食物アレルギーから見た離乳食の考え方

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独立行政法人国立成育医療研究センターエコチル調査メディカルサポートセンター特任部長生体防御系内科部アレルギー科医長 大矢幸弘 1

表1 - 1 食物に関連するアレルギー疾患

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第3章 調査のまとめ

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抗ヒスタミン薬の比較では 抗ヒスタミン薬は どれが優れているのでしょう? あるいはどの薬が良く効くのでしょうか? 我が国で市販されている主たる第二世代の抗ヒスタミン薬の臨床治験成績に基づき 慢性蕁麻疹に対する投与 2 週間後の効果を比較検討すると いずれの薬剤も高い効果を示し 中でもエピナスチンなら

別紙様式 (Ⅱ)-1 添付ファイル用 本資料の作成日 :2016 年 10 月 12 日商品名 : ビフィズス菌 BB( ビービー ) 12 安全性評価シート 食経験の評価 1 喫食実績 ( 喫食実績が あり の場合 : 実績に基づく安全性の評価を記載 ) による食経験の評価ビフィズス菌 BB-12

2015 年 11 月 5 日 乳酸菌発酵果汁飲料の継続摂取がアトピー性皮膚炎症状を改善 株式会社ヤクルト本社 ( 社長根岸孝成 ) では アトピー性皮膚炎患者を対象に 乳酸菌 ラクトバチルスプランタルム YIT 0132 ( 以下 乳酸菌 LP0132) を含む発酵果汁飲料 ( 以下 乳酸菌発酵果

72 豊橋創造大学紀要第 21 号 Ⅱ. 研究目的 Ⅲ. 研究方法 1. 対象 A B


相談内容 1 アトピー性皮膚炎 + 食物アレルギー ( アナフィラキシー歴有 )+ 喘息疾患の小学生男児 年齢が上がるにつれて自分が管理していくことになるが 家でできる子どもへの指導方法 ( 教育方法 ) を知りたいです ライフサイクルに合わせた対処方法を子どもに教えたいです 回 答 1 お薬につい

今 子ども達に何が起こっているのか 1 代謝 内分泌系異常 ( 小児肥満 ) の増加 生殖異常 ( 男児の出生率の低下 ) の増加 出典 : 学校保健統計 出典 : 人口動態統計 30 年間で肥満傾向児は 1.5 倍に 男子の出生比率が減少 子どもの心身の異常に 環境中の有害物質が関与しているのでは

データの取り扱いについて (原則)

資料1-1 HTLV-1母子感染対策事業における妊婦健康診査とフォローアップ等の状況について

CQ1: 急性痛風性関節炎の発作 ( 痛風発作 ) に対して第一番目に使用されるお薬 ( 第一選択薬と言います ) としてコルヒチン ステロイド NSAIDs( 消炎鎮痛剤 ) があります しかし どれが最適かについては明らかではないので 検討することが必要と考えられます そこで 急性痛風性関節炎の

2. 栄養管理計画のすすめ方 給食施設における栄養管理計画は, 提供する食事を中心とした計画と, 対象者を中心とした計画があります 計画を進める際は, それぞれの施設の種類や目的に応じて,PDCA サイクルに基づき行うことが重要です 1. 食事を提供する対象者の特性の把握 ( 個人のアセスメントと栄

様式 1 食物アレルギーを持つ児童の保護者との面談調査票 ( 保護者 保育園記入用 ) 面談実施日 : 平成年月日 面談出席者 : 保護者側 保育園側 児童の情報 ( 保護者記入欄 ) クラス : 組 児童氏名 : 性別 : 男子 女子 生年月日 : 平成 年 月 日 年齢 : 歳 住 所 : 保護

乳幼児健康診査について

検査項目情報 6475 ヒト TARC 一次サンプル採取マニュアル 5. 免疫学的検査 >> 5J. サイトカイン >> 5J228. ヒトTARC Department of Clinical Laboratory, Kyoto University Hospital Ver.6 thymus a

特定できるものではありませんでした そのため 個人の体質や体調による影響が大きく影響したものであると判断しました よって 当該製品が原因と考えられる健康被害の発生は 確認されませんでした ただし 届出の製品と喫食実績で調査対象とした製品でルテイン量に違いがありましたので 既存情報から喫食経験および安

保健機能食品制度 特定保健用食品 には その摂取により当該保健の目的が期待できる旨の表示をすることができる 栄養機能食品 には 栄養成分の機能の表示をすることができる 食品 医薬品 健康食品 栄養機能食品 栄養成分の機能の表示ができる ( 例 ) カルシウムは骨や歯の形成に 特別用途食品 特定保健用

(3) 摂取する上での注意事項 ( 該当するものがあれば記載 ) 機能性関与成分と医薬品との相互作用に関する情報を国立健康 栄養研究所 健康食品 有効性 安全性データベース 城西大学食品 医薬品相互作用データベース CiNii Articles で検索しました その結果 検索した範囲内では 相互作用

アトピー性皮膚炎の治療目標 アトピー性皮膚炎の治療では 以下のような状態になることを目指します 1 症状がない状態 あるいはあっても日常生活に支障がなく 薬物療法もあまり必要としない状態 2 軽い症状はあっても 急に悪化することはなく 悪化してもそれが続かない状態 2 3

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アレルギー疾患対策基本法 ( 平成二十六年六月二十七日法律第九十八号 ) 最終改正 : 平成二六年六月一三日法律第六七号 第一章総則 ( 第一条 第十条 ) 第二章アレルギー疾患対策基本指針等 ( 第十一条 第十三条 ) 第三章基本的施策第一節アレルギー疾患の重症化の予防及び症状の軽減 ( 第十四条

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始前に出生したお子さんについては できるだけ早く 1 回目の接種を開始できるように 指導をお願いします スムーズに定期接種を進めるために定期接種といっても 予防接種をスムーズに進めるためには 保護者の理解が不可欠です しかし B 型肝炎ワクチンの接種効果は一生を左右する重要なものですが 逆にすぐに効

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Microsoft Word - Ⅰ‐13 3.14.doc

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本調査では アトピー性皮膚炎治療における 医師 - 患者間コミュニケーションの改善が治療継続のモチベーションを上げ 治療の満足度向上に寄与することが示唆されています サノフィジェンザイムは アトピー性皮膚炎患者さんの QOL 向上に取り組むため アレルギーに関する情報サイト アレルギー i において

エコチル調査3周年記念シンポジウム 平成26年1月31日(金) 子どもの健康と環境 エコチル調査メディカルサポートセンター特任部長 国立成育医療研究センター 生体防御系内科部 アレルギー科医長 大矢 幸弘 先生 1

として Bifidobacterium bifidum10 9 個 / 日 ( 明治 ( 株 ) から供与 ) とフラクトオリゴ糖 1g/ 日を生直後から 6 か月まで投与する 保湿薬として 0 歳児を対象にしてすでに安全性 有効性が示されている市販のセラミド コレステロール 必須脂肪酸を含む化粧品

(別添様式1)

医療機器添付文書の手引書第 5 版 第 3 章第 3 節 < テンプレート > についての補足解説 1. パルスオキシメータ (WG2 6.1から6.4) テンプレートを利用する場合 以下 5 点の解説を参照すること パルスオキシメータ ( 本体 ) 6.2 パルスオキシメータ ( 一体

ROCKY NOTE 食物アレルギー ( ) 症例目を追加記載 食物アレルギー関連の 2 例をもとに考察 1 例目 30 代男性 アレルギーについて調べてほしいというこ

H27地 08 子どもの食と栄養

1 発達とそのメカニズム 7/21 幼児教育 保育に関する理解を深め 適切 (1) 幼児教育 保育の意義 2 幼児教育 保育の役割と機能及び現状と課題 8/21 12/15 2/13 3 幼児教育 保育と児童福祉の関係性 12/19 な環境を構成し 個々 1 幼児期にふさわしい生活 7/21 12/


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さらに, そのプロセスの第 2 段階において分類方法が標準化されたことにより, 文書記録, 情報交換, そして栄養ケアの影響を調べる専門能力が大いに強化されたことが認められている 以上の結果から,ADA の標準言語委員会が, 専門職が用いる特別な栄養診断の用語の分類方法を作成するために結成された そ

より詳細な情報を望まれる場合は 担当の医師または薬剤師におたずねください また 患者向医薬品ガイド 医療専門家向けの 添付文書情報 が医薬品医療機器総合機構のホームページに掲載されています

共有化が図られること (4) 授乳や離乳への支援が 健やかな親子関係の形成や子どもの健やかな成長 発達への支援としてより多くの場で展開されること すべての項目に 支援 という言葉が使われ 授乳 離乳の支援ガイド を単なるマニュアルとしてとらえるのではなく 親子を周囲の力で支えていく 育児支援 の考え

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要望番号 ;Ⅱ-183 未承認薬 適応外薬の要望 ( 別添様式 ) 1. 要望内容に関連する事項 要望者学会 ( 該当する ( 学会名 ; 日本感染症学会 ) ものにチェックする ) 患者団体 ( 患者団体名 ; ) 個人 ( 氏名 ; ) 優先順位 1 位 ( 全 8 要望中 ) 要望する医薬品

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次世代ヘルスケア産業協議会第 17 回健康投資 WG 資料 6 職場における食生活改善の質の向上に向けて 武見ゆかり第 6 期食育推進評価専門委員会委員 ( 女子栄養大学教授, 日本栄養改善学会理事長 )

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C 型慢性肝炎に対するテラプレビルを含む 3 剤併用療法 の有効性 安全性等について 肝炎治療戦略会議報告書平成 23 年 11 月 28 日

2) エネルギー 栄養素の各食事からの摂取割合 (%) 学年 性別ごとに 平日 休日の各食事からのエネルギー 栄養素の摂取割合を記述した 休日は 平日よりも昼食からのエネルギー摂取割合が下がり (28~31% 程度 ) 朝食 夕食 間食からのエネルギー摂取割合が上昇した 特に間食からのエネルギー摂取

日本内科学会雑誌第98巻第12号

PS2011_004V2017 ENG 母乳育児 所信声明母乳育児 Breastfeeding 背景 母乳育児は 乳児が健全に成長し発育するための理想的な栄養を与える方法として 他に類を見ないものである また 生殖のプロセスにおいて欠くことのできない部分でもあり 母親の健康にとって重要な意味を伴って

標準的な健診・保健指導の在り方に関する検討会

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ン (LVFX) 耐性で シタフロキサシン (STFX) 耐性は1% 以下です また セフカペン (CFPN) およびセフジニル (CFDN) 耐性は 約 6% と耐性率は低い結果でした K. pneumoniae については 全ての薬剤に耐性はほとんどありませんが 腸球菌に対して 第 3 世代セフ


栄養素は食事として摂取されると 消化管で分解され 糖質はグルコースに タンパク質はアミノ酸に 脂肪は脂肪酸となって体の細胞に取り込まれ 身体活動のエネルギーとなり 体を構成する組織になって 生命を維持しています 不要になったものは体外に排泄されます このような代謝経路が正しく働くためには たくさんの

離乳食 卒乳 5 ヶ月頃から開始 開始のタイミングとしては 食べ 物を見せたときに口を開けているなどが言われていました 果汁は スプーンに慣らすための離乳食の準備段階として生後 2 ヶ月頃から与え 離乳食は卵から という考え方もありました 栄養価 虫歯などの観点から ある時期が来たら 断乳 すること

3 病床数 施設 ~19 床 床 床以上 284 (3 施設で未回答 ) 4 放射線専門医数 ( 診断 治療を含む ) 施設 ~5 人 226 6~10 人 人

スライド 1

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虎ノ門医学セミナー

Q7 生活管理指導表の記入の際に費用はかかりますか? A7 生活管理指導表は 健康保険の適用にはならず 自由診療となりますので 文書料などが発生する場合があります Q8 生活管理指導表における個人情報の取り扱いは? A8 生活管理指導表には アレルギー疾患を持つ子どもたちが 安心して保育所生活を送る

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別紙様式 (Ⅴ)-1-3で補足説明している 掲載雑誌は 著者等との間に利益相反による問題が否定できる 最終製品に関する研究レビュー 機能性関与成分に関する研究レビュー ( サプリメント形状の加工食品の場合 ) 摂取量を踏まえた臨床試験で肯定的な結果が得られている ( その他加工食品及び生鮮食品の場合

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2011 年 7 月 28 日放送第 47 回日本小児アレルギー学会シンポジウム7 アトピー性皮膚炎を考える から 学校保健における管理指導表の利用と課題 関東中央病院皮膚科部長日野治子はじめに私は市中の一診療病院に勤務しています アトピー性皮膚炎の患者さんも 小児から中年過ぎまで多数来院されます

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2006 PKDFCJ

< HTLV 1 ウイルスについて > HTLV 1 ウイルスはヒト T 細胞白血病ウイルス 1 型と呼 ばれ 成人 T 細胞白血病などの原因であることが分かっています 日本は先進国の中でHTLV 1 抗体の陽性者が最も多く 100 万人を越えています 西日本に多くみられましたが 人口の移動とともに

600人の耳鼻咽喉科医師とその家族対象 アレルギー疾患に関する全国調査

(別添様式)

< 富江地区 > 問い合わせ先 富江支所窓口班 電話 歳児健康相談 四種混合 12 月 3 日 ( 月曜日 ) 11 時 ~11 時 30 分富江老人福祉センター健康相談室 12 月 13 日 ( 木曜日 ) 9 時 ~9 時 15 分福江総合福祉保健センター 3 階対象者 :

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H30前 08 子どもの食と栄養

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資料 3 1 医療上の必要性に係る基準 への該当性に関する専門作業班 (WG) の評価 < 代謝 その他 WG> 目次 <その他分野 ( 消化器官用薬 解毒剤 その他 )> 小児分野 医療上の必要性の基準に該当すると考えられた品目 との関係本邦における適応外薬ミコフェノール酸モフェチル ( 要望番号

要望番号 ;Ⅱ 未承認薬 適応外薬の要望 ( 別添様式 1) 1. 要望内容に関連する事項 要望 者 ( 該当するものにチェックする ) 優先順位 学会 ( 学会名 ; 日本ペインクリニック学会 ) 患者団体 ( 患者団体名 ; ) 個人 ( 氏名 ; ) 2 位 ( 全 4 要望中 )

5_使用上の注意(37薬効)Web作業用.indd

H28後 08 子どもの食と栄養


通常の単純化学物質による薬剤の約 2 倍の分子量をもちます. 当初, 移植時の拒絶反応抑制薬として認可され, 後にアトピー性皮膚炎, 重症筋無力症, 関節リウマチ, ループス腎炎へも適用が拡大しました. タクロリムスの効果機序は, 当初,T 細胞のサイトカイン産生を抑制するということで説明されました

図 3 エビデンスプロファイル

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乳児家庭全戸訪問事業(一部改正)

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3 睡眠時間について 平日の就寝時刻は学年が進むほど午後 1 時以降が多くなっていた ( 図 5) 中学生で は寝る時刻が遅くなり 睡眠時間が 7 時間未満の生徒が.7 であった ( 図 7) 図 5 平日の就寝時刻 ( 平成 1 年度 ) 図 中学生の就寝時刻の推移 図 7 1 日の睡眠時間 親子

未承認薬 適応外薬の要望に対する企業見解 ( 別添様式 ) 1. 要望内容に関連する事項 会社名要望された医薬品要望内容 CSL ベーリング株式会社要望番号 Ⅱ-175 成分名 (10%) 人免疫グロブリン G ( 一般名 ) プリビジェン (Privigen) 販売名 未承認薬 適応 外薬の分類

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アトピー性皮膚炎におけるバリア異常と易湿疹化アトピー性皮膚炎における最近の話題に 角層のバリア障害があります アトピー性皮膚炎の 15-25% くらい あるいはそれ以上の患者で フィラグリンというタンパク質をコードする遺伝子に異常があることが明らかになりました フィラグラインは 角層の天然保湿因子の

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要望番号 ;Ⅱ-24 未承認薬 適応外薬の要望 ( 別添様式 ) 1. 要望内容に関連する事項 要望者 ( 該当するものにチェックする ) 学会 ( 学会名 ; 特定非営利活動法人日本臨床腫瘍学会 ) 患者団体 ( 患者団体名 ; ) 個人 ( 氏名 ; ) 優先順位 8 位 ( 全 33 要望中

Transcription:

資料 5 平成 30 年 12 月 27 日 授乳 離乳の支援ガイド 改定に関する研究会 ( 成田委員御提出資料 ) 第 2 回 授乳 離乳の支援ガイド 改定に関する研究会 平成 30 年 12 月 27 日 食物アレルギーの観点から 授乳 離乳を支援するポイント 国立成育医療研究センターアレルギーセンター総合アレルギー科成田雅美 1

離乳の初期に新しい食品を始める時には 茶さじ一杯程度から与え 乳児の様子をみながら増やしていく 調理法に気をつければ卵黄 ( 固ゆでにした卵黄だけを用いる ) なども用いてもよい 改訂 離乳の基本 平成 7 年 12 月厚生省児童家庭局母子保健課長通知 2

離乳食の進め方の目安 授乳 離乳の支援ガイド平成 19 年 3

現行の 参考 4 食物アレルギーについての問題点 内容がわかりにくい 何をすべきか しないほうがよいかが不明確 乳幼児における食物アレルギー発症 予防について新しい知見が報告されている 改定が必要 妊産婦及び乳幼児の栄養管理の支援のあり方に関する研究 ( 楠田班 ) でも指摘されている 4

乳幼児の栄養管理の支援のあり方に関する研究報告 ( 楠田班 ) よりガイドへの提言 CQ2.1 正期産時に母乳栄養を行うと児のアレルギー疾患を予防できるか? 母乳栄養が食物アレルギーを減らすという明確なエビデンスはない ハイリスク児に対する蛋白加水分解乳のアレルギー予防効果について 最近ではエビデンスはないとする報告が多く 少なくとも乳たんぱく質消化調製粉乳やペプチドミルクがアレルギーを予防するといった指導は避けなければならない CQ4.1 妊娠中の食事制限はアレルギーを予防するか? 湿疹や喘息のようなアレルギー疾患から子供を守るために 妊娠中や母乳育児中に特定の食品を避けるように助言することが有効である根拠は不十分である 5

食物アレルギー発症予防に関するまとめ 項目 妊娠中や授乳乳中の母親の食物除去 食物アレルギー診療ガイドライン 2016 としてのコメント 食物アレルギーの発症予防のために妊娠中と授乳中の母親の食物除去を行うことを推奨しない 食物除去は母体と児に対して有害な栄養障害をきたす恐れがある ( 完全 ) 母乳栄養母乳には多くの有益性があるものの アレルギー疾患予防という点で完全母乳栄養が優れているという十分なエビデンスはない 人工栄養 離乳食の開始時期 乳児期早期からの保湿スキンケア プロバイオティクス / プレバイオティクス 加水分解乳による食物アレルギーの発症予防には充分なエビデンスがない 生後 5~6 か月頃が適当 ( わが国の 授乳 離乳の支援ガイド 2007 に準拠 ) であり 食物アレルギーの発症を心配して離乳食の開始を遅らせることは推奨されない 生後早期から保湿剤によるスキンケアを行い アトピー性皮膚炎を 30~50% 程度予防できる可能性が示唆されたが 食物アレルギーの発症予防効果は証明されていない 妊娠中や授乳中のプロバイオティクスの使用が児の湿疹を減ずるとする報告はあるが 食物アレルギーの発症を予防するという十分なエビデンスはない 食物アレルギー診療ガイドライン 2016 日本小児アレルギー学会食物アレルギー委員会作成 6

食物アレルギー発症予防に関するまとめ 項目 妊娠中や授乳乳中の母親の食物除去 食物アレルギー診療ガイドライン 2016 としてのコメント 食物アレルギーの発症予防のために妊娠中と授乳中の母親の食物除去を行うことを推奨しない 食物除去は母体と児に対して有害な栄養障害をきたす恐れがある ( 完全 ) 母乳栄養母乳には多くの有益性があるものの アレルギー疾患予防という点で完全母乳栄養が優れているという十分なエビデンスはない 人工栄養 離乳食の開始時期 乳児期早期からの保湿スキンケア プロバイオティクス / プレバイオティクス 加水分解乳による食物アレルギーの発症予防には充分なエビデンスがない 生後 5~6 か月頃が適当 ( わが国の 授乳 離乳の支援ガイド 2007 に準拠 ) であり 食物アレルギーの発症を心配して離乳食の開始を遅らせることは推奨されない 生後早期から保湿剤によるスキンケアを行い アトピー性皮膚炎を 30~50% 程度予防できる可能性が示唆されたが 食物アレルギーの発症予防効果は証明されていない 妊娠中や授乳中のプロバイオティクスの使用が児の湿疹を減ずるとする報告はあるが 食物アレルギーの発症を予防するという十分なエビデンスはない 食物アレルギー診療ガイドライン 2016 日本小児アレルギー学会食物アレルギー委員会作成 7

乳幼児の栄養管理の支援のあり方に関する研究報告 ( 楠田班 ) よりガイドへの提言 CQ2.1 正期産時に母乳栄養を行うと児のアレルギー疾患を予防できるか? 早期離乳食開始もしくは開始を遅らせることでアレルギー発症を抑えるというエビデンスはなく リスクのある食品摂取を遅らせることでアレルギー発症の頻度を上 げる可能性もある 最新の知見 2015 年以降 CQ4.2 離乳食の開始時期を早める / 遅らせることでアレルギー疾患を予防できるか? 早期に離乳食を開始する もしくは開始を遅らせることで 児のアレルギー疾患の発症を抑制できるとするエビデンスはシステマティックレビューでも示されていない 8

乳児期早期のピーナッツ摂取とピーナッツアレルギーの発症 < 介入研究 :RCT> 対象 生後 4-11 ヶ月未満重症 AD または卵アレルギー児 LEAP study 割り付け SPTで分類 0mm, 1-4mm ピーナッツ除去群ピーナッツ摂取群 Primary outcome 生後 60ヶ月でのピーナッツアレルギー発症 関節やしわの所にかゆい 乾燥した 浸出液のある かたい皮疹 Modified SCORAD>40 ステロイドかカルシニューリン阻害剤を必要とする発疹 (12-30 日続くことが 2 回以上 ) Bamba( 菓子 ) またはピーナッツバターで 最低ピーナッツ蛋白で 6g/ 週 (3 回以上に分割 ) を摂取 Du Toit G., Lack G., et al. N Engl J Med 2015;372(9):803-813 9

乳児期早期のピーナッツ摂取とピーナッツアレルギーの発症 ITT 解析 LEAP study 乳児期からのピーナッツ摂取はアレルギー予防に有効であった 86.1% 減少 70% 減少 Du Toit G., Lack G., et al. N Engl J Med 2015;372(9):803-813 10

生後 1 年以内の鶏卵 ピーナッツ 牛乳摂取開始と食物アレルギー発症の関係 :RCT のメタ解析 JAMA. 2016;316(11):1181-1192. ピーナッツ早期摂取開始で発症予防効果あり 11

PETIT study ( 日本 ) Prevention of Egg allergy with Tiny amount InTake 2 段階式 卵の早期摂取の予防効果 湿疹があるなら 卵は 1 歳まで あたえないでください アトピー性皮膚炎と診断された乳児 147 人 卵除去群 卵摂取群 プラセボ 加熱全卵粉末 50mg/ 日 ( ゆで全卵 0.2g) 生後 6 ヶ月 プラセボ 加熱全卵粉末 250mg/ 日 ( ゆで全卵 1.1g) 生後 9 ヶ月 全卵 32g 相当の負荷試験 卵アレルキ ー 38% 有意に減少 卵アレルキ ー 8% 12 ヶ月 アトピー性皮膚炎の Proactive 療法 Natsume O, Kabashima S, et al. Lancet. 2017;389:276-286. 12

PETIT study ( 日本 ) Prevention of Egg allergy with Tiny amount InTake 2 段階式 卵の早期摂取により鶏卵アレルギー発症が抑制できた重篤な副作用なし 卵除去群対照群卵摂取群卵群卵除去群対照群卵摂取群卵群卵除去群対照群卵群卵摂取群すべて (96) 感作なし (26) 感作あり (66) Natsume O, Kabashima S, et al. Lancet. 2017 13

PETIT study ( 日本 ) Prevention of Egg allergy with Tiny amount InTake Natsume O, Kabashima S, et al. Lancet. 2017 卵の早期摂取により鶏卵アレルギー発症が抑制卵除去群では生後 9 か月で IgE が増加する 卵除去群卵摂取群卵除去群卵摂取群 4-5 9 12 月齢 4-5 9 12 月齢 4-5 9 12 月齢 4-5 9 12 月齢

生後 1 年以内の鶏卵摂取開始と食物アレルギー発症の関係 :RCT のメタ解析 卵早期摂取開始で発症予防効果あり 実際に予防に成功しているのは PETIT study のみ JAMA. 2016;316(11):1181-1192. 15

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栄養食事指導の原則 1 必要最小限の除去 過剰な除去を避ける 念のため 心配だから という理由だけで除去をしない 2 安全性の確保 十分な誤食防止対策をとる 周囲にも対応方法を理解してもらう 3 栄養面への配慮定期的に栄養評価を行う 医原性の栄養不良を未然に防ぐ 4 患者家族の QOL 維持 個々の患者 家庭環境に応じた指導をする 食物アレルギー診療ガイドライン 2016 日本小児アレルギー学会食物アレルギー委員会作成 17

離乳食の開始時期 離乳食の開始時期は 6 か月の割合が最も高く 10 年前と比べてピークが 1 か月遅くなっていた 平成 27 年度乳幼児栄養調査結果より 18

50% 45% 40% 離乳食開始時期の推移平成 17 年度 平成 27 年度乳幼児栄養調査結果より昭和 60 年 平成 7 年 平成 17 年は 0 歳 ~4 歳児の保護者が回答平成 27 年は 0~2 歳児の保護者が回答 離乳食開始時期のピークは 30 年間で 2 か月遅くなっている 35% 30% 25% 20% 15% 昭和 60 年 (1985) 平成 7 年 (1995) 平成 17 年 (2005) 平成 27 年 (2015) 10% 5% 0% 3 か月未満 3 か月 4 か月 5 か月 6 か月 7 か月以降 19