Microsoft Word - (Web) URA修正プレスリリース案

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11.【最終版】プレスリリース修正  循環器内科泉家

Microsoft Word - 【最終】05.PRECISE-IVUSプレスリリース原稿案

06. 【送付】プレスリリース原稿 LCZ696

平成20年5月20日

本扉.indd

PowerPoint プレゼンテーション

心房細動1章[ ].indd

リクシアナ錠は 血液を固まりにくくして 血管の中に血栓 ( 血液の塊 ) が できないようにするお薬です リクシアナ錠は 1 日 1 回服用するお薬です 医師の指示通りに毎日きちんと 服用してください しんぼうさいどう 心房細動は 不整脈のひとつです 心房細動になると 心臓が正しいリズムで拍動できな

目 次 1. はじめに 2. 臨床研究とは 3. 研究の目的 意義 4. 研究の対象と方法 5. 研究への自由意志参加 同意取消しの自由 6. 研究責任者 組織 7. 研究の場所 期間 8. 研究試料と情報の取り扱い 9. 研究結果の扱い 10. 研究資金源 11. 利益相反 12. 研究参加者の負

Microsoft Word - tohokuuniv-press _02 - コピー.docx

(2) レパーサ皮下注 140mgシリンジ及び同 140mgペン 1 本製剤については 最適使用推進ガイドラインに従い 有効性及び安全性に関する情報が十分蓄積するまでの間 本製剤の恩恵を強く受けることが期待される患者に対して使用するとともに 副作用が発現した際に必要な対応をとることが可能な一定の要件

ASSAF-K 登録用紙 記入方法

現況解析2 [081027].indd

スライド 1

日経メディカルの和訳の図を見ても 以下の表を見ても CHA2DS2-VASc スコアが 2 点以上で 抗凝固療法が推奨され 1 点以上で抗凝固療法を考慮することになっている ( 参考文献 1 より引用 ) まあ 素直に CHA2DS2-VASc スコアに従ってもいいのだが 最も大事なのは脳梗塞リスク

前回処方薬のワーファリン錠からリクシアナ錠に切り替えることについて 処方医から患者に休薬期間の指示はなかった また 患者に PT-INR について確認したが分からないという返答であった PT-INR 等が治療域下限以下になった上での切り替えであるか不明であるため疑義照会を行った 疑義照会の会話例 患

「心房細動における抗血栓療法に関する緊急ステートメント《

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り ( 狭窄といいます ) 血管が急にけいれんして狭くなったり( 攣縮 ) 血の塊( 血栓 ) が出来て詰まってしまうことがあります 冠動脈が狭く十分に心臓の筋肉に血液が供給されない状態で 胸が締め付けられるような感覚 痛みなどを伴った場合 狭心症とよび 循環器専門施設で冠動脈の状態をカテーテルで調

検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( ピンク ) 血液 6 ml 血清 I 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 茶色 )

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IORRA32_P6_CS6.indd

PowerPoint プレゼンテーション

第 3 節心筋梗塞等の心血管疾患 , % % % %

Background 日常診療において 手術や手技のために 経口抗凝固療法を一時中断し ヘパリンによるブリッジ療法が用いられることが多々ある しかし ブリッジ療法による血栓塞栓症の予防に対するエビデンスは限定的で 一部の患者群を除き推奨の根拠は乏しいのが現状である

平成 29 年 8 月 31 日 ( 木 ) 発売の週刊文春 (9 月 7 日号 ) 誌上において当院人工関節セン ターの活動内容が取り上げられることになりました 人工関節センターの概要をご案内させて頂きます はじめに近年の高齢化社会の到来により また人工関節自体の耐久性 精度が向上した事により本邦

られる 糖尿病を合併した高血圧の治療の薬物治療の第一選択薬はアンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬とアンジオテンシン II 受容体拮抗薬 (ARB) である このクラスの薬剤は単なる降圧効果のみならず 様々な臓器保護作用を有しているが ACE 阻害薬や ARB のプラセボ比較試験で糖尿病の新規

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データの取り扱いについて (原則)

別紙様式 (Ⅱ)-1 添付ファイル用 商品名 : イチョウ葉脳内 α( アルファ ) 安全性評価シート 食経験の評価 1 喫食実績による食経験の評価 ( 喫食実績が あり の場合 : 実績に基づく安全性の評価を記載 ) 弊社では当該製品 イチョウ葉脳内 α( アルファ ) と同一処方の製品を 200

臨床研究実施計画書

study のデータベースを使用した このデータベースには 2010 年 1 月から 2011 年 12 月に PCI を施行された 1918 人が登録された 研究の目的から考えて PCI 中にショックとなった症例は除外した 複数回 PCI を施行された場合は初回の PCI のみをデータとして用いた

対象と方法 本研究は 大阪医科大学倫理委員会で承認を受け 対象患者から同意を得た 対象は ASA 分類 1 もしくは 2 の下肢人工関節置換術が予定された患者で 術前に DVT の存在しない THA64 例 TKA80 例とした DVT の評価は 下肢静脈エコーを用いて 術前 術 3 日後 術 7

Title

Microsoft Word - Ⅲ-11. VE-1 修正後 3.14.doc

新しい経口抗凝固薬 薬剤部 鮎川英明

症例_佐藤先生.indd

血栓形成傾向の検出を目指す新たな検査法 T-TAS に関する検討 いわゆる血液ドロドロ サラサラ検査について A)PL チップ B)AR チップ T 6 T 8 (kpa) (kpa) T 1 AUC 1 T 1 AUC 3 T 1-6 T 1-8 A)PL チップ.T 1 : 基線から1kPa に

第 90 回 MSGR トピック : 急性冠症候群 LDL-C Ezetimibe 発表者 : 山田亮太 ( 研修医 ) コメンテーター : 高橋宗一郎 ( 循環器内科 ) 文献 :Ezetimibe Added to Statin Theraphy after Acute Coronary Syn

第 80 回福岡徳洲会病院倫理委員会会議の記録の概要 開催日時 : 平成 29 年 12 月 21 日 ( 木 ) 18:00-18:55 開催場所 : 看護部ミーティングルーム 委員の出欠 ( 敬称略 ) 氏名 出欠 氏名 出欠 氏名 出欠 委嘱 田中経一 出 辻本章 出 藤村直美 出 藤野昭宏

褥瘡発生率 JA 北海道厚生連帯広厚生病院 < 項目解説 > 褥瘡 ( 床ずれ ) は患者さまのQOL( 生活の質 ) を低下させ 結果的に在院日数の長期化や医療費の増大にもつながります そのため 褥瘡予防対策は患者さんに提供されるべき医療の重要な項目の1 つとなっています 褥瘡の治療はしばしば困難

2019/7/9 市民公開講座 2019 健やかな高齢社会を生きるために心臓を守ろう ~ 心不全を知るコトから始めよう ~ 藤枝市立総合病院循環器内科渡辺明規 2019 年 7 月 7 日藤枝市民会館 1

CCU で扱っている疾患としては 心筋梗塞を含む冠動脈疾患 重症心不全 致死性不整脈 大動脈疾患 肺血栓塞栓症 劇症型心筋炎など あらゆる循環器救急疾患に 24 時間対応できる体制を整えており 内訳としては ( 図 2) に示すように心筋梗塞を含む冠動脈疾患 急性大動脈解離を含む血管疾患 心不全など

Microsoft Word - 44-第4編頭紙.doc

EBM と臨床 ( その 2)

抗精神病薬の併用数 単剤化率 主として統合失調症の治療薬である抗精神病薬について 1 処方中の併用数を見たものです 当院の定義 計算方法調査期間内の全ての入院患者さんが服用した抗精神病薬処方について 各処方中における抗精神病薬の併用数を調査しました 調査期間内にある患者さんの処方が複数あった場合 そ

Microsoft PowerPoint - 薬物療法専門薬剤師制度_症例サマリー例_HP掲載用.pptx

Microsoft Word (発出版)適正使用通知案(冷凍アブレーション)

はじめに 公益財団法人循環器病研究振興財団理事長 山口武典 最近 ヘルスコミュニケーション の重要性が よく指摘されるようになりました 一見 難しそうですが かみくだいていうと よし きょうから 心機一転 健康的な生活に切り替えるぞ という決断 ( 意思決定 ) を促す きっかけ情報 を提供し その

Microsoft Word - 1 糖尿病とは.doc

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2012−第13回.pptx

CQ1: 急性痛風性関節炎の発作 ( 痛風発作 ) に対して第一番目に使用されるお薬 ( 第一選択薬と言います ) としてコルヒチン ステロイド NSAIDs( 消炎鎮痛剤 ) があります しかし どれが最適かについては明らかではないので 検討することが必要と考えられます そこで 急性痛風性関節炎の

Microsoft Word - 01.doc

03 【資料1】急性期の診療提供体制構築に向けた考え方(案)_final

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狭心症と心筋梗塞 何を調べているの? どのように調べるの? 心臓の検査虚血チェック きょけつ の きょうさく狭窄のチェック 監修 : 明石嘉浩先生聖マリアンナ医科大学循環器内科

ヒアルロン酸ナトリウム架橋体製剤 特定使用成績調査

肥満者の多くが複数の危険因子を持っている 肥満のみ約 20% いずれか 1 疾患有病約 47% 肥満のみ 糖尿病 いずれか 2 疾患有病約 28% 3 疾患すべて有病約 5% 高脂血症 高血圧症 厚生労働省保健指導における学習教材集 (H14 糖尿病実態調査の再集計 ) より

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 花房俊昭 宮村昌利 副査副査 教授教授 朝 日 通 雄 勝 間 田 敬 弘 副査 教授 森田大 主論文題名 Effects of Acarbose on the Acceleration of Postprandial

前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

能登における脳卒中地域連携

10 糖尿病患者における抗血栓療法の出血リスク. 図 1 心房細動患者におけるワルファリンの強度と虚血 出血イベント ( 文献 1 改変 ) プロトロンビン時間の INR(international normalized ratio) が2.5の場合をレファレン スとしたイベント発症のオッズ比を示す

Microsoft Word - all_ jp.docx

カテーテルアブレーション治療のご説明

解禁時間 ( ラジオ テレビ WEB): 平成 30 年 4 月 7 日 ( 土 ) 午後 1 時 ( 日本時間 ) ( 新聞 ): 平成 30 年 4 月 7 日 ( 土 ) 付夕刊 [PRESS RELEASE] 平成 30 年 4 月 3 日 夏の夜は心筋梗塞の増加に注意 日本 イタリアなど世

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ータについては Table 3 に示した 両製剤とも投与後血漿中ロスバスタチン濃度が上昇し 試験製剤で 4.7±.7 時間 標準製剤で 4.6±1. 時間に Tmaxに達した また Cmaxは試験製剤で 6.3±3.13 標準製剤で 6.8±2.49 であった AUCt は試験製剤で 62.24±2

p _抗血栓療法ガイドライン 総論-02.indd

同意説明文書(見本)

10 年相対生存率 全患者 相対生存率 (%) (Period 法 ) Key Point 1 10 年相対生存率に明らかな男女差は見られない わずかではあ

スライド 1

循環器 Cardiology 年月日時限担当者担当科講義主題 平成 23 年 6 月 6 日 ( 月 ) 2 限目 (10:40 12:10) 平成 23 年 6 月 17 日 ( 金 ) 2 限目 (10:40 12:10) 平成 23 年 6 月 20 日 ( 月 ) 2 限目 (10:40 1

ロミプレート 患者用冊子 特発性血小板減少性紫斑病の治療を受ける患者さんへ

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平成16年12月13日

プラザキサ服用上の注意 1. プラザキサは 1 日 2 回内服を守る 自分の判断で服用を中止し ないこと 2. 飲み忘れた場合は 同日中に出来るだけ早く1 回量を服用する 次の服用までに 6 時間以上あけること 3. 服用し忘れた場合でも 2 回量を一度に服用しないこと 4. 鼻血 歯肉出血 皮下出

Q2 なぜ上記の疾患について服薬指導が大変だと思いますか インフル エンザ その場で吸入をしてもらったほうがいいけれど 時間がかかるのと 熱でぼーっ 一般内科門前薬局 としていると 理解が薄い 患者さんの状態が良くないことが多い上に 吸入薬を中心に 指導が煩雑である から 小児科門前薬局 吸入薬の手

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心臓血管外科カリキュラム Ⅰ. 目的と特徴心臓血管外科は心臓 大血管及び末梢血管など循環器系疾患の外科的治療を行う診療科です 循環器は全身の酸素 栄養供給に欠くべからざるシステムであり 生体の恒常性維持において 非常に重要な役割をはたしています その異常は生命にとって致命的な状態となり 様々な疾患

Microsoft Word - 01_2_【資料1】ICD最近の動向(脳卒中、認知症)170626(反映)

2015 年 11 月 5 日 乳酸菌発酵果汁飲料の継続摂取がアトピー性皮膚炎症状を改善 株式会社ヤクルト本社 ( 社長根岸孝成 ) では アトピー性皮膚炎患者を対象に 乳酸菌 ラクトバチルスプランタルム YIT 0132 ( 以下 乳酸菌 LP0132) を含む発酵果汁飲料 ( 以下 乳酸菌発酵果

本件リリース先 文部科学記者会 科学記者会広島大学関係報道機関 広島大学学術 社会産学連携室広報グループ 東広島市鏡山 TEL: FAX: 平成 2

第1回肝炎診療ガイドライン作成委員会議事要旨(案)

ピルシカイニド塩酸塩カプセル 50mg TCK の生物学的同等性試験 バイオアベイラビリティの比較 辰巳化学株式会社 はじめにピルジカイニド塩酸塩水和物は Vaughan Williams らの分類のクラスⅠCに属し 心筋の Na チャンネル抑制作用により抗不整脈作用を示す また 消化管から速やかに

Ⅰ. 改訂内容 ( 部変更 ) ペルサンチン 錠 12.5 改 訂 後 改 訂 前 (1) 本剤投与中の患者に本薬の注射剤を追加投与した場合, 本剤の作用が増強され, 副作用が発現するおそれがあるので, 併用しないこと ( 過量投与 の項参照) 本剤投与中の患者に本薬の注射剤を追加投与した場合, 本

クリニック用 胃カメラ ( 食道 胃 十二指腸内視鏡 ) の診療行為説明内容の確認と同意書 説明書を読んで わからない点がありましたら 質問して下さい 納得できない場合は他の医師の意見 ( セカンドオピニオン ) を聞くことをお薦めします 納得された方は同意書にご署名の上 検査当日にご提出下さい ご

統合失調症発症に強い影響を及ぼす遺伝子変異を,神経発達関連遺伝子のNDE1内に同定した

研究成果報告書

別添 1 抗不安薬 睡眠薬の処方実態についての報告 平成 23 年 11 月 1 日厚生労働省社会 援護局障害保健福祉部精神 障害保健課 平成 22 年度厚生労働科学研究費補助金特別研究事業 向精神薬の処方実態に関する国内外の比較研究 ( 研究代表者 : 中川敦夫国立精神 神経医療研究センタートラン

④資料2ー2

1. はじめに ステージティーエスワンこの文書は Stage Ⅲ 治癒切除胃癌症例における TS-1 術後補助化学療法の予後 予測因子および副作用発現の危険因子についての探索的研究 (JACCRO GC-07AR) という臨床研究について説明したものです この文書と私の説明のな かで わかりにくいと

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学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 小川憲人 論文審査担当者 主査田中真二 副査北川昌伸 渡邉守 論文題目 Clinical significance of platelet derived growth factor -C and -D in gastric cancer ( 論文内容の要旨 )

患者さんへの説明書

心房細動の機序と疫学を知が, そもそもなぜ心房細動が出るようになるかの機序はさらに知見が不足している. 心房細動の発症頻度は明らかに年齢依存性を呈している上, 多くの研究で心房線維化との関連が示唆されている 2,3). 高率に心房細動を自然発症する実験モデル, 特に人間の lone AF に相当する

AC 療法について ( アドリアシン + エンドキサン ) おと治療のスケジュール ( 副作用の状況を考慮して 抗がん剤の影響が強く残っていると考えられる場合は 次回の治療開始を延期することがあります ) 作用めやすの時間 イメンドカプセル アロキシ注 1 日目は 抗がん剤の投与開始 60~90 分

「             」  説明および同意書

Transcription:

国立大学法人熊本大学 平成 28 年 1 月 26 日 報道機関各位 熊本大学 新しい抗血栓療法時代の評価法 - 複数の抗血栓薬の効果判定を一つの機器で - 熊本大学大学院生命科学研究部循環器内科学 ( 小川久雄客員教授 国立循環器病研究センター副院長 ) の海北幸一講師 有馬勇一郎医師 伊藤美和医師 末田大輔特任助教らは 虚血性心疾患 心房細動などの不整脈や 深部 静脈血栓症 ( いわゆるエコノミークラス症候群 ) 等で抗血栓薬 1 を服用中の 患者において 国産の新しい測定装置 2 ( Total thrombus-formation analysis system: T-TAS 藤森工業 ) を用いて血栓形成能 ( 血栓のできやすさ ) を測定することが薬効の評価や出血リスクの予測に有効であることを明らかにしました 抗血栓薬は血液をサラサラにする薬として 心臓病や脳卒中の予防 治療に広く用いられていますが これまではこれら多くの抗血栓薬の効果はそれぞれ異なる手法によって評価されており 一度に複数の治療薬を併用している場合などには 患者の状態に応じた一様な評価が難しい状態でした 中で も新規経口抗凝固薬 3 に関しては適切な効果判定法もなく 薬が安全で有効 かどうかを確実に判断できませんでした 本成果は T-TAS という新しい測定器を用いることで これまで抗凝固効果の判定が困難であった新規経口抗凝固薬の効果や 虚血性心疾患患者が飲んでいる複数の抗血小板薬の効果を一つの検査機器で評価できることを明らかにしたものです さらに T-TAS の測定結果は出血性合併症の指標にもなりうることが示され 一連の報告は抗血栓薬の種類 投与量の調節や 出血 血栓性疾患の新たな管理指標として用いられることが期待されます 本研究成果は 文部科学省科学研究費補助金の支援を受けて 一部の結果はすでに昨年 医学雑誌 International Journal of Cardiology に 最新の結果については Journal of Thrombosis and Haemostasis オンライン版に米国 (EST) 時間の 2016 年 1 月 16 日 ( 土 )06:46 日本時間の 1 月 16 日 ( 土 )20:46 に掲載 さらに Journal of the American Heart Association オンライン版に米国 (EST) 時間の 2016 年 1 月 25 日 ( 月 )10:00 日本時間の 1 月 26 日 ( 火 )0:00 に掲載されました 1 抗血栓薬 血栓と呼ばれる血液の固まりがひきおこす心筋梗塞や脳梗塞などの治療 予防に用いられる薬で 血液が容易に固まることを防ぎ 血栓形成を抑制します 血栓は血小板と凝固因子の相互反応により形成されますが 抗血栓薬は効果を発揮する部位に応じて 抗血小板薬と抗凝固薬に大別されます

血栓ができにくくなる ( 血液が固まりにくくなる ) 一方で 出血しやすい 出血が止まりにくいなどの副作用があります 2 血栓形成能解析システム ( Total thrombus-formation analysis system: T-TAS) 血管を模したマイクロチップと検体 ( 採血した血液 ) を送り出すポンプ 圧力センサー 光学顕微鏡で構成されるモニタリング装置 採血した血液は測定までに煩雑な前処理が不要で しかも必要な試料は 500μL と少量で済む点が特長です チップ上に流れる血液が模擬血管に血栓を形成していく様子を実際に見ることができ 血栓ができる速さや量を定量的に評価することが可能です 得られる結果は 凝固因子の活性反応を中心に測定する AR 値と 血小板の活性化を中心とした血栓形成を測定する PL 値の二つがあります 3 新規経口抗凝固薬 この数年で日本市場に広まった新しいタイプの抗凝固薬で 旧来の抗凝固薬 ( ワルファリン製剤 ) と比較してより選択的に凝固因子を抑制することができます そのため 十分な効果を保ちながら副作用 ( 出血 ) を減らすことが期待され 急速に普及している薬剤です しかし 効果を測定することが旧来の方法では困難などの問題もあります 図 : 本研究結果の概念図

1. A novel quantitative assessment of whole blood thrombogenicity in patients treated with a non-vitamin K oral anticoagulant. Sueta D, *Kaikita K, Okamoto N, Arima Y, Ishii M, Ito M, Oimatsu Y, Iwashita S, Takahashi A, Nakamura E, Hokimoto S, Mizuta H, Ogawa H. International journal of cardiology (Int J Cardiol. 197:98-100, 2015) 心房細動や深部静脈血栓症 ( エコノミークラス症候群 ) の治療に対して使われる新規経口抗凝固薬は これまでのワルファリン製剤 ( ワーファリン錠 ) と異なり 納豆や青汁などの食事制限が必要ない 血液検査で内服量を調整する必要がない 他の薬剤との飲み合わせに優れている など多くの利点がある一方で 薬価が高いことや個人に合った内服量を調整することができないといった欠点があります 整形外科で膝関節置換術や股関節置換術を行う際には深部静脈血栓症が起こりやすいことが知られており 深部静脈血栓症を予防するために新規経口抗凝固薬を予防的に使用することが保険診療で認められています 末田特任助教らは 整形外科との共同研究により 膝関節置換術目的に入院した連続 20 症例を対象として T-TAS を用いて新規経口抗凝固薬の服薬前後での血栓のできやすさを検討しました 測定の結果 新規経口抗凝固薬 ( エドキサバン ) の服薬により T-TAS 値 (AR10-AUC30) が有意に低いことが明らかとなり T-TAS が新規経口抗凝固薬の効果判定に有用であることが示されました

2. Total Thrombus-formation Analysis System (T-TAS) predicts periprocedural bleeding events in patients undergoing catheter ablation for atrial fibrillation Ito M, *Kaikita K, Sueta D, Ishii M, Oimatsu Y, Arima Y, Iwashita S, Takahashi A, Hoshiyama T, Kanazawa H, Sakamoto K, Yamamoto E, Tsujita K, Yamamuro M, Kojima S, Hokimoto S, Yamabe H, Ogawa H. Journal of the American Heart Association (J Am Heart Assoc. 2016 in press) 心房細動は日本では 70 万人以上が罹患していると推定される不整脈で 血液がよどむことにより血栓ができやすくなり 脳梗塞や全身性塞栓症の発症率が高くなります 血栓形成を予防するためには抗凝固薬による適切な治療が必要ですが 新規経口抗凝固薬の内服後に 安全かつ有効かどうかを判断する確実な指標がないのが現状です 本研究で伊藤医師らは 熊本大学循環器内科で心房細動に対してカテーテル治療を受けられた 128 症例の血栓形成能を T-TAS を用いて評価しました その結果 新規経口抗凝固薬の内服 3 日目で T-TAS 値は有意に低下し さらにカテーテル治療により出血性合併症を生じた群では カテーテル治療前の T-TAS 測定値がすでに有意に低い ( 血栓ができにくい 出血しやすい性質である ) ことが明らかとなりました 以上の結果は新規経口抗凝固薬の効果を早期に判別する測定システムであることを明らかにし 測定値を活用することにより適切な出血 血栓症予防の管理が可能になると期待されます

3. Assessment of platelet-derived thrombogenicity by the total thrombus-formation analysis system in coronary artery disease patients on antiplatelet therapy Arima Y, *Kaikita K, Ishii M, Ito M, Sueta D, Oimatsu Y, Sakamoto K, Tsujita K, Kojima S, Nakagawa K, Hokimoto S, Ogawa H. Journal of Thrombosis and Haemostasis (J Thromb Haemost. 2016 in press) 抗血小板薬はいわゆる 血液をサラサラにする薬 の一種で 狭心症や心筋梗塞 脳梗塞の再発予防に必要な抗血栓薬です 現在日本でも数種類の抗血小板薬が使用されていますが 高齢化に伴う合併疾患の増加により 抗血栓薬の多剤服用による出血性合併症 ( 薬効により血液が固まりにくくなり ) が問題となっています また狭心症の治療で冠動脈ステント留置術を受けた後 一定期間二種類の抗血小板薬を服用しなくてはなりませんが これまで異なる抗血小板薬の効果を 一つの指標で評価することはできませんでした 本研究で有馬医師 ( 現国立循環器病センター上級研究員 ) らは 熊本大学循環器内科に入院した冠動脈疾患患者 372 症例の血栓のできやすさを T-TAS を用いて評価しました T-TAS の測定値のうち 血小板による血栓形成を反映する PL 値を用いて検討した結果 抗血小板薬非服用群 ( 56 例 ) に比べて 抗血小板薬単剤使用群 ( 69 例 ) と二剤併用群 ( 149 例 ) では PL 値が有意に低下し 血小板による血栓ができにくい状態になっていることが判りました さらに 抗血小板薬の単剤使用群より二剤併用群において PL 値が更に低下することも明らかとなり 抗血小板薬の相加的な効果が明らかとなりました 以上の結果は異なる種類の抗血小板薬の効果を単一の測定値で評価できることを示したものです そのため抗血小板薬による血栓形成抑制能を総合的に評価する指標として 抗血小板薬の多剤併用の解消や 患者の状態に応じた個別の管理に活用することが期待されます お問い合わせ先 熊本大学大学院生命科学研究部循環器内科学担当 : 講師海北幸一 ( かいきたこういち ) 電話 : 096-373-5175 e-mail: kaikitak@kumamoto-u.ac.jp