LC-MS/MS による畜水産物中の動物用医薬品等の一斉分析 (Ⅲ) 久保記久子 中村正規 福岡市保健環境研究所保健科学課 Rapid Simultaneous Analysis of Residual Veterinary Drugs in Livestock Products and Seafo

Similar documents
ISSN-X 山梨衛環研年報第 号 表 各物質の定量条件 種類略語物質名 合 サルファ剤 SCA スルファセタミド. 合 サルファ剤 SID スルフィソミジン. 合 CLP クロピドール. 寄 LVS レバミゾール. 合 サルファ剤 SDZ スルファジアジン. 寄 ABZ-M - プロピルスルホニル

LC/MS による農薬等の一斉試験法 Ⅲ( 畜水産物 ) の妥当性評価試験結果 ( 平成 24~25 年度 ) 平成 30 年 4 月 医薬 生活衛生局食品基準審査課 1. 妥当性評価試験の概要一斉試験法の妥当性評価試験にあたっては 試験法の汎用性を考慮し複数の機関で実施した結果から試験法の評価を行

表 1. HPLC/MS/MS MRM パラメータ 表 2. GC/MS/MS MRM パラメータ 表 1 に HPLC/MS/MS 法による MRM パラメータを示します 1 化合物に対し 定量用のトランジション 確認用のトランジションとコーン電圧を設定しています 表 2 には GC/MS/MS

Taro-試験法新旧

本報告書は 試験法開発における検討結果をまとめたものであり 試験法の実施に 際して参考として下さい なお 報告書の内容と通知または告示試験法との間に齪酷 がある場合には 通知または告示試験法が優先することをご留意ください 残留農薬等に関するポジティブリスト 制度導入に係る分析法開発 エンロフロキサシ

5989_5672.qxd


LC/MS/MS によるフェノール類分析 日本ウォーターズ株式会社 2015 Waters Corporation 1 対象化合物 Cl HO HO HO フェノール 2- クロロフェノール (2-CPh) Cl 4-クロロフェノール (4-CPh) HO Cl HO Cl HO Cl Cl 2,4

2009年度業績発表会(南陽)

本報告書は 試験法開発における検討結果をまとめたものであり 試験法の実施に際して参考 として下さい なお 報告書の内容と通知または告示試験法との間に齪酷がある場合には 通知 または告示試験法が優先することをご留意ください 食品に残留する農薬等の成分である物質の試験 法開発業務報告書 フルトラニル試験

薬工業株式会社製, 各 20 µg/ml アセトニトリル溶液 ) を使用した. 農薬混合標準溶液に含まれない は, 農薬標準品 ( 和光純薬工業株式会社製 ) をアセトニトリルで溶解して 500 µg/ml の標準原液を調製し, さらにアセトニトリルで希釈して 20 µg/ml 標準溶液とした. 混

JAJP

土壌含有量試験(簡易分析)

IC-PC法による大気粉じん中の六価クロム化合物の測定

0-0表紙から1章表紙

資料 イミダゾリジンチオン 測定 分析手法に関する検討結果報告書

研究22/p eca

<4D F736F F D F195B6815B F816A4C432D4D538E6397AF945F96F288EA90C495AA90CD5F F2E646F63>

☆H23 13-農薬一斉分析(大垣).doc

土壌溶出量試験(簡易分析)

細辛 (Asari Radix Et Rhizoma) 中の アサリニンの測定 Agilent InfinityLab Poroshell 120 EC-C µm カラム アプリケーションノート 製薬 著者 Rongjie Fu Agilent Technologies Shanghai

2-3 分析方法と測定条件ソルビン酸 デヒドロ酢酸の分析は 衛生試験法注解 1) 食品中の食品添加物分析法 2) を参考にして行った 分析方法を図 1 測定条件を表 3に示す 混合群試料 表示群試料について 3 併行で分析し その平均値を結果とした 試料 20g 塩化ナトリウム 60g 水 150m

医療用医薬品最新品質情報集 ( ブルーブック ) 初版有効成分ベンフォチアミン B6 B12 配合剤 品目名 ( 製造販売業者 ) 後発医薬品 品目名 ( 製造販売業者 ) 先発医薬品 効能 効果用法 用量添加物 1) 解離定数 1) 溶解度 1 ダイメジンスリービー配合カプセル

このアプリケーションノートでは Ultivo トリプル四重極 LC/MS を Agilent 129 Infinity II UHPLC と組み合わせて使用し 豚肉と鶏卵中の 27 分類にわたる 151 種類の動物用医薬品を分析する分析スクリーニングメソッドについて説明します さらに Agilent

日本食品成分表分析マニュアル第4章

JAJP.indd

Microsoft Word - 14_LCMS_アクリルアミド

広島市衛研年報 31, 44-49(2012) ゴルフ場農薬 44 成分同時分析の検討 森本章嗣 上本宗祥 渡邉進一 小串恭子 宮本伸一 * 松尾愛子 山本恒彦 片岡真喜夫 細末次郎 * 堀川敏勝 ゴルフ場で使用される農薬 ( 以下, ゴルフ場農薬 ) の 44 成分同時分析を液体クロマトグラフタン

HPLC UPLC JP UPLC システムによる 注入回数 3000 回以上 のルーチン製剤分析の実現 分析スループットの向上と使用溶媒量の削減 分析効率の向上 日本薬局方 (JP) は 薬事法第 41 条第一項の規定に基づき医薬品の品質を適性に担保するための公的な規範書であり 多くの医薬品の分析

5989_5672.qxd

xxxxEN.qxd

ソバスプラウトのフラボノイド・アントシアニン分析法

グリホサートおよびグルホシネートの分析の自動化の検討 小西賢治 栢木春奈 佐々野僚一 ( 株式会社アイスティサイエンス ) はじめに グリホサートおよびグルホシネートは有機リン化合物の除草剤であり 土壌中の分解が早いことから比較的安全な農薬として また 毒劇物に指定されていないことから比較的入手が容

研究報告58巻通し.indd

食安監発第 号 食安基発第 号 平成 19 年 11 月 13 日 各検疫所長殿 医薬食品局食品安全部監視安全課長基準審査課長 ( 公印省略 ) 割りばしに係る監視指導について 割りばしに残留する防かび剤等の監視指導については 平成 19 年 3 月 23 日付け食安

Layout 1

本日の内容 HbA1c 測定方法別原理と特徴 HPLC 法 免疫法 酵素法 原理差による測定値の乖離要因

資料 2-3 ジエタノールアミンの測定 分析手法に関する検討結果報告書 - 1 -

<322D312D318C9F8DB88D8096DA F4390B E786C7378>

すとき, モサプリドのピーク面積の相対標準偏差は 2.0% 以下である. * 表示量 溶出規格 規定時間 溶出率 10mg/g 45 分 70% 以上 * モサプリドクエン酸塩無水物として モサプリドクエン酸塩標準品 C 21 H 25 ClFN 3 O 3 C 6 H 8 O 7 :

( 別添 ) 食品に残留する農薬 飼料添加物又は動物用医薬品の成分である物質 の試験法に係る分析上の留意事項について (1) 有機溶媒は市販の残留農薬試験用試薬を使用することができる HPLC の移動 相としては 高速液体クロマトグラフィー用溶媒を使用することが望ましい (2) ミニカラムの一般名と

Microsoft Word - basic_21.doc

14551 フェノール ( チアゾール誘導体法 ) 測定範囲 : 0.10~2.50 mg/l C 6H 5OH 結果は mmol/l 単位でも表示できます 1. 試料の ph が ph 2~11 であるかチェックします 必要な場合 水酸化ナトリウム水溶液または硫酸を 1 滴ずつ加えて ph を調整

3. 答申案 別紙のとおり ( 参考 ) これまでの経緯平成 17 年 11 月 29 日残留基準告示平成 27 年 3 月 ~ 平成 27 年 12 月残留農薬等公示分析法検討会で随時検討平成 28 年 5 月 17 日薬事 食品衛生審議会へ諮問平成 28 年 5 月 18 日厚生労働大臣から食品

しょうゆの食塩分測定方法 ( モール法 ) 手順書 1. 適用範囲 この手順書は 日本農林規格に定めるしょうゆに適用する 2. 測定方法の概要 試料に水を加え 指示薬としてクロム酸カリウム溶液を加え 0.02 mol/l 硝酸銀溶液で滴定し 滴定終点までに消費した硝酸銀溶液の量から塩化ナトリウム含有


本品約2g を精密に量り、試験液に水900mLを用い、溶出試験法第2法により、毎分50回転で試験を行う

札幌市-衛生研究所報37(調査報告05)

Mastro -リン酸基含有化合物分析に対する新規高耐圧ステンレスフリーカラムの有用性について-

平成24年度 化学物質分析法開発報告書

JASIS 2016 新技術説明会

007保環研p eca

抗体定量用アフィニティークロマトグラフィー

資料 o- トルイジンの分析測定法に関する検討結果報告書 中央労働災害防止協会 中国四国安全衛生サービスセンター

Microsoft Word - p docx

Taro-p1_沿革・.施設.jtd

新潟県保健環境科学研究所年報第 24 巻 加工食品中の残留農薬分析法の検討 小林ゆかり, 土田由里子, 岩崎奈津美, 丹治敏英 Determination of Residual Pesticides in Processed Foods Yukari Kobayashi, Yuri

新潟県保健環境科学研究所年報第 23 巻 8 71 ( 以下,HSA) は同社製イオンペアクロマトグラフ用, ヘプタフルオロ酪酸 ( 以下,HFBA) は同社製アミノ酸配列分析用, 2NA(EDTA 2Na)( 以下,EDTA) は同社製試験研究用を用いた. ミニカラム : ジーエルサイエンス (

06_新_マクロライド系.indd

平成26年度 化学物質分析法開発報告書

Microsoft PowerPoint - 薬学会2009新技術2シラノール基.ppt

1. 測定原理 弱酸性溶液中で 遊離塩素はジエチル p フェニレンジアミンと反応して赤紫色の色素を形成し これを光学的に測定します 本法は EPA330.5 および US Standard Methods 4500-Cl₂ G EN ISO7393 に準拠しています 2. アプリケーション サンプル

DNA/RNA調製法 実験ガイド

35 食用動物における動物用抗菌薬の使用状況の調査結果について 実験材料及び方法 1 被検物質は 製剤 1g 中イソプロチオランとして 250mg 含有する顆粒剤であるフジックス ( 日本農薬 ( 株 ) 製 製造番号 : B6512) を用いた 2 試験方法 (1) 供試動物ホルスタイン種の牛 (

はじめに 液体クロマトグラフィーには 表面多孔質粒子の LC カラムが広く使用されています これらのカラムは全多孔質粒子カラムの同等製品と比べて 低圧で高効率です これは主に 物質移動距離がより短く カラムに充填されている粒子のサイズ分布がきわめて狭いためです カラムの効率が高いほど 分析を高速化で

4,4’‐ジアミノジフェニルメタン

ウスターソース類の食塩分測定方法 ( モール法 ) 手順書 1. 適用範囲 この手順書は 日本農林規格に定めるウスターソース類及びその周辺製品に適用する 2. 測定方法の概要試料に水を加え ろ過した後 指示薬としてクロム酸カリウム溶液を加え 0.1 mol/l 硝酸銀溶液で滴定し 滴定終点までに消費

医療用医薬品最新品質情報集 ( ブルーブック ) 初版有効成分リトドリン塩酸塩 品目名 ( 製造販売業者 ) 後発医薬品 品目名 ( 製造販売業者 ) 先発医薬品 効能 効果用法 用量添加物 1) 解離定数 (25 ) 1) 溶解度 (37 ) 1 ウテロン錠 5mg サンド 2

目次 1. はじめに 目的 捕集および分析方法 (OSHA Method no. 34 改良 ) ブランク 破過 脱着率 誘導体化条件の検討 検量線... -

Microsoft Word - TR-APA

Microsoft PowerPoint ダイオフロック営業資料.ppt [互換モード]

Microsoft PowerPoint - マトリックス効果対策と検量線について2 [互換モード]

平成26年度 化学物質分析法開発報告書

Microsoft Word - 箸通知案 doc

環境調査(水系)対象物質の分析法

Microsoft Word - p docx

2,3-ジメチルピラジンの食品添加物の指定に関する部会報告書(案)

low_ JAJP.qxd

東京健安研セ年報 Ann. Rep. Tokyo Metr. Inst. Pub. ealth, 6, , 29 LC-FL 及びLC-MS/MSによる食肉中のイベルメクチン, エプリノメクチン, ドラメクチン及びモキシデクチンの分析 坂本美穂 *, 竹葉和江 **, 笹本剛生 **,

- 2 - 二前号に掲げるもの以外のポリ塩化ビフェニル廃棄物及びポリ塩化ビフェニル使用製品別表第二の第一に定める方法

目次 1 事業で用いた分析法 実験方法 試料 試薬 ) ソルビン酸標準品 ) その他の試薬 装置及び器具 定量方法 ) 抽出 ) HPLC による測定 )

○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

A6/25 アンモニウム ( インドフェノールブルー法 ) 測定範囲 : 0.20~8.00 mg/l NH 4-N 0.26~10.30 mg/l NH ~8.00 mg/l NH 3-N 0.24~9.73 mg/l NH 3 結果は mmol/l 単位でも表示できます 1. 試料の

感度に関するトラブル 2013 Nihon Waters K.K. 3 感度低下の原因分類と確認方法 標準品 保存中の分解 再調製 試料注入 注入正確性の低下 注入量を変えて測定 ( レスポンスの直線性を確認 ) 試料残量の低下 試料量を増やす LC/MS システムにおける分解 UV で分解 熱分解

untitled

HPLCによるUSP関連物質分析条件のUPLC分析への移管と開発

<945F96F B3816A2E786264>

バイアル新規ユーザー様限定 ガラス製容器 -Si-O H シラノール -Si-O H -Si O -Si イオン的吸着 疎水的吸着シロキサン logp pka + N 塩基性化合物 疎水的吸着 水溶液 P P 製容器, 7,7

6 UPLC/MS/MS の測定条件 UPLC/MS/MS 装置 :Acquity Ultra Performance LC-TQ Detector(Waters 社製 ) カラム :Acquity UPLC カラム BEH C18 (2.1mmI.D. 100mm,1.7 m) 移動相 :A 液

氏名垣田浩孝 ( 論文内容の要旨 ) 糖質は生物科学的にも産業的にも重要な物質群であり 簡便かつ高感度な分析法の開発が求められている 代表的な糖質分析手段として高速液体クロマトグラフィー (HPLC) が用いられているが 多くの糖質に発色団や発蛍光団が無いため 示差屈折計による検出が一般的である し

H21白本

有害大気汚染物質測定方法マニュアル(平成23年3月改訂)

(f) メスシリンダー :JIS R 3505 に規定する呼び容量 20 ml 100 ml 200 ml 250 ml 及び 1 L のもので 体積の許容誤差の区分がクラス A のもの又はこれと同等のもの (g) ねじ口瓶 : 容量 100 ml 500 ml 及び 1 L のもの または同等の保

よくある指摘事項(2)

タイトルはMS明朝16ポイント”~について”は避ける

毒性 用途等 毒性情報 : 反復投与毒性 : PFOS 経口投与 ( サル ) NOAEL=.15 mg/kg d (182 日間 K 塩 ) 経口投与 ( ラット ) LOAEL = 2 mg/kg d (K 塩 肝臓酵素増加 肝臓空胞変性及び肝細胞肥大 胃腸障害 血液異常 体重低下 発作 死亡経

食品に残留する農薬等の成分である物質の

<4D F736F F D B990858CB982C982A882AF82E98FC193C5959B90B690AC95A8914F8BEC95A88EBF82CC93C192E882C690B690AC93C190AB82CC946388A

第2章マウスを用いた動物モデルに関する研究

鳥取県衛生環境研究所報 第43号

Transcription:

LC-MS/MS による畜水産物中の動物用医薬品等の一斉分析 (Ⅲ) 久保記久子 中村正規 福岡市保健環境研究所保健科学課 Rapid Simultaneous Analysis of Residual Veterinary Drugs in Livestock Products and Seafoods Using Liquid Chromatography Coupled with Tandem Mass Spectrometry(Ⅲ) Kikuko KUBO and Masanori NAKAMURA Health Science Division, Fukuoka City Institute for Hygiene and the Environment 要約国内での使用が可能な動物用医薬品 20 化合物について, 当所で開発したLC-MS/MSによる一斉分析法への適応性を検討した. また, 使用するバイアルの種類についても合わせて検討した. 試験溶液はアセトニトリルで抽出後,n-ヘキサンで脱脂し, アセトニトリルおよび水 (1:9) 混液に転溶して調製した. 各化合物の標準溶液において良好な感度が得られた17 化合物について添加回収試験を行った. 卵, 牛乳, 牛肉, 牛の肝臓, 鮭, エビ, 牡蠣および活鰻に各化合物を100ng/g 添加して回収試験を行った結果,13 化合物について回収率は50% 以上で相対標準偏差は概ね10% 未満であり, スクリーニング法として適応可能であった. また, これら13 化合物を含む動物用医薬品および飼料添加物 50 化合物について, 不活性処理済み褐色ガラス製バイアルと褐色ポリプロピレン製バイアルを用いて, 時間経過による安定性の違いについて検討した. その結果, ガラス製では10 時間後には6 化合物で約 60% までピーク強度の減少が見られ,5 化合物において約 150% までピーク強度の増加が見られた. ポリプロピレン製では50 時間後でも49 化合物において安定であった. Key Words : 液体クロマトグラフ-タンデム型質量分析装置 LC-MS/MS, 一斉分析 simultaneous analysis, 動物用医薬品 veterinary drug, 畜産食品 livestock product, 水産物 seafood, 飼料添加物 feed additive, 不活性処理済ガラス製バイアル silanized glass vial, ポリプロピレン製バイアル polypropylene vial 1 はじめに病気の予防や治療, 飼料の品質保持等の目的で畜水産物に使用される動物用医薬品や飼料添加物は, その開発, 販売, 使用に至るまで, 動物用医薬品は薬事法により, 飼料添加物は飼料安全法により厳しく規制されている. また, 市場に流通する食品については, 食品衛生法により安全な食品が供給されるよう, 規制, 監視等がなされている. 食品の安全性に対する国民の関心が高まり, 平成 18 年 5 月には食品中に残留する農薬等にポジティブリスト制度 が導入され, 残留基準が設定された動物用医薬品等の数も大幅に増加した. これに伴い食品に残留する農薬, 飼料添加物又は動物用医薬品の成分である物質の試験法 1) が通知され, 畜水産物中の動物用医薬品等については, HPLC による動物用医薬品等の一斉試験法 Ⅰ( 畜水産物 ) ( 以下 Ⅰ 法 ), HPLC による動物用医薬品等の一斉試験法 Ⅱ( 畜水産物 ) ( 以下 Ⅱ 法 ) および HPLC による動物用医薬品等の一斉試験法 Ⅲ( 畜水産物 ) が示された. 当所では, 前報 2),3) で報告した迅速一斉分析法を用いてスクリーニング検査を行っている. 今回, 当所の試験法と -110-

同様にアセトニトリルを用いて抽出を行うⅠ 法およびⅡ 法の分析対象化合物のうち, 検討未実施で薬事法により国内での使用が認められている 20 化合物について, 新たに本法への適応性を検討した. また, 日常の動物用医薬品等の試験検査で測定に時間を要した際, 標準溶液において不活性処理済み褐色ガラス製バイアルが原因と思われるピーク強度の低下が見られたため, 今回, 褐色ポリプロピレン製バイアルを用いてその有用性についても合わせて検討した. 25HP を使用した. ろ紙 : アドバンテック東洋 ( 株 ) 製ろ紙 5A を使用した. 不活性処理済み褐色ガラス製バイアル :GL サイエンス社製 Target DP バイアル不活性処理済 Silanized vials 2mL ラベル付褐色を使用した. 褐色ポリプロピレン製バイアル :GL サイエンス社製 1.5mL スクリューバイアル PP 褐色を使用した. その他の試薬 :HPLC 用または残留農薬試験用を使用した. 2 実験方法 2.1 試料市販の卵, 牛乳, 牛肉, 牛の肝臓, 鮭, エビ, 牡蠣および活鰻を用いた. 2.2 試薬等標準品 : 分析対象化合物は表 1 に示すとおりで, 食品分析用, 残留物質試験用または生化学用を使用した. 表 1 分析対象化合物の主な用途 No. 化合物名主な用途 1 アンプロリウム 合成抗菌剤 2 オルビフロキサシン 合成抗菌剤 3 クロステボル ホルモン剤 4 クロルヘキシジン 消毒剤 5 ジフロキサシン 合成抗菌剤 6 ジョサマイシン 抗生物質 7 セフロキシム 抗生物質 8 タイロシン 抗生物質 9 チアムリン 抗生物質 10 ニフルスチレン酸ナトリウム合成抗菌剤 11 ノボビオシン 抗生物質 12 バルネムリン 抗生物質 13 プラジクアンテル 寄生虫駆除剤 14 フルニキシン 非ステロイド系抗炎症薬 15 ブロチゾラム 神経系用薬 16 ミロキサシン 合成抗菌剤 17 メロキシカム 非ステロイド系消炎剤 18 メンブトン 止瀉剤 19 リンコマイシン 抗生物質 20 レバミゾール 寄生虫駆除剤 標準原液 : メタノールで濃度 100mg/L を調製した. 溶解しにくいものについては, 少量の N,N-ジメチルホルムアミドに溶解後, メタノールで希釈した. 混合標準溶液 : 標準原液をアセトニトリルおよび水 (1:9) 混液で適宜希釈し調製した. 0.2μm フィルター : アドバンテック東洋 ( 株 ) 製 DISMIC 2.3 装置高速液体クロマトグラフ :Agilent 社製 Agilent1100 シリーズを使用した. 質量分析装置 (MS/MS):AB SCIEX 社製 API4000 を使用した. ホモジナイザー :Kinematica 社製 PT10-35 を使用した. 超音波装置 : アイワ医科工業 ( 株 ) 製 AU-308CB を使用した. 遠心機 :( 株 ) コクサン製 H103-NR を使用した. 2.4 測定条件前報 2),3) に示した方法に準じて行った. 2.4.1 高速液体クロマトグラフ分析カラム :( 株 )YMC 製 YMC-Pack Pro C18 2mm i.d. 50mm, 5μm 移動相 :A 液 :0.02% ギ酸,B 液 : アセトニトリルグラジエント条件 : 表 2 および表 3 に示す. 表 2 測定条件 ( ポジティブイオン化 ) 時間 (min) A 液 (%) B 液 (%) 流速 (ml/min) 0 95 5 0.2 3 95 5 0.2 15 5 95 0.2 20 5 95 0.2 20.1 95 5 0.5 27 95 5 0.5 27.1 95 5 0.2 30 95 5 0.2 表 3 測定条件 ( ネガティブイオン化 ) 時間 (min) A 液 (%) B 液 (%) 流速 (ml/min) 0 95 5 0.2 3 95 5 0.2 15 5 95 0.2 20 5 95 0.2 25.1 95 5 0.5 32 95 5 0.5 32.1 95 5 0.2 35 95 5 0.2-111-

カラム温度 :30 注入量 :10μL 2.4.2 質量分析計 1) 条件 1( ポジティブイオン化 ) イオン化 :ESI,(+) イオンスプレー電圧 :5.5kV イオンソース温度 :700 化合物ごとの条件 : 表 4 に示した. 2) 条件 2( ネガティブイオン化 ) イオン化 :ESI,( - ) イオンスプレー電圧 :-4.5kV イオンソース温度 :600 化合物ごとの条件 : 表 4 に示した. 2.5 試験溶液の調製前報 2),3) に示した方法により行った. 試料 5g にアセトニトリル 30mL を加え ホモジナイズ ( 牛乳の場合は 5 分間振とう ) し, 上澄み液をろ紙でろ過した. ろ液にアセトニトリル飽和 n-ヘキサン 15mL を加え振とう後, アセトニトリル層を 50mL に定容した. 抽出液 10mL を濃縮乾固後, 残留物にアセトニトリル 0.5mL を加え超音波装置で 30 秒間溶解後, 水 4.5mL を加え 0.2μm フィルターでろ過し試験溶液とした. 2.6 バイアルの検討動物用医薬品等 50 化合物の 10ng/mL 混合標準溶液を作成し, 測定開始の直前に不活性処理済み褐色ガラス製バイアルおよび褐色ポリプロピレン製バイアルに移して測定を開始し,10 時間後と 50 時間後に測定を行った. 3 実験結果および考察 3.1 LC-MS/MS 条件の検討イオン化はエレクトロスプレー (ESI) により, セフロキシムおよびニフルスチレン酸ナトリウムはネガティブモードで, その他の化合物はポジティブモードで MRM 分析を行った. 各化合物の条件を表 4 に示す. 各プレカーサーイオンに対して, 相対的に最もピーク強度の強いプロダクトイオンを定量イオンとした. イオンスプレー電圧および 2), イオンソース温度などの固定した条件については, 前報 3) のとおりとした. 標準溶液を用いて MRM 分析を行った. その結果, アンプロリウムはカラムに保持されず, リンコマイシンおよびレバミゾールはピークが割れて定量が不可能であった. その他の 17 化合物については, 表 4 に示すとおり, 標準溶 表 4 各化合物のMW, 測定条件, 定量下限および直線性 No. 化合物名 MW 1 測定条件定量下限 4 Q1(m/z ) Q3( m/z) DP(V) 2 CE(V) 3 直線性 (ng/ml) 1 アンプロリウム 242 243.3 150.1 41 17 - - 2 オルビフロキサシン 395 396.2 352.3 81 27 0.1 1.000 3 クロステボル 322 323.3 143.1 76 37 0.2 0.997 4 クロルヘキシジン 504 505.3 353.2 96 23 0.3 0.992 5 ジフロキサシン 399 400.3 356.2 76 29 0.3 1.000 6 ジョサマイシン 827 828.5 174.2 71 45 0.1 0.999 7 セフロキシム 424 423.0 317.9-12 -7 1 1.000 8 タイロシン 915 917.1 174.2 11 51 0.1 0.996 9 チアムリン 493 494.3 192.2 71 29 0.05 0.993 10 ニフルスチレン酸ナトリウム 281 257.9 183.9-18 -3 0.3 1.000 11 ノボビオシン 612 613.2 189.2 201 35 0.1 1.000 12 バルネムリン 564 565.2 263.1 101 27 0.05 0.991 13 プラジクアンテル 312 313.3 203.1 86 27 0.2 1.000 14 フルニキシン 296 297.2 279.2 86 33 0.2 0.996 15 ブロチゾラム 394 394.9 314.0 96 35 0.02 1.000 16 ミロキサシン 263 264.2 215.2 61 35 0.02 1.000 17 メロキシカム 351 351.9 115.1 86 31 0.02 1.000 18 メンブトン 258 259.2 241.2 51 19 0.2 0.999 19 リンコマイシン 406 406.7 126.1 96 51 - - 20 レバミゾール 204 205.1 123.0 66 35 - - 1 単一同位体における分子量 2 DP:Declustering potential 3 CE:Collision energy 4 1~50ng/mLの範囲における相関係数 -112-

液での定量下限 (S/N=10) が 0.02~1ng/mL と良好な感度が得られた. 検量線は 1~50ng/mL の範囲で相関係数 0.991 以上と良好な直線性が得られた 3.2 添加回収試験標準溶液において良好な感度が得られた 17 化合物について, 卵, 牛乳, 牛肉, 牛の肝臓, 鮭, エビ, 牡蠣および活鰻に各化合物を 100ng/g 添加して回収試験を行った. その結果を表 5 に示す. クロルヘキシジンはいずれの食品でもほとんど回収されなかった. ニフルスチレン酸ナトリウム, ノボビオシンおよびバルネムリンについては, 一部の食品において回収率が 50% 未満のものがあった. その他の 13 化合物については回収率が 50% 以上, 相対標準偏差 (RSD) は概ね 10% 未満であった. 牛乳への添加回収試験においてオルビフロキサシンで定量に支障をきたす夾雑ピークが見られたため, オルビフロキサシンの定量イオンを 2 番目にピーク強度の強い 295.3(m/z) に変更した. その他の化合物についてはいずれの食品においても定量に支障をきたすような試料由来の夾雑ピークは見られなかった. 3.3 バイアルの検討不活性処理済みガラス製バイアルを用いた日常の動物用医薬品等の試験検査において, 測定に時間を要した際, 添加回収試験の回収率が 200% を超える化合物が見られた. 各化合物を試料に添加し調製した試験溶液ではピーク強度に変化は見られず, 標準溶液のバイアルへの吸着が疑われた. 今回, 添加回収試験において良好な結果の得られた 13 化合物と, 通常当所で試験を実施している動物用医薬品等 37 化合物を合わせた 50 化合物について,10ng/mL の混合標準溶液を作成し, 不活性処理済み褐色ガラス製バイアルと褐色ポリプロピレン製バイアルに詰めて, それぞれ測定開始から 10 時間後と 50 時間後に測定を行った. その結果を表 6 に示す.EFX,OFX,SFX,DFLX,CPFX および DFX のニューキノロン系抗生物質において, ガラス製では 10 時間後ですでに約 60% まで減少が見られた. これに対しポリプロピレン製では 50 時間後でもほぼ減少は見られなかった.OXA,CLO,NA,PMA および MIX の 5 化合物においては, ガラス製において 150% 前後まで増加が見られた. これに対しポリプロピレン製ではほぼ変化は見られなかった. ガラス製バイアルで比較的安定な NAF において, ポリプロピレン製バイアルで 50 時間後に 45% まで減少した. 不活性処理をしていないガラス製バイアルについても測定を行った結果, 不活性処理済みと同様の傾向を示し, ピーク強度が減少した 6 化合物のうち,EFX, OFX, CPFX, および DFX では,50 時間後で約 30% まで減少した. バイアルでのピーク強度の増減には, 吸着や分解, イオン化促進物質の溶出等が考えられるが, 今回影響 表 5 添加回収試験結果 No. 化合物名 回収率 (%) 卵牛乳牛肉牛の肝臓鮭エビ牡蠣活鰻 1 オルビフロキサシン 74.0 (4.6) 77.2 (5.5) 82.0 (7.6) 74.1 (8.5) 73.7 (16.4) 63.8 (2.2) 69.9 (1.4) 74.7 (1.4) 2 クロステボル 69.2 (3.9) 78.0 (3.3) 76.3 (5.7) 55.1 (6.1) 57.4 (1.5) 76.2 (11.4) 63.1 (2.1) 64.6 (2.4) 3 クロルヘキシジン 8.6 (5.6) 8.7 (32.7) - - - - - - 11.8 (17.1) 3.7 (39.8) 13.6 (15.0) 4 ジフロキサシン 90.2 (11.1) 98.3 (9.2) 94.2 (5.9) 99.4 (2.3) 78.7 (6.1) 96.2 (4.1) 88.9 (9.6) 88.3 (5.4) 5 ジョサマイシン 77.1 (2.0) 83.8 (4.3) 80.4 (11) 75.8 (3.8) 81.9 (10.0) 53.6 (5.9) 82.5 (6.4) 71.6 (7.8) 6 セフロキシム 62.6 (4.7) 78.4 (6.9) 66.4 (2.9) 62.0 (5.1) 72.7 (6.0) 67.9 (2.6) 53.0 (3.9) 61.2 (6.0) 7 タイロシン 74.9 (3.9) 77.7 (7.2) 82.4 (17.9) 78.6 (4.9) 88.5 (8.5) 66.4 (4.4) 77.2 (5.9) 68.6 (7.8) 8 チアムリン 71.5 (8.5) 87.3 (6.9) 86.4 (0.2) 70.5 (2.2) 77.4 (2.8) 53.5 (7.6) 84.1 (2.0) 73.9 (2.0) 9 ニフルスチレン酸ナトリウム 62.3 (4.0) 47.6 (3.3) 71.9 (3.1) 56.2 (4.2) 36.2 (17.9) 75.1 (3.1) 51.3 (2.9) 29.1 (7.8) 10 ノボビオシン 16.0 (22.9) 73.7 (14.5) 12.8 (28.8) 28.6 (10.7) 22.5 (12.0) 58.1 (7.3) 27.0 (14.2) 11.0 (19.8) 11 バルネムリン 60.3 (5.2) 71.5 (8.4) 81.1 (3.0) 40.2 (7.8) 40.9 (9.5) 44.2 (3.8) 59.1 (11.9) 29.0 (22.7) 12 プラジクアンテル 81.6 (5.9) 87.4 (0.2) 87.5 (3.0) 85.1 (2.3) 78.8 (7.4) 84.0 (5.7) 79.4 (1.8) 73.6 (2.2) 13 フルニキシン 88.8 (3.0) 92.8 (2.9) 75.8 (6.3) 67.2 (9.6) 80.6 (0.4) 92.2 (3.0) 84.4 (1.6) 81.4 (2.5) 14 ブロチゾラム 81.7 (3.6) 83.0 (3.9) 92.0 (3.6) 77.6 (3.3) 75.6 (7.0) 84.7 (2.9) 73.0 (11.6) 70.4 (8.7) 15 ミロキサシン 56.4 (10.5) 90.6 (6.9) 113.0 (9.0) 125.7 (5.9) 89.9 (8.2) 86.8 (5.8) 86.0 (9.0) 105.8 (9.8) 16 メロキシカム 80.1 (8.0) 91.1 (1.3) 80.7 (6.9) 72.1 (3.3) 69.1 (4.2) 98.5 (3.7) 58.7 (5.2) 56.7 (7.1) 17 メンブトン 70.4 (3.8) 92.9 (3.5) 74.4 (5.3) 60.4 (4.3) 64.1 (6.1) 69.8 (2.9) 66.1 (2.4) 64.4 (1.3) ( ) の値は相対標準偏差 (n=3) -113-

No. 化合物名略称イオン化 表 6 各化合物のバイアルごとの経時変化 褐色ポリプロピレン製バイアル 10 時間後 50 時間後 10 時間後 50 時間後 不活性処理済み褐色ガラス製バイアル 測定開始を 100 とした値 1 5-ヒドロキシチアベンダゾール 5HTBZ + 85.8 (7.0) 87.3 (15.2) 86.6 (10.9) 80.2 (10.2) 2 5-プロピルスルホニル-1H-ベン ABZ_Met + 91.1 (6.7) 69.4 (13.6) 90.8 (10.2) 67.7 (7.2) ズイミダゾール-2-アミン 3 エトパベート ETB + 105.0 (2.6) 108.8 (3.6) 96.3 (9.4) 100.2 (3.9) 4 エンロフロキサシン EFX + 61.8 (8.6) 62.3 (6.2) 90.7 (0.6) 94.8 (17.3) 5 オキサシリン OX - 108.3 (2.4) 114.5 (2.5) 100.7 (2.9) 107.0 (7.7) 6 オキソリニック酸 OXA + 153.6 (9.9) 167.7 (5.1) 98.9 (9.3) 98.1 (14.9) 7 オフロキサシン OFX + 61.3 (17.0) 42.5 (26.1) 93.5 (2.8) 84.4 (5.3) 8 オラキンドックス ODX + 92.2 (9.5) 93.0 (15.3) 95.1 (13.7) 100.1 (14.9) 9 オルビルロキサシン OBFX + 98.3 (4.2) 85.5 (5.6) 89.2 (11.3) 87.8 (9.8) 10 オルメトプリム OMP + 86.1 (11.8) 83.5 (13.3) 88.7 (8.2) 85.3 (7.9) 11 クロキサシリン CLOX - 97.0 (4.7) 88.5 (0.3) 97.3 (0.3) 83.8 (2.1) 12 クロステボル CLO + 136.8 (5.4) 136.8 (5.9) 107.0 (17.0) 102.7 (10.4) 13 クロピドール CLP + 100.4 (8.8) 103.5 (11.3) 97.4 (2.7) 97.2 (4.6) 14 サラフロキサシン SFX + 58.6 (9.7) 56.7 (20.1) 91.3 (4.4) 90.7 (10.7) 15 ジフラゾン DFZ + 96.0 (7.6) 89.8 (9.5) 91.3 (4.8) 97.4 (14.6) 16 ジフロキサシン DFLX + 58.2 (17.7) 60.3 (21.6) 93.4 (4.9) 87.2 (9.7) 17 シプロフロキサシン CPFX + 52.8 (21.9) 43.8 (22.3) 96.2 (4.3) 82.6 (12.6) 18 ジョサマイシン JM + 91.8 (9.4) 83.4 (13.8) 94.0 (19.8) 100.1 (19.7) 19 スピラマイシン SPM + 83.5 (2.2) 69.7 (17.8) 90.1 (11.5) 78.8 (10.4) 20 スルダジメトキシン SDMX + 103.2 (3.4) 103.3 (6.5) 89.9 (7.7) 94.7 (13.7) 21 スルファキノキサリン SQ + 99.4 (2.7) 95.0 (3.8) 90.3 (13.3) 100.7 (8.0) 22 スルファクロルピリダジン SCPD + 98.2 (7.0) 103.1 (1.4) 95.2 (4.4) 98.8 (5.8) 23 スルファジアジン SDZ + 97.3 (9.7) 99.6 (8.6) 98.7 (4.4) 104.9 (8.5) 24 スルファジミジン SDD + 89.4 (9.2) 92.5 (8.4) 95.5 7.7 101.5 (18.7) 25 スルファチアゾール STZ + 90.3 (6.1) 95.5 (8.8) 95.9 (8.4) 99.1 (5.3) 26 スルファメトキサゾール SMX + 100.9 (4.0) 106.8 (4.3) 94.9 (5.6) 99.3 (13.2) 27 スルファメトキシピリダジン SMPD + 91.9 (3.8) 92.9 (8.0) 99.4 (4.6) 99.2 (5.9) 28 スルファメラジン SMR + 95.3 (1.8) 100.0 (2.7) 98.2 (3.7) 108.8 (13.7) 29 セフロキシム CEFX - 100.1 (8.1) 82.0 (11.5) 96.2 (5.7) 75.7 (2.3) 30 タイロシン TYS + 98.8 (10.9) 102.5 (31.1) 99.8 (2.8) 99.9 (12.4) 31 ダノフロキサシン DFX + 53.4 (15.5) 42.9 (22.3) 95.8 (12.5) 101.3 (9.3) 32 チアベンダゾール TBZ + 91.2 (6.1) 76.9 (5.2) 94.1 (1.2) 84.3 (3.9) 33 チアムリン TIA + 94.5 (6.7) 93.0 (7.4) 85.5 (5.6) 85.3 (1.1) 34 チアンフェニコール TP - 92.2 (13.8) 98.8 (18.7) 96.5 (10.1) 96.6 (8.3) 35 トリメトプリム TMP + 86.0 (5.9) 80.2 (3.3) 89.3 (4.9) 85.0 (7.8) 36 ナフシリン NAF - 90.4 (0.4) 72.0 (2.5) 83.0 (0.6) 44.8 (3.5) 37 ナリジクス酸 NA + 152.6 (16.7) 151.9 (9.2) 100.6 (8.9) 106.8 (12.1) 38 ネオスピラマイシン NSPM + 87.9 (20.8) 68.3 (14.8) 91.6 (3.6) 97.7 (7.9) 39 ピリメタミン PYR + 94.4 (10.8) 90.7 (11.8) 92.9 (13.5) 90.9 (6.7) 40 ピロミド酸 PMA + 149.9 (14.6) 161.4 (9.0) 109.1 (15.9) 112.5 (19.6) 41 フェノキシメチルペニシリン PEN V - 97.4 (4.6) 99.8 (3.2) 97.0 (3.0) 101.0 (10.4) 42 プラジクアンテル PRA + 124.0 (11.7) 111.1 (11.5) 98.4 (16.2) 100.1 (17.2) 43 フルニキシン FNX + 104.0 (6.3) 103.9 (6.8) 91.2 (7.8) 83.2 (2.1) 44 フルベンダゾール FBZ + 105.8 (4.4) 108.3 (4.9) 97.4 (1.7) 103.0 (6.1) 45 ブロチゾラム BRO + 121.1 (11.8) 123.8 (21.9) 104.3 (15.2) 103.3 (10.9) 46 フロルフェニコール FLP - 102.0 1.8 97.5 (1.9) 110.7 (1.5) 108.9 (1.6) 47 ミロキサシン MIX + 150.8 4.3 169.5 (10.7) 97.5 (8.7) 94.1 (5.0) 48 メロキシカム MEX + 103.3 (5.6) 90.0 (4.3) 86.8 (9.6) 75.9 (10.0) 49 メンブトン MBT + 111.7 4.9 123.6 (0.7) 94.8 (7.8) 102.9 (4.8) 50 モランテル MOR + 90.5 (6.5) 97.7 (5.2) 97.0 (4.7) 108.1 (8.7) ( ) の値は相対標準偏差 (n=3) -114-

が見られた化合物の共通点は CLO を除き, 分子内に -COOH 基を有していることであった. ポリプロピレン製 バイアルを用いて最終検液と同じ組成である 10% アセト ニトリル水溶液の MRM 分析を行った結果, 定量に支障を きたすような夾雑ピークは見られなかった. 4 まとめ 国内で使用が可能な動物用医薬品 20 化合物について, 前報 2),3) で報告した一斉分析法への適応性を検討した. 添加回収試験を行った結果,13 化合物において回収率は 50% 以上で相対標準偏差は概ね 10% 未満であり, スクリーニング法として適用可能であった. また, 測定に使用するバイアルについては, ポリプロピレン製バイアルで 50 化合物 の動物用医薬品等のうち NAF を除く 49 化合物で 50 時間後も安定であり, 動物用医薬品等の試験において有用であると考える. 文献 1) 厚生労働省通知食安発第 0124001 号 : 食品に残留する農薬, 飼料添加物又は動物用医薬品の成分である物質の試験法について, 平成 17 年 1 月 24 日 2) 中尾朱美 :LC/MS/MS による畜水産食品の残留動物用医薬品及び合成抗菌剤の迅速一斉分析, 福岡市保健環境研究所報,29,80~ 85,2004 3) 中尾朱美, 畑野和広 :LC/MS/MS による畜水産食品の残留動物用医薬品および合成抗菌剤の迅速一斉分析 (Ⅱ), 福岡市保健環境研究所報,30,167~ 169,2005-115-