沖縄県立総合教育センター離島長期研修員第 52 集研究集録 2012 年 9 月 化学 化学変化とイオンの関係性の理解を深めさせる教材の工夫 - イオンのモデルの教材化を通して - 石垣市立伊原間中学校教諭宮城光則 Ⅰ テーマ設定の理由平成 20 年度に改訂された中学校学習指導要領解説理科編の目標は, 自然の事物 現象に進んでかかわり, 目的意識をもって観察, 実験などを行い, 科学的に探究する能力の基礎と態度を育てるとともに自然の事物 現象についての理解を深め, 科学的な見方や考え方を養う とあり, 理科改訂のポイントの一つとして, 科学的な思考力 表現力等の育成の観点から, 観察 実験の結果を分析し解釈する学習活動, 科学的な概念を使用して考えたり説明したりするなどの学習活動等を充実することがあげられている 化学変化とイオン の単元の主なねらいとして 化学変化についての観察, 実験を通して, 水溶液の電気伝導性や中和反応について理解させるとともに, これらの事物 現象をイオンのモデルと関連付けてみる見方や考え方を養う と示されている 中学校の化学領域で重要なことの一つは, 粒子概念の定着であり, イオンをモデルで考えたり, 説明できるようになることが大切である 本校の実態としては, アンケートや昨年の各種学力調査等から計算やグラフの読み取りなどの基礎的な知識理解は身についているが, 自ら予想をたて, 実験結果から考察まで比較推論することが苦手な生徒が多い これらの原因として考えられることは, 実験結果から理論立てて考察する力, すなわち化学的に物事を捉える力の不足にあると思われる そこで今回の研究では, 化学変化とイオン の単元において, 化学的な事物 現象についての観察, 実験を行い, 結果をイオンのモデルを活用し考察していくことで化学的に物事を捉える力が身につき, 化学変化とイオンの関係性の理解が深まるであろうと考え, 研究テーマを設定した < 研究仮説 > 化学変化とイオン の単元において, 観察や実験を予想から結果 考察までの過程をイオンのモデルを使用し, 生徒自身が考えながら主体的に取り組んでいくことにより, イオンを粒子として捉え, 化学的に物事を捉える力が身につき, 化学変化とイオンの関係性についての理解が深まるであろう Ⅱ 研究内容 1 実態調査 (1) 目的 1 アンケート調査により生徒の実態を把握し授業設計をする上での基礎資料とする 2 研究仮説を検証する資料とする (2) 対象及び実施期日石垣市立伊原間中学校 3 年生 1 事前アンケート レディネステスト : 平成 24 年 5 月 25 日実施 2 単元別テスト : 平成 24 年 6 月 18 日実施 3 定期テスト : 平成 24 年 6 月 21 日実施 4 事後アンケート 検証テスト : 平成 24 年 7 月 17 日実施 (3) 結果と考察 1 アンケート結果 理科は好きですか の質問に対し, 約 6 割の生徒が好きと答え, 理由として 実験が楽しい などの意見が多かった なお, 苦手な理由として 計算が苦手, 内容が難しい などの意見が多かった ( 図 1) - 1 - 図 1 理科は好きですか
得意分野と苦手分野 を質問した ところ, 物理分野が苦手と答えた生徒 が半数もいた 苦手な理由として, 計 算が苦手, 公式が理解できない など の意見が多かった 化学分野の苦手な 理由としては, 記号を覚えるのが難し い, イメージができない などの意見 があった ( 図 2) 考察は自分で考えて書いていまし たか の質問では, いつも自分で考えて書いていた と答えた生徒は14% で, 図 2 得意分野 苦手分野 書いていない理由として, なんて書け ばいいのかわからない などの意見が多 かった ( 図 3) 2 アンケートからの考察 事前アンケートからわかることは, 物 理分野や化学分野に苦手意識を持ってい る生徒が多くいることがわかった その 理由として, 物理分野では計算する内容 が多く, 小数点などの計算を苦手として 図 3 考察は自分で考えて書いていましたか いるためと考えられ, 化学分野では目 に見えないものをイメージしにくいた めと考えられる また, 実験結果から自分で考察を考 えて書いている生徒は約 1 割で, 予想, 実験, 考察まで主体的に実験させる授 業の工夫が必要であることがわかった 3 レディネステスト結果と考察 化学変化とイオンの学習前のレディネステストとして, 第 2 学年第一分野化学で学習した 原子 分子 の内容の理解度を調査した 水の電気分解のモデルと化学反応式の正答率が低かった その理由として, 化学式と化学反応式の区別がつかず誤答や無答が多かったことがあげられる 図 4 レディネステスト結果 これらのことより, 化学変化を粒子概念で捉えて理解できていないため, 学習した内容の定 着が不十分であることが浮き彫りとなった ( 図 4) 2 仮説検証の手立て (1) 事前 事後アンケート結果とワークシートの感想や自己評価から, イオンモデルの活用が生徒 の主体的な取り組みと化学的な考え方を導くことにつながっていたのか, 生徒の意識の検証授業 前後での変容を分析する (2) レディネステスト及び学力テスト ( 単元別テストや定期テスト ) の結果とワークシートの感想 や自己評価から, イオンモデルの活用が生徒の化学変化とイオンの理解につながったのか, 生徒 の理解度を把握 分析する 3 理論研究 (1) 化学変化とイオンに関する基礎的な理論安井弘美 (1986 年 ) は, 中学校ではイオン概念をモデル化して教えることで理解 1 価の陽イオン 2 価の陽イオン 1 価の陰イオン - 2 - 図 5 モデル例
が深まりやすいと考えられるが, どの教科書会社で扱っているモデルも, すべての条件を満足できているわけではない モデル自体のもつ象徴性と具象性の相反する二面性からすれば当然ではないか と述べている 具体的なイオンモデルの例は図 5 である このような陽イオンモデルを 穴あきモデル, 陰イオンモデルを コブ付きモデル とそれぞれ仮称する 安井氏は, この穴あきコブ付きモデルの長所や短所を以下のように述べている ( 図 6) 長所 :1 電子の授受関係が直感的に理解できる 2 電気分解において, 両極でのイオンの移動と, そこでの電子の授受を把握しやすい 3 陽イオンと陰イオンとからなる物質について, そのイオンの生成の比が理解しやすい 短所 :1 視覚的に不安定に見えるので, イオン自身がエネルギー的に安定であることが理解されにくい 2 形が円からずれているため, ボーアモデルの概念にスムーズに考えが接続しづらい 3 イオンからできている物質の水に対する電離がうまく説明できない 図 6 穴あきコブ付きモデルの特徴 さらに安井氏は, イオンのこのモデル表現は, 電子の授受関係を端的に簡素化され表現されているという点では最適であろう しかし, イオン自体のエネルギー的な安定性から見ると, これらのモデル表現は必ずしも適切とは断言できない 穴あきモデルやコブ付きモデルは, 高校で学習する電子の授受概念に連結するという点からみれば直感的に適切なモデルとして評価できるが, 高校で学習する原子構造の中でのボーアモデルに直接連結しない点においてこれらのモデルは不適切であり, 改善の余地がある と述べている そこで, 穴あきコブ付きモデルの課題であるイオン自身がエネルギー的に安定であることが理解されやすく, 高校で学ぶボーアモデルの概念にスムーズに考えが接続しやすいようなモデルの研究に取り組んで行くこととした 4 素材研究 (1) 化学変化とイオンの関係性の理解を深めるためのモデルの作成見ることのできないものを見えるものに置き換えてモデル化することは, イメージの形成を容易にし, 理解を深め, 探求意欲を促し, さらに化学的思考を高めることができると考える 従来の丸形のイオンモデルでは生徒が結合をイメージするには十分ではなく, 教科書等で使用されてた穴あきコブ付きモデルでも課題があった そこで, 穴あきコブ付きモデルの課題であるイオン自身がエネルギー的に安定であることが理解されやすく, 高校で学ぶボーアモデルの概念にスムーズに考えが導けるようモデルを改善することとした 具体的改善内容は, 従来の穴あきコブ付きモデルに, 原子価の考えを取り入れ電子殻を表記した このイオンモデルを活用することで, いろいろなイオンどうしの結合を粒子でイメージしやすく, 電子の出入りとイオンを関連づけて理解しやすくなる また, 中和の生成物の予想や, 化学変化の理論的説明も可能になる さらに, 何度も目にすることで原子価の数やイオン式を覚えることができる 作成時の工夫のポイントは, 生徒一人一人が主体的に考えながら学べることを目的とし, ホワイトボード上で個別に扱いやすいようにモデルの素材をマグネットシートで作成した ( 図 7) モデルの裏にイオン名を記載することで, イオン名とイオン式の定着が不十分な生徒への支援となり, 個別学習に適した教材となるよう工夫した また, 厚めのマグネットシートを素材にしているため, ワークシートに記入する際, モデルを上からなぞり記入できるよう工夫した ( 図 8) 大きさや形は, 教科書のイオンモデルや原子モデルを参考にし, 原子団については, 構造式を参考に大きくなりすぎないよう工夫した 色は, 教科書のイオンモデルや原子モデルを基本とし, 教科書に記載されていないものは, 物質の見た目の色を参考にした 種類と数は, 教科書に記載されている電離式, 化学反応式に対応できるようにした 具体的なモデルの実際のサイズ, 種類と数は図 9 図 10 の通りである さらに, モデル使用上のルールは図 11 の通りで, ルールやイオン式を確認しながらモデルが作成できるよう, ルールのカードを作成した - 3 -
図 7 モデルセット ( 一人用 ) 図 8 モデルをなぞる様子 水素イオン銅イオンナトリウムイオンカリウムイオンバリウムイオン塩化物イオン 裏側 H + Na + Cu 2+ 2+ K + Cl - ナトリウムイオン Ba 9 枚 3 枚 3 枚 3 枚 3 枚 3 枚 図 9 単体のイオンモデルの種類と数 ( 実際のサイズ ) 水酸化物イオン 8 枚 硝酸イオン 3 枚 硫酸イオン 3 枚 OH - NO3 - SO4 2- 図 10 原子団のイオンモデルの種類と数 ( 実際のサイズ ) 図 11 補助カード モデル使用のルール モデル活用活用の手順 - 4 -
(2) イオンのモデル活用のためのワークシートの工夫と作成 1 イオンのモデルから電離式や化学反応式を導けるよう工夫した ( 図 12) 図 12 ワークシート ( 中和実験 ) モデル活用の手順 1. 物質名からイオンモデルを考える 2. イオンモデルで化学変化を表す 3. イオンモデルからイオン式を考える Ⅲ 指導の実際 1 単元名 化学変化とイオン 2 単元設定の理由 (1) 教材観本単元の学習では, 水溶液の電気伝導性や中和反応について理解させ, イオンのモデルと関連づけて考えることにより, 化学変化とイオンとの関係性を学びとらせたい また, ここで学ぶ現象は日常生活や社会の中で見られることに気付かせ, 物質や化学変化に対する興味 関心を高めるようにすると共に, 身の回りの物質や事象を新たな見方や考え方でとらえさせることが大切である (2) 生徒観 化学変化 について, 第 2 学年で 化学変化と原子 分子 について学習しているため, 化学変化が物質を構成している原子や分子の結びつきの変化によるものであることは理解できているが, イオン については, ほとんどの生徒が化学変化や原子 分子と関連づけて理解できていない (3) 指導観 化学変化とイオン の単元を通し, 化学的な事物 現象についての観察, 実験を行う際に, 実験の結果を予測したり, 考察することを重要視し, 目的意識を持って実験に取り組む姿勢を身につけさせたい また その結果を生徒自身にイオンのモデルを使って考察させることにより, 化学的な見方や考え方を身につけさせたい そして, 化学変化とイオンの関係性についての理解を深めていきたい - 5 -
3 単元の目標化学変化についての観察 実験を通して, 水溶液の電気伝導性や中和反応について理解させるとともに, これらの事物 現象をイオンのモデルと関連づけて見る見方や考え方を養う また, 物質や化学変化に対する興味 関心を高め, 身のまわりの物質や事象を新たな見方や考え方でとらえさせる 4 単元の評価規準 関心 意欲 態度科学的な思考 表現観察 実験の技能知識 理解 ア酸 アルカリ, 中和とア酸 アルカリの性質をア観察, 実験の基本操作をア酸 アルカリの性質と中 塩に関する事物 現象をイオンとの関係から考え, 習得するとともに, 結果和反応による水と塩の生成 日常生活と関連づけて捉表現している の記録や整理などをしてについて, 基本的な概念を え, 興味を持って取り組イ中和による水と塩の生いる 理解し, 説明することがで もうとする 成について自らの考えをイ中和でできた塩をイオきる まとめ, 塩の種類を化学ンモデルで作ることがでイ塩には水に溶ける塩と水 式で説明している きる に溶けない塩があることに ついて, 説明できる 5 単元の指導計画と評価計画 関 関心 意欲 態度 思 科学的な思考 表現 技 観察 実験の技能 知 知識 理解第 1 単元化学変化とイオン (27 時間 ) 第 3 章酸, アルカリとイオン (8 時間 ) 時学習内容と学習活動指導目標評価観点 評価方法 間関思技知 教材教具 1 1 水溶液の酸性, アルカリ性 実験の結果をもとに, 共通する性質にア 発表 態度 実験 4 ついて指摘させる 学習ノート 酸性, アルカリ性の水溶液の性質を 実験を安全に注意して行い, 実験の結ア 実験器具 調べる 果を正確に記録させる 2 実験 5 イオンの移動 実験結果から, 酸性とアルカリ性の水ア 発表 態度 塩酸または水酸化ナトリウム水溶液溶液に共通なイオンは, 水素イオンと 学習ノート を中央にしみこませた寒天に電圧を水酸化物イオンであることを指摘させ 実験器具 加えて, 指示薬の変化を調べる る 指示薬の変化を調べて記録させる 3 酸, アルカリの電離 電離の様子をイオンモデルを使い表せア 発表 態度 酸性とアルカリ性の水溶液の電離のるようにさせる ワークシート 様子をイオンモデルを使い, 式で表 電離を式で表すことができるようにさア す せる 4 科学のとびら リトマスとは 身のまわりの水溶液の ph を, 興味をア 発表 トライもって調べさせる 態度 身のまわりの物質の ph 測定 ph の意味を説明できるようにさせる ア 5 2 酸とアルカリの水溶液を混ぜ合わ 互いの性質を打ち消し合う中和の反応ア 発表 せる が起こることを指摘させる 態度 実験 6 こまごめピペットを正しく使って, 少ア 学習ノート 酸とアルカリの水溶液を混ぜ合わせ量の液体を正確に測りとれるようにさ 実験器具 る せる 6 中和と中性のちがい 水素イオンと水酸化物イオンが結びつア 発表 塩酸と水酸化ナトリウム水溶液の中き, 水ができることをイオンのモデル 態度 和によって, 水と塩化ナトリウムがを使って説明させる 学習ノート できることをイオンのモデルを使っ 中和と中性のちがいについて説明させイ て考える る 7 塩のでき方をイオンの結びつきから考 中和による水と塩の生成について自らイ 発表 える の考えをまとめ, 例をあげて説明させ 態度 本る ワークシート ア - 6 -
時 中和によってできた塩をイオンモデルイ や化学式で表現させる 塩には水に溶ける塩と水に溶けない塩 があることについて, 説明させる 8 活用問題 環境保全の視点から身のまわりの水溶ア 発表 態度 科学のとびら液や物質を考えさせる 学習ノート 生まれ変わった酸性の川 水溶液中のイオンの変化と濃度と体積イ ワークシート 発展 イオンの濃度と体積の関係 の関係をモデルで表し, 説明させる ( 章末問題 ) 章末チェック問題 6 本時の学習指導 (7/8) (1) 主題名酸とアルカリの水溶液を混ぜ合わせる (2) 本時の目標塩のでき方をイオンの結びつきから考え, できる塩の物質名と化学式を答えることができる (3) 授業仮説中和によってできる様々な塩のでき方をモデルを使うことによって, イオンの結びつきが理解でき, できる塩の物質名と化学式を答えることができるであろう (4) 形成的な評価規準 評価の観点 評価規準 評価規準 A 十分満足できる B おおむね満足できる C 支援の具体的方法評価方法 実験 技能 中和ででき中和によってできた塩をイイオンモデルの使い方イオンモデルの使用方発表 た塩をイオンモデルで表すオンモデルで表すことがでを理解し, 塩をモデル法を再度説明する ことができる きる で表そうとする 思考 表現 中和による塩の意味と塩の種類につい塩の意味を説明できる ノートで中和と塩の意発表 水と塩の生成について自らて, 化学式で表すことがで の考えをまとめ, 塩の種類き, 例をあげて説明できる を化学式で説明している 味を復習させる 知識 理解 塩には水に塩には水に溶ける塩と水に塩には水に溶ける塩と水に溶ける塩と水に溶発表 イ ワークシート 溶ける塩と水に溶けない塩溶けない塩があることにつ水に溶けない塩があるけない塩を再度実験結ワークシート があることについて, 説明いて, 実験結果から説明でことを実験結果から理果で確認させ, 理解さテスト できる きる 解する せる (5) 教材 教具希硝酸 30ml 希硫酸 30ml 水酸化カリウム水溶液 30ml 水酸化バリウム水溶液 30ml ビーカー 試験管 ワークシート パソコン プロジェクター スクリーン スライドガラス ガラス棒 イオンモデル ( 黒板 ホワイトボード用 ) ホワイトボード ( 机上作業用 ) ドライヤー バット (6) 本時の展開 時学習活動形留意点 ( ) 評価 ( ) 間 生徒の学習活動 教師の活動 支援態教具準備 ( ) 導 復習一 机の上に準備する教具 入 確認問題 塩化銅モデル斉 イオンモデル 5 銅イオン + 塩化物イオン 塩化銅 ホワイトボード 分 モデル使用方法再確認 ワークシート 展 1 ねらいを確認する 一 開 授業の目的を明確にする 斉 40 ねらい : 塩をイオンの結びつきから考えよう 分 ワークシートに書く 書き終えたか確認する 個 机間巡視で確認する 2 中和をモデルで表そう モデルと式を考える 中和 : 酸 + アルカリ 水 + 塩 個 - 7 -
モデルと式を発表する 指名して発表をさせる 3 中和の実験の説明と準備をする 実験の説明を受ける 実験説明と薬品の注意をする 一 実験準備 硝酸 水酸化カリウム水溶液 硫酸 水酸化バリウム斉 溶液 ビーカー バット 試験管 試験管立て ガラス棒 一 斉 机間巡視 実験 技能 [ ワークシート ] 中和をイオンモデルで作る ことができ, 式で表すこと ができる 机間巡視し, 準備の確認と 実験準備をする 準備できているか確認する 班薬品の取り扱いに注意させ 薬品が手についたらすぐに水でる 洗い流すよう指導する 4 実験を行い結果を確認する 班 透明なろ液を調べる方法を 実験 硝酸と水酸化カリウム水溶液を中和させる 生徒から導き出す 硫酸と水酸化バリウム水溶液を中和させる 安全面に注意させる 溶液を少量とり, ドライヤー 塩の結晶を確認する方法を生徒から班 [ 準備器具 ] で乾燥させ, 再結晶で塩を確 引き出す ドライヤー 認する 結果が書けた班を確認し, 薬品に注 スライドガラス ワークシートに記入する 意させ片付けさせる 個 スポイト 片付ける 班 協力して片付けさせる 5 実験結果をモデルを使って表す 個 モデル作成のルールの理解 が不十分な生徒には机間指 導をする イオンモデルからできた塩 は何か考えさせる モデルのルールと原子の性 質にそって答えを導き出せ たかを確認する 硝酸と水酸化カリウムの中和硫酸と水酸化バリウムの中和 ホワイトボードでモデルを 結果 : 硝酸と水酸化カリウムを混ぜると 発表させる ( 混ぜる ) 硝酸カリウムと水ができる 実験 技能 硫酸と水酸化バリウムを混ぜると 中和でできた塩をイオンモ ( 混ぜる ) 硫酸バリウムと水ができるデルで作ることができたか 6 中和でできた塩は何か指名さ一 思考 判断 [ 発表 ] れた生徒が発表する 指名して発表をさせる 斉 できた塩について, 具体的 発表を聞く 全員発表に注目させる に説明できる 7 答えを確認し, ワークシート 間違った答えを記入しないようにさ一 机間巡視して, 記入し記入をする せる 斉た答えを確認する 8 化学反応式を考える 個 モデルを参考にし, 自らの力で考える 自分自身で, モデルを使って考えて書くよう促す 9 化学反応式を発表をする 指名して発表をさせる 一 思考 表現 [ 発表 ] 他の生徒は発表を聞く 全員発表に注目させる 斉 塩を化学反応式で表すこと ができたか - 8 -
ま 10 答え合わせとまとめをする 説明を集中して聞かせる 一 評価 知識 理解 と 11 ワークシートに答えを記入す 間違った答えを記入させないように斉 中和してできる塩が何か め る させる 書けている 5 12 感想と自己評価を記入する 具体的に自分の考えを書かせる 目に見えない塩もあること 分 13 ワークシートの提出と器具の 全員が提出しているか確認する を感想に書いている 片付けをする [ ワークシートの感想 ] 14 次時の確認 連絡をする 次時の確認 連絡をする ワークシートから理解度を 確認する [ ワークシート ] Ⅳ 仮説の検証 1 イオンモデルの活用により生徒の主体 的な取り組みと化学的な考え方を導くことにつながったかワークシートより, ほぼ全員の生徒がイオンモデルのルールを理解し扱うことができていた その中で, 約 8 割の生徒が中和の化学変化の様子をモデルで表すことができ, 反応後の物質名まで記入できていた さらに, 約 5 割の生徒がモデルから正しい化学反応式を自ら考え導き出せていた ( 図 13) また, 感想からも, 一価や二価のイオンや, 陽イオンと陰イオンの組み合わせから, 原子 分子と結 図 13 ワークシートからわかるイオンモデルについて びつけて化学変化を化学的に考えること 一価や二価のイオンの組み合わせで, 水が多くできることができていることがうかがえた ( 図 14) もあることがわかった アンケートからも イオンモデルはわか 中和でできる物質は, 水から考えれば, 残った+イオンとりやすかったか という質問に対し, 約 8 -イオンでどんな塩ができるのかわかった 割の生徒が肯定的な回答を示した ( 図 15) なぜいろいろな種類の塩ができるのかわかった また, ワークシート内の感想からも モ 化学式は+イオンから先に書かないといけないことがわかデルを考えてから式を書いたら書きやすった かった などの感想が多くあった この ことから, イオンモデルの活用が生徒の主体的取り組みにつながり, 化学的な考え方を導くことにつながったといえる 図 14 モデル使用後のワークシート内の感想 2 イオンモデルの活用が生徒の化学変化 とイオンの関係性の理解につながったか単元の第 1 章でイオンについて学んだ後にアンケートを実施し, イオンに+や -などの違いがあることが理解できたか という質問をした その後, 単元の第 3 章でモデルを使用した後に, 同様の質問をしたところ, わかった と回答した生徒が約 3 割増え, 使用前より説明の内容も具体的に答えられる生徒が増えた ( 図 16 図 17) 図 15 イオンモデルはわかりやすかったか また, 単元別小テストで 塩化ナトリウム 塩酸 ( 塩化水素 ) の電離式を問題とし理解度を調査 した その結果, 平均正答率は約 4 割であり, 三日後の定期テストで同じ問題を出題した結果でも 約 5 割の正答率であった 2 回のテスト結果より, 繰り返しテストを実施しても大きな変容は見ら れず, 定着が不十分であることがわかった - 9 -
しかし, 一ヶ月後に単元の第 3 章でイオンモデルを使用して学習した後に単元別小テストを再度行った その結果, 平均正答率が約 8 割に上がり, さらに, 間違った問題をモデルを使用して解かせたところ, 約 9 割の正答率となったことから, イオンモデルの活用が生徒の化学変化とイオンの関係性の理解につながったと言える ( 図 18) 原子の電子が増えたり, 減ったりすることによって, 陽子と電子の数に差が生まれ, その差によって+や-などが変わる 電子の数がそれぞれ違い, イオンになるときは,2, 8,8の形に近づこうとするから 原子にもともとある電子の数がいろいろ違って多いから減らすのもあれば, 少ないからもらうものもあるのでそのときに電子が陽子よりも多いか少ないかで違うから 図 16 原子価の理解の確認 図 17 イオンの意味の理解度 図 18 理解度調査テスト結果 Ⅴ 成果と課題 1 成果 (1) イオンモデルを活用し, 生徒一人一人が考えながら授業に参加することで, 生徒の主体的取り組みにつながった (2) イオンモデルを活用したことで, 陽イオンと陰イオンの関係性から化学変化による生成物を考えることができ, 化学的な考え方を導くことにつながった (3) イオンモデルを何度も繰り返し使うことで, 化学変化を粒子でイメージすることができ, 粒子概念の定着と化学変化とイオンの関係性の理解に有効的であることがわかった 2 課題 (1) 立体の物質を平面モデルで表すことに限界があるため,2 価の原子団のイオンとの結合が正しく表現できない部分があり, モデルの形の改善や特別な場合の使用方法を見直す必要がある (2) イオンモデルを書き写すのに時間がかかる生徒への支援として, モデルの大きさとワークシートを工夫改善していく必要がある (3) 今後の学習計画の中でイオンモデルを繰り返し活用し, 理解の定着を図っていく必要がある 主な参考文献 福地孝宏 2011 Mr.taka 中学校理科の授業記録 3 年文部科学省 2008 中学校学習指導要領解説理科編 大日本図書安井弘美 1986 中 高の関連を重視した理科教材の一考察 CiNii 収録論文 - 10 -