0 年 月 6 日 ( 水曜 3 限 )/6 0. 個別消費税と利子所得課税 0. 一括固定税と超過負担 財 と財 に関する個人の消費選択のモデルを用いて 一括固定税の効果と超過負担につ いて検討しよう なお 一括固定税とは 個人が行動を変化させても税額が変化しない税 であり 人頭税がその例である < 税の存在しない場合の予算制約式 > 財 i の量を x 税が存在しないもとでの財 i の価格を p とする ( i ) また 所得を m i とすれば 予算制約式は p xpxm (0-) である なお 以下では議論を単純化するために財 の価格はであるとする ( p ) そして 税が存在しないもとでの最適消費点を x x とする そして 最適消費点 x x を通る無差別曲線を I とする x 平面に税が存在しない場合の最適消費点 x ( 問題 0-) 曲線 I x i x とその点を通る無差別 < 一括固定税が存在する場合の予算制約式と税額 > 財 i に対する税率 ( 従価税 ) を t i とし 生産者価格 は課税されても p i のまま変化しない とする ( 水平な供給曲線 ) また 一括固定税(lump-sum tax) の税額をT とする そのとき 一括固定税のケースの予算制約式は となる p x x mt (0-) 税額 T の一括固定税のもとでの最適な消費の組み合わせを x x とする そのとき x x T = p x x は (0-) を満たすので (0-3) m と表現できる また 税額 T の一括固定税を課税した後の最適消費点を通る無差別曲線を I とする ( 問題 0-) 問題 0- で描いた図に 税額 T の一括固定税のもとでの最適消費点 x x と その点を通る無差別曲線 I また T
< 超過負担 (excess buden )> 0 年 月 6 日 ( 水曜 3 限 )/6 課税の結果 個人の効用水準は低下することになるが その効用低下の大きさを金銭的に 評価したものが 実質的租税負担額 である なお 課税で得られた財源で公共財などを 供給することで生じる効用の上昇についてはここでは考慮しないこととする たとえば 税収は全て他国への賠償金の支払いなどのために支出されていると考えることにする 課税による実質的租税負担額と租税負担額は必ずしも一致するとは限らず 実質的租税負 担額 から 租税負担額 を差し引いた値は 超過負担 と呼ばれる そのような超過負 担が生じる基本的な理由は 課税されると個人が租税を回避 ( 節税 ) するために行動を歪 める ( 変化させる ) からである 以下では そのような超過負担が一括固定税に関して生 じるかどうかを検討する 実質的租税負担額 を捉えるために 第 8 章で導入した補償所得と等価変分という概念 を用いることにしよう 課税前の効用水準を価格 p のもとで 課税されていない状況での 最適消費点 x x を通る無差別曲線 I に対応する効用水準を実現するために最低限必要 な所得 すなわち補償所得 E( p I ) は E( p I) pxxm (0-4) である また 税額 T の一括固定税を課税した後の最適消費点 x x を通る無差別曲線 I に対応する効用水準を価格 p のもとで実現するための補償所得 E( p I ) は ( p I px x (0-5) である E ) (0-3) (0-4) (0-5) より 税額 T の一括固定税により生じる効用の増分を変化前の価格 p を用いて金銭的に評価した等価変分 EV (equivalent valuation) は EV E( p I ) E( p I) p x x m T (0-6) となる また 一括固定税による実質的租税負担は EV であるので (0-6) より一括固定税のもとでは実質的租税負担額 EV と税額 ( すなわち租税負担額 ) T が一致することになる したがって 一括固定税による超過負担 EB は EB EV T0 (0-7) である すなわち 一括固定税 T のもとでの超過負担はゼロである ( 問題 0-3) 問題 0- で描いた図に ( E p I ) E ( p I ) EV を描き加えなさい 実質的租税負担額 EV が課税前の価格 p 課税前の無差別曲線 I 課税後の無差別曲線 I だけで求められることと 一括固定税のもとでは実質的租税負担と租税負担税額が一致 すること ((0-6) 参照 ) を用いれば ある課税による超過負担は次のような手順で求めるこ とができることになる すなわち ある課税のもとでの租税負担額とその課税のもとで 実現する効用水準を求める その効用水準と一括固定税により実現する効用水準が一致するような一括固定税の税額 ( すなわち租税負担額 ) T を求める 3その課税の超過負担 T からその課税の租税負担額を引くことで求める を
0. 一般消費税と超過負担 0 年 月 6 日 ( 水曜 3 限 )3/6 財 と財 に関する個人の消費選択のモデルを用いて 一般消費税と一括固定税の効果の 相違を比較検討しよう なお 一般消費税とは原則的に全ての財 サービスを課税対象と する税である また 0.3 節では 特定の財 サービスを課税対象とする税である個別消費 税について検討する 一般消費税を課すケース ( t t [ t ] T 0 ) と一括固定税のケース ( T 0 t t ) を比較することで一般消費税のもとで生じる超過負担を求めよう 一般消費税のケースの予算制約式は pxxm ( t ) (0-8) である また 税率 t の一般消費税のもとでの最適な消費の組み合わせを x x とする そのとき 一般消費税のもとでの租税負担額 T はT =t p x x であり x x は (0-8) を満たすので t m T =t p x x = t と求めることができる (0-9) 一括固定税のもとでの予算制約式 (0-) と (0-8) を比較すると 一括固定税の税額 T を tm T (0-0) t と定めることにより 税率 t の一般消費税のもとでの予算制約式と税額 T の一括固定税の もとでの予算制約式が一致する したがって 両者の税制のもとでの達成される効用水準 は一致することになる また (0-0) のように一括固定税の税額 T を定めれば (0-9) より一般消費税のもとでの租税負担額と一括固定税のもとでの租税負担額 T は一致する T T ) ( 以上より 税率 t の一般消費税のもとで生じる超過負担 EB は EB T T 0 (0-) と求められることになる つまり 一般消費税のもとでの超過負担はゼロである ( 問題 0-4) x x 平面に一般消費税を導入する前の予算線と導入した後の予算線を描き 縦軸の切片の値を書き入れなさい また 税率 t の一般消費税のもとでの最適な消費の組み合わせ x x さらに (0-0) を満たすように税額 T が定められた一括固定税のもとでの予算制約式そして 一般消 費税のもとでの租税負担額 T と一括固定税のもとでの租税負担額 T を図示しな さい 3
0.3 個別消費税と超過負担 0 年 月 6 日 ( 水曜 3 限 )4/6 財 と財 に関する個人の消費選択のモデルを用いて 財 にのみ個別消費税を課すケース ( t t T 0 ) と一括固定税を課すケース ( T 0 t t ) を比較することで 個別消費税により生ずる超過負担について検討しよう まず 個別消費税のケースの予算 制約式は ( t) pxxm (0-) である ( 問題 0-5) x x 平面に個別消費税を導入する前の予算線と導入した後の予算線を描き 縦軸の切片の値を書き入れなさい また 無差別曲線 I を描き加えることで 税 t のもとでの最適消費点 x x 率 税率 t の個別消費税のもとでの最適な消費の組み合わせを x x とする そのとき 個別 消費税のもとでの租税負担額 T はT t p x であり x x は (0-) を満たすので T tpx= m ( p x x) (0-3) と表すことができる なお 個別消費税を導入したあとの財 の 消費者価格 を p と表 すことにする すなわち p ( t p である ) ( 問題 0-6) 問題 0-5 の図のなかに租税負担額 T 税率 t の個別消費税もとで実現する効用水準と一括固定税のもとでの効用水準が同一になる一括固定税の税額 T を求めよう ( 問題 0-7) 問題 0-5 で描いた税率 t の個別消費税もとでの最適消費点 x x と税額 T の一括固定税のもとでの最適消費点 x x が同じ無差別曲線 I 上にあるとする 最適消費点 x x と一括固定税の税額 T を問題 0-5 で描いた図に描き加えなさい 個別消費税による超過負担 EB は 問題 0-6 と問題 0-7 で求めたT とT を用いて EB T (0-4) T と求めることができる ( 問題 0-8) 問題 0-5 の図のなかに超過負担 EB ( 問題 0-9) 無差別曲線 ( の集まり ) が x x 4 x u( u は実数 ) で与えられており 所得が m 3 財 の価格が p であるとする このとき 税率 00%( t ) の個別消費税を導入した場合の最適消費点 x x と個別消費税のもとでの租税 負担額 T を求めなさい x x を通る無差別曲線 I に対応する u の値 u を求めなさい 3 税額 T の一括固定税のもとでの最適消費点 x x がで求めた u に対応する無差別曲線 I 上にあるとする 超過負担 EB の大きさを求めなさ い 4
0.4 労働所得税と超過負担 0 年 月 6 日 ( 水曜 3 限 )5/6 期間にわたる消費選択モデルを用いて 労働所得税と超過負担の問題を検討しよう なお 労働供給は非弾力的 ( すなわち 労働供給量は一定 ) であると想定する < 税の存在しない場合の予算制約式 > 消費財の価格は に標準化されているとする 第 t 期の消費量 (= 消費支出額 ) を c t 第 t 期の労働所得を w とする ( t ) また ( 第 期の ) 貯蓄を s 利子率を とする t 利子所得が s であるから第 期と第 期の予算制約式は それぞれ c sw (0-5) c w ( ) s (0-6) である そのとき 期間を通じた予算制約式は c w c w (0-7) となる ((9-3) 参照 ) なお 左辺は消費の割引現在価値 右辺は労働所得の割引現在価値である < 労働所得税が存在する場合の予算制約式と税額 > 労働所得税率 t w のもとでの 期間を通じた予算制約式は c w c (t w ) w (0-8) である ((9-6) 参照 ) また 税率 t w のもとでの最適な消費の組み合わせを c w c w とすると c w c w は (0-8) を満たすので 第 期と第 期の労働所得税額の割引現在価値 Tw は tww w Tw=tww =t w w (0-9) である また 期のみに税額 T の一括固定税を課すケースの予算制約式は c w c w T (0-0) であるから T Tw と定めれば 予算制約式 (0-8) と (0-0) は一致する したがって 両者の税制のもとでの達成される効用水準は一致することになる 以上より 税率 t w の労働所得税のもとで生じる超過負担 EBw は EB T T 0 (0-) w w と求められることになる つまり 労働所得税のもとでの超過負担はゼロである ( 問題 0-0) c c 平面に労働所得税を導入する前の予算線と導入した後の予算線を描き 縦軸の切片の値を書き入れなさい また 税率 t w の労働所得税のもとでの最適な消費の組み合わせ c w c w さらに T Tw と定められた一括固定税のケースの予算制約式そして 労働所得税のもとでの租税負担額 Tw と一括固定税のもとでの租税負担額 T 5
0.5 利子所得税と超過負担 0 年 月 6 日 ( 水曜 3 限 )6/6 期間にわたる消費選択モデルを用いて 利子所得税の効果と超過負担について検討しよう 利子所得税率を t とすれば 利子所得が s であるから第 期と第 期の予算制約式は それぞれ c sw (0-) c w( ) stsw(t) s (0-3) である ここで ( t ) とおけば (0-) と (0-3) より 期間を通じた予算制約式は c w c w (0-4) となる 利子所得税率 t のもとでの第 t 期の最適消費量を c t 第 期の最適貯蓄水準を s とする そのとき 税率 t の利子所得税のもとでの租税負担額の割引現在価値 T は T = ts /( ) であり ( c c s ) は (0-) と (0-3) を満たすので 次のように求められる t s w c T= =w c (0-5) ( 問題 0-) c c 平面に利子所得税を導入する前の予算線と導入した後の予算線を描き 横軸の切片の値を書き入れなさい また 無差別曲線を描き加えることで 税率 t の もとでの最適消費点 c c ( 問題 0-) 問題 0- の図のなかに租税負担額 T 期のみに税額 T の一括固定税を課すもとでの最適な消費の組み合わせを c c とする そのとき c c は (0-0) を満たすので 次のように求められる w c T=w c (0-6) ( 問題 0-3) 問題 0- で求めた税率 t の利子所得税のもとでの最適消費点 c c と税額 T の一括固定税のもとでの最適消費点 c c が同じ無差別曲線上 I にあるとする 最適消費点 c c と一括固定税の税額 T を問題 0- の図に描き加えなさい 利子所得税のもとで生ずる超過負担 EB をT とT を用いて表せば EB T T (0-7) である ( 問題 0-4) 問題 0- の図のなかに超過負担 EB 6