Similar documents
PDF化【公表】290606報告書(横計入)

Microsoft Word - 28概況(所得・貯蓄)(170929)(全体版・正)

初めて親となった年齢別に見た 母親の最終学歴 ( 問 33 問 8- 母 ) 図 95. 初めて親となった年齢別に見た 母親の最終学歴 ( 母親 ) 初めて親となった年齢 を基準に 10 代で初めて親となった 10 代群 平均出産年齢以下の年齢で初めて親となった平均以下群 (20~30 歳 ) 平均

平成26年度「結婚・家族形成に関する意識調査」報告書(全体版)

このジニ係数は 所得等の格差を示すときに用いられる指標であり 所得等が完全に平等に分配されている場合に比べて どれだけ分配が偏っているかを数値で示す ジニ係数は 0~1の値をとり 0 に近づくほど格差が小さく 1に近づくほど格差が大きいことを表す したがって 年間収入のジニ係数が上昇しているというこ

困窮度別に見た はじめて親となった年齢 ( 問 33) 図 94. 困窮度別に見た はじめて親となった年齢 中央値以上群と比べて 困窮度 Ⅰ 群 困窮度 Ⅱ 群 困窮度 Ⅲ 群では 10 代 20~23 歳で親となった割 合が増える傾向にあった 困窮度 Ⅰ 群で 10 代で親となった割合は 0% 2

アンケート調査の実施概要 1. 調査地域と対象全国の中学 3 年生までの子どもをもつ父親 母親およびその子どものうち小学 4 年生 ~ 中学 3 年生までの子 該当子が複数いる場合は最年長子のみ 2. サンプル数父親 母親 1,078 組子ども 567 名 3. 有効回収数 ( 率 ) 父親 927

II. 調査結果 1 調査世帯の状況 世帯の状況 1 家族形態 H28 平成 5 年の調査 ( 小学 2 年 小学 5 年 中学 2 年 ) との比較では 祖父母同居のは 13.3 ポイント減少しており 核家族化の傾向が見られる また は 3.5 ポイント増加している 小学 2 年生

第 1 章調査の実施概要 1. 調査の目的 子ども 子育て支援事業計画策定に向けて 仕事と家庭の両立支援 に関し 民間事業者に対する意識啓発を含め 具体的施策の検討に資することを目的に 市内の事業所を対象とするアンケート調査を実施しました 2. 調査の方法 千歳商工会議所の協力を得て 4 月 21

2) 親子関係 家族との生活に満足している について と の調査と比較した 図 12-2 に 示しているように の割合は 4 かとも増加傾向が見られた 日 本 米 中


<4D F736F F D20838C837C815B83675F89C68C7682C98AD682B782E992B28DB E342E646F63>

初めて親となった年齢別に見た 就労状況 ( 問 33 問 8) 図 97. 初めて親となった年齢別に見た 就労状況 10 代で出産する人では 正規群 の割合が低く 非正規群 無業 の割合が高く それぞれ 22.7% 5.7% であった 初めて親となった年齢別に見た 体や気持ちで気になること ( 問

調査結果概要 ( 旭川市の傾向 ) 健康状態等 子どもを病院に受診させなかった ( できなかった ) 経験のある人が 18.8% いる 参考 : 北海道 ( 注 ) 17.8% 経済状況 家計について, 生活のため貯金を取り崩している世帯は 13.3%, 借金をしている世帯は 7.8% となっており

man2

02世帯

Microsoft Word - notes①1210(的場).docx

資料1 世帯特性データのさらなる充実可能性の検討について

<4D F736F F D F815B A F A838A815B A8E718B9F8EE C98AD682B782E992B28DB85B315D2E646F63>

世の中の人は信頼できる と回答した子どもは約 4 割 社会には違う考え方の人がいるほうがよい の比率は どの学年でも 8 割台と高い 一方で 自分の都合 よりみんなの都合を優先させるべきだ は 中 1 生から高 3 生にかけて約 15 ポイント低下して 5 割台にな り 世の中の人は信頼できる も

参考 1 男女の能力発揮とライフプランに対する意識に関する調査 について 1. 調査の目的これから結婚 子育てといったライフ イベントを経験する層及び現在経験している層として 若年 ~ 中年層を対象に それまでの就業状況や就業経験などが能力発揮やライフプランに関する意識に与える影響を把握するとともに

資料1 団体ヒアリング資料(ベネッセ教育総合研究所)

15 第1章妊娠出産子育てをめぐる妻の年齢要因

図表 2-1から 最も多い回答は 子どもが望む職業についてほしい (9%) であり 以下 職業に役立つ何らかの資格を取ってほしい (82.7%) 安定した職業についてほしい (82.3%) と続いていることが分かる これらの結果から 親が自分の子どもの職業に望むこととして 最も一般的な感じ方は何より

三世代で暮らしている人の地域 親子関係 第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部研究開発室的場康子 < 減り続ける > 戦後 高度経済成長を迎えた我が国においては 産業構造の変化により都市化 工業化が進む中で 多くの人が地方から都市に移動し核家族化が進んだ 低成長経済に移行した後

人生100年時代の結婚に関する意識と実態

図表 II-39 都市別 世帯主年齢階級別 固定資産税等額 所得税 社会保険料等額 消 費支出額 居住コスト 年間貯蓄額 ( 住宅ローン無し世帯 ) 単位 :% 東京都特別区 (n=68) 30 代以下 (n=100) 40 代

平成26年度「結婚・家族形成に関する意識調査」報告書(全体版)

3 調査項目一覧 分類問調査項目 属性 1 男女平等意識 F 基本属性 ( 性別 年齢 雇用形態 未既婚 配偶者の雇用形態 家族構成 居住地 ) 12 年調査 比較分析 17 年調査 22 年調査 (1) 男女の平等感 (2) 男女平等になるために重要なこと (3) 男女の役割分担意

Microsoft Word 結果の概要(1世帯)

母子1

PowerPoint プレゼンテーション

平成28年 高齢者の経済・生活環境に関する調査結果(概要版)2/4

関東地方の者が約半数を占める (45.3%) 続いて近畿地方 (17.4%) 中部地方 (15.0%) となっている 図表 2-5 地域構成 北海道 東北関東中部近畿中国四国九州 沖縄総数 (%) 100.0% 8.9% 45.3%

25~44歳の出産・子育ての意識と実態

結婚しない理由は 結婚したいが相手がいない 経済的に十分な生活ができるか不安なため 未婚のに結婚しない理由について聞いたところ 結婚したいが相手がいない (39.7%) で最も高く 経済的に十分な生活ができるか不安なため (2.4%) 自分ひとりの時間が取れなくなるため (22.%) うまく付き合え

平成26年度「結婚・家族形成に関する意識調査」報告書(全体版)

Microsoft PowerPoint - 【2013年度】保護者

学習指導要領の領域等の平均正答率をみると 各教科のすべての領域でほぼ同じ値か わずかに低い値を示しています 国語では A 問題のすべての領域で 全国の平均正答率をわずかながら低い値を示しています このことから 基礎知識をしっかりと定着させるための日常的な学習活動が必要です 家庭学習が形式的になってい

平成30年版高齢社会白書(概要版)(PDF版)

平成24年度 団塊の世代の意識に関する調査 日常生活に関する事項

ポイント 〇等価尺度法を用いた日本の子育て費用の計測〇 1993 年 年までの期間から 2003 年 年までの期間にかけて,2 歳以下の子育て費用が大幅に上昇していることを発見〇就学前の子供を持つ世帯に対する手当てを優先的に拡充するべきであるという政策的含意 研究背景 日本に

参考 男女の能力発揮とライフプランに対する意識に関する調査 について 1. 調査の目的これから結婚 子育てといったライフ イベントを経験する層及び現在経験している層として 若年 ~ 中年層を対象に それまでの就業状況や就業経験などが能力発揮やライフプランに関する意識に与える影響を把握するとともに 家

 

表 6.1 横浜市民の横浜ベイスターズに対する関心 (2011 年 ) % 特に何もしていない スポーツニュースで見る テレビで観戦する 新聞で結果を確認する 野球場に観戦に行く インターネットで結果を確認する 4.

第 1 章アンケートの概要 1-1 調査の目的 1-2 対象者 1-3 調査方法 1-4 実施期間 1-5 調査結果サンプル数 第 2 章アンケート調査結果 2-1 回答者自身について (1) 問 2: 年齢 (2) 問 5: 同居している家族 2-2 結婚について (1) 問

第4章妊娠期から育児期の父親の子育て 45

Microsoft Word - Notes1104(的場).doc

家庭における教育

140327子ども用ヘルメット調査リリース(最終稿).pptx

Unknown

結婚白書 目次

アンケート調査の実施概要 1. 調査地域と対象全国に居住する 30~60 代の既婚男女 2. サンプル数 800 名 3. サンプル抽出方法第一生命経済研究所生活調査モニター 4. 調査方法質問紙郵送調査法 5. 実施時期 2006 年 1 月 6. 有効回収数 ( 率 ) 769 名 (96.1%

Microsoft Word - 概要.doc

平成27年国勢調査世帯構造等基本集計結果の概要

<4D F736F F D B835C83694E6F2E BE0914B8AB48A6F82C692998BE082CC8EC091D E646F63>

スライド 1

小学生の英語学習に関する調査

平成29年高齢者の健康に関する調査(概要版)

Microsoft Word 年度入学時調査報告.docx

平成 30 年度 名古屋市子ども 若者 子育て家庭 意識 生活実態調査報告書 ( 概要 ) 平成 31 年 3 月 名古屋市 1 調査目的平成 31 年度に策定予定のなごや子ども条例第 20 条の規定による 子どもに関する総合計画 及び子ども 子育て支援法第 61 条の規定による 市町村子ども 子育

01 公的年金の受給状況

スライド 1

調査結果からみえてきたこと 2017 年の出生数は 1899 年の統計開始以降 最も少ない 94.6 万人になりました 急速な少子化の進行は 日本の人口構造に変化を与え 労働力不足や社会保障の在り方など さまざまな面に課題をもたらします こうした社会環境の中にあって 0~1 歳児を育てている母親の

1 調査目的 今年度策定する 津山市総合戦略 で 子どもを産み 育てやすい環境づくりに 向けた取組みを進めるにあたり 出産 子育ての現状を把握するために実施した 2 調査内容の背景と設問設定理由国では 出生率を 2.07 まで高めることで 2060 年に現状の社会構造を維持できる人口 1 億人程度を

組合員対象 奨学金制度に関するアンケート の集計状況 1. はじめに調査概要とサンプル特性について < 調査概要 > 調査実施期間 2016 年 11 月 16 日 ~12 月 28 日 調査対象 全国の国公立および私立大学の学部学生 院生 回収数 1,745 有効回答数 文責 : 加藤

表紙

 

3-1. 新学習指導要領実施後の変化 新学習指導要領の実施により で言語活動が増加 新学習指導要領の実施によるでの教育活動の変化についてたずねた 新学習指導要領で提唱されている活動の中でも 増えた ( かなり増えた + 少し増えた ) との回答が最も多かったのは 言語活動 の 64.8% であった

無党派層についての分析 芝井清久 神奈川大学人間科学部教務補助職員 統計数理研究所データ科学研究系特任研究員 注 ) 図表は 不明 無回答 を除外して作成した 設問によっては その他 の回答も除外した この分析では Q13 で と答えた有権者を無党派層と定義する Q13 と Q15-1, 2 のクロ

Ⅰ 調査目的 総合研究所では 新規開業企業の実態を把握するために 1991 年から毎年 新規開業実態調査 を実施し 開業時の年齢や開業費用など時系列で比較可能なデータを蓄積すると同時に 様々なテーマで分析を行ってきた 今年度は 高齢化が進展するなか開業の担い手として注目を集めているシニア起業家 (

第2章 調査結果の概要 3 食生活

Ⅲ 調査研究報告 / 若者の結婚観 子育て観等に関する調査 77 交際中 (n=671) 交際経験あり (n=956) 交際経験なし (n=767) 早く結婚したいいい

質問 1 11 月 30 日は厚生労働省が制定した 年金の日 だとご存じですか? あなたは 毎年届く ねんきん定期便 を確認していますか? ( 回答者数 :10,442 名 ) 知っている と回答した方は 8.3% 約 9 割は 知らない と回答 毎年の ねんきん定期便 を確認している方は約 7 割

回答者のうち 68% がこの一年間にクラウドソーシングを利用したと回答しており クラウドソーシングがかなり普及していることがわかる ( 表 2) また 利用したと回答した人(34 人 ) のうち 59%(20 人 ) が前年に比べて発注件数を増やすとともに 利用したことのない人 (11 人 ) のう

孫のために教育資金を支援するならどの制度?

第 16 表被調査者数 性 年齢階級 学歴 就業状況別 124 第 17 表独身者数 性 年齢階級 就業状況 家庭観別 142 第 18 表有配偶者数 性 年齢階級 就業状況 家庭観別 148 第 19 表仕事あり者数 性 年齢階級 配偶者の有無 親との同居の有無 職業別 154 第 20 表仕事あ

第 3 章各調査の結果 35

2 累計 収入階級別 各都市とも 概ね収入額が高いほども高い 特別区は 世帯収入階級別に見ると 他都市に比べてが特に高いとは言えない 階級では 大阪市が最もが高くなっている については 各都市とも世帯収入階級別の傾向は類似しているが 特別区と大阪市が 若干 多摩地域や横浜市よりも高い 東京都特別区

25~34歳の結婚についての意識と実態

第 4 章大学生活および経済 生活支援とキャリア行動 キャリア意識との関連 本章では 学生の大学生活や経済 生活支援の利用状況をふまえて キャリア行動やキャリア意識に違いが見られるかについて検討する 1 節では 大学生活とキャリア支援の利用との関連を示し どのような大学生活を送る学生がキャリア支援を

<342D318A B A2E786C73>

資料 7 1 人口動態と子どもの世帯 流山市人口統計資料 (1) 総人口と年少人口の推移流山市の人口は 平成 24 年 4 月 1 日現在 166,924 人で平成 19 年から増加傾向で推移しています 人口増加に伴い 年尐人口 (15 歳未満 ) 及び年尐人口割合も上昇傾向となっています ( 人

 

出産・育児に関する実態調査(2014)

1-1_旅行年報2015.indd

男女共同参画に関する意識調査

出産・育児・パートナーに関する実態調査(2015)

労働力調査(詳細集計)平成24年平均(速報)結果の要約

Microsoft Word - wt1608(北村).docx

介護休業制度の利用拡大に向けて

Microsoft Word - rp1504b(宮木).docx

Microsoft Word - 4AFBAE70.doc

タイトル

第 1 子出産前後の女性の継続就業率 及び出産 育児と女性の就業状況について 平成 30 年 11 月 内閣府男女共同参画局

Microsoft Word - rp1507b(北村).docx

事例検証 事例 1 37 歳の会社員の夫が死亡し 専業主婦の妻と子ども (2 歳 ) が遺される場合ガイドブック P10 計算例 1 P3 事例 2 42 歳の会社員の夫が死亡し 専業主婦の妻と子ども (7 歳 4 歳 ) が遺される場合 P4 事例 3 事例 3A 事例 3B 53 歳の会社員の夫

Microsoft Word - 単純集計_センター職員.docx

<4D F736F F D208E7182C782E082CC90B68A888EC091D492B28DB870302D70362E646F63>

<4D F736F F D DE97C78CA78F418BC B28DB895F18D908F DC58F49817A2E646F63>

Transcription:

5 ひとり親 / の格差と貧困の影響 岩手大学准教授藤原千沙 1 はじめにここでは との格差と 相対的貧困層とそうでない層の格差について 両者を交差して検討する 本調査では かかといった親構成の視点でみた場合 親 子の意識や実態にいくつかの違いが確認されている しかし は相対的貧困層と重なる部分が大きいため その違いは単に貧困であるか否かという点から生じている可能性がある であっても貧困層であればと同様の特徴を有するのであれば 問題は であるかどうかではなく 貧困であることである そこで 相対的貧困層にあるかどうかを基準として との親 子の特徴を取り上げる 図 Ⅳ-5-1 ひとり親 / の年収分布 ( 保護者調査 ) 45% 40% 35% 30% 25% 20% 15% 10% 5% 0% 100 万円未満 100 万円 ~200 万円未満 200 万円 ~250 万円未満 250 万円 ~300 万円未満 300 万円 ~350 万円未満 350 万円 ~400 万円未満 400 万円 ~550 万円未満 550 万円 ~700 万円未満 700 万円 ~850 万円未満 ( 実父と実母 ) 相対的貧困層 ( 親でない保護者を除く ) 850 万円 ~1000 万円未満 1000 万円 ~1200 万円未満 1200 万円以上 2 ひとり親 / と相対的貧困層の重なりまず 調査対象者全体に占める構成割合を確認すると 保護者調査の有効回収数 3197 世帯のうち 相対的貧困層は 437 世帯 (13.7%) である また かかという親構成でみると が 2644 世帯 (82.7%) が 423 世帯 (13.2%) である の 87.0% は母子世帯 (368 世帯 ) であり 父子世帯は 13.0%(55 世帯 ) である のなかでは 実父と実母から成る世帯が 97.2%(2569 世帯 ) を占め それ以外の養父 継母などから成るステップファミリーは 2.8%(75 世帯 ) である 表 Ⅳ-5-1 相対的貧困層と親構成の度数分布 ( 保護者調査 ) 相対的貧困層 437 13.7% 2644 82.7% 100.0% 相対的貧困でない層 2649 82.9% うち実父と実母 2569 80.4% 97.2% 不詳 111 3.5% うちそれ以外 75 2.3% 2.8% 合計 3197 100.0% 423 13.2% 100.0% 親でない保護者を除く3178ケース うち母子世帯 368 11.5% 87.0% 相対的貧困層 431 13.6% うち父子世帯 55 1.7% 13.0% 相対的貧困でない層 2638 83.0% 親でない保護者 不詳 130 4.1% 不詳 109 3.4% 合計 3197 100.0% 合計 3178 100.0% - 218 -

表 Ⅳ-5-2 は との世帯収入である 平均世帯収入は 社会保障給付等を含めた世帯人員すべての収入 ( 税込み収入 ) で は 669.7 万円 は 294.6 万円である とでは生計をともにする世帯人数が異なるため 世帯収入がそのまま生活水準を表すものではないが 世帯人数を調整した等価世帯収入でみても は 164.4 万円と 328.9 万円の約半分である 世帯人員一人あたりの世帯収入は 93.5 万円 163.6 万となっている のなかでは 父子世帯と比べて母子世帯の収入水準は低く 平均世帯年収で 270.4 万円 等価世帯収入で 151.7 万円 世帯人員一人あたりの世帯収入で 86.8 万円である のなかでは 実父と実母から成る世帯に比べて それ以外の養父 継母などから成る世帯の収入水準はそれほど高くなく 平均世帯収入は 504.5 万円である これは父子世帯の平均世帯収入 455.6 万円を上回る水準であるものの 世帯人数を調整した等価世帯収入や世帯人員一人あたりの世帯収入では父子世帯を下回る水準となっている 表 Ⅳ-5-2 世帯収入 ( 保護者調査 ) 平均世帯収入 ( 円 ) 等価世帯収入 ( 円 ) 一人あたり世帯収入 ( 円 ) 669.7 328.9 163.6 うち実父と実母 674.4 331.5 165.1 うちそれ以外 504.5 237.8 114.1 294.6 164.4 93.5 うち母子世帯 270.4 151.7 86.8 うち父子世帯 455.6 247.8 137.6 注 ) 保護者調査問 20の収入階級の中央値を世帯収入とみなして算出 ただし 最低値 100 万円未満 は50 万円とし 最高値の 1200 万円以上 は直近の収入階級の中央値幅を参照し1300 万円とした 等価世帯収入は世帯収入を生計をともにする世帯人数の平方根で除した額 以下 同様 これらの世帯が相対的貧困層とどのように重なるのかを確認したのが図 Ⅳ-5-2 である で貧困層にあるのは 7.9% と 1 割弱であるのに対して では 48.2% と約 5 割であり 母子世帯に限ればその過半数 (52.2%) が貧困層となっている は全体として貧困層は少ないものの 実父と実母から成る世帯の 7.6% に対して それ以外の世帯は 20.0% と差が大きい であっても 養父や継母がいるステップファミリーは 離婚後に再婚 非婚出産後に結婚など 過去にであった経験を有することが多いことから と類似的な特徴をもつのかもしれない そこで以下では とをより対比させるために は実父と実母から成る世帯 (2569 世帯 ) に限定して検討を進める 図 Ⅳ-5-2 親構成と相対的貧困層 ( 保護者調査 ) 7.9% 89.4% うち実父と実母 7.6% 89.8% うちそれ以外 20.0% 48.2% 76.0% 46.3% 貧困非貧困不詳 うち母子世帯 52.2% 42.1% うち父子世帯 21.8% 74.5% - 219 -

3 親の考える子どもの理想学歴現在 中学 3 年生の子どもが 将来的にどの学校まで進んでほしいかという回答には ひとり親とふたり親で開きがある ( 図 Ⅳ-5-3 の左図 ) の親では 大学 大学院 まで進んでほしいという回答が 7 割 (65.6%) にのぼるのに対して の親では 4 割 (38.5%) に留まり 逆に では 1 割 (12.2%) しかない 中学 高等学校 までという回答が 3 割 (29.3%) と多くなっている しかし 相対的貧困層かそうでない層か ( 貧困 / 非貧困 ) という基準で親の意識をみると ( 図 Ⅳ-5-3 の右図 ) 貧困層では相対的に 大学 大学院 までが少なく 中学 高等学校 までが多いという と回答傾向が類似していることがわかる 非貧困層をみると 大学 大学院 までという回答が突出して高くなっており これはと共通している このようにみると ひとり親とふたり親にみられる意識の差は ひとり親かどうかというよりも経済状況が影響している可能性がある 図 Ⅳ-5-3 理想的にはどの学校まで進んでほしいか ( 保護者調査 ) 65.6% 65.0% 29.3% 38.5% 34.1% 36.0% 中学 高校専門学校高専 短大大学 院 12.2% 11.8% 貧困 非貧困 注 ) その他 特に理想はない は表示していない そこで のなかでも貧困層と非貧困層に分け また も同様に分けて確認したのが図 Ⅳ-5-4 である 図 Ⅳ-5-4 理想的にはどの学校まで進んでほしいか ( 保護者調査 ) 67.8% 35.8% 31.4% 20.9% 46.4% 30.8% 42.1% 中学 高校専門学校高専 短大大学 院 10.5% 貧困非貧困貧困非貧困 - 220 -

図 Ⅳ-5-4 をみると であっても非貧困層であれば 大学 大学院 までという回答が 46.4% と増加し 高校を超える教育機関に進学してほしいと考える親が増えている すなわち の親の意識に近づいているといえる でかつ貧困でもある世帯の場合は 中学 高等学校 までと考える親 (35.8%) が 大学 大学院 までと考える親 (31.4%) よりも多くなり たとえ理想であっても子どもの学校は高校までと考えられている 一方 をみると 量的にも最も多い - 非貧困 では その 7 割 (67.8%) の親が子どもは 大学 大学院 まで進学してほしいと考えており 中学 高等学校 までで良いと考える親は 1 割 (10.5%) にすぎない しかしながら ふたり親であっても貧困層の場合は 中学 高等学校 までと考える親が 3 割 (30.8%) にのぼり 四年制大学の理想 (42.1%) は非貧困層 (67.8%) と比べて大きく低下している すなわち ふたり親であっても貧困層にある場合は ひとり親の意識と類似していることがわかる 4 子どもの考える理想学歴同様に 現在 中学 3 年生の子ども自身が考えている将来の理想学歴をみたのが図 Ⅳ-5-5 である の子どもは 大学 大学院 までを理想とする割合が 64.5% と高いのに対して の子どもは 40.1% に留まり 中学 高等学校 までとする回答が 34.4% と相対的に高い ( 図 Ⅳ-5-5 の左図 ) ただし 保護者調査と同様 貧困層か非貧困層かの基準でみた場合( 図 Ⅳ-5-5 の右図 ) その回答傾向は かかでみた場合の回答傾向と類似しており 子ども自身の意識も 世帯が貧困状態にあるかどうかが影響している可能性がある 図 Ⅳ-5-5 理想的にはどの学校まで行きたいか ( 子ども調査 ) 64.5% 64.6% 34.4% 40.1% 17.0% 39.0% 35.1% 16.4% 中学 高校専門学校高専 短大大学 院 貧困 非貧困 注 ) その他 は表示していない そこで 保護者調査と同様 の子どもの回答を貧困層か非貧困層かに分け またの子どもも同様に分けて確認したのが図 Ⅳ-5-6 である であっても非貧困層であれば 大学 大学院 までという回答が 48.5% と高くなっており 親の意識と同様 子ども自身も四年制大学への進学希望が増えることがわかる 貧困層に属するの子どもが四年制大学を理想とする割合 (38.5%) は 貧困層にないの子どもが理想とする割合 (48.5%) よりも低い すなわち かかというよりも 貧困層にあるかどうかが 子ども自身の進学意識に影響しているようだ - 221 -

図 Ⅳ-5-6 理想的にはどの学校まで行きたいか ( 子ども調査 ) 66.9% 43.0% 31.0% 24.5% 48.5% 37.9% 38.5% 中学 高校専門学校高専 短大大学 院 15.1% 貧困非貧困貧困非貧困 5 貧困層 / 非貧困層の収入水準ただし 図 Ⅳ-5-6 を 同じ貧困層のなかでみた場合 の子どもはの子どもと比べて 四年制大学を理想とする割合はより低く (31.0% 38.5%) 高卒で良いとする割合がより高い (43.0% 37.9%) また 同じ非貧困層のなかでみると の子どもの 66.9% が四年制大学を理想としているのに対して の子どもは 48.5% であり 20 ポイント近くの開きがある 図 Ⅳ-5-4 でみた保護者調査の結果も同様であり 同じ貧困層や同じ非貧困層のなかで とをみてみると のほうが四年制大学を理想とする割合は低く 高卒で良いとする割合が高くなっている 同じ貧困層 同じ非貧困層であるにもかかわらず とでなぜこのような意識の差がみられるのか 考えられうるのは 同じ非貧困層のなかでも はよりも経済的なゆとり度が低いことであり 同様に 同じ貧困層のなかでは のほうがよりも貧困の深度がより深いことであろう この点を確認するために 同じ貧困層または非貧困層として括られるとについて 世帯収入 等価世帯収入 一人あたり世帯収入 を確認したのが図 Ⅳ-5-7 である 図 Ⅳ-5-7 世帯収入 ( 保護者調査 ) 世帯収入 ( 円 ) 等価世帯収入 ( 円 ) 一人あたり世帯収入 ( 円 ) 715.2 352.0 175.4 438.5 244.3 140.0 161.8 192.8 87.8 89.1 48.8 42.1 貧困 非貧困 貧困 非貧困 貧困 非貧困 - 222 -

図 Ⅳ-5-7 をみると 貧困層においては との収入水準に違いはなく のほうが貧困程度がより深刻であるとはいえない ただし 非貧困層においては との収入水準には明確な差があり はたとえ相対的貧困ラインを超えていても 経済的な余裕やゆとり度はよりも小さいことがわかる 親の考える子どもの理想学歴や 子ども自身が望む理想学歴において 大学 大学院 までという回答が同じ非貧困層のなかでとで 20 ポイントほど開きがあったのは この世帯収入の差が影響しているものと思われる 6 親が中学 3 年生だったときとにみられる格差の少なくとも一部分は 貧困であるか否かという違いで説明できるとしたならば 問題は どのような層が貧困状態にあるのかどうかである 中学 3 年生の子どもに対して家庭の雰囲気を聞いた設問では ひとり親かどうかや貧困であるかにかかわりなく 約 9 割の子どもが あたたかい雰囲気 とこたえており また保護者に対して聞いた子どもとの関係も 7 割強の親が 良い とこたえており ひとり親かどうかや貧困であるかどうかによって違いはない このように 家庭の雰囲気や親子関係の良好度に差はみられないにもかかわらず や相対的貧困層の子どもは 学校の成績が下のほうに偏っており 授業の理解度も低く 塾や習い事をしている割合は少なく 勉強時間も短い ( 調査報告書や他委員の分析を参照 ) の子どもにみられるこのような状況がその世帯が貧困層であることから生じているとするならば どのような層が貧困状態に陥るのかどうかを確かめる必要がある そこで 親自身が中学 3 年生の頃にどうだったのかという当時の状況と 現在 相対的貧困層にあるかどうかを検証し 子ども時代におかれた生活環境で親になった場合の貧困率に差があるかどうか確認する 図 Ⅳ-5-8 親が中学 3 年生のときの暮らし向きと現在の相対的貧困率 ( 保護者調査 ) 24.2% 13.8% 11.8% 11.1% 10.8% 大変苦しい やや苦しい 普通 ややゆとりがある 大変ゆとりがある 364 725 1507 442 120 注 ) 親でない保護者 ( 兄 姉 祖父母等 ) を除いた 3178 ケース 凡例の下の数字は対象母数 以下 同様 図 Ⅳ-5-8 は 親が中学 3 年生のときの家庭の暮らし向きと 現在の相対的貧困率を表したものである 大変苦しい ( 苦しかった ) と答えた親は 現在の貧困率が 24.2% と突出して高く 子ども期に経済的に厳しい家庭環境で育った親が 成人して子どもを育てる親になった現在 貧困状態にある確率が高いことがわかる ただし この図から読み取るべきもうひとつのことは 大変苦しい 家庭環境に育った子ども ( 現在の親 ) の 4 分の 3 は 現在 貧困状態にはないということであり 子ども期の貧困が必ずしも成人後の貧困を招くわけではない - 223 -

図 Ⅳ-5-9 親が中学 3 年生のときの成績と現在の相対的貧困率 ( 保護者調査 ) 29.1% 22.7% 12.7% 5.9% 8.2% 上のほう やや上のほう 真ん中あたり やや下のほう 下のほう 476 742 1201 476 247 注 ) どれにもあてはまらない は表示していない 図 Ⅳ-5-9 は 親が中学 3 年生のときの成績と 現在の相対的貧困率を表したものである 成績が 上のほう だった親の現在の貧困率は低く 下のほう だった親の現在の貧困率が高いという関係がみてとれる 中学 3 年生のときの成績が 下のほう やや下のほう だった親は 現在の貧困率が 20 ~30% と高くなっており 少なくとも親世代においては 中学 3 年生のときの成績はその後の成人後の貧困リスクの高低につながった可能性がある このような相関関係が今後もみられるとしたら 現在 成績が下のほうにある子どもが 親になった将来 貧困に陥らないような対策を考える必要がある 図 Ⅳ-5-10 親が中学 3 年生のときの両親の様子と現在の相対的貧困率 ( 保護者調査 ) 19.6% 10.9% 父と母は仲良くやっていた 2205 973 19.5% 12.6% 18.0% 13.5% 父と母は口論や争いが絶えなかった 426 2752 父と母は別居していた 50 3128 33.3% 22.9% 12.8% 13.4% ひとり親だった 240 2938 親とは一緒に暮らしていなかった 27 3151-224 -

図 Ⅳ-5-10 は 親が中学 3 年生のときの両親の様子と 現在の相対的貧困率を表したものである 親の両親が 仲良くなかった 場合 口論や争いが耐えなかった 場合 別居していた 場合 現在の貧困率は 20% 近くと高くなっており 両親自身が幸福な関係にない家庭で子どもが育つことは 子どもの将来の貧困リスクを高めている可能性がある あるいは 子どもの将来の貧困リスクが高い家庭 すなわち 貧困に陥りやすい要素を複数抱える家庭では 夫婦関係が良好であることは難しいのかもしれない 親が中学 3 年生のとき ひとり親だった ( で育った ) 場合は 現在の貧困率は 22.9% であり そうでない場合の 12.8% と比べて 約 10 ポイント貧困率が高くなっている 親とは一緒に暮らしていなかった 場合は 27 ケースと数は少ないものの 貧困率は 33.3% と極めて高くなっており 親と暮らしていない子ども ( 今回の調査では調査対象外である施設等で暮らしている子ども ) が将来 子どもをもつ親になったときに 貧困にならないような手立てが十分に必要である 7 親の成育環境とその後の状況親の子ども期 ( 中学 3 年生のとき ) の暮らし向きが 親のその後の学歴達成に影響を与えたかどうかをみたのが図 Ⅳ-5-11 である 男性 ( 父 ) の場合 中学 3 年生のときの家庭の暮らし向きにゆとりがあった場合は その 56.3% が 大学 大学院 の最終学歴を有するのに対して 苦しかった場合の大卒割合は 30.2% にすぎず 20 ポイント以上の差が生じている 中学 3 年生のときの家庭の暮らし向きが苦しかった男性の 7.8% が中卒 52.0% が高卒であり 約 6 割が高校を超える学歴を得ることができていない 女性 ( 母 ) の場合も同様であり 家庭の暮らし向きにゆとりがあった女性は その 26.3% が四年制大学以上を卒業しているのに対して 苦しかった女性は 7.7% にすぎず 20 ポイント近い開きがある 図 Ⅳ-5-11 親の中学 3 年生のときの暮らし向きと親の最終学歴 ( 保護者調査 ) 男性 ( 父 ) 大変苦しい + やや苦しい 7.8% 52.0% 10.1% 30.2% 普通 3.2% 34.4% 12.4% 48.6% 中学校高等学校専門学校 高専 短大大学 院不詳 大変ゆとりがある + ゆとりがある 26.6% 17.2% 56.3% 女性 ( 母 ) 大変苦しい + やや苦しい 普通 大変ゆとりがある + ゆとりがある 7.4% 52.2% 2.4% 2.2% 39.4% 26.5% 12.4% 15.8% 31.7% 15.9% 28.9% 16.5% 7.7% 12.6% 26.3% 中学校高等学校専門学校高専 短大大学 院不詳 図 Ⅳ-5-12 は 親が中学 3 年生のときにだったかどうかと その後の親の最終学歴をみたものである 男性 ( 父 ) の大卒割合は だった場合で 31.3% そうでなかった場合で 43.0% となっており で育った場合は高卒を超える学歴を得られにくかったことがわかる - 225 -

女性 ( 母 ) の場合も だったかどうかで最終学歴の違いは大きく で育った女性の 13.5% は中卒であり 四年制大学以上の大卒学歴をもつものはわずか 4.8% である 図 Ⅳ-5-12 親の中学 3 年生時にだったかどうかと親の最終学歴 ( 保護者調査 ) ひとり親だった 6.3% 4.4% 39.3% 53.1% 12.2% 9.4% 43.0% 31.3% 中学校高等学校専門学校 高専 短期大学大学 大学院不詳 男性 ( 父 ) ひとり親だった 13.5% 3.2% 40.4% 49.0% 15.3% 13.5% 25.7% 17.8% 14.1% 4.8% 中学校高等学校専門学校高専 短期大学大学 大学院不詳 女性 ( 母 ) 同じで育った場合も 家庭の暮らし向きの違いでその後の最終学歴に差があるのかどうか 女性のケースで確認してみると ( 図 Ⅳ-5-13) 苦しかったという女性の 15.2% が中卒 50.3% が高卒であり 専門学校 高専 短大 大学など 高卒後の進学機会を得ることができたのは 3 割強である それに対して 暮らし向きは普通あるいはゆとりがあったと答えた女性では その約 4 割が高卒を超える学歴を取得しており 同じで育った場合も 当時の家庭の暮らし向きの違いでその後の最終学歴に差があることがわかる ただし で育った女性で当時の暮らし向きにゆとりがあったとする回答は極めて少ないことから ( 大変ゆとりがある 4 人 ややゆとりがある 10 人 普通 47 人 ) 苦しかったという認識が特になかった場合でも で育った女性はで育った女性 ( 図 Ⅳ-5-12 女性( 母 ) ) と同程度の学歴達成には至っていない 図 Ⅳ-5-13 中学 3 年生時にひとり親だった女性 ( 母 ) の当時の暮らし向きと最終学歴 ( 保護者調査 ) 大変苦しい + やや苦しい (N=145) 大変ゆとりがある + ゆとりがある + 普通 (N=61) 15.2% 9.8% 47.5% 50.3% 13.1% 13.8% 23.0% 15.9% 4.8% 4.9% 中学校高等学校専門学校高専 短大大学 院不詳 8 相対的貧困層の特徴の母 ( 母子世帯の母 ) の就業率は 貧困層で 83.9% 非貧困層で 91.6% であり 貧困層であっても 8 割以上の母が働いている ( 表 Ⅳ-5-3) 母子世帯の場合 働いていないから貧困なので - 226 -

はなく 働いているにもかかわらず相対的貧困ラインを超える所得を得ていないことがわかる 就業形態をみると 母子世帯の母の正規 ( 役員 ) 就業比率は 貧困層で 22.4% 非貧困層で 54.9% であり 非貧困層の母の過半数は正規職である の母の場合 就業率は貧困層 72.3% 非貧困層 75.4% と違いはなく 母の就業の有無と世帯が貧困かどうかに関係はみられない 正規 ( 役員 ) 就業比率では 貧困層 10.6% 非貧困層 24.9% と違いがあるものの 非貧困層であっても正規職として働いている母は 4 分の 1 にとどまる 父 ( 男性 ) の就業状態は 貧困層と非貧困層で違いがあり ( 父子世帯 ) であっても であっても 貧困層は非貧困層と比べて 就業率 正規 ( 役員 ) 就業比率 ともに相対的に低い とりわけ で貧困層にある父は 正規 ( 役員 ) 就業比率が 54.7% と低く が貧困状態にあるかについては父の就業状態の影響力の大きさがうかがわれる 表 Ⅳ-5-3 親の就業状態 ( 保護者調査 ) 親の就業率 *1 親の正規 ( 役員 ) 就業比率 *2 母 父 母 父 貧困 83.9% 83.3% 22.4% 66.7% 非貧困 91.6% 97.6% 54.9% 75.0% 貧困 72.3% 88.2% 10.6% 54.7% 非貧困 75.4% 98.6% 24.9% 85.2% は回答者 ( 母子世帯の母 父子世帯の父 ) の就業状態 は回答者とその配偶者の就業状態 *1 全体のうち 現在 収入をともなう仕事に ついている ついているが休職中 の人の割合 *2 現在 就業している ( 休職中を含む ) 人のうち就業形態が 正規の職員 従業員 会社 団体等の役員 の割合 親の学歴構成は 貧困層と非貧困層で大きな違いがある ( 表 Ⅳ-5-4) 貧困層では最終学歴が 中学 という割合が男女ともに高く ひとり親の女性 15.6% ふたり親の女性 11.3% ひとり親の男性 25.0% ふたり親の男性 13.3% である 非貧困層で最終学歴が 中学 という割合は 女性で 1-2% 男性で 4-7% 程度であることから 貧困層である親はひとり親 / ふたり親にかかわらず中卒割合が高い 最終学歴が 大学 大学院 である割合は 非貧困層の女性では ひとり親 12.3% ふたり親 16.3% であるのに対して 貧困層の女性では ひとり親 1.6% ふたり親 2.6% とわずかである 男性も同様に貧困層と非貧困層とでは大卒割合にも違いがみられ ひとり親かふたり親かにかかわらず 相対的貧困層では男女ともに学歴構成は下方への偏りがみられる 表 Ⅳ-5-4 親の学歴構成 ( 保護者調査 ) 中学 女性 ( 母 ) の最終学歴専門学高校校 高専 短大 大学 院中学高校 男性 ( 父 ) の最終学歴専門学校 高専 短大 大学 院 貧困 15.6% 56.3% 25.0% 1.6% 25.0% 75.0% 0.0% 0.0% 非貧困 1.9% 45.2% 40.6% 12.3% 7.3% 53.7% 22.0% 17.1% 貧困 11.3% 54.4% 29.7% 2.6% 13.3% 54.9% 12.8% 15.4% 非貧困 1.5% 37.8% 43.0% 16.3% 4.1% 36.0% 12.2% 45.3% は回答者 ( 母子世帯の母 父子世帯の父 ) の学歴 は回答者とその配偶者の学歴 親 子の健康状態を貧困層と非貧困層とで比較してみると 親の健康状態は 良いとする割合は非貧困層で高く 悪いとする割合は貧困層で高い ( 表 Ⅳ-5-5) ひとり親/ ふたり親に関係なく 健康状態と貧困との関連が示唆されるのは 学歴構成と同様である しかしながら の貧困率は 1 割弱であるのに対して では約半数にのぼることから ひとり親とふたり親を比べると ひとり親は学歴構成がより低く 健康状態もより悪いという結果があらわれる だが表 Ⅳ-5-5 から確認 - 227 -

できるように 貧困層で健康状態が良好であることが難しいのは ひとり親でもふたり親でも同じである 子どもの健康状態についてみれば 良いという割合は貧困層と非貧困層で違いがみられる 世帯が貧困状態にあることは 子どもの健康状態をより良好に保つことが難しいのかもしれない だが 悪いという割合には違いはなく 貧困層かどうかは子どもの健康状態に親ほどの影響は与えていないようだ 表 Ⅳ-5-5 親 子の健康状態 ( 保護者調査 子ども調査 ) 親の健康状態 子どもの健康状態 良い+どちらかと悪い+どちらかと良い+どちらかと悪い+どちらかと 言えば良い 言えば悪い 言えば良い 言えば悪い 貧困非貧困 37.3% 48.5% 33.8% 18.4% 58.0% 67.3% 8.0% 8.2% 貧困 37.9% 25.6% 63.1% 6.2% 非貧困 55.7% 13.2% 72.6% 4.8% 表 Ⅳ-5-6 は 親に対して 子どもに 少しでも早く働いてほしい 早く親元から独立してほしい と思うかを聞いた回答と 子どもに対して 早く結婚して自分の家族を持ちたい 早く親元から独立したい と思うかを聞いた回答を並べたものである 総じて 貧困層かどうか かどうかで違いはみられないことから このような離家意識は 世帯構成や経済状況とは違った点から生じるのかもしれない ただし 親の意識として 少しでも早く働いてほしい という回答は ( 貧困層 40.7% 非貧困層 30.6%) は ( 貧困層 27.2% 非貧困層 20.6%) と比べて高く ひとり親とりわけ貧困層の親では 子どもに早く働いてほしいという意識が強いことがうかがえる その背景には 子どもの高校卒業後 進学機会を与えるための経済的な余裕が親にないことがあるとしたならば 親の考える子どもの理想学歴で高卒までと考える意識につながっている可能性がある さらに そのような親の意識を読み取った子どもが 自身が理想とする学歴でも高卒までとこたえているのかもしれない 表 Ⅳ-5-6 親 子の離家意識 ( 保護者調査 子ども調査 ) 親の意識 ( あてはまる + どちらかと言えばあてはまる の割合 ) 少しでも早く働いてほしい 早く親元から独立してほしい 子どもの意識 ( そう思う + どちらかと言えばそう思う の割合 ) 早く結婚して自分の家族を持ちたい 早く親元から独立したい 貧困 40.7% 39.7% 51.0% 57.0% 非貧困 30.6% 51.0% 50.0% 55.1% 貧困 27.2% 38.5% 49.2% 54.9% 非貧困 20.6% 37.4% 53.9% 54.3% 9 おわりにかかといった視点で ある調査をみた場合 の結果はの結果と異なった特徴をあらわすことがある それが いわゆる社会にとって望ましくない特徴であったり 不利な状態をあらわす結果であった場合は だからは問題である という判断や解釈がくだされがちである しかし 以上の分析からわかったことは とにみられる差異は 相対的貧困層にあるか否かという差異で説明できる部分が少なくないことである であっても貧困層にあればと同様の特徴がみられ 逆に であっても貧困状態になければ回答傾向はと接近する すなわち 問題とすべきは であるかどうかではなく 貧困であるかどうかである そして 貧困の問題は 経済的な手立 - 228 -

てや多方面の政策対応で緩和できる問題である 子育て世帯の貧困問題を緩和する手段として考えられうる施策のひとつは 直接的な金銭給付や親に対する就業支援であろう 保護者に対して必要な子育て支援を聞いた設問でも 相対的貧困層やでは 子どもの教育費に関する金銭的給付 や 保護者がより多くの収入が得られるようになるための就労の支援 を求める割合が高い 就業支援という施策で留意すべき点は 貧困層にあるひとり親の 8 割以上はすでに働いている事実である 働いているにもかかわらず貧困である実態を踏まえると 就業支援という施策で求められることは 単に無職の状態から就職へと結びつけることではなく より良い収入が得られる仕事に結びつけることである ただ残念ながら 同じ子どもを育てる立場の親であっても 労働市場で一般的にみられる男女別賃金格差や学歴別賃金格差と無縁ではない 貧困層と非貧困層にみられる親の学歴構成の違いは 親に対する就業支援という手段でどれだけ世帯収入を向上させることができるのか 施策がなしうる限界や困難の大きさを示唆すると同時に 学歴が形成される子ども期 (10 代 ) の暮らしがその後の暮らしにとっても影響が大きく重要であったことを示唆している 子ども期に育った家庭環境がその後の子どもの将来にどのような影響を与えるのか 親が中学 3 年生だった頃という過去の状況と現在の親の状況を確認したところ 成績が下のほうだった場合や 家庭の暮らし向きが悪かった場合は 現在の貧困率が高まっていた 親の中学 3 年生当時の家庭の暮らし向きは その後の進学機会に影響を与えたようで 親の最終学歴にも差を生じさせていた このような保護者調査の結果をみると 現在の中学 3 年生を対象とした子ども調査の結果から学ぶべき点は多い 相対的貧困層とそうでない層とでは 現在 中学 3 年生である子どもの学習環境や進学意識面で明らかに格差があり 相対的貧困層と重なる部分が大きいの子どもは の子どもとの間で格差がある 中学 3 年生のときの成績や家庭の暮らし向きが 中学卒業後の進路や 高校卒業後の進路に影響し その後の就職機会や稼得能力にも影響するとしたら 現在 成績が下のほうにある子どもたちや 家庭の暮らし向きの面で恵まれていない子どもたちが 将来貧困に陥らないような対策を講じていく必要があろう また 中学 3 年生という義務教育の段階で すでに家庭環境に起因する差が生じていること自体 解決すべき課題であり 小学生の段階 あるいは 就学前の段階で このような格差が生じないような対策を社会全体として考えていく必要がある - 229 -