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外来在宅化学療法の実際

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Microsoft Word - 肺癌【編集用】

佐賀県肺がん地域連携パス様式 1 ( 臨床情報台帳 1) 患者様情報 氏名 性別 男性 女性 生年月日 住所 M T S H 西暦 電話番号 年月日 ( ) - 氏名 ( キーパーソンに ) 続柄居住地電話番号備考 ( ) - 家族構成 ( ) - ( ) - ( ) - ( ) - 担当医情報 医

頭頚部がん1部[ ].indd

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Microsoft Word - JCOG9906総括報告書081215_m KN【福田加筆】

「             」  説明および同意書

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Microsoft Word - 食道癌ホームページ用.doc

がん登録実務について

094 小細胞肺がんとはどのような肺がんですか んの 1 つです 小細胞肺がんは, 肺がんの約 15% を占めていて, 肺がんの組 織型のなかでは 3 番目に多いものです たばことの関係が強いが 小細胞肺がんは, ほかの組織型と比べて進行が速く転移しやすいため, 手術 可能な時期に発見されることは少

限局性前立腺がんとは がんが前立腺内にのみ存在するものをいい 周辺組織やリンパ節への局所進展あるいは骨や肺などに遠隔転移があるものは当てはまりません がんの治療において 放射線療法は治療選択肢の1つですが 従来から行われてきた放射線外部照射では周辺臓器への障害を考えると がんを根治する ( 手術と同

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肺癌の放射線治療

70 頭頸部放射線療法 放射線化学療法

9 2 安 藤 勤 他 家族歴 特記事項はない の強い神経内分泌腫瘍と診断した 腫瘍細胞は切除断端 現病歴 2 0 1X 年7月2 8日に他院で右上眼瞼部の腫瘤を に露出しており 腫瘍が残存していると考えられた 図 指摘され精査目的で当院へ紹介された 約1cm の硬い 1 腫瘍で皮膚の色調は正常であ

密封小線源治療 子宮頸癌 体癌 膣癌 食道癌など 放射線治療科 放射免疫療法 ( ゼヴァリン ) 低悪性度 B 細胞リンパ腫マントル細胞リンパ腫 血液 腫瘍内科 放射線内用療法 ( ストロンチウム -89) 有痛性の転移性骨腫瘍放射線治療科 ( ヨード -131) 甲状腺がん 研究所 滋賀県立総合病

遠隔転移 M0: 領域リンパ節以外の転移を認めない M1: 領域リンパ節以外の転移を認める 病期 (Stage) 胃がんの治療について胃がんの治療は 病期によって異なります 胃癌治療ガイドラインによる日常診療で推奨される治療選択アルゴリズム (2014 年日本胃癌学会編 : 胃癌治療ガイドライン第

基礎知識 1. 食道について 食道は のど ( 咽頭 ) と胃の間をつなぐ管状の臓器で 部位によって 頸部食道 胸部食道 腹部食道と呼ばれています ( 図 1 左 ) 食道は体の中心部にあり 気管 心臓 大動脈や肺などの臓器や背骨に囲まれています 食道の周囲にはリンパ節があります 食道の壁は 内側か

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PowerPoint プレゼンテーション

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院内がん登録集計報告

がんの治療

NCCN2010.xls

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プログラム テーマ 中咽頭 (13 : : 45) 1 13 : : 35 : CQ1 : HPV CQ2 : : : 40 : CQ3 : CQ4 : : : 45 : CQ5 :

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70% の患者は 20 歳未満で 30 歳以上の患者はまれです 症状は 病巣部位の間欠的な痛みや腫れが特徴です 間欠的な痛みの場合や 骨盤などに発症し かなり大きくならないと触れにくい場合は 診断が遅れることがあります 時に発熱を伴うこともあります 胸部に発症するとがん性胸水を伴う胸膜浸潤を合併する

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第71巻5・6号(12月号)/投稿規定・目次・表2・奥付・背

膵臓癌について

原発不明がん はじめに がんが最初に発生した場所を 原発部位 その病巣を 原発巣 と呼びます また 原発巣のがん細胞が リンパの流れや血液の流れを介して別の場所に生着した結果つくられる病巣を 転移巣 と呼びます 通常は がんがどこから発生しているのかがはっきりしている場合が多いので その原発部位によ

6 月 25 日胸腺腫 胸腺がん患者の情報交換会 & 勉強会質疑 応答 奥村教授にお聞きしたいこと 奥村教授の話 1 特徴 (1) 胸腺腫 胸腺がん カルチノイドの違いについて 胸腺腫はがんの種類か 病理学的には胸腺腫はがんではなくて正常と区別つかず機能を残したまま腫瘍化したもの 一部 転移するもの

158 消化器 タにて呼吸性移動を確認することが望ましい PETCTもGTV 決定に有用であり, 可能であれば併用する GTV 原発巣 : 食道バリウム造影,CT, 食道表在癌の場合には色素内視鏡によりGTVを決定する 多発病変あるいはスキップ病変のある場合はこれもGTVに含める 画像的に病変を描出

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葉酸とビタミンQ&A_201607改訂_ indd

消化器センター

付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 ): 施設 UICC-TNM 分類治療前ステージ別付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 原発巣切除 ): 施設 UICC-TNM 分類術後病理学的ステージ別付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 UIC

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当院外科における 大腸癌治療の現況

院内がん登録における発見経緯 来院経路 発見経緯がん発見のきっかけとなったもの 例 ) ; を受けた ; 職場の健康診断または人間ドックを受けた 他疾患で経過観察中 ; 別の病気で受診中に偶然 がん を発見した ; 解剖により がん が見つかった 来院経路 がん と診断された時に その受診をするきっ

付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 ): 施設 UICC-TNM 分類治療前ステージ別付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 原発巣切除 ): 施設 UICC-TNM 分類術後病理学的ステージ別付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 UIC

がん化学(放射線)療法レジメン申請書

32 子宮頸癌 子宮体癌 卵巣癌での進行期分類の相違点 進行期分類の相違点 結果 考察 1 子宮頚癌ではリンパ節転移の有無を病期判定に用いない 子宮頚癌では0 期とⅠa 期では上皮内に癌がとどまっているため リンパ節転移は一般に起こらないが それ以上進行するとリンパ節転移が出現する しかし 治療方法

が 6 例 頸部後発転移を認めたものが 1 例であった (Table 2) 60 分値の DUR 値から同様に治療後の経過をみると 腫瘍消失と判定した症例の再発 転移ともに認めないものの DUR 値は 2.86 原発巣再発を認めたものは 3.00 頸部後発転移を認めたものは 3.48 であった 腫瘍

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記入方法

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前立腺癌に対する放射線治療

資料 3 1 医療上の必要性に係る基準 への該当性に関する専門作業班 (WG) の評価 < 代謝 その他 WG> 目次 <その他分野 ( 消化器官用薬 解毒剤 その他 )> 小児分野 医療上の必要性の基準に該当すると考えられた品目 との関係本邦における適応外薬ミコフェノール酸モフェチル ( 要望番号

1. 来院経路別件数 非紹介 30 他疾患経過 10 自主受診観察 紹介 20 他施設紹介 合計 患者数 割合 12.1% 15.7% 72.2% 100.0% 27.8% 72.2% 100.0% 来院経路別がん登録患者数 がん患者がどのような経路によって自施設を受診し

付表 登録数 : 施設 部位別 総数 1 総数 口腔咽頭 食道 胃 結腸 直腸 ( 大腸 ) 肝臓 胆嚢胆管 膵臓 喉頭 肺 骨軟部 皮膚 乳房 全体

2. 転移するのですか? 悪性ですか? 移行上皮癌は 悪性の腫瘍です 通常はゆっくりと膀胱の内部で進行しますが リンパ節や肺 骨などにも転移します 特に リンパ節転移はよく見られますので 膀胱だけでなく リンパ節の検査も行うことが重要です また 移行上皮癌の細胞は尿中に浮遊していますので 診断材料や

がんの診療の流れ この図は がんの 受診 から 経過観察 への流れです 大まかでも 流れが見えると心にゆとりが生まれます ゆとりは 医師とのコミュニケーションを後押ししてくれるでしょう あなたらしく過ごすためにお役立てください がんの疑い 体調がおかしいな と思ったまま ほうっておかないでください

ける発展が必要です 子宮癌肉腫の診断は主に手術進行期を決定するための子宮摘出によって得られた組織切片の病理評価に基づいて行い 組織学的にはいわゆる癌腫と肉腫の2 成分で構成されています (2 近年 子宮癌肉腫は癌腫成分が肉腫成分へ分化した結果 組織学的に2 面性をみる とみなす報告があります (1,

4DCTを用いたITV(internal target volume)の検討

33 NCCN Guidelines Version NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology (NCCN Guidelines ) (NCCN 腫瘍学臨床診療ガイドライン ) 非ホジキンリンパ腫 2015 年第 2 版 NCCN.or

< 高知県立幡多けんみん病院 年院内がん登録 ( 詳細 )> 性 ~9 ~9 ~9 ~9 ~9 ~9 ~9 9~ 総計件数比率 口腔 咽頭食道胃結腸直腸肝臓胆嚢 胆管膵臓喉頭肺骨 軟部皮膚乳房子宮頸部子宮体部卵巣前立腺膀胱腎 他の尿路 女男女男女男女男女男女男女男女男女男女男女男女男女男女男女男女男

1. はじめに ステージティーエスワンこの文書は Stage Ⅲ 治癒切除胃癌症例における TS-1 術後補助化学療法の予後 予測因子および副作用発現の危険因子についての探索的研究 (JACCRO GC-07AR) という臨床研究について説明したものです この文書と私の説明のな かで わかりにくいと

乳がん術後連携パス

付表 登録数 : 施設 部位別 総数 1 総数 口腔咽頭 食道 胃 結腸 直腸 ( 大腸 ) 肝臓 胆嚢胆管 膵臓 喉頭 肺 骨軟部 皮膚 乳房

研究協力施設における検討例 病理解剖症例 80 代男性 東京逓信病院症例 1 検討の概要ルギローシスとして矛盾しない ( 図 1) 臨床診断 慢性壊死性肺アスペルギルス症 臨床経過概要 30 年前より糖尿病で当院通院 12 年前に狭心症で CABG 施行 2 年前にも肺炎で入院したが 1 年前に慢性

乳癌かな?!と思ったら

食道癌手術さて 食道は文字どおり口 咽頭から胃まで をつなぐ管状の器官でまさに食物を運ぶ道です そして縦隔と呼ばれる背骨の前方の狭い領域にあり 大動脈 心臓そして気管などと密に接しています さらに 気管とは私たちの身体が構成される過程で同じところから発生し 非常に密な関係にあります さらに発生の当初

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第13回がん政策サミット 2016秋

5. 乳がん 当該疾患の診療を担当している診療科名と 専門 乳房切除 乳房温存 乳房再建 冷凍凝固摘出術 1 乳腺 内分泌外科 ( 外科 ) 形成外科 2 2 あり あり なし あり なし なし あり なし なし あり なし なし 6. 脳腫瘍 当該疾患の診療を担当している診療科名と 専

Microsoft Word - 学位論文の要約(最終版)Table修正後.docx

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学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 佐藤雄哉 論文審査担当者 主査田中真二 副査三宅智 明石巧 論文題目 Relationship between expression of IGFBP7 and clinicopathological variables in gastric cancer (

大腸ESD/EMRガイドライン 第56巻04号1598頁

診療科 血液内科 ( 専門医取得コース ) 到達目標 血液悪性腫瘍 出血性疾患 凝固異常症の診断から治療管理を含めた血液疾患一般臨床を豊富に経験し 血液専門医取得を目指す 研修日数 週 4 日 6 ヶ月 ~12 ヶ月 期間定員対象評価実技診療知識 1 年若干名専門医取得前の医師業務内容やサマリの確認

9章 その他のまれな腫瘍

3. バイナリーコリメータを用いた方法 4. ロボット型治療装置を用いた方法 IMRT 施行に際する施設 人的要件 IMRT の施行に際しては 厚生労働省保険局医療課長通知 ( 保医発第 号平成 20 年 3 月 5 日 ) に記載の施設基準を満たすことが必要である また 上記に加え

          

3. 本事業の詳細 3.1. 運営形態手術 治療に関する情報の登録は, 本事業に参加する施設の診療科でおこなわれます. 登録されたデータは一般社団法人 National Clinical Database ( 以下,NCD) 図 1 参照 がとりまとめます.NCD は下記の学会 専門医制度と連携して

核医学画像診断 第36号

大腸がん術後連携パス

がんの診療の流れ この図は がんの 受診 から 経過観察 への流れです 大まかでも 流れがみえると心にゆとりが生まれます ゆとりは 医師とのコミュニケーションを後押ししてくれるでしょう あなたらしく過ごすためにお役立てください

Microsoft PowerPoint - 【資料3】届出マニュアル改訂について

がんの診療の流れ この図は がんの 受診 から 経過観察 への流れです 大まかでも 流れがみえると心にゆとりが生まれます ゆとりは 医師とのコミュニケーションを後押ししてくれるでしょう あなたらしく過ごすためにお役立てください がんの疑い 体調がおかしいな と思ったまま 放っておかないでください な

かった また患者の黒色便が消失したこともあり, 微小な病変が凝固因子製剤の補充により改善した可能性があると考え今回はこれ以上の追加精査は行わず, 再度増悪時にダブルバルーン内視鏡などを考慮する方針とし, 患者は 1 月 14 日に名大病院を退院した 患者は退院後も定期的に名大病院血液内科外来を受診し

がんの診療の流れ この図は がんの 受診 から 経過観察 への流れです 大まかでも 流れがみえると心にゆとりが生まれます ゆとりは 医師とのコミュニケーションを後押ししてくれるでしょう あなたらしく過ごすためにお役立てください がんの疑い 体調がおかしいな と思ったまま 放っておかないでください な

130724放射線治療説明書.pptx

表 1. 罹患数, 罹患割合 (%), 粗罹患率, 年齢調整罹患率および累積罹患率 ; 部位別, 性別 A. 上皮内がんを除く ; 部位別, 性別 B. 上皮内がんを含む 表 2. 年齢階級別罹患数, 罹患割合 (%); 部位別, 性別 A. 上皮内がんを除く B. 上皮内がんを含む 表 3. 年齢

Microsoft Word - 03 大腸がんパス(H30.6更新).doc


4 月 20 日 2 胃癌の内視鏡診断と治療 GIO: 胃癌の内視鏡診断と内視鏡治療について理解する SBO: 1. 胃癌の肉眼的分類を列記できる 2. 胃癌の内視鏡的診断を説明できる 3. 内視鏡治療の適応基準とその根拠を理解する 4. 内視鏡治療の方法 合併症を理解する 4 月 27 日 1 胃

ベバシズマブ併用 FOLFOX/FOLFIRI療法

別紙様式第1

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平成 29 年度九段坂病院病院指標 年齢階級別退院患者数 年代 10 代未満 10 代 20 代 30 代 40 代 50 代 60 代 70 代 80 代 90 代以上 総計 平成 29 年度 ,034 平成 28 年度 -

長野県がん診療連携拠点病院整備検討委員会機能評価 会議記録(要旨)

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Transcription:

食道がんの 放射線治療を もっと知ってみませんか? 広島市立広島市民病院 放射線治療科松浦寛司

食道癌診断 治療ガイドライン 2012 年 4 月版によると 根治的放射線療法 放射線療法により全ての病巣の制御が期待でき, 治癒が望める治療である 根治的照射の良い適応となるのは T1-4N0-3M0 (UICC-TNM 分類 2009 年版 ) および鎖骨上窩リンパ節転移 (M1) までの局所進行例である なお, 放射線単独療法よりも化学放射線療法が標準的治療である 食道癌診断 治療ガイドライン 2012 年 4 月版から抜粋

食道癌診断 治療ガイドライン 2012 年 4 月版によると 根治的化学放射線療法の適応となる対象は? EMR ESD の適応となる早期癌と遠隔転移有する症例を除く, 全ての症例で適応となり得る わが国においては, 切除可能症例のうち,Stage I では外科手術,T4 を除く Stage II,III では術前化学療法 + 外科手術が標準的治療であり, 手術に適さないかあるいは手術を希望しない症例に対して根治的化学放射線療法が推奨される 食道癌診断 治療ガイドライン 2012 年 4 月版から抜粋

食道がん治療のアルゴリズム Stage 0 Stage I Stage II, III (T1b-T3) Stage III (T4), IVa Stage IVb 術前化学療法術前化学放射線療法 内視鏡的治療 外科治療 術後補助療法 化学放射線療法 ( 放射線療法 ) 化学療法放射線療法化学放射線療法対症療法 食道癌診断 治療ガイドライン 2012 年 4 月版から抜粋 ( 一部改変 )

食道がん放射線治療の実際

食道がんの根治治療 外科治療 食道切除 原発腫瘍 リンパ節郭清 肉眼的リンパ節転移 顕微鏡的リンパ節転移 放射線治療 局所照射 原発腫瘍 肉眼的リンパ節転移 予防領域照射 顕微鏡的リンパ節転移 再建 食道癌診断 治療ガイドライン 2012 年 4 月版から抜粋

胸部食道がんに対するリンパ節に対する治療 手術では 3 領域郭清 放射線治療では予防領域照射 頸部 胸部 腹部 梶山美明ら, 画像診断 25:599-610, 2005

食道がんにおけるリンパ節転移の特徴 頸部 胸部 腹部に広範囲に転移する 反回神経リンパ節 (No. 106rec) は 3 人に 1 人, 胃小彎リンパ節 (No. 3) は 4 人に 1 人の割合で転移する高危険部位! 梶山美明ら, 画像診断 25:599-610, 2005, 梶山美明ら, 消化器外科 35:5:1079-1085, 2012

進行食道がん放射線治療の一般的照射野 頸部食道がん 胸部上部食道がん 胸部中部食道がん 胸部下部食道がん 原発巣第 1 群リンパ節第 2 群リンパ節第 3 群リンパ節

I 期 食道癌の化学放射線療法の治療成績 (60Gy/30 回,CDDP/5-FU 同時併用 ) 5 年生存割合 :70-75%,CR 率 :90% II/III 期 (T4 除く )» 外科治療の成績 (70-80%) とほぼ同等 5 年生存割合 :35-40%,CR 率 :65% T4/M1Lym» 外科治療の成績 (60%) に劣る 2 年生存割合 :30-35%,CR 率 :30%» 標準治療として確立しており, 長期生存の可能性あり» 瘻孔 出血のリスクあり

根治的化学放射線療法による有害事象 早期有害事象 悪心 嘔吐 骨髄抑制 食道炎 口内炎 下痢 便秘 放射線肺臓炎» 化学療法に起因するものと放射線療法に起因するもの, 両者に起因するものが挙げられるが, 厳密に区別することは難しい 食道癌診断 治療ガイドライン 2012 年 4 月版から抜粋

根治的化学放射線療法による有害事象 遅発性有害事象 放射線心外膜炎 放射線胸膜炎 胸水 心嚢水 甲状腺機能低下 食道癌診断 治療ガイドライン 2012 年 4 月版から抜粋

化学放射線療法後の遅発性有害事象 国立がんセンター東病院 1992-1999 年に治療されたI-IVA 期 139 例 放射線治療 @60Gy + CDDP/5-FU» 照射方法は対向 2 門照射 CRが得られた78 例における遅発性有害事象を検討 G2 G3 G4 G5 G3» 心嚢水 8 7 1-10%» 心不全 - - 2-3%» 心筋梗塞 - - - 2 3%» 胸水 7 8 - - 10%» 放射線肺臟炎 1 3 - - 4% Ishikura S, et al. J Clin Oncol 21:2697-2702, 2003

根治的化学放射線療法による有害事象 遅発性有害事象 放射線心外膜炎 放射線胸膜炎 胸水 心嚢水 甲状腺機能低下» リスク臓器である肺や心臓への放射線照射量が問題とされており, その軽減のため CT 画像を基にした 3 次元治療計画が一般的になっている 食道癌診断 治療ガイドライン 2012 年 4 月版から抜粋

いにしえの前後対向 2 門照射 心臓の広範囲に標的体積と同程度の線量が照射されてしまう

現在一般的な前後斜入 4 門照射 心臓前面の照射線量を低減可能

臨床病期 II/III 食道癌 (T4 を除く ) に対する 50.4Gy,5-FU 1000 mg/m 2 +CDDP 75 mg/m 2 化学放射線療法 (RTOG レジメ ) の多施設共同第 Ⅱ 相試験 国がんセンター 北里大学 大阪市立総合医療センター 静岡がんセンター 2006 年 6 月 -2008 年 5 月 照射方法 : 多門照射 G3 胸水 :0% G3 心嚢水 :2% G3 肺臟炎 :6% 外科治療 IIA 期 IIB 期 III 期 60.7% 55.7% 33.7% 食道癌診断 治療ガイドライン 2012. 年 4 月版より抜粋»3 年生存割合 :62.7% Kato K et al. Jpn J Clin Oncol 43; 608-615, 2013 伊藤ら. 第 67 回日本食道学会学術集会 2013

当院での前後左右斜入 6 門照射 心臓の照射線量をさらに軽減し, 高線量域を標的体積により集中させる

食道がんに対する化学放射線療法の 集学的治療 現状と課題 報告されている化学放射線療法の臨床試験結果は, 救済治療で救済された症例も含まれたデータ 長期生存症例における遅発性有害事象 遅発性有害事象を軽減させる照射方法の開発 遺残 再発症例に対する救済治療 遺残 再発症例を救済治療により根治に持ち込む 救済手術による合併症や治療関連死のリスク

食道がんに対する化学放射線療法の治療成績改善も目指す取り組み 3 次元放射線治療計画による多門照射の導入 遅発性有害事象の軽減 総線量を 60Gy から 50.4Gy に 遅発性有害事象の軽減 救済治療の安全性の配慮 新しい照射技術や治療機器の応用 強度変調放射線治療 粒子線治療

II/III 期では線量軽減の方向! 40-50Gy 程度で病理学的 CR になる症例は確かにある 50Gy で CR でなかった場合は全て救済手術になるのか? 60Gy 以上かけたら制御可能な症例であったなら,50Gy 程度の線量投与で終わると, 不要な救済手術を受けることになる 救済手術の安全性担保が集学的治療として必要なことは理解できるが, 照射技術の向上で安全な高線量投与が可能となっているのに一律に線量軽減することが本当にベストの選択なのか?» 不要な手術を避けるために,50Gy 程度で制御可能な症例, それ以上の線量で制御可能な症例, それ以上かけても制御困難な症例が判別できるようになれば

T4 症例に対する照射線量は? T4 症例の標準的治療は化学放射線療法であるが, 局所制御率は決して高くない 腫瘍体積が大きく異なる 表在性の T1 から 他臓器浸潤伴う T4 まで, 60Gy/30 回 /6 週程度 の照射線量が汎用されているが, 局所制御に必要な照射線線量が, T1 と T4 で同じなわけがない T4 の局所制御率を改善するためには照射線量増加が必要なのでは???» 安全に高線量を照射するには, 照射方法の工夫が必要

症例呈示

症例 50 才女性,PS1 診断 :IV 期食道がん (SCC, MtLt, T4bN1M1[LYM]) 主訴 : 胸痛, 嚥下困難 現病歴 2011.04 月 2011.05 月 2011.06 月 嚥下困難出現近医内科受診, 食道がんを指摘された総合病院紹介受診となり精査右肺への直接浸潤を伴うT4b 食道がんと診断, 随伴する無気肺による閉塞性肺炎も認めた化学放射線療法目的で当科紹介

治療前画像

治療経過 DCF 1 st コース 食道肺瘻形成 瘻孔自然閉鎖 DCF 2 nd コース

治療前 DCF 療法 2 コース後

放射線治療 総線量 :67Gy/38fr/39d 40Gy ( 予防領域照射 ) 27Gy ( 局所照射 ) 線量分布図

治療経過 放射線治療後 食道肺瘻再形成 瘻孔閉鎖を期待して, 1 ヶ月間の絶飲食 + 中心静脈栄養管理を行なったが, 瘻孔は閉鎖せず 高気圧酸素療法 (HBO) に踏み切った

食道肺瘻 治療経過 HBO 後 そして現在

治療前 治療後

その後は? 3 年 5カ月経過した現在, 再発 転移の兆候なし 元気にばりばり仕事をされている 食道肺瘻の再燃もなく, 普通に食事をされている

症例 82 才男性,PS0 診断 :IV 期食道がん (SCC, UtMt, T3N0M1[PUL]) 主訴 : 嚥下困難, 胸やけ 現病歴 2011.02 月 2011.03 月 嚥下困難, 胸やけ出現近医内科受診し, 内視鏡にて食道がんと診断手術目的で当院外科紹介されたが, 多発肺転移を伴うIV 期食道がんと診断され, 手術適応なしと判断化学放射線療法目的で当科紹介

治療前画像

同時併用化学放射線療法 総線量 :70Gy/35fr/50d CDGP/5-FU 療法 2 コース同時併用 40Gy ( 少し広めの局所照射 ) 30Gy ( 局所照射 ) 線量分布図

治療前 治療後

治療前 治療後

その後は? 3 年 7カ月経過した現在, 再発 転移の兆候なし PS 良好 農作業に追われる日々を過ごされている

症例 79 才男性,PS1 診断 :IV 期食道がん (SCC, Lt, T3N1M1) 主訴 : 嚥下困難 現病歴 2009.11 月 2009.12 月 嚥下困難出現近医内科受診し, 内視鏡にて食道がんと診断精査加療目的で総合病院消化器内科紹介受診画像検査の結果,IV 期食道がんと診断化学放射線治療目的で放射線治療科紹介

治療前画像 #104L #106recR 原発巣 #1 誤嚥性肺炎

同時併用化学放射線療法 - 放射線療法 - 総線量 :66Gy/33fr/46d - 化学療法 - CDDP: 40 mg/m 2, d1 5-FU: 400 mg/m 2, d1-5 1 コース同時併用 ( 第 1 週 ) 44Gy ( 予防領域照射 ) 22Gy ( 局所照射 )

治療前 治療後 #104L 原発巣 #1

治療前 治療後

その後は? 再発 転移なく2 年経過 2 年 2カ月時に小脳出血発症し,1 年間通院できなかった 3 年 2カ月時, 進行肺癌見つかり,3 年 5カ月時に他癌死 治療後 治療前

症例 82 才男性,PS1 診断 :IIB 期食道がん (SCC, Mt, T2N1M0) 主訴 : 嚥下困難 現病歴 2012.05 月 2012.06 月 横紋筋融解症にて緊急入院入院後の内視鏡検査で食道がんが見つかる精査加療目的で当院外科紹介手術可能であったが, 本人希望にて化学放射線療法の方針となる化学放射線治療目的で放射線治療科紹介

放射線治療前画像

同時併用化学放射線療法 総線量 :65Gy/30fr/43d 40Gy ( 少し広めの局所照射 ) 25Gy ( 局所照射 ) 線量分布図

治療前 治療後

治療前 Grade1 胸水 治療後 1 年 治療後 2 年 症状はないが

その後は? 2 年 6カ月経過した現在, 再発 転移の兆候なし PS 良好 Grade1 胸水は厳重経過観察中

最後に 食道がんの治療においては, 外科, 内科, 腫瘍内科, 放射線治療科による集学的診療が不可欠です 患者さんにとって最適な治療を提供するためには, 各診療科の緊密な連携のもとに, 治療戦略を決定することが重要です 食道がん集学的治療の一翼を担っている放射線治療科は, 患者さんにとって最適な放射線治療を提供できるように頑張ります