Taro-04-1(雌雄判別)

Similar documents
Taro-02 はじめに jtd

TaKaRa PCR Human Papillomavirus Typing Set

Microsoft Word - FMB_Text(PCR) _ver3.doc

■リアルタイムPCR実践編

TaKaRa PCR Human Papillomavirus Detection Set

PowerPoint プレゼンテーション

DNA 分析によるのりの原産地判別法の検討 DNA 分析によるのりの原産地判別法の検討 澤田桂子 1, 井口潤 1 2, 浪越充司 Keiko Sawada, Jun Iguchi, Atsushi Namikoshi 要 約 乾のり 焼きのり及び味付けのり ( 板のり ) を対象とした DNA 分

食品関係等調査研究報告 Vol. 37(2013) 2. 実験方法 2.1 試料 トウモロコシ加工品は小売店で購入したものを試料として用いた 品目名の表記方法については 遺伝子組換え食品に関する品質表示基準 1) に準じたもの としている トウモロコシ加工品は コーンスナック菓子 (4: 試料数 4

BKL Kit (Blunting Kination Ligation Kit)

16S (V3-V4) Metagenomic Library Construction Kit for NGS

TaKaRa PCR FLT3/ITD Mutation Detection Set

Multiplex PCR Assay Kit

DNA/RNA調製法 実験ガイド

ISOSPIN Blood & Plasma DNA

Multiplex PCR Assay Kit Ver. 2

実験操作方法

組織からのゲノム DNA 抽出キット Tissue Genomic DNA Extraction Mini Kit 目次基本データ 3 キットの内容 3 重要事項 4 操作 4 サンプル別プロトコール 7 トラブルシューティング 9 * 本製品は研究用です *

DNA 抽出条件かき取った花粉 1~3 粒程度を 3 μl の抽出液 (10 mm Tris/HCl [ph8.0] 10 mm EDTA 0.01% SDS 0.2 mg/ml Proteinase K) に懸濁し 37 C 60 min そして 95 C 10 min の処理を行うことで DNA

手順 ) 1) プライマーの設計 発注変異導入部位がプライマーのほぼ中央になるようにする 可能であれば 制限酵素サイトができるようにすると確認が容易になる プライマーは 25-45mer で TM 値が 78 以上になるようにする Tm= (%GC)-675/N-%mismatch

Pyrobest ® DNA Polymerase

ChIP Reagents マニュアル

Bacterial 16S rDNA PCR Kit

無細胞タンパク質合成試薬キット Transdirect insect cell

PrimeScript® II 1st strand cDNA Synthesis Kit

MightyAmp™ DNA Polymerase Ver.3

コメDNA 抽出キット(精米20 粒スケール)

遺伝子検査の基礎知識

ISOSPIN Plasmid

DNA シークエンス解析受託サービスを効率よく利用して頂くために シークエンス解析は お持ち頂くサンプルの DNA テンプレートの精製度 量 性質によ って得られる結果が大きく左右されます サンプルを提出しても望み通りの結果が返っ てこない場合は 以下の点についてご検討下さい ( 基本編 ) 1.

酵素の性質を見るための最も簡単な実験です 1 酵素の基質特異性と反応特異性を調べるための実験 実験目的 様々な基質を用いて 未知の酵素の種類を調べる 酵素の基質特異性と反応特異性について理解を深める 実験準備 未知の酵素溶液 3 種類 酵素を緩衝液で約 10 倍に希釈してから使用すること 酵素溶液は

鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルス検出マニュアル(第2版)公開用

Bacterial 16S rDNA PCR Kit

1. 腸管出血性大腸菌 (EHEC) の系統解析 上村健人 1. はじめに近年 腸管出血性大腸菌 (EHEC) による食中毒事件が度々発生しており EHEC による食中毒はその症状の重篤さから大きな社会問題となっている EHEC による食中毒の主要な汚染源の一つとして指摘されているのが牛の糞便である

MLPA 法 Q&A 集

遺伝子検査の基礎知識

コメ判別用PCR Kit II

MEGALABEL™

Gen とるくん™(酵母用)High Recovery

Microsoft Word - H30eqa麻疹風疹実施手順書(案)v13日付記載.docx

取扱説明書

ノーウオ―クウイルスのPCR法

DNA Blunting Kit

cDNA cloning by PCR

PrimeSTAR® Mutagenesis Basal Kit

<4D F736F F D2095C494D18EAF95CA837D836A B81698ADD8DAA A2E646F6378>

パナテスト ラットβ2マイクログロブリン

( 別添 ) ヒラメからの Kudoa septempunctata 検査法 ( 暫定 ) 1. 検体採取方法食後数時間程度で一過性の嘔吐や下痢を呈し, 軽症で終わる有症事例で, 既知の病因物質が不検出, あるいは検出した病因物質と症状が合致せず, 原因不明として処理された事例のヒラメを対象とする


Microsoft Word - ケミストリープロトコル_v5_2012_Final.doc

O-157(ベロ毒素1 型、2 型遺伝子)PCR Typing Set Plus

DNA Ligation Kit <Mighty Mix>

コメDNA 抽出キット(精米、玄米1 粒スケール)

HotStarTaq Plus PCRプロトコールとトラブルシューティング( /2008)

培養細胞からの Total RNA 抽出の手順 接着細胞のプロトコル 1. プレート ( またはウエル ) より培地を除き PBSでの洗浄を行う 2. トリプシン処理を行い 全量を1.5ml 遠心チューブに移す スクレイパーを使って 細胞を掻き集める方法も有用です 3. 低速遠心 ( 例 300 g

プロトコール集 ( 研究用試薬 ) < 目次 > 免疫組織染色手順 ( 前処理なし ) p2 免疫組織染色手順 ( マイクロウェーブ前処理 ) p3 免疫組織染色手順 ( オートクレーブ前処理 ) p4 免疫組織染色手順 ( トリプシン前処理 ) p5 免疫組織染色手順 ( ギ酸処理 ) p6 免疫

DNA Fragmentation Kit

Western BLoT Rapid Detect

Probe qPCR Mix

取扱説明書

はじめてのリアルタイムPCR

すとき, モサプリドのピーク面積の相対標準偏差は 2.0% 以下である. * 表示量 溶出規格 規定時間 溶出率 10mg/g 45 分 70% 以上 * モサプリドクエン酸塩無水物として モサプリドクエン酸塩標準品 C 21 H 25 ClFN 3 O 3 C 6 H 8 O 7 :

< F2D82CD82B682DF82C E E6A7464>

000_013_.....qx4

- 目 次 -

東京都健康安全研究センター研究年報

リアルタイムPCRの基礎知識

愛知農総試研報 40:35-40(2008) Res.Bull.Aichi Agric.Res.Ctr.40:35-40(2008) トマトのネコブセンチュウ抵抗性遺伝子 (Mi) に連鎖した DNA マーカーの開発 * ** * *** 黒柳悟 石田朗 福田至朗 大矢俊夫 摘要 : トマトのネコブ

生物学に関する実験例 - 生化学 / 医療に関する実験例 ラジオアッセイ法によるホルモン測定 [ 目的 ] 本実習では, 放射免疫測定 (Radioimmunoassay,RIA) 法による血中インスリンとイムノラジオメトリックアッセイ ( 免疫放射定測定 Immunoradiometric ass

るため RNA ウイルス遺伝子や mrna などの RNA を検出する場合には予め逆転写酵素 (RNA 依存性 DNA ポリメラーゼ ) により DNA に置換する逆転写反応を行う必要がある これを Reverse Transcription-PCR(RT-PCR) という PCR 法によれば 検査

PrimeScript RT reagent Kit (Perfect Real Time)

p _04本文

Microsoft Word - KOD-201取説_14-03_.doc

in vitro Transcription T7 Kit (for siRNA Synthesis)

14551 フェノール ( チアゾール誘導体法 ) 測定範囲 : 0.10~2.50 mg/l C 6H 5OH 結果は mmol/l 単位でも表示できます 1. 試料の ph が ph 2~11 であるかチェックします 必要な場合 水酸化ナトリウム水溶液または硫酸を 1 滴ずつ加えて ph を調整

O-157(ベロ毒素1 型、2 型遺伝子)One Shot PCR Typing Kit Ver.2

土壌溶出量試験(簡易分析)

32 飼料研究報告 Vol. 36 (2011) 3 飼料中の動物由来 DNA 検出法における RFLP を用いた確認試験法 橋本仁康 *1 *2, 篠田直樹 PCR-RFLP Identification of Prohibited Animal-derived DNA in Animal Fee

炭疽菌PCR Detection Kit

PrimeSTAR® HS DNA Polymerase

本日の内容 HbA1c 測定方法別原理と特徴 HPLC 法 免疫法 酵素法 原理差による測定値の乖離要因

PippinPulse クイックガイド


H26_大和証券_研究業績_C本文_p indd

遺伝学的手法を用いたロクアイタンポポ ( 仮称 ) の同定法について 神戸市立六甲アイランド高校 井上真緒沙原杏樹辻青空 1. 研究背景 2004 年六甲アイランド高校の校内と周辺で発見されたロクアイタンホポ ( 仮称 ) は 雑種タンポポの可能性が高いが いまだにはっきりした定義がされていない 特

PrimeScript®One Step RT-PCR Kit Ver. 2

しょうゆの食塩分測定方法 ( モール法 ) 手順書 1. 適用範囲 この手順書は 日本農林規格に定めるしょうゆに適用する 2. 測定方法の概要 試料に水を加え 指示薬としてクロム酸カリウム溶液を加え 0.02 mol/l 硝酸銀溶液で滴定し 滴定終点までに消費した硝酸銀溶液の量から塩化ナトリウム含有

パーキンソン病治療ガイドライン2002

研修コーナー

TaKaRa RNA PCR Kit (AMV) Ver.3.0

_

NGS検査_SOP(案)v1

Virus Test Kit (HIV, HTLV, HCV, HBV, ParvoB19) Ver.2

TaKaRa DEXPAT™

3'-Full RACE Core Set

2009年度業績発表会(南陽)

JAJP

Protocol for CRISPR/Cas system in medaka ver Materials ベクター pcs2+hspcas9: Cas9 vector, Amp 耐性, [Addgene Plasmid 51815] pdr274: sgrna vector, K

IC-PC法による大気粉じん中の六価クロム化合物の測定

TB Green™ Premix Ex Taq ™ II (Tli RNaseH Plus)

PrimeSTAR® GXL DNA Polymerase

Transcription:

高嶋康晴 Yasuharu TAKASHIMA 要 約 多くの PCR 法では 電気泳動により分離された特定塩基長の PCR 産物や制限酵素で断片化された DNA 断片の塩基長のパターンを目視で検出し生物種や品種等の判定を行う 電気泳動にかかる一連の操作を手作業で行うことによる分析者への負担の軽減及び分析処理の効率化を図るために マグロ属魚類及びサケ科魚類の魚種判別法について アガロースゲル電気泳動と全自動電気泳動装置による電気泳動の比較検討を行った その結果 全自動電気泳動装置は 従来のアガロースゲル電気泳動と同様に PCR 産物や DNA 断片の塩基長の検出が可能であり 各魚種の判別に問題は生じなかった また 全自動電気泳動装置による電気泳動では アガロースゲル電気泳動で分離が困難な 10-15 bp 程度の差がある DNA 断片の塩基長の分離及び検出が困難な 25-80 bp 程度の短い DNA 断片の塩基長の検出が可能であった 判定に用いる DNA 断片の検出において 塩基配列から推定した理論上の DNA 断片の塩基長と分子量マーカー算出された DNA 断片の塩基長の値 ( 測定値 ) との間に大きな差がみられる場合もあったが 各 DNA 断片の塩基長の測定値の標準偏差は一部の DNA 断片を除いて 5bp 以下であり 一定の測定値をとるものと考えられた 1. はじめに 農林水産消費安全技術センターの食品表示監視業務で用いている DNA 分析法では アガロースゲル電気泳動により特定塩基長の PCR 産物の有無や制限酵素で断片化された DNA を塩基長ごとに分離し そのパターンの確認により生物種や品種等の判別を行っている アガロースゲル電気泳動では ゲルの作成 電気泳動 画像撮影の一連の操作を手作業で実施しており 分析にかかる負担が大きく 処理件数の制限につながっている 近年 この電気泳動に関する操作の自動化が進められ 試料 (PCR 産物又は PCR 産物の制限酵素処理溶液等の DNA 試料 ) 及び試薬を装置にセットし ソフトウエア上の簡単な操作で DNA を検出し DNA サイズ等のデータ解析を自動で行う装置が開発されている 今回 食品の表示監視業務に活用しているマグロ属魚類及びサケ科魚類の魚種判別法について自動電気泳動装置による電気泳動とアガロースゲル電気泳動とを比較し 導入にあたって分析法の同等性の確認を行った ( 独 ) 農林水産消費安全技術センター本部 -7-

食品関係等調査研究報告 Vol. 34 (2010) 2. 実験方法 マグロ属魚類及びサケ科魚類の種判別法では マグロ属魚類及びサケ科魚類の試料から抽出した DNA 溶液を鋳型として PCR-RFLP 法によりマグロ属魚類及びサケ科魚類の魚種判別を行う PCR には マグロではミトコンドリア DNA の ATCO 領域 (ATPase 6 遺伝子領域の一部から cytochrome c oxidase subunit III(COIII) 遺伝子領域の一部にまたがる領域 )( 増幅長 915 bp) サケ科魚類ではミトコンドリア DNA の cytochhrome b(cytb) 遺伝子の部分配列 ( 増幅長 314 bp) に特異的なプライマーを用いた 得られた PCR 産物を制限酵素で処理し 断片化された DNA のパターンの違いによりマグロ属魚類及びサケ科魚類の魚種を判別する 実験操作のうち マグロ属魚類の DNA 抽出 PCR アガロースゲル電気泳動については マグロ属魚類の魚種判別マニュアル 1) に従い実施した サケ科魚類の DNA 抽出 PCR アガロースゲル 2) 電気泳動については Russel らの報告及び マグロ属魚類の魚種判別マニュアル を参考にサケ科魚類用に改変したもののうち 4 制限酵素を選択して実施した 全自動電気泳動法では 装置及び専用キットの操作プロトコールに従って実施した 2.1 試料実験に用いるマグロ属魚類には 魚種を確認して入手した太平洋産クロマグロ Thunnus orientalis 大西洋産クロマグロ T. thynnus ミナミマグロ T. maccoyii メバチ T. absus αタイプ及びβタイプ キハダ T. albacares 並びにビンナガ T. alalunga の 5 種 7 遺伝子型を試料とした サケ科魚類も同様に 魚種を確認して入手したサケ Oncorhynchus keta ギンザケ O. kisutch ベニザケ O. nerka カラフトマス O. gorbusha サクラマス O. masou マスノスケ O. tshawytsha ニジマス O. mykiss 並びにタイセイヨウサケ Salmo salar の 8 種を試料とした 2.2 DNA 抽出 DNA 抽出は DNeasy Blood & Tissue Kit(QIAGEN 社 ) を用いた 試料 10-25 mg を採取し 180 μl の Buffer ATL( キット添付試薬 ) 及び 20 μl の Proteinase K( キット添付試薬 ) を添加後 55 に保温し 試料が完全に溶解するまで 2 時間以上放置した 次に 100 mg/ml RNase A(QIAGEN 社 ) を 4.0 μl 添加し 室温で 2 分間静置した 200 μl の Buffer AL( キット添付試薬 ) を添加し 70 で 10 分間加熱した 200 μl の試薬特級エタノール ( 和光純薬社 ) を添加し 溶液全量を付属のカラムに負荷した カラムを室温で 6,000 g で 1 分間遠心した カラムに Buffer AW1( キット添付試薬 ) を 500 μl 加え 室温にて 6,000 g で 1 分間遠心し さらに カラムに Buffer AW2( キット添付試薬 ) を 500 μl 加え 室温で 12,000 g で 3 分間遠心し カラムを洗浄した DNA の溶出には Buffer AE( キット添付試薬 ) を 200 μl 加え 室温で 1 分間静置後 6,000 g で 1 分間遠心し もう 1 度 Buffer AE を 200 μl 加え 1 回目の溶出液と合わせて遠心操作を行い 溶出液を DNA 溶液とした 2.3 PCR PCR 反応液の組成は マグロ属魚類では 3.75 Units の DNA ポリメラーゼ AmpliTaq Gold TM (Life Technologies 社 ) 1 PCR Buffer II(AmpliTaq Gold TM 添付試薬 ) 0.2 mmol/l dntp Mixture -8-

(AmpliTaq Gold TM 添付試薬 ) 1.5 mmol/l MgCl2(AmpliTaq Gold TM 添付試薬 ) 0.5 μmol/l プライマーセットを含む反応液系に 5.0 μl の DNA 溶液を加え 滅菌水で全量を 50 μl とした サケ科魚類では 1.25 Units の DNA ポリメラーゼ AmpliTaq Gold TM 1 PCR Buffer II 0.2 mmol/l dntp Mixture 1.5 mmol/l MgCl2 0.5 μmol/l プライマーセットを含む反応液系に 10.0 μl の DNA 溶液を加え 滅菌水で全量を 50 μl とした マグロ属魚類判別用プライマーセットには 5 プライマーとして L8562:CTTCGACCAATTTATGAGCCC 3 プライマーとして H9432:GCCATATCGTAGC CCTTTTTG( 増幅長 915 bp) を用い サケ科魚類判別用プライマーセットには 5 プライマーとして LSm1-cytb:ATGGCCAACCTCCGAAAAAC 3 プライマーとして HSm1-cytb:CCRTARTAAAGTC CHCGGGCGA( 増幅長 314 bp) を用いた マグロ属魚類の PCR の温度サイクルは 最初の熱変性として 94 で 8 分 次に (1) 熱変性として 94 で 1 分 (2) アニーリング ( プライマーと熱変性した DNA を結合させる工程 ) として 53 で 1 分 (3) 伸長反応として 71 で 1 分 30 秒の (1) ~(3) を 1 サイクルとして 35 サイクル 最後に伸長反応の延長として 71 で 7 分反応させた サケ科魚類の PCR の温度サイクルでは 最初の熱変性として 95 で 8 分 次に (4) 熱変性として 94 で 30 秒 (5) アニーリングとして 55 で 15 秒 (6) 伸長反応として 72 で 1 分の (4) ~(6) を 1 サイクルとして 35 サイクル 最後に伸長反応の延長として 72 で 7 分反応させた 両魚種判別法における PCR 反応は サーマルサイクラー GeneAmp PCR System 9700(Life Technologies 社 ) を用いて行った 2.4 制限酵素処理マグロ属魚類の魚種判別法では 3 種類の制限酵素 Alu I(Fermentas 社 ) Mse I(New England biorabs 社 ) 及び Tas I(Fermentas 社 ) を使用した サケ科魚類の魚種判別法では 4 種類の制限酵素 Alu I Dde I(TOYOBO 社 ) Sau 3AI(TOYOBO 社 ) 及び Mva I(Fermentas 社 ) を使用した Alu I は 5Unit Mva I は 4Unit Mse I(TOYOBO 社 ) 及び Tas I(Fermentas 社 ) は 2.5 Unit 使用し 制限酵素反応液は PCR 産物 10 μl に滅菌水を加えて全量 20 μl に調整した 制限酵素処理は Alu I Mse I Dde I Sau 3AI 及び Mva I 制限酵素反応液を 37 Tas I 制限酵素反応液を 65 でそれぞれ 1.5 時間 GeneAmp PCR System 9700(Life Technologies 社 ) を用いて実施した 2.5 電気泳動 2.5.1 アガロースゲル電気泳動 ( 従来法 ) アガロース電気泳動のアガロースは Agarose LE( 和光純薬社 ) を用い ゲルの濃度は 3.0 %(w/v) とし エチジウムブロミド ( 和光純薬社 ) をゲル 100 ml 当たり 2 μl 使用し 電気泳動緩衝液は TAE 緩衝液を用いた 分子量マーカーとして 100 bp ラダー ( プロメガ社 ) を使用した 電気泳動装置は Mupid-II( コスモバイオ社 ) を使用した 電気泳動結果は電気泳動撮影装置 AE-6931FXCF ( アトー社 ) を用いて画像データで記録した なお TAE 緩衝液は 8 mmol/l Tris-HCl, 8 mmol/l 酢酸, 0.2 mmol/l EDTA で調製したものを用いた 2.5.2 全自動電気泳動装置による電気泳動マイクロチップ電気泳動装置 MultiNA( 島津製作所社 ) 用の電気泳動キットのうちマグロ属魚類の魚種判別法では DNA-1000 キットを サケ科魚類の魚種判別法では DNA-500 キットを用いた -9-

食品関係等調査研究報告 Vol. 34 (2010) 電気泳動操作は電気泳動装置及びキットのプロトコールとおり使用した キット外の試薬としては TE 緩衝液 (ph 8.0)( 和光純薬社 ) SYBR Gold ( インビトロジェン社 ) 分子量マーカーとして DNA-500 キットについては 25 bp ラダー ( プロメガ社 ) DNA-1000 キットについては φ 174 DNA/Hae III Makers( プロメガ社 ) 及び 100 bp ラダー ( プロメガ社 ) を使用した 電気泳動結果は電気泳動イメージとして画像データとして保存した ノイズや目的外のピークを除去するために S/N 比 10 以上及び 1 ng/μl 以上をピークと認識するように解析ソフトウェアのピーク検知条件を設定した 電気泳動結果は装置のソフトウェア上で電気泳動イメージとして作成し保存した また 分子量マーカーから算出された DNA 断片の塩基長の測定値について評価するために マグロ属魚類では PCR 産物を制限酵素 Alu I 及び Mse I でそれぞれ処理した DNA 断片 サケ科魚類については PCR 産物を制限酵素 Dde I 及び Alu I で処理した DNA 断片の計 4 制限酵素処理液の電気泳動を異なる実験日で 7 回実施し 判別に用いる DNA 断片の塩基長の測定を行った 3. 結果及び考察 マグロ属魚類及びサケ科魚類の判別について 従来法であるアガロースゲル電気泳動と全自動電気泳動装置による電気泳動の比較を行った ( 図 1 図 2) 判定に用いるすべての DNA 断片はピークの検出条件 S/N 比 10 以上及び 1 ng/μl 以上で検出された さらに DNA-500 キットでは アガロースゲル電気泳動では分離できなかった 10-15 bp 差の DNA 断片の検出が可能であり さらに アガロースゲル電気泳動で検出が困難な 25-80 bp の短い DNA 断片の検出が可能であった 図 1.1 マグロ属魚類 Alu I 処理後の電気泳動パターンアガロースゲル電気泳動 ( 左 ) 及び全自動電気泳動装置による電気泳動イメージ ( 右 ) -10-

図 1.2 マグロ属魚類 Mse I 処理後の電気泳動パターンアガロースゲル電気泳動 ( 左 ) 及び全自動電気泳動装置による電気泳動イメージ ( 右 ) 図 1.3 マグロ属魚類 Tas I 処理後の電気泳動パターンアガロースゲル電気泳動 ( 左 ) 及び全自動電気泳動装置による電気泳動イメージ ( 右 ) 図 2.1 サケ科魚類 Dde I 処理後の電気泳動パターンアガロースゲル電気泳動 ( 左 ) 及び全自動電気泳動装置による電気泳動イメージ ( 右 ) -11-

食品関係等調査研究報告 Vol. 34 (2010) 図 2.2 サケ科魚類 Alu I 処理後の電気泳動パターンアガロースゲル電気泳動 ( 左 ) 及び全自動電気泳動装置による電気泳動イメージ ( 右 ) 図 2.3 サケ科魚類 Sau 3AI 処理後の電気泳動パターンアガロースゲル電気泳動 ( 左 ) 及び全自動電気泳動装置による電気泳動イメージ ( 右 ) 図 2.4 サケ科魚類 Mva I 処理後の電気泳動パターンアガロースゲル電気泳動 ( 左 ) 及び全自動電気泳動装置による電気泳動イメージ ( 右 ) -12-

また アガロースゲル電気泳動では目視で塩基長を推測し 検出の確認を行っているが 全自動電気泳動装置による電気泳動では 分子量マーカーから目的の DNA 断片の塩基長の測定値が算出される この算出された測定値について DNA-500 キット及び DNA-1000 キットともに塩基配列から推定した理論上の DNA 断片の塩基長と測定値の差が 10 bp 以上ある DNA 断片の測定値がみられ ( 表 1) 測定値から DNA 断片の塩基長を特定することは困難であった しかし 各 DNA 断片の塩基長の測定値の標準偏差は DNA-1000 キットにおけるマグロ属魚類判別用の PCR 産物 (915 bp) の測定値以外は 5 以下であり 同じ塩基長の DNA 断片では安定した値をとるものと推定された 実際の検査では 検査試料由来の DNA 断片と標準 DNA 由来の DNA 断片の電気泳動を同一測定ランで実施し 標準の DNA 断片の塩基長の測定値から分析法の安定性を確認し その測定値を基に検査試料の DNA 断片の検出を確認し 判別する必要があると思われる 表 1.1 DNA 断片の塩基長の測定値平均と標準偏差 (DNA-500) DNA 断片の塩基長測定値平均測定値平均との差判別魚種 制限酵素 (bp) (bp) (bp) 標準偏差 314 サケ科魚類 Dde Ⅰ 326.5 12.5 3.5 233 サケ科魚類 Dde Ⅰ 237.5 4.5 3.4 206 サケ科魚類 Dde Ⅰ 211.7 5.7 2.8 164 サケ科魚類 Dde Ⅰ 168.1 4.1 3.1 150 サケ科魚類 Dde Ⅰ 153.6 3.6 2.1 81 サケ科魚類 Dde Ⅰ 90.6 9.7 1.1 64 サケ科魚類 Dde Ⅰ 75.4 11.4 1.4 27 サケ科魚類 Dde Ⅰ 30.0 3.0 1.5 314 サケ科魚類 Alu Ⅰ 323.0 9.0 2.8 184 サケ科魚類 Alu Ⅰ 181.0 2.7 2.7 130 サケ科魚類 Alu Ⅰ 134.2 4.2 2.2 124 サケ科魚類 Alu Ⅰ 128.0 4.0 2.8 93 サケ科魚類 Alu Ⅰ 102.3 9.3 1.9 60 サケ科魚類 Alu Ⅰ 68.0 8.0 0.5 37 サケ科魚類 Alu Ⅰ 38.3 1.3 1.5 表 1.2 DNA 断片の塩基長 (bp) DNA 断片の塩基長の測定値平均と標準偏差 (DNA-1000) 測定値平均判別魚種 制限酵素測定値平均との差標準偏差 (bp) 915 サケ科魚類 Alu Ⅰ 958.7 43.7 15.9 432 サケ科魚類 Alu Ⅰ 414.2 17.8 3.7 295 サケ科魚類 Alu Ⅰ 296.8 1.8 1.8 280 サケ科魚類 Alu Ⅰ 280.0 0.0 3.0 188 サケ科魚類 Alu Ⅰ 182.4 5.6 1.8 152 サケ科魚類 Alu Ⅰ 146.3 5.8 0.9 147 サケ科魚類 Alu Ⅰ 142.5 4.5 1.6 121 サケ科魚類 Alu Ⅰ 120.6 0.4 2.0 915 サケ科魚類 Mse Ⅰ 968.0 53.0 5.9 294 サケ科魚類 Mse Ⅰ 293.0 1.0 4.7 264 サケ科魚類 Mse Ⅰ 262.1 1.9 2.9 254, 255 サケ科魚類 Mse Ⅰ 253.9 0.6 2.3 224 サケ科魚類 Mse Ⅰ 221.5 2.5 1.2 194 サケ科魚類 Mse Ⅰ 194.3 0.3 1.3 130 サケ科魚類 Mse Ⅰ 128.5 1.5 1.2 115 サケ科魚類 Mse Ⅰ 112.5 2.5 1.2-13-

食品関係等調査研究報告 Vol. 34 (2010) 4. まとめ マグロ属魚類及びサケ科魚類の判別法について 全自動電気泳動装置による電気泳動とアガロースゲル電気泳動を比較したところ 全自動電気泳動装置による電気泳動でもアガロースゲル電気泳動と同様にマグロ属魚類並びにサケ科魚類の魚種判別のための DNA 断片の塩基長の検出が可能であることが明らかとなった さらに 全自動電気泳動装置では DNA 断片の塩基長の分離能が高く アガロースゲル電気泳動では分離できなかった 10-15 bp 差の DNA 断片の分離や検出できなかった 25-80 bp の短い塩基長の DNA 断片の検出が可能となることが確認できた 分子量マーカーから算出した DNA 断片の塩基長の測定値は 塩基配列から推定した理論上の DNA 断片の塩基長と 10 bp 以上差がある測定値もあり 測定値から DNA 断片の塩基長を特定することは難しいが 測定値の標準偏差は 5 以下であり 同一 DNA 断片の塩基長では一定の範囲の測定値をとるものと考えられた 5. 文献 1) マグロ属魚類の魚種判別マニュアル, 農林水産消費技術センター / 水産総合研究センター 平成 17 年 4 月 27 日 ( 平成 18 年 12 月 14 日一部改正 ) 2) Russell J V, Hold L G, Pryde E S, Rehbein H, Quinteiro J, Rey-Mendez M, Sotelo G C, Perez-Martin I R, Santos T A, Rosa C., Use of restriction fragment length polymorphism to distinguish between salmon species, J. Agric. Food Chem., 48(6), 2184-2188, 2000-14-