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23保険金の支払 10 保険金総支払限度額 , P27 100% 50%50% 5%5% cm CSR

2012 保険金の支払 10 保険金総支払限度額 ,000 P30 100% 50%50% 5%5% cm

25 保険金の支払 100% 50% 50% 5% 5% cm / cm 45cm 0.9/ / cm 30cm 0.4/ /100 0

世界の自然災害保険制度から見た日本の地震保険制度

政府による再保険について 1. 政府再保険の内容一定規模以上の保険金支払が生じた場合 政府がその一部を支払うよう 再保険を引受け 具体的には 損害保険会社が引受けた地震保険の全部につき 日本地震再保険 ( 株 ) が再保険を引受け さらにその一部につき政府が再保険の引受けを行っている. 政府再保険の

スライド 1

1. 1 地震保険制度の導入に向けた議論は 1878 年にドイツ人のマイエット教授が国営での地震保険制度創設を提唱したところから開始されたが 当時は自由主義的な思想や制度が取り入れられた時期だったこともあり 同制度は否決された そして 1890 年に公布された旧商法に 民間の保険会社が取り扱う火災保


これだけは知っておきたい地震保険

社会活動資料編保険金の支払 保険の の 保険 の 1 の P86 地 状 の の の 2 の の 保険 の 100% 保険 の 50% の 50% 保険 の 5% の 5% の の の 50 の の 2050 の の 320 の 地 45cm の の の の 70 の の 2070 地震 の の の

2 1 図 2 連邦政府と地方との役割分担 ( 出典 :FEMA) 2 2. 米国の危機管理システムの変遷 1950 Disaster Relief Act Civil Defense Act National Flood Insurance Act

第1回 オリエンテーション

第1回 オリエンテーション

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03-08_会計監査(収益認識に関するインダストリー別③)小売業-ポイント制度、商品券

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マンション建替え時における コンテキスト効果について

静岡市の耐震対策事業

目次 ドイツにおける貸金業等の状況 2 フランスにおける貸金業等の状況 4 米国における貸金業等の状況 6 英国における貸金業等の状況 8 韓国における貸金業等の状況 9 ( 注 1) 本レポートは 金融庁信用制度参事官室において 外国当局 調査会社 研究者等からのヒアリング結果等に基づいて作成した

米国生保市場定点観測(7) 米国の生命保険ダイレクト販売 - 件数シェアでは一定の地位、小口契約の販売が中心-

3 特許保有数 図表 Ⅰ-3 調査対象者の特許保有数 Ⅱ. 分析結果 1. 減免制度 (1) 減免制度の利用状況本調査研究のヒアリング対象の中小企業が利用している法律別の減免制度の利用状況を 図表 Ⅱ-1 に示す 企業数は延べ数でカウントしている 図表 Ⅱ-1 減免制度の利用状況 この結果から 産業

地震保険と当社31 経社会活動資料編保険金の支払 1-1 保険 日 の 1-2 保険 日 の 保険の の 保険 保険の の 保険 保険 の 100% 保険 の 60% の 60% 保険 の 30% の 30% 保険 の 100% 保険 の 50% の 50%

おカネはどこから来てどこに行くのか―資金循環統計の読み方― 第4回 表情が変わる保険会社のお金

Taro-町耐震改修助成要綱 j

図表 2 住宅ローン減税の拡充 消費税率が 5% の場合 消費税率が 8% または 10% の 場合 適用期間 ~2014 年 3 月 2014 年 4 月 ~2017 年末 最大控除額 (10 年間合計 ) 200 万円 (20 万円 10 年間 ) 400 万円 (40 万円 10 年間 ) 控

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1

1. のれんを資産として認識し その後の期間にわたり償却するという要求事項を設けるべきであることに同意するか 同意する場合 次のどの理由で償却を支持するのか (a) 取得日時点で存在しているのれんは 時の経過に応じて消費され 自己創設のれんに置き換わる したがって のれんは 企業を取得するコストの一

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審議事項 (2) 年 7 月 ASBJ/EFRAG のスタッフがのれんと減損に関する定量的調査の付属資料として作成した付録付録 1: 定量的調査の概要付録 2: 主要なデータ セット 参考訳 財務会計基準機構の Web サイトに掲載した情報は 著作権法及び国際著作権条約をはじめ

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保険研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター兼任 安井 義浩

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2018 年度第 3 四半期業績の概要 年 2 月 1 4 日 日本生命保険相互会社 Nippon Life Insurance Company

ご注意 ( 個人向け ) 補修の場合で 元金据置期間を設定するときは 返済期間の欄の年数から 1 年を引いた年数の返済額をご覧ください ( 例 ) 返済期間 20 年据置期間 1 年 20 年 - 1 年 = 19 年 返済期間 19 年の返済額をご覧ください < 個人向け> 災害復興住宅融資 10

藤沢市木造住宅簡易耐震改修工事補助金交付要綱 ( 趣旨 ) 第 1 条この要綱は, 木造住宅の耐震改修工事を促進することにより, 災害に強い安全なまちづくりを推進するため, 藤沢市耐震改修促進計画に基づき, 簡易耐震改修工事のための補強設計及び簡易耐震改修工事並びに工事監理に要する費用に対する補助金

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(2) 具体的な事業の内容 地震再保険事業は 民間損害保険会社が引き受けた地震保険の責任の一部を政府が再保険するものです すなわち 地震被害が大きく 損害額が巨額に上る場合 民間損害保険会社だけでは支払いが困難になるので 損害額が一定の額を超過した場合 その超過した部分について 国が再保険金を支払う

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各年の住宅ローン控除額の算出 所得税から控除しきれない額は住民税からも控除 当該年分の住宅ローン控除額から当該年分の所得税額 ( 住宅ローン控除の適用がないものとした場合の所得税額 ) を控除した際に 残額がある場合については 翌年度分の個人住民税において 当該残額に相当する額が 以下の控除限度額の

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また 関係省庁等においては 今般の措置も踏まえ 本スキームを前提とした以下のような制度を構築する予定である - 政府系金融機関による 災害対応型劣後ローン の供給 ( 三次補正 ) 政府系金融機関が 旧債務の負担等により新規融資を受けることが困難な被災中小企業に対して 資本性借入金 の条件に合致した

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FIT/ 非 FIT 認定設備が併存する場合の逆潮流の扱いに関する検討状況 現在 一需要家内に FIT 認定設備と非 FIT 認定設備が併存する場合には FIT 制度に基づく買取量 ( 逆潮流量 ) を正確に計量するため 非 FIT 認定設備からの逆潮流は禁止されている (FIT 法施行規則第 5

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再保険金の支払 制度発足以来 平成 7 年兵庫県南部地震 ( 阪神淡路大震災 ) 平成 23 年東北地方太平洋沖地震 ( 東日本大震災 ) 及び平成 28 年熊本地震において 日本地震再保険株式会社の請求に基づき 国が再保険金を支払っています 平成 29 年度までに国が支払った再保険金の累計額は次の

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13. 平成 29 年 4 月に中古住宅とその敷地を取得した場合 当該敷地の取得に係る不動産取得税の税額から 1/2 に相当する額が減額される 14. 家屋の改築により家屋の取得とみなされた場合 当該改築により増加した価格を課税標準として不動産 取得税が課税される 15. 不動産取得税は 相続 贈与

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1 制度の概要 (1) 金融機関の破綻処理に係る施策の実施体制金融庁は 預金保険法 ( 昭和 46 年法律第 34 号 以下 法 という ) 等の規定に基づき 金融機関の破綻処理等のための施策を 預金保険機構及び株式会社整理回収機構 ( 以下 整理回収機構 という ) を通じて実施してきている (2

費 ( 浄化槽を当該事業と併せて設置する場合は 当該集会所の便器から当該浄化槽までの配管に係る経費を含み 工事に要する費用に限る ) (4) 耐震診断事業自治会等がその所有する集会所に係る耐震診断を行う場合に要する経費 ( 補強ブランの作成費を含む ) 2 一の増改築工事が 前項第 2 号に掲げる事

1. 海外投資保険の投資形態 海外投資保険とは 本邦企業等が海外に有する株式や不動産等の権利について 非常リスク ( 外国政府による収用 権利侵害 戦争 天災 送金不能 ) による損失をカバーする保険 特徴 : 投資形態に応じて 以下 2 種類の約款で引受 投資形態 保険種 1 出資に対する保険株式

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News Release No.214(14-5) 2014 年 ( 平成 26 年 )6 月 13 日 東商記者クラブ 日銀クラブで 資料投函させていただいております 平成 26 年 5 月度貸金情報統計概況 貸金業法の指定信用情報機関シー アイ シー (CIC) は 毎月 貸金情報統計を公表して

住宅の省エネエネ改修改修に伴う固定資産税固定資産税の減額制度減額制度について 平成 20 年 1 月 1 日以前に建てられた住宅 ( 賃貸住宅を除く ) について 平成 20 年 4 月 1 日から平成 32 年 3 月 31 日までの間に 一定の要件を満たす省エネ改修工事を行った場合 120 m2

土地建物等の譲渡(一般の譲渡)編

2 29,778 18,001 13,245 11, , P. 3 P. 5 P. 7 P. 9 10,346 9,540 5,562 3, P. 13 P. 14 P.15 P.17

Transcription:

米国カリフォルニア州地震保険制度 - その 3 : 最新の状況 - はじめに CEA(California Earthquake Authority) による地震保険制度については 過去本誌で 2 回紹介している (No.50 1998.12,No.52 1999.6) さらに当会発行の地震保険調査報告 31 号 カリフォルニア州地震保険制度 として詳細なレポートを作成している 1994 年のノースリッジ地震で大きな被害を受けて 1996 年 12 月に発足したこの制度の歴史は浅いもののユニークであり かつ日本の地震保険制度との比較において参考になるところを多く持っている そこで 今回は最近の CEA の動向 CEA メンバー会社以外が取り扱う地震保険との比較 CEA が行うレトロフィット ( 耐震改修 ) プログラムなどを調査したので紹介する 1. 最近の CEA の動向 1.1 契約動向 1,000,000 900,000 800,000 700,000 May-98 契約件数 :921,745 保険料 :$416.9million 500 450 400 350 契約件数 600,000 500,000 400,000 Sep-00 契約件数 :842,529 保険料 :$407.3million 300 250 200 保険料 $million 300,000 150 200,000 100 100,000 0 契約件数保険料 50 0 Dec-96 Feb-97 Apr-97 Jun-97 Aug-97 Oct-97 Dec-97 Feb-98 Apr-98 Jun-98 Aug-98 Oct-98 Mar-00 Sep-00 図 1-1 契約件数 保険料 (1) 契約件数図 1-1 のとおり 1996 年の創設以来 契約件数は着実に伸びてきた 1998 年 5 月の 921,745 件が最も多くなっており その後大きな伸びは見られず 若干ながら契約件数は減少している そして 2000 年 9 月には 842,529 件となっている この変化については 日本の火災保険に相当するホームオーナーズ保険の販売をしない 地震保険のみを専門に扱う保険会社 (the earthquake specialty company; 以下 地震専門会社 という ) のシェア拡大が影響している カリフォルニア州では 保険会社はホームオーナーズ保険と併せて地震保険を販売しなければならないが その逆については制 1

限がない ( 地震保険を販売する場合 ホームオーナーズ保険も販売しなければならないというわけではない ) ためこのような会社が存在する 地震専門会社のシェア拡大は 保険料や販売形態の違いによるものである (2) 保険料契約件数と同様に 保険料収入は 1996 年の創設から着実に伸びてきたが 契約件数と時期を同じくして 1998 年 5 月にピークを迎え ( 約 4 億 1,700 万ドル ) その後若干下がり 横這いとなっている 入手した資料における最新のものでは 2000 年 9 月時点で約 4 億 700 万ドルとなっている 契約件数と同じく 地震専門会社のシェア拡大が影響している なお 地震専門会社の詳細については 後述する 1.2 支払状況 CEA 創設の契機となったノースリッジ地震以降 幸いにして大規模な地震災害はカリフォルニア州では発生していないが 1998 年以降の支払実績は表 1-1 のとおりとなっている なお 1999 年の Hector Mine 地震 2000 年の Napa Valley 地震の支払件数は資料入手時点では確定しておらず 請求件数に比べ支払件数が極端に少ないものとなっている 表 1-1 保険金支払実績 地震 請求件数支払件数 保険金 1998 Chino 3 1 $1,510 1998 San Juan Batista 4 1 $67,768 1998 Shasta City 1 1 $4,392 1998 Richmond 3 1 $569 1998 Minor Quakes 58 2 $4,577 1999 Hector Mine 260 16 $75,625 1999 Minor Quakes 25 1 $4,401 2000 Napa Valley 168 5 $74,664 ( 注 )1998 年および 1999 年の Minor Quakes は小さな地震による支払の合計 1.3 保険金支払キャパシティー (1) 推移 CEA の保険金支払キャパシティーは 図 1-2 のように推移している 比較は 最近の 3 か年 (1998 年 1999 年および 2000 年 ) で行っている 2000 年の保険金支払キャパシティーは およそ 76 億ドルとなっている これは 1998 年 1999 年を通して CEA の収入保険料をベースとした資本 (capital) の伸びと参加保険会社の 2 つの拠出金レイヤー部分 (1 st assessment, 2 nd assessment) の拡大によるものである 2

8,000 $7,336 million $7,244 million $7,562 million 7,000 1,434 1,434 1,456 6,000 5,000 4,000 3,000 2,000 1,000 0 1,075 1,075 1,075 716 716 716 1,433 1,433 1,433 2,150 2,150 2,183 528 436 699 1998 年 1999 年 2000 年 単位 :$million 第 2 次拠出金再保険 2nd Layer 借入枠再保険 1st Layer 第 1 次拠出金 CEA 資本 図 1-2 保険金支払キャパシティーの推移 (2) 再保険プログラム CEA の保険金支払キャパシティーのスキームは 複数のレイヤーで構成されている 図 1-2 のとおり 下のレイヤーから収入保険料およびそれによる投資収入を中心とする CEA 資本 (CEA Capital) レイヤー 次に CEA メンバー会社によりマーケットシェアに応じた支払分担がなされる第 1 次事後拠出金 (Post Earthquake Industry Assessment) レイヤー 再保険第 1 レイヤー (Reinsurance-1 st Layer) 州財務局が公債を発行してCEA のために資金調達を行う借入枠 (Line of credit) レイヤー 再保険第 2 レイヤー (Reinsurance-2 nd Layer) そして第 2 次事後拠出金 (Post Earthquake Industry Assessment) レイヤーの計 6 階層のスキームとなっている そのうち およそ 3 分の 1 が再保険として外部へのリスク転嫁を行っている 再保険契約は アグリゲート契約 (aggregate insurance: 契約期間内の累積保有損害額を補償する契約 1 事故あたりの損害額でない点が特徴 ) となっており これまでに次のような契約上の改善が図られてきている 1 第 3 のレイヤー (a third year of coverage) の購入 1998 年 8 月 CEA は 1999 年末までの契約について 既にある再保険第 1 レイヤーが保険金支払いで使い果たされたのちにそれと同額のレイヤーを新たに CEA は追加購入することができる旨の復元条項 (reinstatement provision) 付帯の契約をした なお この新たなレイヤーは 従前の再保険第 1 レイヤーが使われた地震とは別の地震が発生した場合のみ適用される 2 再保険料のアジャストメント条件の追加実際の再保険金支払いが契約当初見込まれた支払再保険金の 110% 以上であれば CEA は比例的に追加保険料を支払い 90% 以下であれば清算時の再保険料が安くなるという条件である これは1の第 3 のレイヤー購入と同時に締結される 3

3 無事故戻し (no claim bonus provision) 条項の追加 1999 年 12 月末までに再保険第 1 レイヤーに至るような支払いが生じなければ CEA は 1997 年 1998 年および 1999 年中に支払った再保険料の 12.5% を受け取ることができる旨の条項である これは1の第 3 のレイヤー購入と同時に締結される 実際のところ この 3 年間に再保険第 1レイヤーが発動されるような保険金支払いはなかったため CEA はトータルで約 7,100 万ドルのリファンド ( 無事故戻金 ) を得る 4 第 4および第 5 のレイヤー (a forth and fifth year of coverage) の購入 1999 年 6 月 2001 年末までの再保険第 1 レイヤーは第 4および第 5 のレイヤー (a forth and fifth year of coverage) にまで契約が拡大された これに対する年間保険料は 1 億 2,000 万ドルであった 1999 年までの分について これらの保険料は実際の再保険金支払との関係で調整 ( アジャストメント ) される また 再保険料のこれまでの推移および 2000 年の再保険スキームについてはそれぞれ表 1-2 表 1-3 のとおりである 表 1-2 再保険料の推移 単位 :$million 保険料総額 再保険料 フ ローカー手数料 再保険コスト計 コスト比率 a b c d(=b+c) e(=d a) 1997 年 136.4 90.6 10.9 101.5 74% 1998 年 401.8 335.3 10.9 346.2 86% 1999 年 406.4 211.8 10.9 222.6 55% ( 注 ) 数値は すべて参考資料 (CEA Actual, Financial and Management Team Review) による 表 1-3 再保険料内訳 (2000 年 ) 2000 年再保険レイヤー 限度額 再保険料合計 見込損失額および引受経費 単位 :$million 限度額までの補償部分 a b c d=c b e f=e b 第 1 レイヤー 1,433 119.8 22.8 19% 97.0 81% 第 2 レイヤー 1,075 64.5 8.8 14% 55.7 86% ( 注 1) 数値は すべて参考資料 (CEA Actual, Financial and Management Team Review) による ( 注 2) 内訳は アジャストメント条項との関係で予め見込まれる損失額に係る再保険料と限度額までの補償部分に係る再保険料に分けられている 2. ミティゲーション プログラム CEA では 住宅の耐震性の向上 ミティゲーション ( 損害軽減 ) 促進のため SAFER(State Assistance for Earthquake Retrofitting) という消費者向けプログラムを実施している 1998 年の試験実施を経て現在本格実施の段階となっている 4

地震災害による住宅被害の未然の防止ないし軽減は 住宅所有者にとってメリットであるだけでなく 保険者にとっても支払保険金を抑制できるというメリットがあり 結果として CEA 地震保険制度の安定にも繋がるものと思われる その意味でも本制度は大変有意義なものである (1) SAFER の概要このプログラムは CEA が窓口となり 住宅所有者に住宅のインスペクション ( 検査 ) を行う専門技術会社 (engineering firm) を紹介し その会社が行ったインスペクションの結果レポート ( 診断証明書 ; 図 2-1) をもとに住宅所有者がレトロフィット ( 耐震改修 ) を行えば CEA の地震保険料の 5% ディスカウントを受けられるというものである また CEA が行うこのプログラムは 古い住宅 ( 古い建築基準によって建てられた住宅 ) のレトロフィットの後押しをするために 毎年その年の投資収入の 5%(500 万ドル限度 ) が充てられている このプログラムの利点は 単に CEA が住宅のレトロフィット指導を行うだけにとどまらず レトロフィットのプラン作成 建設業者紹介 診断証明書に基づく作業が実施されているかの確認作業 低利のローン案内まで一環したシステムになっている点である なお インスペクションによる診断証明書発行には 800 ドル相当かかるところを無料としているほか 証明書を受領してもレトロフィットを行うか否かは住宅所有者の任意となっている このプログラムは プ ログラム適用地域 (county; 図 2-1 診断証明書例 郡単位 ) の 1978 年以前に 建築された木造住宅を対象としている 一世帯居住の住宅を対象としているため集合住宅や長屋造建 5

物は対象外である また モバイルホームやレンガ造建物なども除外される 住宅の診断およびレトロフィットのポイントは 図 2-2 のとおり基礎へのボルト緊結 (Foundation bolting) 基礎部分の支持壁取付け (Cripple wall shear) 給湯器の固定 (Water heater bracing) の 3 点である 住宅の基礎へのボルト締め 基礎へのボルト締めは地震による構造上のダメージに影響するため アンカー ホ ルトで基礎と上ものの緊結を図る 1978 年以前の住宅については特に基礎へのボルト締めが十分ではない 住宅の基礎と床の間への支持壁 (support wall) 取付け 耐震性向上のため 合板 (plywood) の支持壁 (support wall) で補強する 支持壁 (support wall) はクリッフ ル ウォールまたはホ ニー ウォール (cripple wall, pony wall) と呼ばれる 給湯器 (water heater) の金属ストラップによる固定 給湯器転倒によるガスライン損傷 電気配線の水濡れ防止 ( これらは火災の原因にもなるため ) 金属ストラップによる固定は単に壁に固定するのではなく 間柱の通っている壁に取り付けなければならない 図 2-2 レトロフィットのポイント (2) 実施状況 SAFER は 1998 年 6 月から試験的導入がなされ カリフォルニア州内で証券保有者 (policyholder) の割合が最も高い 3 つの郡 (Santa Clara, Ventura, Humboldt) が対象とされた このときは 500 人を超える建物所有者から問い合わせがあり およそ 100 人の対象建物所有者が診断証明書を受領した なお 実際にレトロフィットまで行ったのは僅か 10 件であった 1999 年 10 月にはプログラム適用対象地域を 8 つのベイエリアの郡 (Alameda, Contra Costa, Marin, Napa, San Francisco, San Mateo, Santa Clara, Sonoma) とし ロマ プリエタ地震 10 周年記念と併せて FEMA( 連邦危機管理局 ) と共同でメディアプレゼンテーションを行った その結果 問い合わせのあった 8,000 件が対象となり 検査技術会社 4 社と建設会社 10 社が協力 6

し これまで 3,000 件以上の検査が完了した なお 実際にレトロフィットを実施した件数について CEA 担当者に尋ねたところ これまで 128 件ということであった 説明によれば 本プログラムによって診断証明書を受け取っても 住宅所有者は数千ドルないし数万ドルを掛けてまでレトロフィットしないためということであった 3.CEA 以外の地震保険制度 CEA は地震保険供給に重要な役割を果たしており マーケット シェアの 65.7%(1999 年時点 ) を有する しかし 近年 地震専門会社にマーケット シェアを奪われている 地震専門会社のマーケット シェアが増加した主な要因としては CEA より広い範囲の補償内容の提供を行っていることのほか CEA メンバー会社が 最小限の 地震カバーしか販売しないマーケティング戦略を取っていることも一因として挙げられている CEA のメンバー会社は 1999 年時点で 13 社あり この 13 社で個人住宅に係る保険マーケットの 69% を占める (2000 年 11 月に CEA を訪問したときには 18 社となっていた 表 3-1 参照 ) この項目で紹介する数表等は CEA の理事会 (Government Board) との契約に基づき Tillinghast-Towers Perrin 社が 2000 年 7 月に提出した California Earthquake Authority - Actual, Financial and Management Team Review による 表 3-1 CEA メンバー会社 18 社 (2000 年 11 月時点 ) 1999 年時点 No. 会社名の13 社 1 Allstate Insurance Company 2 Armed Forces Insurance Company 3 Automobile Club of Southern California 4 California FAIR Plan 5 CSAA 6 Ecompass Insurance ( 旧社名 C.N.A) 7 Farmers Group 8 Golden Eagle 9 GuideOne Insurance ( 旧社名 Guidant) 10 Homesite Insurance of California 11 Liberty Mutual 12 Merastar 13 Mercury 14 Pacific National Insurance 15 Prudential 16 State Farm 17 USAA 18 Workmen's Auto Insurance ( 注 ) 印は CEA 基本ポリシーのほか supplemental coverage( 追加補償 ) を販売している会社を示す 7

(1) マーケット シェアマーケット トレンドを見るために保険料ベースのマーケット シェアと地震保険付帯率 ( 住宅に係る保険証券 ( ホームオーナーズ ) 数に対する地震保険証券数の割合 ) の 3 か年の推移を示したのが表 3-2 である 特徴として CEA のマーケット シェアが 1997 年の 71.8% から 1999 年の 65.7% に減っていることが挙げられる 非メンバー会社の地震保険マーケット シェアについても 28.2% から 23.8% に落ちている その一方で 1999 年を見れば地震専門会社 (GeoVera, Pacific Select) の地震保険シェアは 10.3% を占めるに至っている また ホームオーナーズ保険への付帯率を見ると CEA メンバー会社全体で 1997 年の 19.5% から 1999 年の 15.5% に下がっており これと同様に非メンバー会社全体の付帯率も 19.6% から 14.8% に下がっている 表 3-2 マーケット シェアと付帯率 会社 単位 :% マーケット シェア ( 収入保険料ヘ ース ) ホームオーナース への付帯率 1997 年 1998 年 1999 年 1997 年 1998 年 1999 年 CEA メンハ ー会社 % % % % % % State Farm 24.6 21.6 23.4 29.1 19.9 19.4 Allstate 14.4 15.9 14.9 13.4 18.2 16.3 Farmers 13.7 11.5 11.3 12.7 11.3 9.7 USAA 7.6 8.8 7.7 38.8 33.9 41.8 Inter-Ins Exch of Auto Club of S. 2.5 2.8 3.0 20.8 21.4 19.4 CA State Auto Assoc 2.5 1.8 1.7 14.9 6.8 6.6 CA Fair Plan 2.9 2.2 1.7 12.3 6.4 6.1 Liberty Mutual 1.1 1.0 0.9 24.7 16.7 15.9 Prudential 1.3 1.0 0.8 28.9 17.9 16.2 その他 1.2 0.3 0.4 16.4 4.9 5.4 CEA メンハ ー会社 TOTAL 71.8 66.6 65.7 19.5 16.2 15.5 非メンハ ー会社 Safeco 3.8 4.2 3.9 24.4 22.0 19.9 CitiGroup 1.9 1.9 2.9 21.9 17.7 18.4 Fireman's Fund 3.2 3.3 2.8 17.9 19.1 12.1 Nationwide/CalFarm/Allied 1.9 2.1 2.0 20.5 15.0 11.3 Hartford 1.6 1.7 1.7 22.4 17.0 17.2 Chubb 1.7 1.8 1.6 29.5 30.6 31.3 Century-National 2.1 1.8 1.4 14.9 13.2 12.0 California Insurance Group 1.2 1.0 0.7 15.2 13.2 11.5 TIG Insurance 1.3 1.0 0.6 16.9 16.1 42.8 その他 9.5 8.6 6.2 19.3 16.5 13.9 非メンハ ー会社 TOTAL 28.2 27.3 23.8 19.6 16.9 14.8 地震専門会社 GeoVera/Pacific Select - 6.1 10.3 - - - TOTAL 100 100 100 19.5 17.1 16.4 ( 注 1) 数値は すべて参考資料 (CEA Actual, Financial and Management Team Review) による ( 注 2) GeoVera 社およびPacific Select 社については ホームオーナース を販売していないため付帯率は出ない ( 注 3) データはカリフォルニア州保険庁統計分析局 (the California Department of Insurance Statistical Analysis Bureau) による ただし 会社またはグループの統合による調整がなされている 8

次に CEA の非メンバー会社と地震専門会社について それぞれの地震保険の特徴などを紹介する また 巻末に付録として付けた補償内容の比較も参照されたい (2) 非メンバー会社非メンバー会社は ホームオーナーズ保険を販売している関係から州法に基づき義務的に地震保険を販売している CEA に加盟しない理由として CEA の資本金の分担額が高すぎると考えていること 自社の保有契約が比較的良好な保険集団であること 自社でリーズナブルな再保険手配が可能であること 十分な自己資本があること または個社のマーケティング上の判断によることなどが挙げられる 非メンバー会社は個人住宅に係る保険マーケットの 31% を占めており (1999 年 ) 主要 9 社は次のとおりである なお この 9 社で個人住宅に係る保険マーケットの 18.6% を占める Safeco Insurance Companies Citigroup (Travelers Insurance Companies) Fireman's Fund Insurance Companies Nationwide Group The Hartford Insurance Group Chubb Group of Insurance Companies Century-National Insurance Company California Insurance Group TIG Holding Group 非メンバー会社の販売する地震保険は CEA のものより広い補償内容としている また レーティングの要因として建物の建築年 構造 レトロフィット履行証明 (retrofit credit) などを取り入れている 以下に代表的な 5 社について紹介する Safeco : 高いディダクティブルのオプションを付した基本的な地震保険ポリシーを提供している 郡 (county) 単位に 5 つのレーティングの地域区分を設けており さらに建物構造 建築年でレートを変えている 建築年の区分では 1973 年以降の建物を基準としており 1936 年以前で 85% プラス 1937-1972 年で 75% プラスの料率としている なお レトロフィットによる割引は 1936 年以前の建物で 20% 1937-1972 年の建物で 30% となっている Citigroup : CEA と類似の地震ポリシーを提供しているが追加補償 (supplement) はない 料率の地域区分は郡を基準とした 3 区分とされている 料率は建築年 建物構造で異なる 建築年は 1950 年以降現在までを基準として 1940-1949 年が 25% プラス 1939 年以前が 100% プラスとなっている 建物構造は木造 (frame) およびその他の構造があり その他の構造については 木造のおよそ 5 倍の高さになっている レトロフィットしてあれば建築年による割増はない Nationwide : CEA と類似の地震ポリシーを提供しているが追加補償 (supplement) はない 郵便番号 (zip-code) を基準として 10 の地域区分がされている また 建築年による区分はない 建物構造は木造 (frame) およびその他の構造があり その他の構造については 木造のおよそ 2 倍の高さになっている The Hartford : CEA と類似の地震ポリシーを提供しているが追加補償 (supplement) はない 郡を基準とした 3 つの地域区分がなされている 建物構造 (frame, その他 ) による料率細分を行っているが 建築年による区分はない 9

Century-National : 広範囲な (comprehensive) ポリシーと基本的な地震ポリシーを提供している 郵便番号 (zip-code) を基準として料率の 11 の地域区分がなされている また 建築年 建物構造により細分化されている 建築年区分は 1973 年以降 1960-1972 年 1937-1959 年 1936 年以前となっており レトロフィット済みの住宅は建築年で 0~24% の割増があり レトロフィットされていない住宅では 0~100% の割増がある なお 建物構造は木造 (frame) とそれ以外がある ( それ以外については木造より 112% 高い料率となっている ) (3) 地震専門会社 GeoVera Insurance Company と Pacific Select Insurance Company の 2 社が現在カリフォルニア州で地震保険を専門に販売する保険会社である この 2 社はホームオーナーズ保険の引受を一切行っていない また 両社ともミネソタ州に本拠を置く St.Paul Companies の傘下にある 各社の概要は次のとおりである GeoVera : 1997 年 USF&G により設立され 1998 年 USF&G が St.Paul Companies に合併される GeaVera 社は基本的な地震ポリシーと広範囲担保 (comprehensive) の地震保険を提供している 広範囲担保 (comprehensive) の地震保険は住宅 他の構築物 家財および追加生活費用 (additional living expenses) について包括的 (blanket protection) な補償となっている 同社のおよそ 3 分の 2 は広範囲担保 (comprehensive) ポリシーである 建物構造および建築年のほか建物階数 地盤の傾斜度 ( 勾配 ) 建物基礎のタイプ 屋根のタイプが料率体系に含まれており 料率体系は CEAのメンバー会社や非メンバー会社より詳細なものとなっている また より精緻な料率体系とするために修正メルカリ震度階 (MMI) のスコアーをそれぞれの物件所在地ごとの地域料率 ( ロケーション レーティング ) としており 同一 zip-code 内でも料率は異なる 建築区分のベースは 1941 年以前のものと 1942 年以降のものとしており 1941 以前のものについては 135% の割増となっている また 他のレーティング ファクターに基づいた細かい調整がなされる なお 地震保険の販売は ブローカー 独立代理店 銀行 インターネットなどを通して行われている Pacific Select : 1998 年に設立し 2000 年初頭 St.Paul Companies の傘下に入る 基本ミニ ポリシーから補償内容を拡張した地震保険を提供している 料率体系における建築年区分における基準は 1973 年以降建築のものである 1935 年以前のものは 24% 1936-1972 年のものは 12% 高い料率となっている さらに 1936-1972 年でレトロフィットされていない場合は 100% の割増が課され 1935 年以前の建築年の建物でレトロフィットされていない場合は 169% の割増が課される なお 地震保険の販売のマーケティングは GeoVera と似ており ブローカー 独立代理店 インターネットを通して行われている (4) 保険料比較 CEA メンバー会社 非メンバー会社および地震専門会社についてそれぞれの地震保険料について比較したのが表 3-3 である 本表にない会社の保険料はそれぞれ異なるので 比較はあくまで参考である 非メンバー会社については Safeco 地震専門会社については Pacific Select の保険料としてい 10

る なお 比較条件は次のとおりである 1 地域 : San Francisco 郡 (San Francisco 市を含む郡一帯 ) 2 保険種類 : 各社基本商品 3 保険金額 : $250,000 4 対象 : レトロフィット済みの木造 (frame) 住宅 表 3-3 地震保険料の比較例 地域区分 建物の建築年 単位 :$ 1995 1985 1975 1965 1935 CEA 22 825 938 1,140 1,140 1,140 23 700 800 974 974 974 Pacific Select D 528 528 528 590 653 E 585 585 585 655 724 F 645 645 645 722 799 G 703 703 703 786 870 H 780 780 780 873 966 I 940 940 940 1,052 1,164 J 1,275 1,275 1,275 1,427 1,580 K 2,248 2,248 2,248 2,516 2,786 Safeco 4 625 625 625 765 915 ( 注 1) 数値は すべて参考資料 (CEA Actual, Financial and Management Team Review) による ( 注 2) 建築年は 対象建物が建築された年を示す また 地域区分は CEA および各社料率表の表記区分による 4.CEA 制度の永続性 (1) CEA のサバイバビリティー 2000 年 7 月に出された CEA に関する報告書 ( 前出の Tillinghast-Towers Perrin 社によるレポート 以下 TTP レポート という ) には CEA のサバイバビリティー ( 今後の制度存続可能性 ) について触れている 同レポートでは CEA のサバイバビリティーについて 89.7% という数値を出している これは このレポートより以前 1999 年 10 月に Miller,Herbers,Lemann&Associates,Inc. から出された CEA s survivability study( 以下 MHLレポート という ) の 94.7% という数値を修正したものである ( ただし MHL レポートは入手できなかったため 詳細は不明である ) MHL レポートでは CEA の料率算出に用いられている EQECAT 社の地震損害モデル評価を使って 1998 年 12 月末から 15 年間の財政収支を計算した サバイバビリティーの定義は 2013 年時点で CEA の自己資本が少なくとも 3 億 5,000 万ドル確保されていることとされている MHL レポートのモデル計算の中では CEA の支払能力について CEA の資本 歳入 支払保険金 保険金支払キャパシティーにおけるスキーム等すべて考慮し 潜在的な地震損失 利率 インフレーション 危険 (exposure) の増加のリスクを総合して評価している 11

これに対し TTP レポートでは MHL レポートのモデル計算において固定要素とされている再保険コストについて アタッチメント ポイント ( 保険金支払キャパシティーのスキームにおける再保険レイヤーの位置 ) と再保険レイヤーの変動による再保険コストの可変性について 次の点を考慮し計算の修正を行った 1 アタッチメント ポイント現行の CEA スキームでは再保険の第 1 レイヤーは CEA 資本とアセスメント レイヤーの上に位置付けられており 再保険は下のレイヤーが費消されるまで発動されない しかし 地震により保険金が支払われ CEA 資本レイヤーと第 1 次事後拠出金レイヤーから保険金が支払われた場合 これらのレイヤーは自動的に回復しないため 次の年度にはこれらのレイヤー部分も再保険の購入が必要になる そして再保険コストはアタッチメント ポイントが下がるにつれて上がるため 保険金支払能力を確保するための再保険コストは高くなる 2 再保険コストの可変性これには巨大災害レートの変則性と再保険購入制限の 2 つの要素がある 巨大災害レートの変則性とは カリフォルニア州における大規模地震災害発生後の再保険レートの高騰 再保険市場における世界の巨大災害の余波である これについては 過去 再保険市場において周期的に高額の再保険料が提示されていることが例に挙げられる また 再保険購入制限とは 再保険市場の動向による積極的購入と消極的購入の問題で MHL レポートのモデルでは CEA は 毎回同じ再保険金額を購入し続けることを前提としているが 実際の再保険購入は市場の動向によって幅が異なるのが一般的であると指摘する これらを考慮した結果 MHL レポートの 94.7% を 89.7% に下方修正している (2) 将来的な再保険のあり方 CEA の永続性のために 保険金支払能力を支える再保険スキームの果たす役割がいかに重要であるかは上記 (1) で述べたとおりであるが 現行の再保険料については議論も多いところである 巨大災害リスクは 他の金融リスクに及ばないほど大きい 再保険料の高さは巨大災害の不定期性によるものであり このため再保険契約による完全なリスク分散は難しいものとなっている TTP レポートではこれについて 従来の再保険市場 (reinsurance market) から資本市場 (capital market) への転換について触れており 資本市場を再保険の代替または補完手段として有益なものとして認めている一方 不利な点についても指摘している これをメリット デメリットの形で整理すると次のとおりである <メリット>! 資本市場は再保険市場より大きい ( 単位でみれば再保険市場が $billion であるのに対し資本市場は $trillion である )! 巨大災害リスクは金融リスクと相関関係はなく 資本市場ではより完全なリスク分散が期待できる! 資本市場の成熟度からして再保険より安価な代替手段として期待できる < デメリット >! 有価証券の法的制限等により処理費用 (transaction costs) は再保険より高い 12

! 資本市場の回復力についても未だテストされていないため 地震発生後 キャパシティーが有効に機能するか否か明らかではない! 投資家は購入した巨大災害リンクの有価証券による損失は未経験である また 資本市場の処理体制も確立されていない 日本においても再保険に変わる CAT ボンド ( 巨大災害に関する保険リスクの証券化 ) が試みられているが まだまだ再保険市場に比肩するものではない 米国には既に証券化スキームの保証を専門に行う会社があると聞くが 金融先進国である米国においても自然災害の資本市場への転換の難しさは変わらないようである おわりに CEA による地震保険制度は 契約件数の伸びが鈍化しているものの これまでのところ有効に機能しているようである しかし まだ多くの課題を残しているのも事実である 殊に地震専門会社がシェアを広げている点は気になるところである CEA もメンバー会社全社ではないが ディダクティブルの引下げや家財の補償限度額の引上げを内容とする supplement coverage( 追加補償 ) を販売し 基本契約の補償内容を拡充した地震保険を提供するようになってきており 補償面については遜色のないものになっている 料率面については今後 現在の 19 区分をどこまで細分化するか そしてどのような料率計算上のファクターを取り入れていくかによるのだろうが 地震専門会社が地震保険引受けをサイト バイ サイトで行っている ( 一定の地域単位で引受けを行うのではなく ピンポイント的な引受けを行っている ) のに対し CEA はカリフォルニア州全体の保険制度として料率体系を形成していることから いたずらな細分化は CEA の特質上 不適切かもしれない いずれにせよ CEA が今後どのような方向に進むのか 非常に興味深いところである これまで CEA に関しては 組織の形態や補償内容の紹介が中心であったが 保険と防災は密接な関係にあることから 今回は CEA の耐震診断 改修に係るミティゲーション プログラムを紹介した このような制度は CEA だけに見られる特別な制度というわけではない 例えば 神奈川県横浜市ではもう一歩進んだ制度を実施している 同市では 阪神 淡路大震災の後 いち早く住宅の耐震診断を無償で実施した 耐震診断を受けることによって 防災のインセンティブを高めようというのが当初の意図であった しかし 耐震診断を受けても耐震改修費用が住宅所有者にとって大きな負担となることから あまり耐震改修が進まなかった そこで 同市が行う木造住宅耐震診断を受けた結果 倒壊の危険があると判断された個人住宅について耐震改修費用の 3 分の 1(200 万円限度 ) を市が補助することとした また これと並行して耐震改修に要する資金の融資制度も設けた いずれの制度も地震災害に対する事前の防災措置として非常に有用なものである 当会は 今年 3 月 1 日に地震保険基準料率の変更届出を行った ( 現在 監督官庁による審査期間中である ) この届出において 建物の建築年と耐震等級による割引制度を導入した これまで保険は専ら被害発生後の損害を補償するものであったが 今後 耐震等級による割引制度の導入が防災 損害軽減に関する消費者意識の高揚のためプラス方向に働いてくれることを期待したい CEA の運営する地震保険は 今回紹介したミティゲーション プログラムなど良い制度を持 13

っているが 日本の地震保険もそれに勝るとも劣らない制度がこれから立ち上がろうとしている点を最後に申し添えたい 謝辞ここに紹介してきた事柄は 昨年 11 月に訪問した CEA および州保険庁 (California Department of Insurance) でのインタビューとそこでいただいた資料を基礎としたものである 快くインタビューに応じてくれた CEA の Daniel P. Marshall,Ⅲ Milo Pearson Tim Richison Dan Dyce Mike Grottkau そして州保険庁の Bruce V. Patton の各氏に末尾ながら感謝を申し上げたい ( 地震保険部中島創 ) 参考資料 ( 文献 ホームページ等 ) CEA Actual, Financial and Management Team Review (Tillinghast-Towers Perrin Report) CEA SAFER Program Sample Assessment(CEA 提供資料 ) CEA Quick Reference Guide(CEA 提供資料 ) Check Your Home Before An Earthquake Occurs(CEA 作成パンフレット ) 再保険その理論と実務 ( トーア再保険株式会社編財団法人損害保険事業総合研究所 ) 入門の金融証券化のしくみ ( 井出保夫著日本実業出版社 ) 建築英語辞典 ( 星野和弘著彰国社 ) CEA ホームページ (www.earthquakeauthority.com) カリフォルニア州保険庁ホームページ (www.insurance.ca.gov) Pacific Select Insurance Company ホームページ (www.quakeinsurance.com) GeoVera Insurance Company ホームページ (www.geovera.com) 横浜市ホームページ (www.city.yokohama.jp) 14

$1,000 19991999199920002000 (1) 406,388 406,388 406,388 430,365 430,365 (2) 26,801 26,801 26,801 28,382 28,382 (1)+(2) 433,189 433,189 433,189 458,747 458,747 (3) 265,555 265,555 265,555 184,318 184,318 (4) 10,850 10,850 10,850 10,850 10,850 (5) 5,225 5,225 5,225 4,700 4,700 (3)+(4)+(5) 281,630 281,630 281,630 199,868 199,868 (6) 41,819 41,819 41,819 44,286 44,286 (7) 12,500 12,500 12,500 14,112 14,112 (8) CEA 8,806 8,806 8,806 9,408 9,408 (6)+(7)+(8) 63,125 63,125 63,125 67,806 67,806 (9) 825 92,591 9,727 98,054 10,301 (10) 87,609 (4,157) 78,708 93,019 180,773 note: CEA 2000 1999 5.9 (3) supplement coverage (10