5. ステッピングモータの制御 5. ステッピングモータ概要 () 特徴 広義の同期電動機として分類 連続的な回転運動ではなく 歩進動作 パルス数に比例した角度だけ回転 開ループ制御 () 種類 可変リラクタンス形(VR 形 ) 永久磁石形(PM 形 ) 複合形(H 形 ) 基本 励磁コイルの相数 :~5 相機械的構造 : 多層形 / 単相形 5. ステッピングモータの基本原理 () 磁界中の強磁性体 S 図 5- 磁界中の強磁性体 強磁性体は磁力線に沿って向きを変える. 磁気エネルギーで見ると最も安定 : モータでは磁気安定点 ステッピングモータ回転子が磁気安定点に移動して止まる. 磁気安定点を次々と変えてやることにより回転. () レラクタンストルク 向き合った 枚の歯が完全に重なろうとして力 f が働く. レラクタンストルク 図 5- レラクタンストルク - 67 -
レラクタンストルクの性質 鉄 片 図 5-3 磁気エネルギーと力 鉄片に働く力 f には, 以下の性質がある. ギャップ長 d が短いほど力 f は大きい 力 f は重なっている長さ x には無関係 詳細解説アンペアの周回積分の法則 Hdl ni において, ギャップ以外の磁路の透磁率が m >>m 0 とすると, ni Hdl H g したがってコイルと鎖交している磁束 f は次式で与えられる. xb g xb 0nI / b: 歯の積層厚さて,D t の間に鉄片がD x だけ引き込まれたとすると, コイルに誘導起電力 e が生じる. e nδ Δt ni Δx Δt 注入される電気エネルギーは ΔP g 0nI eiδi b b 0 0 n I エネルギーのつりあいから電気エネルギー = 機械エネルギー (= 仕事量 fd x)+ 磁気エネルギーである. 磁気エネルギーは P m HV V: 体積 Δx で表されるので, 変化分 D P m は ΔP m よって仕事量 fd x は f Δx f ni ni b ni 0 0 ghgb Δx b Δx Δx ΔP ΔPm ΔP b 0 n I 上式より, 鉄片に働く力 f の性質が導かれる. b 0 n I Δx ΔP - 68 -
(3) ステッピングモータの特徴 磁気安定点を利用しているため, 回転がディジタル的 ステップ角をきわめて小さくすることが簡単 制御精度を高くできる 3 位置保持力が大きい 4 起動, 停止特性が優れている 開ループ制御が可能 5 回転ムラが大きく, 速度制御には向かない 5.3 ステッピングモータの種類と動作原理 ()VR 形ステッピングモータ 相巻線は省略 図 5-4 VR 形ステッピングモータ 励磁 : ( 相励磁の場合 ) 5 5 : ステップ角 ステップ角 q s は以下の式 360 s (deg) m m: 相数, : 回転子歯数 図では q s =360/(4*6)=5 特徴 速度起電力がないので高速でもトルク低下が生じにくい 無励磁では保持トルクが発生しない ステップ角を小さくする方法方法 相数を増やす方法 回転子歯数を増やすたとえば, ステップ角を.8 とする場合,m =4 のままとすれば 360 m s 360 4.8 固定子側も同じ歯幅とするのが一般的であり, 固定子歯数も多くなる. 困難 50-69 -
方法 3 小歯 ( 副突極 ) をつける 方法 と 3 を併用するのが一般的 ( 下図 ) 図 5-5 小歯 ()PM 形ステッピングモータ C S D 図 5-6 PM 形ステッピングモータ 励磁 : C D ( 相励磁の場合 ) 90 90 図ではステップ角は 90 特徴 無励磁でも保持力が働く 着磁の極数を増やすのが困難なので, ステップ角を小さくできない (3)H 形ステッピングモータ q t S q t : 回転子 歯のピッチ 図 5-7 H 形ステッピングモータ - 70 -
構造, 相と, 相の固定子の歯はq s =q t /4だけ位相がすれている 回転子の 極とS 極ではq t /だけ位相がずれている 動作 励磁 : _ _ _ ~ ~ ~ ~ q s q s q s q s q t = 4q s ~ 特徴 VR 形よりもトルクが大きい ステップ角を VR 形並みに小さくできる (4) 回転子歯数 と固定子突極数 p の関係 p p は相数 m の倍数 電気角 360 ( 突極数 m n 個分,n: 整数 ) で 歯ずれるので, は (m n±) の倍数 ( ただし, 固定子突極が等間隔とした場合.5 相ステッピングモータなどは等間隔ではない.) p ( mn ) m (a), p ( mn ) m 前図の場合 p =8, =0,m =4 (a) 式を使い,n =で関係式が成り立つ. ステップ角 : 360 360 45 S 9 [deg] m ( mn ) 4n q s =.8 m =4 とすれば =50 n =, p =8( 副突極使用 ) p (b) 次図の場合 p =6, =4,m =3 (b) 式を使い,n =で関係式が成り立つ. ステップ角 : 360 360 60 S 30 [deg] m ( mn ) 3n p - 7 -
5.4 励磁方式 () 励磁方式の種類 相励磁 (wave dive) 相励磁 (nomal dive) 3- 相励磁 (half step dive) () 相励磁 a b a b c c 図 5-8 相励磁 消費電力が少ない (3) 相励磁 a b _ a,b b,c c,a c 図 5-9 相励磁 相励磁よりもトルクが大きい 相励磁よりも振動が少ない ( 励磁される 相のうち 相は切り替わらないため ) (4)- 相励磁 相励磁と 相励磁を交互に行うもの. 相励磁と 相励磁の磁気安定点は違うので, 交互に行うことによりステップ数が倍 ( ステップ角が /) になる. - 7 -
5.5 ステッピングモータの特性 () トルク - 速度特性 トルク [m] 励磁最大静止トルク最大自起動トルク脱出トルクスルー領域 引込みトルク 自起動領域 最大自起動周波数 最大応答周波数 0 周波数 [Hz,pps] 図 5-0 ステッピングモータのトルク - 速度特性 () 主要特性 励磁最大静止トルク T H ( ホールディングトルク ) モータに定格電流を流したときの保持トルク. 引込みトルク ( プルイントルク ) ステッピングモータが力パルス信号に同期して起動 停止できる最大トルクのことで, パルス速度に応じて変化する. 引込みトルク内の領域を自起動領域という. 3 脱出トルク ( プルアウトトルク ) ステッピングモータが入力パルス信号に同期して回転できる最大トルクのことで, パルス速度に応じて変化する. したがって, これ以上の負荷が加わるとモータは正常に回転できなくなり, 停止する. 4 最大自起動周波数 f S ステッピングモータが無負荷時に, 入力パルス信号に同期して瞬時に起動できる最大の周波数. 5 最大応答周波数 f ステッピングモータが摩擦負荷, 慣性負荷が 0 のとき 徐々に加減速することにより脱調することなく運転することのできる最大の入力パルス周波数. 引込みトルクと脱出トルクで挟まれた領域をスルー領域という. - 73 -
5.6 ステッピングモータの制御 () 使用するモータ (PFC5-4C) の特性 図 5- PFC5-4C の特性 () 回路構成 +V MCUpot J4 Moto PD4 PD5 PD6 3 PD7 4 GD 5-3 4 5 図 5- 回路構成 カメレオン VR 指南ボードの JP9,JP-3 を - 側にすること (3) 励磁方法 (a) 相励磁 (c)- 相励磁 CW (b) 相励磁 CW 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 CCW CCW CW 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 CCW 上の表の順番はピン配置順と異なるので注意すること CW,CCW は出力軸の後ろ側から見て - 74 -
(4) サンプルプログラムタイマ / カウンタ 0 の CTC 動作を用いてステッピングモータを速度制御する. トグルスイッチ SW7 は O/OFF,SW0-6 が周波数設定である. サンプルプログラムの設定は, 相励磁,CW( 上からだと CCW) としている. なお, 動作テストは SW0-6 を O( 向こう側 ) とすること. #include #include リスト5- ステッピングモータ制御 (stepmoto) <av/io.h> <av/inteupt.h> unsigned cha mtpw, phase,di, MTex =0; unsigned cha EX[8] = {0x0, 0x40, 0x0, 0x80, 0x0, 0x40, 0x0, 0x80}; unsigned cha EX[8] = {0x50, 0x60, 0x0, 0x90, 0x50, 0x60, 0x0, 0x90}; unsigned cha EX[8] = {0x0, 0x50, 0x40, 0x60, 0x0, 0x0, 0x80, 0x90}; ISR( TIMER0_COMP_vect ) { if( mtpw ==0 ) etun; } if( di == ){ //CW MTex++; if( MTex >7 ) MTex =0; }else{ //CCW MTex--; if( MTex ==55 ) MTex =7; } if( phase == ) PORTD = EX[MTex]; else if( phase == ) PORTD = EX[MTex]; else PORTD = EX[MTex]; int main() { unsigned cha sw; PORTG = 0xF; DDRG = 0x00; PORTE = 0xC4; DDRE = 0x00; DDRD = 0xF0; // ステッピングモータ :PD4-7 TCCR0 = 0x0F; //CTC 動作,04 分周 OCR0 = 0x7F; TIMSK = 0x0; sei(); phase = ; // 相励磁,(: 相励磁, 他 :- 相励磁 ) di = ; //CW( 上からだとCCW),( 他 :CCW) while(){ sw = ( PIG &0xF ) ( PIE &0xC0 ) (( PIE &0x04 ) <<3 ); mtpw = ( sw &0x80) >>7; OCR0 = sw &0x7F; } } 解説 OCR0=~7(0x7F) 入力パルス周波数 3906Hz~6.04Hz - 75 -
課題 4. サンプルプログラム (stepmoto) を打ち込み, 実習ボード上で動作を確認せよ. 以下, レポート課題 ( 提出 : ソースリスト & フローチャートや PD など ). サンプルプログラム (stepmoto) を使い,3 種類の励磁方式での, 無負荷時の最大自起動周波数と最大応答周波数を, グループで測定せよ. なお, 測定は 5 回程度行い, その平均値をとるものとする. 3. 以下の仕様でステッピングモータを位置制御するプログラムを作成せよ. 制御仕様 励磁方式: 相励磁 駆動周波数: 約 0Hz 4position/ 回転 原点位置:Cアダプタを奥側にして0 時の方向 ( 事前に当該位置の励磁パターンを調べておくこと ) トグルスイッチ機能割り当て sw7 sw6 sw5 sw4 sw3 sw sw sw0 PWR DIR DIR0 POS4 POS3 POS POS POS0 PWR:O/OFF DIR-0: 回転方向の切り替え 0:CCW( 上側 ( シャフト側 ) から見て ) 0:CW( 同上 ) POS4-0:0~3 で位置指定 ( 回転を 4 等分,0 時から時計回りに 0 から順に位置番号を割り当て ) 動作 POS4-0 で位置を指定し,PWR を O にすると指定位置に移動して停止. 位置指定, 方向指定は PWR が OFF 時に設定可能. 課題 5( 応用 ) レポート課題 ( 提出 : ソースリスト & フローチャートやPDなど ). 以下の仕様でステッピングモータを位置制御するプログラムを作成せよ. 制御仕様 励磁方式: 相励磁 駆動周波数: 約 0Hz 4position/ 回転 原点位置:Cアダプタを奥側にして0 時の方向 ( 事前に当該位置の励磁パターンを調べておくこと ) トグルスイッチ機能割り当て sw7 sw6 sw5 sw4 sw3 sw sw sw0 PWR DIR DIR0 POS4 POS3 POS POS POS0 PWR:O/OFF DIR-0: 回転方向の切り替え 0:CCW( 上側 ( シャフト側 ) から見て ) 0:CW( 同上 ) 00: 現在位置から近回りで移動 : 現在位置から遠回りで移動 POS4-0:0~3 で位置指定 ( 回転を 4 等分,0 時から時計回りに 0 から順に位置番号を割り当て ) 動作 POS4-0 で位置を指定し,PWR を O にすると指定位置に移動して停止. 位置指定, 方向指定は PWR が OFF 時に設定可能. - 76 -