静岡大学との連携による新技術説明会 2014 年 11 月 7 日 1 表面プラズモンアンテナ付き フォトダイオードによる屈折率測定 研究者 : 静岡大学電子工学研究所教授猪川洋 助教佐藤弘明 説明者 : 猪川洋
開発の経緯 SOI LSI の普及 部分空乏型 ( ハイエンド MPU ゲーム機 ) 完全空乏型 (22 nm 世代以降にも対応 ) 光検出器は LSI に新たな機能を付与課題 : 薄い SOI の光吸収効率は極めて低い 量子効率の改善 格子状表面プラズモン (SP) アンテナの導入 約 1 桁の改善 動作機構の解明 TM/TE 偏光への応答 アンテナ材料依存性 回折光と SOI 導波路中の伝搬モードとの結合 屈折率測定への応用 光の斜め入射による分光感度ピークの分裂 屈折率測定が実現 SOI: Silicon On Insulator 2
3 SP アンテナ付き SOI PD の構造 表面プラズモンアンテナ (Au) V r V g " 表面プラズモン " アンテナ (Au) V r V g n + p + p - Si 層 Si 基板 V sub SiO 2 連続した Au 格子のアンテナ薄い (~5 nm) ゲート絶縁膜実験的には不成功 n + p + p - Si 層 Si 基板 V sub SiO 2 不連続な Au 格子のアンテナ厚い (~100 nm) ゲート絶縁膜実験的にも成功
連続した Au 格子の SP アンテナによる特性 Surface plasmon antenna V r V g n + p + SiO 2 p - Si layer Si substrate h h V sub t = 30 nm p = 200 nm w = 140 nm h t SOI = 100 nm 5 nm SiO 2 吸収効率は Au の厚さと共に増加し 80 nm で 37%(14 倍の向上度 ) に達する Finite-difference time-domain (FDTD) シミュレーション Satoh 2012 IEEE TNANO 4
光吸収効率 (%) 不連続な Au 格子の SP アンテナによる特性 " 表面プラズモン " アンテナ (Au) V r V g n + p + SiO 2 p - Si 層 線幅 / ピッチ =0.7 Si 基板 V sub 絶縁膜上の薄いシリコン (SOI: Silicon On Insulator) を使用 70 60 50 40 30 20 10 100-nm SOI アンテナ無し 7.4 150 効率 (%) ピッチ (nm) 35 250 25 200 0 400 450 500 550 600 650 700 750 800 波長 (nm) 薄い SOI(100 nm) に対しても波長 700 nm において光吸収効率 60% ( 向上度 18) が達成可能 60 300 52 350 FDTD シミュレーション (Satoh 2011 SSDM) 5
外部量子効率 SP アンテナ付きフォトダイオードの実測結果 アノード SP p+ n+ アンテナ ゲート 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 アンテナ無し TM 偏光 p = 300 nm 280 320 260 340 カソード H E TM 0.0 400 500 600 700 800 波長 (nm) 95 nm の薄いシリコン層でも波長 680 nm において量子効率 25%( 向上度 8.2 倍 ) を達成 Satoh 2013 IEEE Trans. ED 6
分光イメージングへの応用 光 フォト ダイオード 従来のカラー イメージセンサ マイクロレンズカラーフィルタ Al 遮光膜 Si 基板 従来方式 色の数だけ異なったフィルタ材料が必要 リソグラフィ工程も色の数だけ必要 SP アンテナ アンテナ材料は 1 種類 リソグラフィ工程も 1 回 超多色化が容易に Kazuya Yonemoto 7
外部量子効率 外部量子効率の偏光角依存性 0.3 : 680 nm 0.2 p=300 nm 0.1 アンテナ無し 0 0 15 30 45 60 75 90 (TM) 偏光角 (deg) (TE) H E TM E H TE TE/TM 偏光の弁別比 46 を達成 偏光を利用した光通信や偏光イメージングへの応用が考えられる Satoh 2013 IEEE Trans. ED 8
外部量子効率 外部量子効率 TM/TE 偏光への応答 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 アンテナ無し TM 偏光 p = 300 nm 280 320 260 340 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 アンテナ無し p = 340 nm 320 300 280 260 TE 偏光 0.0 400 500 600 700 800 波長 (nm) 0.0 400 500 600 700 800 波長 (nm) TE 偏光に対しても量子効率のピークが生じる 表面プラズモン (SP) 以外の動作機構も含まれている Satoh 2013 IEEE Trans. ED 9
分光感度特性のアンテナ材料依存性 Au/Ti Al Ag/Ti ピーク波長は材料に依存しない ピーク高さも長波長域では殆ど同じ 安価な Al が使用可能 FDTD シミュレーション IEEE PTL 25 (2013) 1133 10
反射率 R=((n-1)^2+k^2)/((n+1)^2+k^2) 11 Al, Ag, Au の分光反射率 1 100% 90% 0.8 80% 70% 0.6 60% 50% Al Ag Reflectance Au 0.4 40% 5d 9 6s 2 30% 5d 10 6s 0.2 20% 10% 5s 5d 垂直入射 0% 0 200 0.2 400 0.4 600 0.6 Wavelength (nm) 800 0.8 ramda (um) バンド間遷移により大きな吸収が生じる (Ag, Au) Ag Au Al
g Propagation wavelength [nm] Propagation wavelength [nm] 導波路中の伝播波長 g (nm) Grating 格子ピッチ period p (nm) p [nm] SP アンテナ付きフォトダイオードの動作解析 Peak Peak wavelength wavelength ピーク波長 determined determined (nm) by by p [nm] [nm] 400 400 450 450 500 550 600 650 700 750 800 400 450 500 550 600 650 700 750 800 360 360 360 360 340 340 320 320 300 300 280 280 Au/Ti 340 320 300 280 260 260 260 TM 11 240 240 TE 1 TM 0 TE 0 240 400 450 500 550 600 650 700 750 800 Wavelength 波長 (nm) [nm] Si 導波路 g SiO 2 Si (95nm) SiO 2 Si スラブの導波路モードを解析的に計算 表面プラズモンアンテナの格子ピッチ p が SOI 導波路中の伝播波長 g と一致する時に光吸収が最大となることが判明 Satoh 2013 IEEE Trans. ED 12
外部量子効率 External QE 分光感度特性の入射角依存性 0.5 0.4 TM 偏光 polarization p = 300 nm θ = 0 10 deg 20 deg θ 0.3 0.2 0.1 0.0 400 450 500 550 600 650 700 750 800 Wavelength 波長 (nm) [nm] =0 におけるピークが斜め入射によって分裂する Satoh 2012 SSDM 13
SOI 中の伝搬波長 g ( 斜め入射の場合 ) 回折光は伝搬波長の異なる前進波と後進波に結合する 屈折率 :n 位相差 : =p(2 n/ )sin p 屈折率 :n 位相差 : =p(2 n/ )sin p /k gf 0 p x SOI 導波路中の gf 前進波 p = gf + /k gf gf =1/{(1/p)+(n/ )sin } /k gb 0 p x SOI 導波路中の gb 後進波 p = gb - /k gb gb =1/{(1/p) - (n/ )sin } Satoh 2012 SSDM 14
屈折率測定の概要 Satoh 2013 Silicon Nanoelectronics Workshop 15
光電流 (pa) Photocurrent [pa] 光電流 (pa) Photocurrent [pa] 異なる屈折率に対する分光特性の変化 n = 1.4933 10º θ = 0 10º 15 10 20º 20º 5 15 0 10 n = 1 5 0 600 650 700 750 800 Wavelength [nm] 波長 (nm) 光を斜め入射するとピーク波長が屈折率によって変化する Satoh 2013 Silicon Nanoelectronics Workshop 16
Peak ピーク波長 wavelength p (nm) λ p [nm] ピーク波長と屈折率の関係 800 ピッチ : 300 nm 750 700 650 0 deg ピークシフト量はリング共振器型のバイオセンサーと同等である [*] 600 1.0 1.1 1.2 1.3 1.4 1.5 1.6 Refractive 屈折率 index n n [*] M. Iqbal, IEEE J. Select. Topics in Quantum Electron. 16(3), 654-661 (2010) 17
18 SPR による蛍光ラベル無しバイオセンシング 表面近傍の屈折率変化を検知 金属膜 ~cm 反射光 i 検体検体受容体プリズム入射光 n + SiO 2 Si 基板 p + SP アンテナ ~10 m 従来の SPR センサ i や を変化させる複雑な光学系が必要 多数のデバイスを集積化するのが困難 SP アンテナ付きフォトダイオード シンプルで平面的な構造 多数のデバイスをチップ上に集積して処理効率を大幅に向上できる
新技術の特徴 従来技術との比較 特徴 光を当てるだけで測定でき受光系を別に設ける必要が無いため シンプルな光学系で高感度な屈折率測定が可能となる サイズが 50μm 50μm 程度と小さいため 多数のフォトダイオードを 1 チップに集積して多くのサンプルを同時に計測することが可能となる 同一チップ上に CMOS 回路を搭載することにより 制御や演算の機能も含めた計測システムが 1 チップで構築できる 比較 既存の表面プラズモン共鳴 (SPR) センサーに比べると 光学系がシンプルで サイズが小さく CMOS 回路との集積により高機能化できる点が優れている 19
20 想定される用途 一般的な液体や気体の屈折率測定 蛍光ラベルを用いない 屈折率測定にもとづくバイオセンシング 屈折率測定にもとづく化学物質センシング 化学プラントにおける高精度プロセス制御
21 実用化に向けた課題 低コストで生産性の高い表面プラズモンアンテナ製造技術 ( 微細加工技術 ) の確立 特徴を活かした用途の開拓 測定対象に合わせた装置の開発 試料の処理手順 ( プロトコル ) の開発 ( 特にバイオ系試料の場合 )
22 企業への期待 製造装置メーカー低コストで生産性の高い微細加工技術 医用検査機器メーカーバイオ系試料の処理手順 ( プロトコル ) 計測 制御機器メーカー用途開拓 測定対象に合わせた装置開発 科学計測機器メーカー用途開拓 測定対象に合わせた装置開発
23 本技術に関する知的財産権 問合先 発明の名称 : 屈折率測定方法 ( 未公開 ) 出願番号 : 特願 2013-187478 発明者 : 猪川洋 佐藤弘明 小野篤史 出願人 : 国立大学法人静岡大学 共同研究および関連する特許については 静岡大学イノベーション社会連携推進機構にお問い合わせください コーディネーター : 鈴木正人 TEL :053-478-1702 Email:ip-office@cjr.shizuoka.ac.jp