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一般演題

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2005年 vol.17-2/1     目次・広告

は煩雑であり, 施行困難な場合も多い. SSSの中にも洞結節自体の障害, 洞結節から心房への伝達が障害される洞房ブロックがあるが, それらの障害部位と房室ブロックの関係は明らかではない. また発作性心房細動を有する症例では将来慢性心房細動に移行する率が高いが, それらと徐脈性心房細動への移行との関連

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ぬくもり Qペースメーカーはどのような病気のときに必要ですか?A心臓は一日に約10 万回拍動し全身に血液を供給しています 心臓の細胞一つひとつがそれぞれ電気刺激を作り出す機能を持っていますが 心臓全体として規則正しく心臓が拍動しているのは 司令塔である洞結節から始まる刺激伝導系によります 刺激伝導系

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1 正常洞調律 ;NSR(Normal Sinus Rhythm) 最初は正常洞調律です P 波があり R-R 間隔が正常で心拍数は 60~100 回 / 分 モニター心電図ではわかりにくいのですが P-Q 時間は 0.2 秒以内 QRS 群は 0.1 秒以内 ST 部分は基線に戻っています 2 S

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1. 期外収縮 正常なリズムより早いタイミングで心収縮が起きる場合を期外収縮と呼び期外収縮の発生場所によって 心房性期外収縮と心室性期外収縮があります 期外収縮は最も発生頻度の高い不整脈で わずかな期外収縮は多くの健康な人でも発生します また 年齢とともに発生頻度が高くなり 小学生でもみられる事もあ

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第11回            ペースメーカーフォローアップ研究会

を示しています これを 2:1 房室ブロックと言います 設問 3 正解 :1 ブルガダ型心電図正解率 96% この心電図の所見は 心拍数 56/ 分 P-P 間隔 R-R 間隔一定の洞調律 電気軸正常です 異常 Q 波は認めません ST 部分をみると特に V1 V2 誘導で正常では基線上にあるべき

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大学教職員の心臓検診の現状 * 和井内由充子 大学保健管理センターの主要業務のひとつに 健康診断とそれに基づく健康管理がある 突然 死にもつながる心疾患の早期発見と管理は重要 である 大学生の心疾患管理に関しては以前報 告 1-6) した 大学のもうひとつの主要構成員で ある教職員の管理の現状を今回

第 4 回桜ヶ丘循環器カンファレンス 最新の不整脈治療 ~ おねだん以上 選べるしあわせ ~ 鹿児島大学病院心臓血管内科助教市來仁志 Reprint is prohibited. / 本資料の無断転載 複写を禁じます.-----

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心臓カテーテル検査についての説明文

障害程度等級表 心臓機能障害 1 級 心臓の機能の障害により 自己の身辺の日常生活活動が極度に制限されるもの 2 級 - 3 級 心臓の機能の障害により 家庭内での日常生活活動が著しく制限されるもの 4 級 心臓の機能の障害により 社会での日常生活活動が著しく制限されるもの

心臓血管外科カリキュラム Ⅰ. 目的と特徴心臓血管外科は心臓 大血管及び末梢血管など循環器系疾患の外科的治療を行う診療科です 循環器は全身の酸素 栄養供給に欠くべからざるシステムであり 生体の恒常性維持において 非常に重要な役割をはたしています その異常は生命にとって致命的な状態となり 様々な疾患

ストラクチャークラブ ジャパン COI 開示 発表者名 : 高木祐介 演題発表に関連し, 開示すべき COI 関係にある 企業などはありません.

心電図検査 設問 歳 女性 右胸心の 12 誘導心電図を図 1 に示す 正しいものはどれか a. I 誘導で P 波 QRS 波 T 波は陰性である b. avr 誘導で T 波は陽性である c. 胸部誘導 V1~V6 のすべてで R/S>1 である d. 広範囲な前壁中隔心筋梗塞を疑う

Clinical Training 2007

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概要 214 心室中隔欠損を伴う肺動脈閉鎖症 215 ファロー四徴症 216 両大血管右室起始症 1. 概要ファロー四徴症類縁疾患とは ファロー四徴症に類似の血行動態をとる疾患群であり ファロー四徴症 心室中隔欠損を伴う肺動脈閉鎖 両大血管右室起始症が含まれる 心室中隔欠損を伴う肺動脈閉鎖症は ファ

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d 運動負荷心電図でSTの低下が0.1mV 以上の所見があるもの ( イ ) 臨床所見で部分的心臓浮腫があり かつ 家庭内での普通の日常生活活動若しくは社会での極めて温和な日常生活活動には支障がないが それ以上の活動は著しく制限されるもの又は頻回に頻脈発作を繰り返し 日常生活若しくは社会生活に妨げと

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症例報告書の記入における注意点 1 必須ではない項目 データ 斜線を引くこと 未取得 / 未測定の項目 2 血圧平均値 小数点以下は切り捨てとする 3 治験薬服薬状況 前回来院 今回来院までの服薬状況を記載する服薬無しの場合は 1 日投与量を 0 錠 とし 0 錠となった日付を特定すること < 演習

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心臓の働き 24 時間ノンストップで 1 日に約 10 万回拍動しています 心臓は 洞結節から発生する電気信号によって心筋を動かし 全身へ規則正しく血液を送り届けています 心臓は4つの部屋に分かれています 洞結節 心臓の動きに指令を出しています 左心房 右心房 房室結節ヒス束左脚右脚 右心室 左心室

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臨床調査個人票 新規 更新 189 無脾症候群 行政記載欄 受給者番号判定結果 認定 不認定 基本情報 姓 ( かな ) 名 ( かな ) 姓 ( 漢字 ) 名 ( 漢字 ) 郵便番号 住所 生年月日西暦年月日 * 以降 数字は右詰めで 記入 性別 1. 男 2. 女 出生市区町村 出生時氏名 (

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平成18年7月28日

超音波セミナー「症例から学ぶ」 ~こんな技術・知識が役立った!!検査から報告書作成まで~ 心臓領域

188-189

心房細動の機序と疫学を知が, そもそもなぜ心房細動が出るようになるかの機序はさらに知見が不足している. 心房細動の発症頻度は明らかに年齢依存性を呈している上, 多くの研究で心房線維化との関連が示唆されている 2,3). 高率に心房細動を自然発症する実験モデル, 特に人間の lone AF に相当する

MR Safe / MR Conditional / MR Unsafe The American Society of Testing Materials (ASTM) 定義 : あらゆる MRI 環境下でリスクを生じないもの 金属は含まれない 例 : プラスティックのシャーレなど 定義 : 特定

CCU で扱っている疾患としては 心筋梗塞を含む冠動脈疾患 重症心不全 致死性不整脈 大動脈疾患 肺血栓塞栓症 劇症型心筋炎など あらゆる循環器救急疾患に 24 時間対応できる体制を整えており 内訳としては ( 図 2) に示すように心筋梗塞を含む冠動脈疾患 急性大動脈解離を含む血管疾患 心不全など

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心不全とは?(Fig.3) 心機能低下に起因する循環不全 と定義され 心臓が全身の組織における代謝の必要量に応じて 血液を十分駆出できない状態です 発症の仕方により 急性心不全 (acute heart failure:ahf) と慢性心不全 (chronic heart failure:chf)

50% であり (iii) 明らかな心臓弁膜症や収縮性心膜炎を認めない (ESC 2012 ガイドライン ) とする HFrEF は (i)framingham 診断基準を満たす心不全症状や検査所見があり (ii) は EF<50% とした 対象は亀田総合病院に 年までに初回発症

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はじめに いつでも どこでも 何でも 誰でも ネットワークに接続し 情報を自在に授受できるユビキタスネットワークが実現に向かいつつある ( 平成 18 年度版情報通信白書総務省 ) そのような中で 電波利用は急速に発展し 日常生活を送る上で必要不可欠なものとなってきている 他方 電波が心臓ペースメー

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第5章 体液


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また カスタムメイドの 1Fr 電極カテーテルを用いて in vivo で心臓電気生理学検査を施行し His 束心電図記録を行った さらに ex vivo の検討として 摘出心を Langendorff 還流し 電位感受性色素 (di 4-ANEPPS) および高速 CMOS カメラシステムを用いて

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1 中医協総 医療機器の保険適用について ( 平成 24 年 7 月収載予定 ) 区分 C1( 新機能 ) 販売名 企業名 保険償還価格 算定方式 補正加算等 外国平均価格との比 1 CeVOX プローベ 株式会社佐多商会 23,500 円 原価計算方式 なし 1.06 ユ

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2007 年 12 月 19 日作成 ( 新様式第 1 版 ) PI-BRA-0064R 承認番号 :21900BZX 機械器具 (07) 内臓機能代用器 高度管理医療機器植込み型心臓ペースメーカ JMDN コード : 再使用禁止 メドトロニック Adapta DR


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27 年度調査結果 ( 入院部門 ) 表 1 入院されている診療科についてお教えください 度数パーセント有効パーセント累積パーセント 有効 内科 循環器内科 神経内科 緩和ケア内科

循環器 Cardiology 年月日時限担当者担当科講義主題 平成 23 年 6 月 6 日 ( 月 ) 2 限目 (10:40 12:10) 平成 23 年 6 月 17 日 ( 金 ) 2 限目 (10:40 12:10) 平成 23 年 6 月 20 日 ( 月 ) 2 限目 (10:40 1

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基本料金明細 金額 基本利用料 ( 利用者負担金 ) 訪問看護基本療養費 (Ⅰ) 週 3 日まで (1 日 1 回につき ) 週 4 日目以降緩和 褥瘡ケアの専門看護師 ( 同一日に共同の訪問看護 ) 1 割負担 2 割負担 3 割負担 5, ,110 1,665 6,

心電図読解入門


Ventricular tachycardia recurrence as an electrical storm three years after radiofrequency ablation in a non ischemic cardiomyopathy and apical aneury

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心臓血管外科 取得可能専門医 認定医及び到達目標など 専門医 認定医 名称 取得年数最短通常 基本となるもの 外科専門医 5 年目 5 年 ~7 年 心臓血管外科専門医 7 年目 7 年 ~10 年 取得可能なもの 循環器専門医 6 年目 6 年 ~10 年 移植認定医 6 年目 6 年 ~10 年

心内膜側アプローチのみでは根治できず、心外膜アブレーションが有用であった特発性心室頻拍の一例

為化比較試験の結果が出ています ただ この Disease management というのは その国の医療事情にかなり依存したプログラム構成をしなくてはいけないということから わが国でも独自の Disease management プログラムの開発が必要ではないかということで 今回開発を試みました

褥瘡発生率 JA 北海道厚生連帯広厚生病院 < 項目解説 > 褥瘡 ( 床ずれ ) は患者さまのQOL( 生活の質 ) を低下させ 結果的に在院日数の長期化や医療費の増大にもつながります そのため 褥瘡予防対策は患者さんに提供されるべき医療の重要な項目の1 つとなっています 褥瘡の治療はしばしば困難

針刺し切創発生時の対応

A B V1 Ⅱ Ⅲ 45 V1 Ⅱ V3 Ⅲ V3 avr V4 avr avl avl V4 V5 V5 V6 V6 図 1 体表面12誘導心電図 A 発作時 心拍数220bpm 右軸偏位のregularなwide QRS頻拍を認めた B 非発作時 ベラパミル投与後 洞調律に服した 心拍数112

監修 作成作成ご協力者 氏名 有本貴範 所属 山形大学医学部内科学第一講座助教

研修・関連施設のWEB申請・

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第 10 回ペースメーカーフォローアップ研究会 一般演題 2 9-14 平成 22 年 7 月 10 日 ( 土 )13:10~14:40 座長高垣勝 ( 滋賀県立成人病センター臨床工学部 ) 熊谷英明 ( 昭和伊南総合病院総務課施設係 )

9 MVP 機能により DDD 変更後センシング不全を来した 1 例岡崎市民病院臨床工学室 宇井雄一, 山本英樹, 木下昌樹, 山口正輝, 豊田美穂, 峰澤里志, 神谷祐介, 浅井志帆子, 馬場由理, 田中佑佳, 丸山仁実, 西村良恵, 西分和也 はじめに MVP 機能は洞不全症候群患者において心房細動誘発や長期的な予後の観点から AAI(R) モードと DDD(R) を自動的に選択し, できるだけ心室ペーシングを回避する機能である. 今回 DDD 変更後 T 波のオーバーセンスによりセンシング不全を来した 1 例を報告する. 症例 経過 80 歳代女性.2008 年 3 月洞不全症候群に対しメドトロニック社製 EnRythm (DDD) 植込み術施行. 左鎖骨下静脈より心房, 心室にメドトロニック社製 Model 5076 45cm, Model5076 58cm リードを留置, ペースメーカの設定は DDDR+AAIR,LR70, UR120,Paced AV interval 180ms,Sensed AV interval 150ms, 心房センス感度 0.3mV, 心室センス感度 0.9mV とした.2010 年 1 月失神による転倒, めまい, 倦怠感を認めたためホルター心電図を施行したところ発作性心房細動後に HR の異常を認めペースメーカチェックをしたところ P 波高値 R 波高値に異常を認めなかった. EVENT 記録では心房頻拍終了後 1 分間 DDD 変更時に心室ペーシングをしており, 心内心電図ではペーシング後 T 波のオーバーセンスを認めた. これにより HR が LR 以下になったと考えられたため AV interval を延長し心室センス感度を鈍く変更した. 考察 EnRythm の MVP 機能によるモード変更時のセンシング感度は, ペーシング時では鋭くなるため T 波のオーバーセンスが起きたと考えられる. まとめ 今回 EnRythm のモード変更に伴うセンシング値設定のアルゴリズムによるセンシング不全を経験した. ペースメーカチェックを行う上においてペースメーカの機能特性を熟知することが必要だと思われた.

10 Block PAC により設定レートを下回った 1 症例 聖隷浜松病院臨床工学室 広瀬徳勝神谷典男増井浩史村松明日香田中良樹岩田真智子北本憲永 はじめに 洞不全症候群(SSS) 患者において 不要な右心室 (RV) ペーシングを減らすため 自己房室伝導優先機能を使用した設定をするのが一般的となっている しかし それ特有の動作によって患者に不利益を生じさせる可能性も少なくない 今回 Block PAC により設定レートを下回る症例を経験したので報告する 症例 37 才女性 1988 年大動脈閉鎖不全に対し大動脈弁置換術施行 2010 年 1 月人工弁の圧格差増大のため大動脈弁再置換術施行 術後に SSS, 発作性心房細動 (p-af) あり Pause 頻発のため PM 植え込み術が施行されたが 植込み 1 病日後に心房リードが脱落し 心房リード再留置術施行した 機種は SORIN 社製 Reply DR モードは Safe-R レート 60-130ppm に設定した また p-af の予防としてオーバードライブを設定した 再留置 1 病日後に脈が 40bpm 台になると連絡があり 緊急でペースメーカーチェックを施行した 結果 今回の症例に対する Safe-R の動作を詳細に解析したところ AAI 動作時の心房不応期を脱した頻発する Block PAC が原因となり 40bpm の脈が頻発したことが確認されたが その心内心電図にペースメーカーの不応期とマーカー表示の不一致あり動作の解析に大変苦慮した また PAC の予防として設定していたオーバードライブがこれにより作動しなかったと考えられた 考察 今症例より 多発する PAC 患者に対してのモード選択の基準を設け また動作解析のため 独特の不応期とマーカー表示を理解する必要性があると感じた 結語 今後も多くの症例を糧に 知識の向上と共有を図り 質の高いフォローアップを患者様に提供できるよう努めていきたい

11 テレメトリー検査とホルター心電図における自己心拍優先機能の評価が解離した 2 例倉敷中央病院臨床検査科 1) 同 CE サービス室 2) 同循環器内科 3) 木山綾子 1) 高橋勝行 1) 小室拓也 1) 福島基弘 1) 平井雪江 2) 三宅弘之 2) 朝原康介 2) 藤井理樹 3) 田坂浩嗣 3) 岡本陽地 3) 光藤和明 3) はじめに 近年 長期にわたる右室ペーシングが心機能を悪化させることが知られている そのため ペースメーカー (PM) には自己心拍を優先させ 不必要な右室ペーシングを減少させる機能が搭載されている 当院では洞不全症候群だけでなく 間欠性の房室ブロックの症例にも自己心拍優先機能を設定することがある 症例 1 71 歳女性 労作時呼吸困難を主訴とし呼吸器内科より紹介となった 間欠性の房室ブロックにて Medtronic 社製 (ADAPTA) PM 植え込み 植え込み時にも Rate70bpm の 1:1 伝導を認めたため 設定を MVP:Managed Ventricular Pacing( AAI<>DDD Lower Rate50 Upper Rate130 AV180/150) とした 植込み後のテレメトリー検査では 心室ペーシング (Vp) 率 17.2% で MVP が有効であるように思えたが ホルター心電図にて数ヶ所で一時的に房室ブロックを認めた HR45-50bpm の補充収縮が出現し 最長約 26 秒間房室ブロックが持続していた これは Lower Rate と拮抗した補充収縮の出現により 房室伝導があると誤認識されたためであると考えられた 房室伝導が認められるときの AV 時間は約 250ms であったため 房室ブロックの持続を防ぐ目的で Search AV 180/150+120 に設定変更した 1 ヶ月後の外来での Vp 率は 87% であった 症例 2 78 歳女性 間欠性の高度房室ブロックにより SORIN 社製 (replydr)pm 植え込み 植え込み時も間欠性の房室ブロックであったため 設定を SafeR(AAI<>DDD Lower Rate60 Upper Rate130 AV185/155ms) とした 植え込み後のテレメトリー検査では Vp 率 99% と SafeR は無効であるように思えた またホルター心電図での Vp 率も 99% で テレメトリー検査との差はなかったが Vp の内 70% は fusion 波形であった 設定された AV 時間と自己の AV 時間が拮抗していたためと考え 自己心拍を優先する目的で SafeR のまま AV delay を 235/205 に延長した 1 ヶ月後の外来での Vp 率は 22% であった 結語 テレメトリー検査とホルター心電図における自己心拍優先機能の評価が解離した 2 例を経験した 今回の 2 例は テレメトリー検査のみでは適した設定への変更は困難な症例であったと考えられる ホルター心電図等他の検査結果も考慮しながら各個人に適した設定を検討していく必要がある

12 心電図上 見極めの困難な under sensing と under sensing 様波形 大阪警察病院臨床検査科 西純子 向畑雅彦 小林博 田中詳子 白樫勝亮 水谷哲 はじめに 現在 当院では植え込み Device に対する外来を週 3 日 午後半日を用い実施している 1 回の外来につき約 30 人 年間延べ 4000 人の患者テレメトリーを技師のみで行っており Device 外来の全患者においてテレメトリー直前の 12 誘導心電図検査を実施している 今回我々はテレメトリー直前の 12 誘導心電図で明らかなペースメーカーの異常作動所見を認めたが テレメトリー結果は正常作動であったものと再調整の必要があったものを提示し 12 誘導心電図のみでは見極めが困難である症例を報告する 症例 症例 1:96 歳 女性 Ⅲ 度 AV block にてペースメーカーを植え込んだ患者 Mode:VDD(Medtronic) LR:50 PVARP:Auto Sensitivity:0.18mV(A)2.80mV(V) Amplitude:2.000V PulseWidth:0.34ms SAV:120ms 症例 2:84 歳 女性 Ⅲ 度 AV block にてペースメーカーを植え込んだ患者 Mode:DDD(Medtronic) LR:60 PVARP:Auto Sensitivity:0.35mV(A)2.00mV(V) Amplitude:2.250V(A)2.500V(V) PulseWidth:0.40ms(A)0.40ms(V) SAV/PAV:120/150ms 症例 3:67 歳 男性 Ⅲ 度 AV block にてペースメーカーを植え込んだ患者 Mode:VDD(Medtronic) LR:50 PVARP:Auto Sensitivity:0.35mV(A)2.80mV(V) Amplitude:2.000V PulseWidth:0.34ms SAV:180ms 結果 症例 1( 図 1) に関しては明らかな A under sensing であり テレメトリーチェックで sensing 閾値測定後 Sensitivity 再調整が行われた 症例 2( 図 2) に関しては心電図上 A under sensing に見えたが テレメトリーチェック時に Auto PVARP による正常動作であることが確認され 設定変更はされなかった 症例 3 ( 図 3) に関しては心電図上 A under sensing に見えたが テレメトリーチェック時に PMT intervention による正常動作であることが確認され 設定変更はされなかった 考察 ペースメーカーはペーシングモードや設定が自動で変動するなど 実に様々な機能を持っている そのため心電図だけではペースメーカー動作が正常か否か判断に難渋することも多い 全てを心電図から判断することは確かに困難なこともあるが リアルタイムで変化を捉えることのできる 12 誘導心電図でしか分からないこともあり やはり 12 誘導心電図は重要であると考える 結語 今回の症例を踏まえ 心電図検査に携わる検査技師も常にペースメーカー機能の知識を習得し テレメトリーチェックを担当する技師や医師と連携して検査に従事すべきであると考える

13 心臓手術後の心房頻拍 (AT) により 2:1 伝導と思われたが房室ブロックだった一例 独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター臨床工学室 洞博之 新美伸治 足立小百合 竹上晴規 後藤考遵 犬飼和哉 篠田悟 はじめに 心臓手術後の患者が AT による 2:1 伝導を EGM 波形で確認したが 一週間後の再チェックで完全房室ブロックであることが判明した一例を経験したので報告する 症例 74 歳男性平成 6 年 MS にて MVR+TAP 施行 Af の既往歴あり H21 に SSS にて 9 秒の洞停止出現し 6 月に恒久的ペースメーカ植込み術施行 (Zephyr XL DR5826 Mode DDI Rate 50ppm) 術中は Af のため波高値の良いところで固定 ( 術後 1 週間チェックでは A 閾値 1.0V/0.4ms P 波高値 1.3-1.5mV) 12 月下旬に心不全で入院 入院初日に PM チェック施行し EGM にて約 120bpm の AT 波形と心室への 2:1 伝導を確認した さらに最長約 13 時間の AT/Af のログが前回のクリニック ( 約 1 ヶ月前 ) から 33 件確認したが AS-VS 心拍数ヒストグラムの 80bpm 以上は <1% であった 主治医と相談し AT であれば DDD で無理に同期させずに そのまま経過観察とした 一週間後に再度チェック施行すると R-R 間隔は前回とほぼ同じであるが A 波と R 波が一週間前と若干ずれており Dr の許可を得て 130ppm の心房ペーシングをしたところ AV 伝導を認めず完全房室ブロックであることを確認した 結果および考察 入院初日は Af の既往歴もある事から高 Rate で行う心房の閾値チェックを施行しておらず 入院時またはそれ以前から房室ブロックであった可能性があり, また今回の入院ではじめて AT を確認したが Zephyr は AS のみのヒストグラムデータが無く 今回のように約 120 bpm の AT Rate で AV のタイミングがほぼ 2:1 のようになるとその半分の心拍数がカウントされるため ヒストグラム 80bpm 以上のAS-VS が<1% で 60-70bpm が約 20% であるため前回のチェック以前から AT が起きておりさらに房室ブロックであった可能性も考えられる

14 ペースメーカー植込み術後 Check にて Lead Perforation を疑った1 症例医療法人鹿児島愛心会大隅鹿屋病院臨床工学科 藤竹俊輔 山口翔史 前原寛理 衛藤俊祐 宮路真梨子 緒方篤史 松野下敏 長元優 安田まどか 甲斐雅規 田淵友崇 目的 当院 臨床工学科ではペースメーカー( 以下 PM) 業務を 2008 年 4 月より開始した 現段階における PM 業務は手術立会い プログラマー設定 ( 入院 外来 ) データ管理などを行なっている 今回我々は PM 植込み術後 Check にて Lead Perforation を疑った 1 症例を経験したので報告する 症例 経過 症例は 76 歳女性 3 度 AV ブロックの患者に対し SJM 社製 Identity DR を植え込んだ 心室リード (SJM 社製 TENDRIL52cm) を中位中隔に 心房リード (SJM 社製 ISOFLEX46cm) を右心耳にそれぞれ留置した 手術終了時 プログラマー (SJM 社製 Merlin) にて PM Check を行なったところ 心房リードに問題点はなかったが心室リードの Pacing 閾値が 1.75V 0.4ms(Bi) と高値を示した また自己脈が確認できず R-Wave は測定できなかった Impedance は 698Ω(Bi) と問題なかった 手術室退室時の PM 設定は DDD 60/110ppm Output : 心房 3.5V 0.4ms ( Bi ) 心室 3.5V 0.4ms(Bi) Sensitivity: 心房 0.5mV(Bi) 心室 2.0mV(Bi) とした 術後 5 日目 心室 Pacing failure が認められたため PM Check を行ったところ 心室リードの Pacing 閾値が 3.25V-3.75V (Bi) であり 閾値上昇が顕著であった 心室 Output を 5.0V に設定変更し Pacing 閾値精査のため Pulse 極性を Bipolar から Unipolar に変更したが Pulse 極性を変更したと同時に Pacing failure による Asystole となったため Emergency VVI(Output:7.5V Uni) で緊急回避した その後 複数回の UCG により心嚢液の暫時増加が確認され Lead Perforation と認められた 心室リード留置部は右心室自由壁が疑われたため右心室心尖部に再留置し Pacing 閾値が低下した 入院期間 39 日間を経て 軽快退院した 考察 業者立会い規制により 各病院の臨床工学技士やその他の有資格者が PM 業務に携わるケースが増加するなかで 様々のトラブルが予想されるため設定の変更には充分注意しなければならない 今回のケースは閾値上昇の様々な要因を把握して慎重な設定変更を行なうべきだった また Emergency VVI 作動への切り替えは 緊急ボタンで即対応が可能であったが 電池消耗著しい場合 その機能も運用出来ないため電池状態を把握する必要がある この経験で PM 業務の重要性と危険性を再確認した また 不整脈部門で活躍できる技士を 1 人でも多くするために その魅力も伝えていかなければならないと考える