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インフルエンザ、鳥インフルエンザと新型インフルエンザの違い

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なお本研究は 東京大学 米国ウィスコンシン大学 国立感染症研究所 米国スクリプス研 究所 米国農務省 ニュージーランドオークランド大学 日本中央競馬会が共同で行ったもの です 本研究成果は 日本医療研究開発機構 (AMED) 新興 再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業 文部科学省新学術領

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インフルエンザ(成人)

2017 年 2 月 1 日放送 ウイルス性肺炎の現状と治療戦略 国立病院機構沖縄病院統括診療部長比嘉太はじめに肺炎は実地臨床でよく遭遇するコモンディジーズの一つであると同時に 死亡率も高い重要な疾患です 肺炎の原因となる病原体は数多くあり 極めて多様な病態を呈します ウイルス感染症の診断法の進歩に

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蚊を介した感染経路以外にも 性交渉によって男性から女性 男性から男性に感染したと思われる症例も報告されていますが 症例の大半は蚊の刺咬による感染例であり 性交渉による感染例は全体のうちの一部であると考えられています しかし 回復から 2 ヵ月経過した患者の精液からもジカウイルスが検出されたという報告

検査項目情報 インフルエンザウイルスB 型抗体 [HI] influenza virus type B, viral antibodies 連絡先 : 3764 基本情報 ( 標準コード (JLAC10) ) 基本情報 ( 診療報酬 ) 標準コード (JLAC10) 5F410 分析物 インフルエン

インフルエンザ定点以外の医療機関用 ( 別記様式 1) インフルエンザに伴う異常な行動に関する調査のお願い インフルエンザ定点以外の医療機関用 インフルエンザ様疾患罹患時及び抗インフルエンザ薬使用時に見られた異常な行動が 医学的にも社会的にも問題になっており 2007 年より調査をお願いしております

症候性サーベイランス実施 手順書 インフルエンザ様症候性サーベイランス 編 平成 28 年 5 月 26 日 群馬県感染症対策連絡協議会 ICN 分科会サーベイランスチーム作成

PowerPoint プレゼンテーション

( 別添 ) インフルエンザに伴う異常な行動に関する報告基準 ( 報告基準 ) ( 重度調査 ) インフルエンザ様疾患と診断され かつ 重度の異常な行動を示した患者につき ご報告ください ( 軽度調査 ) インフルエンザ様疾患と診断され かつ 軽度の異常な行動を示した患者につき ご報告ください イン

糖尿病診療における早期からの厳格な血糖コントロールの重要性

インフルエンザ施設内感染予防の手引き

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70 例程度 デング熱は最近増加傾向ではあるものの 例程度で推移しています それでは実際に日本人渡航者が帰国後に診断される疾患はどのようなものが多いのでしょうか 私がこれまでに報告したデータによれば日本人渡航者 345 名のうち頻度が高かった疾患は感染性腸炎を中心とした消化器疾患が

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インフルエンザ院内感染対策

2017 年 3 月臨時増刊号 [No.165] 平成 28 年のトピックス 1 新たに報告された HIV 感染者 AIDS 患者を合わせた数は 464 件で 前年から 29 件増加した HIV 感染者は前年から 3 件 AIDS 患者は前年から 26 件増加した ( 図 -1) 2 HIV 感染者

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緑膿菌 Pseudomonas aeruginosa グラム陰性桿菌 ブドウ糖非発酵 緑色色素産生 水まわりなど生活環境中に広く常在 腸内に常在する人も30%くらい ペニシリンやセファゾリンなどの第一世代セフェム 薬に自然耐性 テトラサイクリン系やマクロライド系抗生物質など の抗菌薬にも耐性を示す傾

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重症急性呼吸器症候群 (SARS) 削除. 新興感染症対策を Xに新設. 5. ウエストナイル熱 空気感染する可能性があり, かつパンデミッ これらは改定版 2 刷発行当時 (2004 年 ), クになった際の透析施設の対応を Xに移行. 新興 再興感染症として問題とされてい 4. ウ

肝臓の細胞が壊れるる感染があります 肝B 型慢性肝疾患とは? B 型慢性肝疾患は B 型肝炎ウイルスの感染が原因で起こる肝臓の病気です B 型肝炎ウイルスに感染すると ウイルスは肝臓の細胞で増殖します 増殖したウイルスを排除しようと体の免疫機能が働きますが ウイルスだけを狙うことができず 感染した肝

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3.2013/14シーズンのインフルエンザアップデート(12/25現在)

顎下腺 舌下腺 ) の腫脹と疼痛で発症し そのほか倦怠感や食欲低下などを訴えます 潜伏期間は一般的に 16~18 日で 唾液腺腫脹の 7 日前から腫脹後 8 日後まで唾液にウイルスが排泄され 分離できます これらの症状を認めない不顕性感染も約 30% に認めます 合併症は 表 1 に示すように 無菌

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報告風しん

第51回日本小児感染症学会総会・学術集会 採択結果演題一覧

も 医療関連施設という集団の中での免疫の度合いを高めることを基本的な目標として 書かれています 医療関係者に対するワクチン接種の考え方 この後は 医療関係者に対するワクチン接種の基本的な考え方について ワクチン毎 に分けて述べていこうと思います 1)B 型肝炎ワクチンまず B 型肝炎ワクチンについて

2)HBV の予防 (1)HBV ワクチンプログラム HBV のワクチンの接種歴がなく抗体価が低い職員は アレルギー等の接種するうえでの問題がない場合は HB ワクチンを接種することが推奨される HB ワクチンは 1 クールで 3 回 ( 初回 1 か月後 6 か月後 ) 接種する必要があり 病院の

今週前週今週前週 2/18~2/24 インフルエンザ ヘルパンギーナ 4 4 RS ウイルス感染症 流行性耳下腺炎 ( おたふくかぜ ) 7 4 咽頭結膜熱 急性出血性結膜炎 0 0 A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎 流行性角結膜炎 ( はやり目

2012 年 11 月 21 日放送 変貌する侵襲性溶血性レンサ球菌感染症 北里大学北里生命科学研究所特任教授生方公子はじめに b 溶血性レンサ球菌は 咽頭 / 扁桃炎や膿痂疹などの局所感染症から 髄膜炎や劇症型感染症などの全身性感染症まで 幅広い感染症を引き起こす細菌です わが国では 急速な少子

さらに 職場における感染防止対策の検討を行うに当たっては 産業医等の助 言を受けることや 衛生委員会において対策を審議するなど 労働安全衛生法上 の安全衛生管理体制を活用し 実施していくことが望まれます Q2 発熱や呼吸器症状等のインフルエンザ様症状を呈した労働者にはどのような注意をすればよいですか

褥瘡発生率 JA 北海道厚生連帯広厚生病院 < 項目解説 > 褥瘡 ( 床ずれ ) は患者さまのQOL( 生活の質 ) を低下させ 結果的に在院日数の長期化や医療費の増大にもつながります そのため 褥瘡予防対策は患者さんに提供されるべき医療の重要な項目の1 つとなっています 褥瘡の治療はしばしば困難

2019 年 7 月 4 日 ( 木 ) 愛知県保健医療局健康医務部健康対策課感染症グループ担当内田 久野内線 ダイヤルイン 手足口病警報を発令します!! 愛知県では 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律 に基づき 県内の小児科を標榜する

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48小児感染_一般演題リスト160909

麻しん 2

<B 型肝炎 (HBV)> ~ 平成 28 年 10 月 1 日から定期の予防接種になりました ~ このワクチンは B 型肝炎ウイルス (HBV) の感染を予防するためのワクチンです 乳幼児感染すると一過性感染あるいは持続性感染 ( キャリア ) を起こします そのうち約 10~15 パーセントは

汎発性膿疱性乾癬のうちインターロイキン 36 受容体拮抗因子欠損症の病態の解明と治療法の開発について ポイント 厚生労働省の難治性疾患克服事業における臨床調査研究対象疾患 指定難病の 1 つである汎発性膿疱性乾癬のうち 尋常性乾癬を併発しないものはインターロイキン 36 1 受容体拮抗因子欠損症 (

6/10~6/16 今週前週今週前週 インフルエンザ 2 10 ヘルパンギーナ RS ウイルス感染症 1 0 流行性耳下腺炎 ( おたふくかぜ ) 8 10 咽頭結膜熱 急性出血性結膜炎 0 0 A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎 流行性角結膜炎 ( はやり目 )


医院名 XFL-C-0007(V01) 審

クローン病 クローン病の患者さんサポート情報のご案内 ステラーラ を使用される患者さんへ クローン病に関する情報サイト IBD LIFE による クローン病治療について ステラーラ R を使用されているクローン病患者さん向けウェブサイトステラーラ.j

ルス薬の開発の基盤となる重要な発見です 本研究は 京都府立医科大学 大阪大学 エジプト国 Damanhour 大学 国際医療福祉 大学病院 中部大学と共同研究で行ったものです 2 研究内容 < 研究の背景と経緯 > H5N1 高病原性鳥インフルエンザウイルスは 1996 年頃中国で出現し 現在までに

感染症の基礎知識

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日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュール

耐性菌届出基準

彼を知り己を知れば 百戦殆うからず 彼 = 感染症 己 = カラダの仕組み取り巻く環境など 百戦殆うからず は少し言い過ぎですが 感染症を未然に防ぐことや重症化を防ぐには非常に重要です

卵管の自然免疫による感染防御機能 Toll 様受容体 (TLR) は微生物成分を認識して サイトカインを発現させて自然免疫応答を誘導し また適応免疫応答にも寄与すると考えられています ニワトリでは TLR-1(type1 と 2) -2(type1 と 2) -3~ の 10

日産婦誌58巻9号研修コーナー

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Microsoft Word - 届出基準

サーバリックス の効果について 1 サーバリックス の接種対象者は 10 歳以上の女性です 2 サーバリックス は 臨床試験により 15~25 歳の女性に対する HPV 16 型と 18 型の感染や 前がん病変の発症を予防する効果が確認されています 10~15 歳の女児および

7 月 20 日に発表されました ヨーロッパ CDC のリスクアセスメントでは 今後の人口当たりの推定感染率が30% 重症化に一致する推定入院率が1~2% 推定死亡率が0.1~ 0.2% です これは初期の混乱期の対応や誤差を省いたヨーロッパでの推計なので今後の対策の目安になると考えられます 重症例

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図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

ロタウイルスワクチンは初回接種を1 価で始めた場合は 1 価の2 回接種 5 価で始めた場合は 5 価の3 回接種 となります 母子感染予防の場合のスケジュール案を示す 母子感染予防以外の目的で受ける場合は 4 週間の間隔をあけて2 回接種し 1 回目 の接種から20~24 週あけて3 回目を接種生

A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎 第 50 週の報告数は 前週より 39 人減少して 132 人となり 定点当たりの報告数は 3.00 でした 地区別にみると 壱岐地区 上五島地区以外から報告があがっており 県南地区 (8.20) 佐世保地区 (4.67) 県央地区 (4.67) の定点当たり報告数は

事務連絡 令和元年 6 月 21 日 ( 公社 ) 岡山県医師会 ( 一社 ) 岡山県病院協会 御中 岡山県保健福祉部健康推進課 手足口病に関する注意喚起について このことについて 厚生労働省健康局結核感染症課から別添のとおり事務連絡が ありましたので 御了知いただくとともに 貴会員への周知をお願い

汎発性膿庖性乾癬の解明

2014 年 10 月 30 日放送 第 30 回日本臨床皮膚科医会② My favorite signs 9 ざらざらの皮膚 全身性溶血連鎖球菌感染症の皮膚症状 たじり皮膚科医院 院長 田尻 明彦 はじめに 全身性溶血連鎖球菌感染症は A 群β溶連菌が口蓋扁桃や皮膚に感染することにより 全 身にい

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Microsoft PowerPoint 最近の性感染症の動向

Research 2 Vol.81, No.12013

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2015 年 11 月 5 日 乳酸菌発酵果汁飲料の継続摂取がアトピー性皮膚炎症状を改善 株式会社ヤクルト本社 ( 社長根岸孝成 ) では アトピー性皮膚炎患者を対象に 乳酸菌 ラクトバチルスプランタルム YIT 0132 ( 以下 乳酸菌 LP0132) を含む発酵果汁飲料 ( 以下 乳酸菌発酵果

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3-2 全国と札幌市の定点あたり患者報告数の年平均値流行状況の年次推移を 全国的な状況と比較するため 全国と札幌市の定点あたり患者報告数の年平均値について解析した ( 図 2) 全国的には 調査期間の定点あたり患者報告数の年平均値は その年次推移にやや増減があるものの大きな変動は認められなかった 札

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は減少しています 膠原病による肺病変のなかで 関節リウマチに合併する気道病変としての細気管支炎も DPB と類似した病像を呈するため 鑑別疾患として加えておく必要があります また稀ではありますが 造血幹細胞移植後などに併発する移植後閉塞性細気管支炎も重要な疾患として知っておくといいかと思います 慢性

水痘(プラクティス)

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目 次 中小企業 BCP 策定運用指針と本資料について 1 1. 新型インフルエンザ A(H1N1) への対応について 2 1 新型インフルエンザ A(H1N1) の概要 2 2 政府及び企業の対応 4 3 新型インフルエンザによる事業リスク 8 2. 事業継続計画について 9 1 事業継続計画の概

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別紙 平成 25 年 11 月 1 日 各医療機関御中 インフルエンザ様疾患罹患時の異常行動の情報収集に関する研究班 インフルエンザ様疾患罹患時の異常行動の情報収集に関する研究に対する協力のお願いについて 時下益々ご清栄のこととお慶び申し上げます さて 平成 25 年度厚生労働科学研究地球規模保健課

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さらにのどや気管の粘膜に広く分布しているマスト細胞の表面に付着します IgE 抗体にスギ花粉が結合すると マスト細胞がヒスタミン ロイコトリエンという化学伝達物質を放出します このヒスタミン ロイコトリエンが鼻やのどの粘膜細胞や血管を刺激し 鼻水やくしゃみ 鼻づまりなどの花粉症の症状を引き起こします

B型肝炎ウイルスのキャリアで免疫抑制・化学療法を受ける患者さんへ

10,000 L 30,000 50,000 L 30,000 50,000 L 図 1 白血球増加の主な初期対応 表 1 好中球増加 ( 好中球 >8,000/μL) の疾患 1 CML 2 / G CSF 太字は頻度の高い疾患 32

日本医師会作成版を元に北上医師会会員向けに一部修正を加えました ( 以下赤文字及び下線部は 各医療機関の実情に応じて記載 変更する ) 新型インフルエンザ等発生時における診療継続計画 ( 案 ) 医院 本計画は当院 新型インフルエンザ等に関する院内対策会議 により平成 年 月 日作成され たものであ

患者向医薬品ガイド

02別添:日本脳炎ワクチン接種に関するQ&A[H28.3月版]


横浜市感染症発生状況 ( 平成 30 年 ) ( : 第 50 週に診断された感染症 ) 二類感染症 ( 結核を除く ) 月別届出状況 該当なし 三類感染症月別届出状況 1 月 2 月 3 月 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月計 細菌性赤痢

2 抗インフルエンザウイルス薬と異常行動の議論と今後の予定 平成 21 年に取りまとめられた報告書以降の知見を改めて報告書にまとめ 以下の議論がなされた 平成 21 年以降の非臨床研究及び 10 年に及ぶ疫学研究の科学的な知見を総括し 以下の事実から タミフル服用のみに異常行動と明確な因果関係がある

成人の肺炎球菌感染症とワクチン予防

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日本国外務省講演相談会 鳥インフルエンザ A(H7N9) に関する 講演相談会 インフルエンザ感染症対策のポイントについて 東北大学大学院医学系研究科感染制御 検査診断学分野賀来満夫 平成 25 年 4 月

自己紹介 1. 感染症専門医 感染制御医として 1300 床の東北大学病院にて インフルエンザや肺炎 敗血症などの感染症患者さんの診療 感染症対策: 院内感染の発生を予防 アウトブレイクへの対応

自己紹介 2. 厚生科学審議会感染症部会委員厚生労働省院内感染対策中央会議委員感染症学会 環境感染学会理事厚生労働省 感染症専門学会にて インフルエンザやその他の感染症に対する国としての対応決定 感染症 感染症対策に関する基礎的 臨床的研究の実践 発表

自己紹介 3. WHO 感染症診療 感染症対策アドバイザー (SARS, 新型インフルエンザ グローバルネットワーク ) WHO 本部 WPRO ( 西太平洋事務 ) にて SARS や新型インフルエンザなどの新興感染症への対応 感染症に関するグローバルネットワークメンバーとして WHO に協力

本日の内容 1. インフルエンザについて 2. 感染症対策 ( 予防など ) のポイント

インフルエンザについて インフルエンザと風邪の違い インフルエンザウイルスの特徴 今回の H7N9 の現状について

インフルエンザと風邪の違い インフルエンザと風邪とは全く別のもの インフルエンザはかぜよりもはるかに感染力が強く 高熱や関節などの痛み 頭痛や全身倦怠感などの全身症状があらわれます 肺炎を起こすことも多く重症化するので迅速な診断や治療が必要です ( ワクチン接種も必要 )

インフルエンザと風邪の違い インフルエンザ 普通かぜ 発症急激に発症ゆるやかに発症 主な症状 全身症状 ( 熱 だるさ 頭痛 ) 鼻水 鼻づまり などが中心 のどの痛みなどが中心 発熱高い (38 ~40 ) ないか 37 全身の痛み 強い ないか弱い ( 関節痛 筋肉痛 ) 鼻やのどの炎症全身症状のあとから起きる 先行して症状 病原体インフルエンザウイルスライノウイルスなど * 年配の方は強い症状が出ないことも多い

インフルエンザの臨床経 過 感染 発熱 上気道症状 頭痛 関節 筋肉痛など 解熱 潜伏期有症状期治癒 3 日 3 日 (-7 日 ) 2 日 (1-5 日 ) 感染性のある時期 14 日 抗体価の上昇は発症約 2 週間後 ウイルス排出は発症前 1 日と発症後 7 日間前後 ( 解熱後 2 日間まで )

インフルエンザについて インフルエンザと風邪の違い インフルエンザウイルスの特徴 今回の H7N9 の現状について

インフルエンザウイルスの特徴 突起 ( とげとげ )

インフルエンザウイルスの構造 ヘマグルチニン (H) 2 種類のタンパク質 ノイラミニダーゼ (N)

インフルエンザウイルスの構造 HA( ヘマグルチニン ) 気道粘膜にくっつく 1-16 まで種類がある NA( ノイラミニダーゼ ) ウイルスが細胞内で増えて細胞の外に出るときに働く 1-9 まで種類がある

インフルエンザウイルスの細胞内への侵入 シアル酸レセプター 赤血球凝集素 (HA) 上気道粘膜の細胞 上気道粘膜細胞

インフルエンザウイルスの細胞内への侵入 シアル酸レセプター シアル酸レセプターと赤血球凝集素 (HA) が結合 赤血球凝集素 (HA) 上気道粘膜細胞

インフルエンザウイルスの細胞内への侵入 ウイルス粒子が細胞内に取り込まれる 上気道粘膜細胞

インフルエンザウイルスの細胞内への侵入 ウイルス粒子が細胞内に取り込まれる 上気道粘膜細胞

インフルエンザウイルスの細胞内への侵入 ウイルス粒子が細胞内に取り込まれる 上気道粘膜細胞

インフルエンザウイルスの細胞外への放出 細胞内で増殖したウイルス遺伝子 細胞内で増殖した HA と NA

インフルエンザウイルスの細胞外への放出 細胞内で増殖したウイルス遺伝子 細胞内で増殖した HA と NA

インフルエンザウイルスの細胞外への放出

インフルエンザウイルスの細胞外への放出 ノイラミニダーゼ (NA) が必要

インフルエンザウイルスの細胞外への放出 ノイラミニダーゼ (NA) が必要

A 型インフルエンサ ウイルスは自然界の 様々な動物に感染する 喜田宏 : 細胞工学 19,27, 2000

ヒト 鳥 豚のウイルスの関連 喜田宏 : 細胞工学 19,27, 2000

インフルエンザウイルスは尐しずつ形を変える H H N N 突然変異によるマイナーチェンジ H3N2 H3N2 毎年流行があるのはこのため ワクチンが100% でないのもこの理由による

新型インフルエンザウイルスの出現 H N H N H1N1 遺伝子が混ざり合うために全く新しいウイルスが出現 これまでと全く異なる構造を持つウイルスが出現してくる H5N1 H1N1

新型インフルエンザとは これまでヒトの間で流行したことがないか 過去数十年間流行していなかった 人類にとって新しい亜型のA 型インフルエンザウイルス 人類の大半は免疫を有さず 急速に感染が伝播拡大し 重症化する恐れ 経済的 社会的にも甚大な影響

20 世紀に起こったパンデミック インフルエンザ 1918 スペインインフルエンザ 1957 アジアインフルエンザ 1968 香港インフルエンザ 4,000-5,000 万人が死亡 200 万人が死亡 100 万人が死亡 A(H1N1) A(H2N2) A(H3N2)

WHO によるパンデミック宣言 41 年ぶりとなるパンデミックインフルエンザ 2009 年 6 月 11 日 パンデミック : 世界的大流行

2009 年のパンデミックを起こした新型ウイルスはどのようにして生まれたか 10 年かけて 豚豚人鳥 の遺伝子が混合 2 種類のブタ由来株 1 種類のヒト由来株 1 種類のトリ由来株 新型インフルエンザウイルス (H1N1) 図 :UpToDate online version 17.2 31

インフルエンザについて インフルエンザと風邪の違い インフルエンザウイルスの特徴 今回の H7N9 の現状について

今回の鳥インフルエンザ A(H7N9) ウイルス の成り立ち

中国本土及び台湾での鳥インフルエンザ A(H7N9) の発生状況 北京市 2 名 ( 死亡 0) 25.4.25 17:00 現在 計 111 名 ( 死亡 23 名 ) 山東省 1 名 ( 死亡 0) 河南省 3 名 ( 死亡 0) 江蘇省 23 名 ( 死亡 3) 上海市 35 名 ( 死亡 13) 安徽省 4 名 ( 死亡 1) 湖南省 1 名 ( 死亡 0) 台湾 1 名 ( 死亡 0) 浙江省 42 名 ( 死亡 6) 4 月 28 日現在 : 感染者 :120 名死亡者 ;23 名

新規発生数 9 8 7 6 5 4 3 2 中国本土及び台湾における鳥インフルエンザ A(H7N9) ヒト感染事例の発生状況 疑い ( 死亡 ) 確定 ( 死亡 ) 確定 ( 生存 ) 平成 25 年 4 月 25 日現在 1 0 * 2/12 2/19 2/26 3/5 3/12 3/19 3/26 4/2 4/9 4/16 4/23 未公表 発症日 * 疑い ( 死亡 ) 例は 父と同時期に発症したため 発症日を 2/19 と見なした ** 確定 ( 生存 ) 例は 父と同時期に発症したため 発症日を 2/19 と見なした 未公表 無症状

6 5 4 3 2 疑い ( 死亡 ) 確定 ( 死亡 ) 確定 ( 生存 ) 長江デルタ地区における発生状況 (%):CFR 上海市 (61.5%) H7N9 発生の公表 アクティブサーベイランス開始 (26.7%) (25.4.25 17:00 現在 ) (0%) 1 0 2/10 2/17 2/24 3/3 3/10 3/17 3/24 3/31 4/7 4/14 4/21 未発表 新規患者発生数 6 5 4 3 2 確定 ( 死亡 ) 確定 ( 生存 ) 江蘇省 (18.2%) (25%) (0%) 1 0 2/10 2/17 2/24 3/3 3/10 3/17 3/24 3/31 4/7 4/14 4/21 未発表 6 5 上海市などでは 積極確定 ( 死亡 ) 的な検査による入院確定 ( 生存 ) 4 (33.3%) (10.0%) (4%) 3 2 1 治療 家禽類の取り扱い強化などの対応 ( 早期発見 早期治療体制 ) の導入により症例致死率が減尐して 浙江省 0 2/10 2/17 2/24 3/3 3/10 3/17 3/24 3/31 4/7 4/14 4/21 未発表 きている 発症日

中国 CDC による暫定的な臨床像解析 4 月 24 日 New England Journal of Medicine 電子版

中国 CDC による暫定的な臨床像解析 鳥インフルエンザ A(H7N9) ウイルス感染症症例 82 例の解析 動物との接触の有無が判明した 77 名のうち 59 名 (77%) が 鶏 (45 名 ) 鴨 (12 名 ) 飼育バト (8 名 ) 豚 (4 名 ) との接触歴があった 潜伏期間は 6 日程度 82 例中 17 名が死亡 60 名が重体 ほぼ半数が 60 歳以上の高齢者で 病歴が判明している 71 名のうち 約 8 割で基礎疾患を有していた 41 名が抗ウイルス薬 ( タミフル ) の投与を受けていたものの 投与開始は多くは 6 日以降であった ( 早期からの投与での重症化阻止の可能性 ) 感染者と接触歴があった 1689 名中 1251 名 (1 週間の観察期間が過ぎた ) 中 17 名は咳症状などがあるもウイルス検査は陰性 2 家族での家庭内感染は否定できない ( 限定的なヒト ヒト感染の可能性 )

感染患者の臨床像と鳥からの感染の報告 4 月 25 日 Lancet Early on Line Publication 患者臨床像 平均年齢 :56 歳 潜伏期 :5-8 日 症状 : 発熱 肺炎 ( 呼吸不全 咳などの下気道症状はあるも上気道炎症状 結膜炎などの症状は認められず ) 炎症所見高値 肝腎機能障害 血液凝固能異常など サイトカイン : 高値 ( 免疫過剰反応状態 ) 抗ウイルス薬 (3 例で投与 :5 日以降 ) 患者および家禽から検出されたウイルスの遺伝子解析 1 名の患者および家禽から検出された H7N9 ウイルスの遺伝子解析 高い相同性 ( 一致率 ) が認められた H (1673 of 1683 bases [99 4%]) N (1394 of 1398 bases [99 7%])

H7N9 に関して判明している科学的事実 (4 月 18 日 25 日 : 国立感染症研究所からの報告 : 一部改編 ) 疫学的所見 -1 鳥インフルエンザ A(H7N9) ウイルスによるヒト感染例は今回の中国での感染事例が世界初の報告である 現在報告されている初発例の発症日は 2 月 19 日であり 3 月中旬までは散発的な報告であったが 3 月下旬から症例が増加し 現在も継続して報告されている 中国国内ではサーベイランスが強化されているため 今後 感染地域がさらに拡大する可能性がある 重篤な症例が多いものの 軽症例および無症候性感染者 ( 不顕性感染例 ) も報告されている 症状は発熱 (38 以上 ) 咳 全身倦怠感 悪寒 めまいなど

H7N9 に関して判明している科学的事実 (4 月 18 日 25 日 : 国立感染症研究所からの報告 : 一部改編 ) 疫学的所見 -2 4 月 17 日までに確認された 82 例の確定患者のうち 38 例 (46%) は 65 歳以上 2 例 (2%) が 5 歳未満の小児 ( これら小児 2 例はいずれも臨床的に軽度な上気道症状 ) 確定患者の多くは男性で (73%) 情報が得られた 71 例のうち 54 例が 1 つ以上の基礎疾患を含む健康危害状況を伴っていた ( 多いものから順に 高血圧 31 例 糖尿病 14 例 心疾患 12 例 慢性気管支炎 7 例 肝炎 4 例 喫煙 4 例 関節リウマチ 4 例など ) 公表されている死亡例 3 例の情報では 患者の臨床像は全身症状を伴う肺炎であった ノイラミニダーゼ阻害薬は 7-8 日目に投与されており 治療の遅れが重症化に関連している可能性がある

H7N9 に関して判明している科学的事実 (4 月 18 日 25 日 : 国立感染症研究所からの報告 : 一部改編 ) 疫学的所見 -3 現時点では 感染源 感染経路が不明である ヒト ヒト感染の可能性については 3 月下旬に同一家族内での複数の有症者が発生した事例があることなどから限定的なヒト ヒト感染が起こっている可能性も否定できない ただし確定例に対する接触者調査からはヒト - ヒト感染は確認されていない ヒト分離ウイルス 4 株の遺伝子解析ではヒト上気道に感染しやすく また増殖しやすいように変化している可能性がある 今回の 4 症例 鳥 環境から検出されたウイルスの遺伝子解析では 鳥に対して低病原性であり 家禽 野鳥に感染しても症状を出さないと考えられる 豚にも症状を示さない可能性

H7N9 に関するリスクアセスメント (4 月 18 日 25 日 : 国立感染症研究所からの報告 : 一部改編 ) リスクアセスメントと今後の対応 -1 今後とも中国での感染源 感染経路調査に協力していく必要がある 国内でも発生する可能性があるため 情報収集 リスクの評価 必要な対応に関する準備を行う 発熱 肺炎等の明らかな臨床所見を示す鳥インフルエンザ A(H7N9) ウイルス感染を疑う患者に対して確定検査を積極的に実施していくことが必要である 感染者から家族内などで二次感染が起こりえることを考慮する 患者が発生した場合は 患者搬送時を含め適切な感染拡大防止策 をとること 事例を通じた感染リスクの評価を行うこと 適切に情報 提供を行うことを目的とした積極的疫学調査の実施が必要である

H7N9 に関するリスクアセスメント (4 月 18 日 25 日 : 国立感染症研究所からの報告 : 一部改編 ) リスクアセスメントと今後の対応 -2 患者の治療について 専門家のコンサルテーションを受けることができる体制を整えておく必要がある なお 鳥インフルエンザ A(H7N9) ウイルスはノイラミニダーゼ阻害剤 ( タミフル リレンザ イナビル ラピアクタ ) に感受性でありあることから 早期診断 早期治療により 重症例の減尐が期待できる 現時点で ヒトーヒト感染は確認できていないが ヒト分離の鳥インフル エンザ A(H7N9) ウイルスがヒトへの適応性を高めていることは明らか であり パンデミックを起こす可能性は否定できない 適時のリスク評価にもとづいて パンデミックへの対応強化を準備する * 日本では鳥インフルエンザ A(H7N9) ウイルス感染症を指定感染症とする

本日の内容 1. インフルエンザについて 2. 感染症対策 ( 予防など ) のポイント

感染予防について 安静 休養 栄養補給 咳エチケット 手洗いの大切さ

安静 休養 栄養補給が大切 不規則な生活, 栄養不足は線毛の働きを鈍くします 線毛は鼻から気管 気管支粘膜にぎっしり生えていて, 常に侵入してきた異物を波打つような動きをして外部に排泄するような働きをしています ウイルスなどの病原体に対する抗体の産生を遅らせます ( 免疫力低下 )

そのほかの大切なこと -1 ワクチン接種 インフルエンザや肺炎球菌ワクチンの接種をしてください 重症化を防ぎます ( 今回のH7N9に関してのワクチンはまだ無い ) うがいをする 口やのどの粘膜に付着したウイルスや細菌を洗い流す効果があります

そのほかの大切なこと -2 できるだけ 寒冷刺激を避けてください 冬場は風邪をひくことが多くなりますが これは長時間冷気を吸い込むと鼻や喉の粘膜の血管が収縮して, 粘膜面にある線毛の動きを悪くしてウイルスや細菌が住み着きやすくしてしまうからです

そのほかの大切なことー 3 禁煙が重要です タバコの煙にはたくさんの化学物質が含まれており 線毛の働きを低下させる物質も入っています 喫煙者は風邪の治りが悪くなります