レベチラセタムの静注薬 2016/3/15 慈恵 ICU 勉強会 薬剤部明石岩雄
レベチラセタム 新規抗てんかん薬として日本では 2010 年に薬価収載 適応 : てんかん患者の部分発作 ( 二次性全般化発作を含む ) 代謝 排泄 : 肝臓で 1/3 代謝 (CYP を介さない : 相互作用がほとんどない ), 腎臓で 2/3 排泄 t1/2: 約 8 時間 (2 日弱で定常状態に達する ) 初回負荷が必要ない 薬理作用 神経伝達物質放出の調節に関与すると考えられる SV2A への結合 N 型 Ca2+ チャネル阻害作用 細胞内 Ca2+ 遊離抑制作用 GABA 及びグリシン作動性電流に対する アロステリック阻害の抑制作用 神経細胞間の過剰な同期化の抑制作用など 2014/6/3 慈恵 ICU 勉強会 フェニトインとレベチラセタム 一部改変
適応 ( イーケプラ 点滴静注添付文書より ) 1. 効能又は効果 一時的に経口投与ができない患者における 下記の治療に対するレベチラセタム経口製剤の代替療法 てんかん患者の部分発作 ( 二次性全般化発作を含む )
レベチラセタム静注 ( イーケプラ 点滴静注 ) 医療上の重要性を考慮し 意識障害 手術など 何らかの理由で一時的に経口投与ができない患者に対して てんかん治療を継続するための新投与経路医薬品として開発され 欧州で 2006 年 3 月 米国では 2006 年 7 月に承認を取得し 世界 40 以上の国又は地域で承認されている (2014 年 11 月現在 ) 本邦では 2011 年より臨床試験が開始され 2014 年 7 月に一時的に経口投与ができない患者における抗てんかん薬との併用療法 2015 年 2 月に経口剤と同様の効能 効果を取得し単剤療法も可能 ( イーケプラ 点滴静注インタビューフォームより )
用法用量 ( 添付文書より ) レベチラセタムの経口投与から本剤に切り替える場合 : 通常 レベチラセタム経口投与と同じ 1 日用量及び投与回数 にて 1 回量を 15 分かけて点滴静脈内投与する レベチラセタムの経口投与に先立ち本剤を投与する場合 : 成人 : 通常 成人にはレベチラセタムとして 1 日 1000mg を 1 日 2 回に分け 1 回量を 15 分かけて 点滴静脈内投与する 小児 : 通常 4 歳以上の小児にはレベチラセタムとして 1 日 20mg/kg を 1 日 2 回に分け 1 回量を 15 分かけて 点滴静脈内投与する ただし 体重 50kg 以上の小児では 成人と同じ用法 用量を用いること
いずれの場合においても 症状により 適宜増減できるが 1 日最高投与量及び増量方法 は以下のとおりとすること 成人 : 成人では 1 日最高投与量は 3000mg を超えないこととし 増量は 2 週間以上の間隔 をあけて 1 日用量として 1000mg 以下ずつ行う 小児 : 4 歳以上の小児では 1 日最高投与量は 60mg/kg を超えないこととし 増量は 2 週間以上の間隔 をあけて 1 日用量として 20mg/kg 以下ずつ行う ただし 体重 50kg 以上の小児では 成人と同じ 投与量を用いること
薬物動態 健康成人における経口剤から注射剤への切り替え試験 健康成人 ( 日本人 25 例 ) にレベチラセタム 1500mg を 15 分間点滴静脈内投与又は経口投与したとき 経口投与時と比較して 点滴静脈内投与時の Cmax は約 1.6 倍高く AUC 及び t1/2 は類似していた なお レベチラセタム経口投与時の生物学的利用率は約 100% であった
肝機能障害時の用量 健常者および軽度 中等度の肝機能障害患者 (Child-Pugh 分類の A,B) ではレベチラセタムの全身クリアランスに差はなかった しかし重度の肝機能障害患者 (Child-Pugh 分類の C) では全身クリアランスは正常な被験者の半分であった Clin Pharmacol Ther. 2005 Jun;77(6):529-41. 軽度から中等度の肝機能障害では LEV の用量調節を必要としない 重度の肝機能障害では推奨用量の半分にすべき Front Neurol. 2013; 4: 192.
腎機能障害時の用量 イーケプラ インタビューフォーム LEV の過半数 (66%) は 主に腎排泄である 腎不全では約 25 時間まで半減期が延長する 腎機能別に患者における用量を減少させるべきである 約 50% が 4 時間透析によって除去することができる CRRT:1 回 250 ~ 750 mg を 12 時間おきに投与 Front Neurol. 2013; 4: 192. up to date LeveXracetam: Drug informaxon
有害な影響 最も一般的な副作用 : 疲労 緊張 全身衰弱 神経過敏 興奮 情緒不安定 うつ病 気分のむら めまい 不安 不安定 発作 記憶喪失 混乱 増加した反射神経 知覚異常 攻撃性を含む神経行動 認知機能低下 および自殺のリスクの増加 他の一般的な副作用 : 過敏性反応 感染症 筋肉痛 鼻炎 および食欲不振 Front Neurol. 2013; 4: 192.
ICU でのレベチラセタム静注の意義は? 重大な副作用がほとんどない 薬物間相互作用がほとんどない (CYP に影響を受けない 添付文書上では相互作用の記載はなし ) 中程度の肝機能障害までは通常量使用できる TDM が必要ない 経口と違い 消化管が損傷していても大量に投与できる 今までの抗痙攣薬と比べ 有効性は?
成人および年長児における一般痙攣性てんかん重積状態 (SE) の治療アルゴリズム Lancet Neurol 2015; 14: 615 24 ロラゼパム バルプロ酸の注射は 2016 年 3 月現在日本では発売されていない
てんかん重積の治療のためのセカンドラインの抗てんかん薬の研究 Lancet Neurol 2015; 14: 615 24
てんかん重積におけるレベチラセタムと他の薬剤の比較
Prehospital treatment with leve5racetam plus clonazepam or placebo plus clonazepam in status epilep5cus (SAMUKeppra): a randomised, double-blind, phase 3 trial Lancet Neurol. 2016 Jan;15(1):47-55. 全身痙攣性てんかん重積状態 (GCSE) においてベンゾジアゼピンは病院に入院する前に有効であるとされている GCSE において入院前にクロナゼパムで治療した患者にレベチラセタムの追加が有効かを無作為化 二重盲検 フェーズ 3 優越性試験を行い検討 (SAMUKeppra 試験 ) クロナゼパム + プラセボ (n=68) クロナゼパム + レベチラセタム (n=68) プライマリアウトカム : 痙攣の 15 分以内の消失
ベンゾジアゼピン ( クロナゼパム ) によるファーストラインの治療後の追加レベチラセタムは 入院前の GCSE の制御においてクロナゼパムによる治療に勝る利点を提示しない レベチラセタムによる長期的な効果を調査する必要がある
Leve5racetam versus lorazepam in status epilep5cus:a randomized, open labeled pilot study J Neurol (2012) 259:645 648 てんかん重積状態 (SE) の管理については ロラゼパム (LOR) は第一選択として フェニトインまたはホスフェニトインは第二選択として推奨されている これらの薬剤は 有意な毒性を持っている 静脈内レベチラセタム (LEV) が利用可能となっているが その有効性と安全性は報告されていない 無作為化 オープンラベルのパイロット研究 LOR と LEV の比較を行った
SE は LOR で患者の 41 例中 31 例 (75.6%) LEV では 38 例中 29 例 (76.3%) で制御することができた LOR は 人工呼吸の必要性が有意に高く また低血圧が有意に高い頻度であった SE の治療において LEV は LOR の代替になり 呼吸障害や低血圧のある患者では好ましいことがある
Intravenous leve5racetam treatment in status epilep5cus: A prospec5ve study Epilepsy Research (2015) 114, 13 22 てんかん重積における静注 LEV の効果の多施設前向き研究 救急部門 神経学で その発作の臨床的特徴に応じて分類された患者で実施 てんかん重積発作においてジアゼパム静注で治療がうまくいかなかった患者 (N=30) に静脈 LEV を投与した 痙攣を伴うてんかん重積 (CSE)14 人 痙攣を伴わないてんかん重積 (NCSE)11 人 持続部分てんかん (EPC)5 人 結果 : てんかん重積発作は 23 人 (76.6%) で改善した レベチラセタムの静注はてんかん重積においてベンゾジアゼピン後の第一選択となりうる
Management of generalised convulsive status epilep5cus (SE):A prospec5ve randomised controlled study of combined treatment with intravenous lorazepam with either phenytoin, sodium valproateor leve5racetam Pilot study Epilepsy Research 114 (2015) 52 58 ロラゼパム使用中の一般的な痙攣てんかん重積の患者 (N=150) においてフェニトイン (N=50) バルプロ酸 (N=50) レベチラセタム (N=50) の有効性を比較した単施設 RCT 投与量 ロラゼパム 0.1mg/kg フェニトイン 20mg/kg バルプロ酸 30mg/kg レベチラセタム 25mg/kg
レベチラセタム (N = 50) においては 発作は ロラゼパム + レベチラセタムで 39 人 (78%) で制御することできた フェニトイン バルプロ酸 レベチラセタムの間に統計的に有意な差は認められなかった
Leve5racetam versus phenytoin in management of status epilep5cus Journal of Clinical Neuroscience 22 (2015) 959 963 SE の二次治療で IV が可能なものはフェニトイン ホスフェニトイン バルプロ酸と限られている レベチラセタムは SE において有望な選択肢となるが セカンドラインの薬剤の相対的有効性を比較する無作為化試験が著しく不足している IV PHT(20mg / kg) または IV LEV(20 mg / kg ) の RCT 主要エンドポイント薬剤注入の開始後 30 分以内に発作活動が喪失 二次エンドポイント入院中 24 時間以内の発作の再発 薬物関連の副作用 退院時の神経学的転帰 換気支援の必要性 死亡率
LEV と PHT の両方が一次および二次アウトカム指標に関して同様に有効であった PHT は 15 人 (68.2%) LEV は 13 人 (59.1%) の患者で SE を制御することができた (P=0.53) 退院時の発作の再発に関して同等の結果を示した 結論 :LEV は SE の管理において PHT の代替にすることができる
外傷時の発作におけるレベチラセタムと他の薬剤の比較
Changing trends in the use of seizure prophylaxis after traumatic brain injury: A shift from phenytoin to levetiracetam Journal of Cri5cal Care (2013) 28, 883.e9 883.e13 外傷性脳損傷のガイドラインでは外傷後の発作のリスクを減少させるために損傷後 7 日間の抗てんかん薬の投与を推奨している フェニトインはこの期間の発作のリスクを 73% 低下させるとされている レベチラセタムは代替手段だが 同等の有効性を示すとされている フェニトイン対レベチラセタムで治療した患者で外傷性脳損傷 7 日後に発作の発生率を評価し 抗てんかん薬の有効性を比較した後ろ向きコホート研究
フェニトインとレベチラセタム投与群のうちそれぞれ 1 例ずつ外傷後発作が起きた フェニトインとレベチラセタム投与群入院中の予防期間に差はなかった
静注のレベチラセタム承認後はレベチラセタムを好む傾向が見られた
A prospec5ve mul5center comparison of leve5racetam versus phenytoin for early poszrauma5c seizure prophylaxis J Trauma Acute Care Surg Volume 74, Number 3 脳外傷財団のガイドラインは 早期外傷後発作 (PTS) を防止するための発作予防を推奨 フェニトイン (PHE) が一般的に使用される レベチラセタム (LEV) は外傷性脳損傷におけるデータは不足しており より高価であるが TDM を必要としない代替品として導入されている 早期の PTS を防止するための LEV と PHE の有効性を比較した多施設観察研究 主要評価項目として 入院 7 日以内に発生した 臨床的に初期の PTS において PHE と LEV を比較
結果 :1191 人の患者中 組み入れ基準を満たしていなかった 378(31.7%) を除いた 813 人 (68.3%)(LEV 406 人と PHE 407 人 ) を分析 LEV と PHE の間に有意差はなかった 初期の PTS の予防において LEV が PHE を上回る結果は出なかった 血中濃度確認のためのコストと必要性は 予防薬を選択をする際に考慮すべき事項である
レベチラセタム静注の有効性および忍容性
Intravenous leve5racetam in clinical prac5ce Results from an independent registry Seizure. 2015 Jul;29:109-13. 抗てんかん薬の一般的な臨床試験は除外基準や厳格な治療レジメンの仕様のため 日常の診療を反映するものではない 静脈内投与レベチラセタム (LEV-IV) の有効性および忍容性を評価するため大規模な非介入レジストリを提示 ドイツにおける 17 の神経および小児神経センターで 10 ヶ月間 すべての年齢層での LEV-IV 治療の患者 観察期間は 10 日 LEV- 静脈内投与の毎日のドキュメント 発作の種類や頻度 現在使用される薬剤や投与量 および有害事象 (AE) を評価
重大な副作用は観察されなかった 忍容性 有効性:96% の患者で 十分 以上の評価 簡便性:92% の患者で 簡単 の評価 経口への切り替え:95% の患者で 簡単 の評価
まとめ レベチラセタムは既存の抗痙攣薬と比べ 有効性は同等であると考えられる 既存の抗痙攣薬に比べ 相互作用がない 使用方法が簡便である 経口へ切り替えやすい TDM が必要ないなどの点で使用しやすい 呼吸障害や低血圧などがある患者に対して使用しやすいと思われる
2016 年 3 月現在 イーケプラ 静注は 神経内科 脳神経外科 小児科の仮採用薬品です 使用の際はすみやかに申請科へ 1Aor1Vの値段 50kgあたり ホリゾン 10m g 98 10m g 98 ドルミカム 10m g 133 10m g 133 アレビアチン 250m g 132 1000m g 528 ホストイン 750m g 6361 1500m g 12722 ノーベルバール 250m g 2119 1000m g 8476 イーケプラ 500m g 1978 1000m g 3956