上にわたり 平和国家として歩んできました 自由 民主主義 人権 法の支配を擁護し 地域そして世界の平和と繁

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条第一項に規定する国際平和協力業務の実施等に関する重要事項九自衛隊法 ( 昭和二十九年法律第百六十五号 ) 第六章に規定する自衛隊の行動に関する重要事項 ( 第四号から前号までに掲げるものを除く ) 十国防に関する重要事項 ( 前各号に掲げるものを除く ) 十一国家安全保障に関する外交政策及び防衛政

( 別紙 ) 中期防衛力整備計画 ( 平成 26 年度 ~ 平成 30 年度 ) Ⅰ 計画の方針平成 26 年度から平成 30 年度までの防衛力整備に当たっては 平成 26 年度以降に係る防衛計画の大綱について ( 平成 25 年 12 月 17 日国家安全保障会議及び閣議決定 以下 25 大綱 と

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第2諸外国の防衛政策など米国 にシリアの化学兵器関連施設に対するミサイル攻撃 3 を実施し 大量破壊兵器の生産 拡散 使用に対して強力な抑止力を確立する姿勢を明確にしている さらに 17( 平成 29) 年 8 月にはアフガニスタン 南アジア戦略を発表し アフガニスタンへの関与を継続するとした上で

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2016 年 11 月の米大統領選でドナルド トランプ候補が勝利したことにより 日米同盟を含むアジア太平洋地域の安全保障環境は より不確実なものとなることが予想された 選挙期間中にトランプ候補が示唆した日本の核武装の容認や在日米軍の撤退は 米国が拡大抑止の提供と地域のプレゼンスを維持する一方で 日本

では なぜ今 その 重要性の増している海兵隊 を ジアラ氏の数字では 2 分の 1 沖縄県の 数字では 3 分の 2 もけずるのか? 筋が通るまい まずその数字が怪しい 数字そのものもそうだが 水兵 を加えた数字の取り方もおかしい そ して論理も筋が通らない ごまかしが生む自己撞着 次に グアムに移

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8. 内部監査部門を設置し 当社グループのコンプライアンスの状況 業務の適正性に関する内部監査を実施する 内部監査部門はその結果を 適宜 監査等委員会及び代表取締役社長に報告するものとする 9. 当社グループの財務報告の適正性の確保に向けた内部統制体制を整備 構築する 10. 取締役及び執行役員は

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008 しかし 自衛隊が最初から広く国民に受け入れられる存在だったかというと 決してそうではなかった 創設時から憲法違反という批判も受けながら 戦後の平和主義の中で苦しみつつ成長してきたというのが実態である かつては自衛官という存在自体を否定的に考える風潮もあったのである たとえば ノーベル文学賞を

再就職審査室長 : ( 渡部悦和陸将の株式会社富士通システム統合研究所への再就職について 資料に基づき説明 ) 委員 : この安全保障研究所については 何名位の研究員がいて どういう前歴の方が勤務されているのでしょうか また 富士通という民間企業の中の研究所ということですが 行っている研究は 国ない

Transcription:

日本の弾道ミサイル防衛 (BMD) 能力を強化する 米陸軍防空作戦司令部の日本駐留 課題は BMD での日米一体化 樋口譲次 米陸軍防空作戦司令部の日本駐留は 日本の BMD 能力を強化する米陸軍は 2018 年 10 月 31 日に第 38 防空砲兵旅団を現役復帰させ 日米両政府の合意のもとに 同年 11 月 16 日から 115 名からなる同司令部を相模総合補給敞 ( 神奈川県 ) に駐留させた 第 38 防空砲兵旅団司令部は PAC-3 を装備し米軍嘉手納飛行場 ( 沖縄県 ) に展開する米陸軍第 1 防空連隊第 1 大隊 米軍の弾道ミサイル防衛用 TPY-2 レーダ ( いわゆる X バンドレーダ ) を運用する車力通信所 ( 青森県 ) の第 10 弾道ミサイル防衛 (BMD) 中隊と経ヶ岬通信所 ( 京都府 ) の第 14 BMD 中隊並びにグアムに配備されている終末高高度防衛ミサイル (THAAD) 中隊を隷下に入れ 衛星を経由したネットワークで指揮を開始した模様である 本来 兵站を担う相模総合補給敞に同司令部を駐留させたのは 在日米陸軍司令部 (USARJ) があるキャンプ座間 ( 神奈川県 ) にスペースの余裕がないというのが主な理由である 今般 第 38 防空砲兵旅団司令部の指揮下に入った部隊は これまでいずれもハワイのインド太平洋軍司令部 (INDOPACOM) の隷下にあった部隊である 米国の弾道ミサイル防衛システム (BMDS) は 国防省ミサイル防衛局 (MDA) が一元的に指揮統制することになっている そのもとに INDOPACOMが管轄するインド太平洋全域の弾道ミサイル防衛を担任する太平洋空軍司令部 (PACAF ハワイ) があり その隷下の第 94 陸軍防空ミサイル防衛司令部 (AAMDC ハワイ) から 指揮統制 戦闘管理通信 (C2BMC) ネットワークを介して第 38 防空砲兵旅団司令部が指揮を受ける形になる この度の駐留は かねて日米間で合意している日本の弾道ミサイル防衛 (BMD) 能力の強化に寄与するものであり 同時に 日本周辺の戦域レベルにおける BMD 能力も強化される さらに 第 38 防空砲兵旅団が米陸軍の部隊であることに意味があり いわゆる トリップ ワイヤー として米国の日本防衛のコミットメントを確保するとともに 拡大抑止の効果を一段と高めることが期待される 1

日本は BMD には欠かせない早期警戒衛星からの情報を米軍に頼っている そのこともあり 今後は グアムを含めた日本駐留の米 BMD 部隊を束ねる防空作戦司令部が日本国内にできたこ とで BMD での日米一体化をさらに進めることが課題である BMD での日米一体化における課題は どこにあるか 日米防衛協力のための指針 (2015 年 4 月 2 7 日 ) いわゆる日米ガイドラインは 基本的 な前提及び考え方 において 下記のように定めている 日本及び米国により行われる全ての行動及び活動は 各々の憲法及びその時々において適用のある国内法令並びに国家安全保障政策の基本的な方針に従って行われる 日本の行動及び活動は 専守防衛 非核三原則等の日本の基本的な方針に従って行われる ( 下線筆者 ) それを前提として 同盟内の調整の強化が強調され 実効的な二国間協力のため 平時から緊急事態まで 日米両政府が緊密な協議並びに政策面及び運用面の的確な調整を行うことが必要となる とし 情報共有を強化し 切れ目のない 実効的な 全ての関係機関を含む政府全体にわたる同盟内の調整を確保するため 日米両政府は 新たな 平時から利用可能な同盟調整メカニズムを設置し 運用面の調整を強化し 共同計画の策定を強化する と述べている そのうえで 日米両政府は 同メカニズムを活用し 自衛隊及び米軍により実施される活動に関連した政策面及び運用面の調整を強化する と取り決めている そして 自衛隊と米軍との間の運用面の調整については 下記のとおり記述されている 柔軟かつ即応性のある指揮 統制のための強化された二国間の運用面の調整は 日米両国にとって決定的に重要な中核的能力である この文脈において 日米両政府は 自衛隊と米軍との間の協力を強化するため 運用面の調整機能が併置されることが引き続き重要であることを認識する 自衛隊及び米軍は 緊密な情報共有を確保し 平時から緊急事態までの調整を円滑にし及び国際的な活動を支援するため 要員の交換を行う 自衛隊及び米軍は 緊密に協力し及び調整しつつ 各々の指揮系統を通じて行動する ( 下線は筆者 ) つまり 日米ガイドラインにおいては 自衛隊及び米軍が行う日米共同作戦は 両国の憲法等 2

に従い 各々の指揮系統を通じて行動し 緊密な 調整 をもって協力することを基本としている 問題は 北朝鮮から 10~15 分程で日本に到達し 地上到達時の速度が秒速数 km となる 寸秒を争う弾道ミサイルの脅威に対して 日米が各々の指揮系統を通じて行動し 調整 をもって協力することによって 共同対処の目的を十分に達成できるかどうかである 日米ガイドラインは 切れ目のない 力強い 柔軟かつ実効的な日米共同の対応 などを目的としているが 現行の日米共同作戦における指揮関係では その目的を果たすことができない大きな課題が内在している と率直に認めざるを得ないのではないだろうか いかに BMD での日米一体化を図るか 日米共同運用調整所 ( 仮称 ) の常設まず わが国は 陸海空統合の完結した BMD システムを独自に構築し 自衛隊の全 BMD 部隊を一元的に指揮統制する組織 ( 司令部 ) を創設することである その上で 日米両国は 同盟調整メカニズム の必要性に鑑み 特に BMD 共同対処を実効性あるものにするため 運用の面から両指揮機能を併置した 日米共同運用調整所 ( 仮称 ) を常設し 共同の情報収集 警戒監視および偵察 (ISR) 活動を継続し 弾道ミサイル発射などに即応できる一体的体制を確立することが必要である その具体化のための参考となるのは 北米航空宇宙防衛司令部 (NORAD) のあり方である NORAD は 北アメリカの航空宇宙領域の防衛の目的で作られたアメリカとカナダが共同で運営する軍事組織であり 他国からの核ミサイルや戦略爆撃機による攻撃に備え 24 時間体制で監視に当っている また NORAD における米国とカナダの協力は NATO の枠組みの中での活動として位置付けられ NATO 域内における全般的な安全保障の一つの重要な要素ともなっている NORAD の総指揮監督は米国大統領とカナダ首相が共同で行い 司令官は米大統領及びカナダ首相によって任命される 司令官は 米統合参謀本部議長を経て米国政府に カナダ国防参謀総長を経てカナダ政府に対して責任を負う 司令官はアメリカ人が 副司令官はカナダ人が勤め 司令官は米北方軍 ( 責任区域 : 米本土 アラスカ カナダ メキシコとその周辺海域 ) の司令官でもある そして この司令官と副司令官は アメリカ コロラド州コロラドスプリングスにあるシャイアン マウンテンスの洞窟司令部で指揮を執っている この作戦センターは 米陸海空軍および海兵隊ならびにカナダ軍 合わせて 200 人余の専門家 3

で構成される統合かつ共同の組織であり その点で世界に類を見ない特色を有している カナダは 米国内の NORAD に約 300 人強の軍人を勤務させるとともに 資金および資器材を提供している カナダ軍人は 例えば戦闘機の待機任務 北米警戒システム ( 北米大陸の北端に沿って設けられた一連のレーダ基地 ) の維持運用 あるいは北米における戦闘機運用を支援する前方作戦施設における勤務などの NORAD の関連活動に従事している カナダ政府は このように米国との共同活動に参画することにより 同国の空域を監視 防衛するための能力と国家主権を主張する権限を確保している また 両国最高レベルの国防会議である カナダ 米国防委員会 と防衛計画の作成及び軍事情報の交換に関する会議である カナダ 米防衛協力委員会 を定期的に開催している さらに 9 11 の後に作られた自然災害やテロを含むカナダ及び米国の脅威に対し 共同して対処するための非常事態計画を調整する 共同計画グループ が設置されており 密接な外交 国防に関する協議が行われている このように米国は勿論であるが カナダにとっても 自国の防衛に関して最終決断の権限を有しつつ それぞれの国益に最も適合する形での共同対処を可能とする枠組みが構築されている 一方 アメリカの核戦略と一体化した核戦力を保有するイギリスは 統合軍務使節団 (Joint Services Mission) として米国防総省 ( ペンタゴン ) へ将校団を常駐させ 平素から極めて緊密な連携を保持している このようにわが国も 防衛省と米国防総省及びインド太平洋軍司令部 (INDOPACOM) との間に常駐将校団を相互派遣するとともに 米加共同運営の NORAD を参考として 第 38 防空砲兵旅団の日本駐留を機に 日米共同運用調整所 ( 仮称 ) を日本国内に開設し共同運営するなど 日米共同対処のためのメカニズムを常設しておくことが是非とも必要である 日米間の指揮関係における実効性 柔軟性の確保日米ガイドラインでは 日米間の指揮関係について 日米が各々の指揮系統を通じて行動し 調整 をもって協力することになっている しかし 特に BMD の共同対処においては その実効性 即応性が危ぶまれるなどの重大な問題の解決が喫緊の課題となっていることは すでに指摘した所である 米国と共同して北大西洋地域 ( 諸国 ) の独立と安全を確保するため 集団的防衛を目的として設立された NATO は その指揮関係について 下記のとおり7 種類に分類し 多様な作戦形態への対応を可能にしている 4

1 指揮 (Command) 2 作戦指揮 (OPCOM:Operational Command) 3 作戦統制 (OPCON:Operational Control) 4 戦術指揮 (TACOM:Tactical Command ) 5 戦術統制 (TACON:Tactical Control) 6 調整権 (Coordinating Authority) 7 統合指示統制権 (Integrated Directing and Control Authority) ( 上記項目の定義については NATO Glossary of Terms and Definitions 参照 ) 近年 従来からの活動領域である陸海空に加え 宇宙空間やサイバー空間 電磁空間といった新たな活動領域 すなわちマルチ ドメインの複雑多岐にわたる空間において柔軟かつ実効的に作戦を遂行することが 安全保障上の重要な課題となっている そのうち BMD に関連したものとしては 米国の統合防空ミサイル防衛 (IAMD) 構想がある 現在の経空脅威には 弾道ミサイル 巡航ミサイル 有人 無人航空機 短射程のロケット弾や野戦砲弾 迫撃砲弾による攻撃などがあり このような脅威が量的にも質的にも増大し それらの複合的かつ同時多発的脅威を一体的に抑止し あるいは対処する作戦運用上の必要性が高まっている そのため 米国は IAMD 構想のもと あらゆる航空 ミサイル等の脅威に対して 攻撃作戦 積極防衛 消極防衛を指揮統制 (C2) システムによって一体化させる方策を追求し 同盟国等にも同じシステムの導入を求めるようになっている このように 日米両国の主権や指揮権の基本を侵さない範囲で 行動の緊密な一体化を目的として多様な作戦形態を採り得るようにし 特に BM 攻撃などの事態に即応できるようにしなければならない そのためには NATO を参考に 日米ガイドラインで 各々の指揮系統を通じて行動する と定めた 指揮 に関して実効性 柔軟性を高める方向で再定義を行うか 調整 の範囲に 作戦指揮 から 統合指示統制権 の概念を含めるなどして 共同作戦上の相互運用性やネットワーク化を強化する工夫が必要である おわりに日米両国が 平時から緊急事態までのいかなる状況においても日本の平和と安全を確保する体制を構築することは 日本の防衛のみならず アジア太平洋地域及びこれを越えた地域の安定及び平和と繁栄に寄与する この際 INF 条約によって 米国の中国および北朝鮮に対する核の地域抑止が空洞化 無効化している現状に鑑みれば 日米共同による BMD の実効性の確保は喫緊の課題であり 一刻も早く 切れ目のない 力強い 柔軟かつ実効的な日米共同の BM 対応能力を向上させ 両国間の安 5

全保障及び防衛協力を強化することが望まれる 6