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3) 適切な薬物療法ができる 4) 支持的関係を確立し 個人精神療法を適切に用い 集団精神療法を学ぶ 5) 心理社会的療法 精神科リハビリテーションを行い 早期に地域に復帰させる方法を学ぶ 10. 気分障害 : 2) 病歴を聴取し 精神症状を把握し 病型の把握 診断 鑑別診断ができる 3) 人格特徴

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要望番号 ;Ⅱ-286 未承認薬 適応外薬の要望 ( 別添様式 ) 1. 要望内容に関連する事項 要望者 ( 該当するものにチェックする ) 学会 ( 学会名 ; 特定非営利活動法人日本臨床腫瘍学会 ) 患者団体 ( 患者団体名 ; ) 個人 ( 氏名 ; ) 優先順位 33 位 ( 全 33 要望

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心理教育家族教室ネットワーク第 10 回研究集会記念シンポジウム心理教育ツールキットプロジェクト 大島巌 ( 日本社会事業大学 ) 心理教育普及ツールキット研究プロジェクトの背景 科学的根拠に基づく心理社会的介入プログラム (Evidence- Based Practices; EBP) への注目と発展 EBPとして家族心理教育の強いエビデンス しかし 一方でニーズを持つ僅かの人たちにしか心理教育が適用されていない問題 サービス普及研究の必要性 アメリカ連邦政府厚生省薬物依存精神保健サービス部 (SAHMSA) の EBP ツールキットプロジェクト 日本における家族支援の重要性 厚生労働省精神 神経疾患研究委託費 統合失調症の治療およびリハビリテーションのガイドライン作成とその実証的研究 研究班 ( 浦田重治郎班長 ) における成果と蓄積 浦田班 心理社会的援助プログラムガイドライン の完成 1

EBP ツールキットの歴史と背景 ( アメリカを中心に ) 1989 脳の10 年 統合失調症研究国家プラン 1991 国立精神保健研究所サービス改善のための国家研究計画 1992 統合失調症 PORT プロジェクト開始 1995 統合失調症 PORT 報告書 (1). EBPの文献研究まとめと政策提言 1997 アメリカ精神医学会 統合失調症治療ガイドライン 1998 統合失調症 PORT 報告書 (2). 治療 介入の勧告と勧告実施状況に関する利用者調査 1999 精神保健に関するSurgeon General( 公衆衛生局長官 ) レポート EBPツールキットプロジェクトのスタート 2001 精神保健の文化 人種 民族に関するSurgeon General ( 公衆衛生局長官 ) レポート 2002 国立精研 全州精神保健プログラム責任者全国協会 学会など各機関団体が EBP の全国集会 シンポジウムを開催する 2002 精神保健に関する大統領ニューフリーダム委員会報告 2006 EBPツールキット最終草稿の完成 統合失調症 PORT 勧告改訂版 (2003) 推奨 15 家族介入プログラム互いに継続的なコンタクトをもつ統合失調症をもつ人たちおよびその家族は 家族介入プログラムを提供される必要がある その主要な要素は 少なくとも9ヶ月の期間継続すること そして疾病教育と 危機介入 情緒的サポート 病気の症状およびそれに関連した問題への対処方法を練習することからなっている 推奨全 20 項目の第 15 項目 第 14 項目までは薬物療法に関するもの 2

表 治療 援助プログラムのガイドライン ( 勧告 ) の実施率 アメリカ統合失調症 PORT 研究 1998 n=719 ガイドライン ( 勧告 ) 入院 通院 % % 急性期向精神薬の使用 89.2 - 維持的向精神薬の使用 - 92.3 家族介入 家族心理教育 31.6 9.6 職業リハビリテーション 30.4 22.5 ACT 積極的ケースマネジメント 8.6 10.1 EBP ツールキットプロジェクト 包括型地域生活支援プログラム (ACT) (Assertive Community Treatment: ACT) 家族心理教育 (Family Psychoeducation: FPE) 援助付き雇用プログラム (Supported Employment) 疾病管理とリカバリー (Illness Management and Recovery: IMR) 統合的重複障害治療 (Integrated Dual Disorders Treatment: IDDT) 薬物治療マネジメント (Medication Manegement Approaches in Psychiatry: MedMAP) アメリカ連邦保健省薬物依存精神保健サービス部 (SAHMSA) 精神保健サービスセンターとの委託契約と Robert Wood Johnson Foundation の補助金によって実施されている 3

EBP ツールキット ( 最終草稿 ) 家族心理教育版の構成 ブックレット 1: 科学的根拠にもとづく実践 (EBP) の基礎 概要 ブックレット 2: 家族心理教育の基礎 概要 ブックレット 3: 精神保健機関の責任者 行政の担当者向けの情報提供と実施資料 ブックレット 4: 実践家のための家族心理教育ワークブック ブックレット 5: 配付資料 様式集 クイック レファレンス ガイド / 三つ折りパンフレット 紹介パワーポイントファイル プログラム紹介ビデオ (DVD)/ プログラム実践紹介ビデオ (DVD) 精神障害者リハビリテーション学会と 心理教育家族教室ネットワークが合同で日本語版の翻訳を進める 2007 年 11 月 (?) 完成予定 日本版心理教育普及ツールキットプロジェクトの取り組み 4

研究の歴史 1995 精神神経疾患研究委託費 精神分裂病の病態 治療 リハビリテーションに関する研究 ( 内村英幸班長 ) で 家族 EE 簡便法開発研究 国府台モデル効果評価研究 1998 精神神経疾患研究委託費 統合失調症の病態 治療 リハビリテーションに関する研究 ( 浦田重治郎班長 ) で 包括的な心理教育プログラムの効果評価の多施設共同研究 (12 施設参加 ) を開始 2004 6 年間の効果評価結果を発表 同時に 心理教育を中心とした心理社会的援助プログラムガイドライン を公表同年心理教育普及ツールキット研究 ( 塚田班グループ研究 ) 2005 年 8 月 心理教育普及ガイドライン ツールキット暫定版 が完成 リーダー研修会を実施 2005 年 9 月全国 10 施設で普及ツールキット予備試行研究が開始 2006 年 9 月全国 17 施設で普及ツールキットRCT 本試行研究が開始 家族心理教育を実施する医療機関数と実施率 病院数 % 400 34.1 35.9 40.0 N of Hp 300 30.0 rate 200 100 259 339 14.5 20.0 10.0 0 Hospital survey (1995) Hospital survey (2001) Free-standing clinic survey (2001) 64 0.0 5

図 1 家族心理教育を知っているか NA よく知っている ある程度知っている まったく知らない 少し知っている 図 2 家族心理教育に再発予防効果があること NA よく知っている 全国 17 病院 N=2034 スタッフ 聞いたことない 聞いたことある 聞いたような気がする 図 3 家族心理教育に取り組みたい NA 非常にそう思う そう思わない あまりそう思わない そう思う 図 4 家族心理教育に参加する自信 NA 自信もって参加できる まったく自信がない まあ自信がある 全国 17 病院 N=2034 スタッフ あまり自信がない 6

心理教育普及ツールキット研究プロジェクトの目的 心理教育を中心に 科学的根拠に基づく心理社会的介入プログラム (EBP) の有効な普及促進方法を検討し 実施 普及のためのガイドラインとツールキットを開発する 開発した実施 普及ガイドライン ツールキットを用いて 全国の医療機関を対象にした実施 普及プログラムを実施し その効果を医療施設の変化 スタッフの変化 入院患者の変化の各側面から実証的に明らかにする 心理教育普及ツールキット研究プロジェクトの実施体制 精神 神経研究委託費 精神政策医療ネットワークによる統合失調症の治療および社会復帰支援に関する研究 ( 塚田班 ) のグループ研究の1つ ( 分担研究者 11 名 ) 介入共同研究班コア会議が研究を推進 : 安西信雄氏 池淵恵美氏 伊藤順一郎氏 内野俊郎氏 大島巌 後藤雅博氏 西尾雅明氏 ( 五十音順 ) 研究事務局 : 大島巌 福井里江氏 瀬戸屋希氏 香月富士日氏 贄川信幸氏 森山亜希子氏 二宮史織氏 7

心理教育普及ツールキット開発の方法 アメリカ EBP ツールキットプロジェクトを参照 他のプログラム普及研究を参照 (WPA 反スティグマプロジェクト等 ) 浦田班心理社会的介入共同研究班 6か年の成果 ( 特に スタッフ調査 施設調査の結果 ) 浦田班心理社会的介入共同研究班に参加した病院関係者によるフォーカスグループ - 各病院でのフォーカスグループ - 分担研究者フォーカスグループ 介入共同研究班コア会議による検討 心理教育普及ツールキットの内容 実施 普及ガイドライン 心理社会的援助プログラムガイドライン の増補版として 効果的な実施 普及促進の方法 を追加 ツールキット ( 普及ガイドラインの付属資料の位置づけ ) Ⅰ. システムづくりに関するツールキット Ⅱ. プログラムモデル その研修に関するツールキット Ⅲ. 広報 普及活動に関するツールキット Ⅳ. プログラム評価に関するツールキット Ⅴ. その他 8

心理教育実施 普及ガイドライン - システム形成の 3 段階 - 導入期 有志メンバーが 予備施行を通して心理教育の効果に確信を持つ 本施行期 病院管理職からの委任を受けて プログラムを病院システム内に位置づける 定着期 プログラム評価 研修の継続などを通して プログラムを継続的に定着させる 表心理教育普及ガイドライン ツールキット ( 暫定版 ) の構成 大道具小道具 Ⅰ. システムづくり 1) 障壁 困難への対処方法 (1) システム作りチェックリスト 2) ニーズ調査の実施方法 (2) 障壁 困難への対処チェックリスト 3) コンサルテーションの進め方 (3) 問題解決アプローチを用いた議論の実例 4) フォーカスグループの進め方 (4) 当初プラン様式 (5) 実施プラン様式 (6) 実施マニュアル例 ( 国府台病院 ) (7) クリニカルパスの実例集 Ⅱ. プログラムモデル その研修 1) 心理社会的援助プログラムガイドライン研修教材 1: 全家連版テキスト ( 本人用 ) 2) 研修の進め方 方法研修教材 2: 全家連版テキスト ( 家族用 ) 3) スタッフ研修テキスト ( 加除式 ) 研修教材 3: 教育セッション用モデルパワーポイント 4) 研修ビデオ ( グループワークの実際 ) 研修教材 4: バーチャルハルシネーション CD-R 研修教材 5: バーチャルハルシネーション解説冊子研修教材 6: 正体不明の声ハンドブック研修教材 7: マンガで病気の症状を学ぼう Ⅲ. 広報 普及活動 1) 広報活動の進め方 (1) モデル広報パンフレット ( 本人用 ) (2) モデル広報パンフレット ( 家族用 ) (3) モデル広報パンフレット ( スタッフ用 ) (4) モデル広報パンフレット ( 管理者用 ) (5) モデル広報パワーポイント ( スタッフ 管理者用 ) (6) モデルポスター ( パワーポイントテンプレート ) Ⅳ. プログラム評価 1) ニーズ調査の実施方法 (1) 利用対象者エントリー基準 2) フィデリティ評価の実施方法 (2) ニーズ調査法のモデル調査票 (3) アウトカム評価モデル調査票 (4) フィデリティ評価モデル調査票 (5) クリニカルパスの実例集 9

今後の課題と展望 心理教育ツールキットの意義 心理教育はケアマネジメントやピアサポート支援 SST IPS 援助付き雇用など効果的な援助プログラムに 精神障害を持つ人および家族を適切に結びつけ ニーズに合った複合的なプログラムを実施する上で 要 ( かなめ ) の位置にある 精神障害をもつ人たちのノーマライゼーションとリカバリーを実現するために 今後心理教育を中核に据えて 包括的な心理社会的援助プログラムを体系的に実施することが必要 心理教育普及ツールキットは そのような取り組みを支援する有力な手だてとなることが期待される 10

心理教育ツールキットの課題 効果的な普及プログラムモデルの確立効果的なプログラムモデルが併存している 共通する効果的援助要素を明らかにする 普及モデルとして適切なものを定める ( 国府台モデル? 他の複合家族モデル?) プログラムモデルごとの適応対象の検討 ( たとえば複合家族アプローチと単家族アプローチ ) 心理教育の普及が スタッフや他プログラムへ及ぼす波及効果の明確化 スタッフの意欲を高め 他の心理社会的介入プログラムの導入 普及の要の位置にあることを明確にする 心理教育ツールキットの課題 (2) 普及プログラムモデルの研修体制の確立 研修講師の育成 研修プログラムの標準化 研修教材 (DVD 等 ) の作成 など 普及プログラムのコンサルテーション体制確立 効果的なプログラムモデル普及への社会的合意形成 心理教育ツールキット作成と普及に対する 心理教育家族教室ネットワークの役割 他の関連学会における心理教育ツールキットへの評価の確立 診療報酬など 制度的な位置づけ 11