船舶事故調査報告書 平成 25 年 8 月 22 日 運輸安全委員会 ( 海事部会 ) 議決 委員長 後藤昇弘 委 員 横山鐵男 ( 部会長 ) 委 員 庄司邦昭 委 員 石川敏行 委 員 根本美奈 事故種類発生日時発生場所船舶事故の概要事故調査の経過事実情報船種船名船籍港総トン数 IMO 番号船舶

Similar documents
船舶事故調査報告書 平成 29 年 7 月 13 日運輸安全委員会 ( 海事専門部会 ) 議決委員庄司邦昭 ( 部会長 ) 委員小須田敏委員根本美奈 事故種類衝突 ( 防波堤 ) 発生日時発生場所事故の概要事故調査の経過事実情報船種船名 総トン数船舶番号 船舶所有者等 L B D 船質機関 出力 進

船舶事故調査報告書 平成 30 年 12 月 19 日運輸安全委員会 ( 海事専門部会 ) 議決委員佐藤雄二 ( 部会長 ) 委員田村兼吉委員岡本満喜子 事故種類発生日時発生場所事故の概要事故調査の経過 衝突 平成 29 年 12 月 23 日 19 時 15 分ごろ 京浜港東京第 2 区 晴海信号

その他の事項 という ) を乗せ ウェイクボーダーをけん.. 引して遊走する目的で 平成 30 年 8 月 13 日 14 時 00 分ごろ土庄町室埼北東方にある砂浜 ( 以下 本件砂浜 という ) を出発した 船長は 自らが操船し 操縦者 同乗者 E の順にウェイクボードに 搭乗させ 本件砂浜北東

MA 船舶事故調査報告書 平成 24 年 4 月 27 日 運輸安全委員会 Japan Transport Safety Board

おお航海士 Aは 22 時 00 分ごろ福岡県宗像市大島東方沖で船長から 船橋当直を引き継ぎ レーダー 1 台を 6 海里 (M) レンジとして 電 子海図表示装置及び GPS プロッターを 12M レンジとしてそれぞれ 作動させ 操舵スタンド後方に立って単独で操船に当たった 本船は 航海士 A が

操舵室 船室 本件倉庫の通気口 本件倉庫 船尾側 写真 1 本船本船は 船長ほか甲板員 1 人が乗り組み コンベンション協会が企画する地域興し企画の目的で 参加者 11 人及び知人 1 人を乗せ 船体中央部にある船室の各窓を閉めてエアコンを運転し 18 時 40 分ごろ檮原川津賀ダム上流の北岸の係留

本船は 船長が1 人で船橋当直につき 主機を回転数毎分約 1,2 00( 出力約 20%) とし 約 5ノットの対地速力で 早岐港南東方沖を手動操舵により南南東進中 11 時 07 分ごろ主機が突然停止した 機関長は 温度計測の目的で機関室出入口の垂直はしごを降りていたところ ふだんと違う同室の音を

船舶事故調査報告書 平成 26 年 9 月 4 日 運輸安全委員会 ( 海事専門部会 ) 議決 委 員 横山鐵男 ( 部会長 ) 委 員 庄司邦昭 委 員 根本美奈 事故種類発生日時発生場所事故調査の経過事実情報船種船名 総トン数船舶番号 船舶所有者等 L B D 船質機関 出力 進水等乗組員等に関

( 東京事案 ) 1 旅客船龍宮城乗組員死亡 2 プレジャーボートかいきょう丸プレジャーボートこくら丸衝突 3 遊漁船しぶさき10 号沈没 4 遊漁船はなぶさ釣り客負傷 5 モーターボートKaiser 衝突 ( 係船杭 ) 6 漁船若栄丸小型兼用船福寿丸衝突 7 遊漁船一福丸モーターボート可奈丸衝突

免許登録日平成 26 年 7 月 3 日免許証交付日平成 26 年 7 月 3 日 ( 平成 31 年 7 月 2 日まで有効 ) 釣り客 A 男性 54 歳釣り客 B 男性 51 歳釣り客 C 男性 74 歳死傷者等重傷 3 人 ( 釣り客 A 釣り客 B 及び釣り客 C) 損傷 なし 気象 海象

台風による外国船の 走錨衝突事故防止に向けて 平成 24 年 9 月 6 日 運輸安全委員会事務局横浜事務所

MI 船舶インシデント調査報告書 ( 地方事務所事案 ) 横浜事務所 1 引船第二十一管洋運航不能 ( 絡索 ) 2 漁船末廣丸運航不能 ( 機関損傷 ) 3 貨物船鹿児島エキスプレス運航不能 ( 機関損傷 ) 神戸事務所 4 貨物船東翔丸運航不能 ( 船体傾斜 ) 5 ヨット朝鳥運航

船尾部の便所 スパンカーマスト及び操舵室上部が脱落した 大浦丸は 左舷船首部 のハンドレールに曲損を 前部マストに折損を 船底部に破口及び擦過痕をそれぞれ 生じた < 原因 > 本事故は 洲埼北西方沖において 大浦丸が北進中 第五育丸が漂泊して釣り中 両船長が見張りを適切に行っていなかったため 両船


その他の事項 約 200 であり 船首の作業灯がついていて 船長が投錨する旨を指 示したので 機関室に移動して発電機を起動し いつでも主機を中立 運転にできるように準備した後 自室に戻った 航海士 A は 20 時 00 分ごろ本船が減速していることに気付いて 昇橋したところ 船長から船位が分からな

Japan Transport Safety Board 1 コンテナ船 ACX CRYSTAL ミサイル駆逐艦 USS FITZGERALD 衝突事故 運輸安全委員会令和元年 8 月

MA 船舶事故調査報告書 平成 23 年 9 月 30 日 運輸安全委員会

目 次 はじめに 1 1 立入検査の状況 2 2 命令に係る事項 3 3 その他輸送の安全に重大な関係を有する事項 (1) 船舶事故等の発生状況 6 (2) 船種別事故等の発生状況 7 (3) 主な指導内容 9

(Microsoft Word \224N4\214\216_\203h\203\211\203t\203g_\221D\224\225\201FTOKIO MARINE Topics_\216\251\223\256\216\324\220\352\227p\221D\203\212\203X\203N.doc)

をガス専焼モードとして運転していたところ ガス燃料管のガスリークディテクタがガス濃度上昇の信号を発し LNGの蒸発ガスの燃焼が停止して主ボイラが失火したので 蒸気消費量を減少させようとして2 台のタービン発電機のうちの1 台の負荷をディーゼル発電機に移行させたが 1 台のタービン発電機の気中遮断器を

同船は沈没した NIKKEI TIGER に死傷者はなく また 船体に大きな損傷はなかった < 原因 > 本事故は 夜間 金華山東方沖 930km 付近において NIKKEI TIGER が北東進中 堀栄丸が南南西進中 両船の進路が交差する態勢で接近する状況となった際 NIKKEI TIGER が左

< F2D A8E678BA692E88E9696B D2E6A7464>

1. 船舶事故の概要報告書 1 ページ 旅客フェリーさんふらわあだいせつは 船長ほか22 人が乗り組み 旅客 71 人を乗せ 車両等 160 台を積載し 北海道苫小牧市苫小牧港に向けて茨城県大洗港を出港し 苫小牧港南方沖を北進中 平成 27 年 7 月 31 日 17 時 10 分ごろ第 2 甲板で


データ連携配車システム

別紙第 1 職員の給与 ( 海事職給料表の導入等 ) に関する報告 本委員会は 船舶に乗り組む職員 ( 以下 船舶乗組員 という ) の給与について 昨年 10 月 9 日の職員の給与に関する報告でも言及したとおり 勤務の特殊性から見直す必要があると考え 検討を重ねてきた その結果は 次のとおりであ

( 東京事案 ) 1 貨物船 MAY STAR 漁船明神丸衝突及び貨物船 MAY STAR 乗揚 2 旅客船 DANS PENTA 1 乗揚 3 釣船うしお丸転覆 4 貨物船第七住力丸漁船大業丸衝突 5 油送船第八豊栄丸乗組員死亡 ( 地方事務所事案 ) 函館事務所 6 漁船西山丸転覆 7 遊漁船第

P&I 保険 とは 船舶の運航に不可欠 船舶の運航に伴って生じる船主の法律上 契約上の責任を対象とする 賠償責任保険 です 例えば 船舶の運航中に港湾 漁業施設などの船舶以外の財物に与えた損害 および 費用をてん補します 非営利での運営 船舶の運航に欠かせない P&I 保険は 非営利で運営される組合

Microsoft Word _報告書表紙_MA_.doc

<4D F736F F D A815B91E58C588ECE8E968CCC91CE8DF482CC82DC82C682DF E646F63>

船舶事故調査報告書 船種船名 LNG 船 PUTERI NILAM SATU IMO 番号 総トン数 94,446トン 船種船名 LPG 船 SAKURA HARMONY IMO 番号 総トン数 2,997トン 事故種類衝突発生日時平成 25 年 1 月 10 日 1

PowerPoint Presentation

1

内容 1. 調査概要 2. 内航船の騒音実態調査 3. Janssen 法による騒音予測プログラム 4. 騒音対策の検討 5. まとめ 2

この説明書は MG-1000 の取扱上の必要な事項について記載してあります モノレールは 急傾斜地での人員や荷物の輸送に適した大変便利な設備ですが 取扱いや保守が正しく行われませんと 思わぬ故障や事故の原因になります 運行前には 必ずこの取扱説明書を最後までお読みください < 目次 > 1. 運行に

船体構造の疲労モニタリングの実用化 1. はじめに 船体構造強度評価において, 疲労強度は降伏強度, 座屈強度及び最終強度と並び重要な検討項目の一つである 現在, 船舶は想定した就航期間 ( 一般商船の場合は通常 25 年 ) に対し, 十分な疲労強度を有するように設計されている しかしながら, 設

<4D F736F F D208ED497BC82C982E682E98D8288B3834B AED88DA93AE928682CC8E968CCC96688E7E46696E616C816992F990B38CE3816A2E646F6378>

News Release 平成 30 年 10 月 26 日 電動シャッター動作時の事故に注意! 今般 消費者安全調査委員会より 電動シャッター動作時の事故 に係る事故等原因調査の報告書が取りまとめられ 調査委員会から消費者庁長官に対し 消費者への周知に関する意見が提出されました こうした意見を踏ま

船舶プロダクト検討について 背景 船舶の情報はユーザーの注目が高く その情報は主に AIS( 後述 ) や衛星画像 ログ情報等から得られる そして海象 気象情報との連携や統計情報等の大量データから得られる情報等から新しい価値の創出も期待できる このことからコアサービスから提供するプロダクト検討の一環

側のCO₂ルーム バラストタンク等に浸水したため 右舷傾斜が生じて上甲板の右舷側が没水した状態になったことによりハッチカバー 出入口等から船体内部への浸水量が増加するとともに 風浪を受けて復原力を喪失して横転し 更に浸水量が増加して沈没したことにより発生したものと考えられる MING GUANGが波

<4D F736F F F696E74202D F B8817A93648AC E096BE8E9197BF E >

船舶事故調査報告書 船種船名コンテナ船 WAN HAI 162 I M O 番号 総トン数 13,246 トン 船種船名漁船第七盛南丸 漁船登録番号 OS 総トン数 9.7 トン 船種船名漁船第八盛南丸 漁船登録番号 OS 総トン数 9.7 トン 事故種類衝突

14_SCX900-2.xls

<4D F736F F F696E74202D20345F8EA993AE895E8D EA997A5895E8D CC8A54944F90DD8C7682C98AD682B782E9834B C982C282A282C42E >

海上自衛官の海技従事者国家試験の受験資格について(通知)

file://c: \homepage \103 \kaiho \103kaiho \sinkoukyo \menjyou.htm 1/6 ページ 2007/01/ 資料 3 号 ( 会報 97 号 2005 年 1 月の記事再掲 ) 内航貨物船乗組み制度の見直し( 資格制度 部門間兼務等 ) と商

( 東京事案 ) 1 貨物船 MAY STAR 漁船明神丸衝突及び貨物船 MAY STAR 乗揚 2 旅客船 DANS PENTA 1 乗揚 3 釣船うしお丸転覆 4 貨物船第七住力丸漁船大業丸衝突 5 油送船第八豊栄丸乗組員死亡 ( 地方事務所事案 ) 函館事務所 6 漁船西山丸転覆 7 遊漁船第

3 造船所 船を実際に建造するのは造船所です 中部地方は歴史的に海運が盛んであったことや 気 候や地理的条件に恵まれたため 大小多くの造船所が あり 基盤産業として地域を支えています 1隻の船を建造するためには 鉄工 木工 機関工 事 電気工事などあらゆる技術が必要です 清水港周辺には 造船所のほか

5 ii) 実燃費方式 (499GT 貨物船 749GT 貨物船 5000kl 積みタンカー以外の船舶 ) (a) 新造船 6 申請船の CO2 排出量 (EEDI 値から求めた CO2 排出量 ) と比較船 (1990~2010 年に建造され かつ 航路及び船の大きさが申請船と同等のものに限る )

Microsoft Word - 船労結果概要.doc

P01

Microsoft Word IHO S-66 日本語版(表紙・目次).docx

< F2D F8F9C90E18B405F FC89FC89FC>

< BE8DD78F915F8ED488D68E C493E02E786C7378>

<4D F736F F F696E74202D A957A A8EC0895E8D7182C982A882AF82E EF89FC915082CC82BD82DF82CC A83808DC5934B89BB A2E >

スライド 1

ことを呼びかけます Q4. ミサイルが落下する可能性がある との情報伝達があった場合は どうすれば良いのでしょうか A4. 屋外にいる場合 近くの建物 ( できれば頑丈な建物 ) の中又は地下に避難してください 近くに適当な建物等がない場合は 物陰に身を隠すか地面に伏せ頭部を守ってください 屋内にい

厚生局受付番号 : 東北 ( 受 ) 第 号 厚生局事案番号 : 東北 ( 国 ) 第 号 第 1 結論昭和 52 年 4 月から同年 8 月までの請求期間及び昭和 52 年 9 月から昭和 56 年 12 月までの請求期間については 国民年金保険料を納付した期間に訂

ウツタイン様式を活用した救命効果の検証

防災業務計画

< F2D C4816A8A438FE382C982A882AF82E9>

<4D F736F F D E58B4B96CD93C18EEA8DD08A518E9E82C982A882AF82E98D4C88E68D718BF38FC E89878EC08E7B97768D6A>

( 東京事案 ) 1 モーターボート建友爆発 2 貨物船 AQUAMARINE 漁船平新丸衝突 ( 地方事務所事案 ) 函館事務所 3 漁船第五十一萬漁丸火災 4 漁船第 18 勝丸火災 5 プレジャーボート第十八栄海丸乗揚 6 漁船第六十八廣洋丸衝突 ( 消波ブロック ) 7 漁船第五十五富丸衝突

裁決録

5章.indd

<4D F736F F D CA8E862D90568B8C816A C9F8DB882CC95FB964082CC88EA959482F089FC90B382B782E990568B8C91CE8FC6955C5F


平成27年度三菱重工グループ保険 フルガードくん(シニア)

log1-500

EU MRV に関する課題 課題 データ品質確保 航海データ収集 データギャップ 書類管理 残業 対策 とにかく頑張る? 休日出勤 通常業務が EU MRV 対策を負担増で終わらせるのか? 2

1 2

なお 本件に関してご不明な点は 以下の部署にお問い合わせください 一般財団法人日本海事協会 (ClassNK) 本部管理センター別館船体部 EEDI 部門 住所 : 東京都千代田区紀尾井町 3-3( 郵便番号 ) Tel.: Fax:

PowerPoint Presentation

( 東京事案 ) 1 旅客フェリー万葉船体傾斜 2 旅客船第三あんえい号旅客負傷 3 旅客船第三十八あんえい号旅客負傷 ( 地方事務所事案 ) 函館事務所 4 漁船第五十五漁信丸乗揚 5 漁船善宝丸乗組員死亡 6 漁船保栄丸衝突 ( 防波堤 ) 仙台事務所 7 漁船漁栄丸プレジャーボート第五カサイ丸

利用者照会種別分類業務名称条件 船舶代理 店 乗組員情報 旅客情報 船用品情報 申請情報 内航 入港前統一申請 届出者と同一の利用者であること 入港届等 移動届等 出港届等 外航 入港前統一申請 届出者と同一の利用者であること 入港届等 移動届等 出港届等 外航 ( 運航情 入港前統一申請 届出者と

表紙_02




野岩鉄道の旅

本報告書の調査は 本件航空重大インシデントに関し 運輸安全委員会設置 法及び国際民間航空条約第 13 附属書に従い 運輸安全委員会により 航空事 故等の防止に寄与することを目的として行われたものであり 本事案の責任を 問うために行われたものではない 運輸安全委員会 委員長後藤昇弘


厚生局受付番号 : 近畿 ( 受 ) 第 号 厚生局事案番号 : 近畿 ( 国 ) 第 号 平成 3 年 4 月から平成 7 年 3 月までの請求期間については 国民年金保険料を納付した期間 に訂正することを認めることはできない 生年月日 : 昭和 27 年生住所 :

( 東京事案 ) 1 コンテナ船 SONG CHENG 乗揚 2 漁船第八浦郷丸火災 ( 地方事務所事案 ) 函館事務所 3 漁船日正丸転覆仙台事務所 4 モーターボート三王丸転覆 5 モーターボートムスタング乗組員行方不明横浜事務所 6 モーターボート Ever Free Ⅱ 同乗者負傷 7 漁船

昇降機の状況等 ( 第二面 ) 1. 昇降機に係る確認済証交付年月日等 イ. 確認済証交付年月日 昭和 平成年月日第号 ロ. 確認済証交付者 建築主事 指定確認検査機関 ( ) ハ. 検査済証交付年月日 昭和 平成年月日第号 ニ. 検査済証交付者 建築主事 指定確認検査機関 ( ) 2. 検査日等

船の種類 船の種類 船の種類 ( 使用目的で分類 ) 商船 ( 積載物の運搬で利益を得る船, 貨物船, 客船 ) 商船の分類 ( 積荷で分類 ) (1) 客船 (2) 貨物船 一般貨物船 (General Cargo Ships)

( 東京事案 ) 1 交通船フレッシュありかわ乗揚 2 モーターボート涼乗船者負傷 3 貨物船新賢和丸貨物船第八昭和丸衝突 4 貨物船大航丸乗揚 5 漁船大康丸漁船宮島丸衝突 ( 地方事務所事案 ) 函館事務所 6 漁船第六十三潮丸乗組員死亡 7 貨物船阿州山丸火災 8 漁船第 18 太平丸乗組員死

厚生局受付番号 : 中国四国 ( 受 ) 第 号 厚生局事案番号 : 中国四国 ( 厚 ) 第 号 第 1 結論請求者のA 事業所における平成 27 年 7 月 10 日の標準賞与額を6 万 5,000 円に訂正することが必要である 平成 27 年 7 月 10 日の

船舶火災への対応と対策 ひとたび発生すると大惨事を招きかねないのが船舶火災事故 海上保安庁の発表によれば ここ10 年間の平均でも毎年 80 隻前後の船舶火災事故が発生しており 直近の2014 ( 平成 26) 年の事故隻数は83 隻で この火災事故により15 人が死亡または行方不明となっている ま

MLC,2006への対応について

Session

技術トピック ~ 騒音規制対策について ~ 平成 28 年 7 月 独立行政法人鉄道建設 運輸施設整備支援機構 1

スライド 1

<4D F736F F F696E74202D F81798E9197BF2D32817A EE688B589DD95A897CA8AD68C578E9197BF2E B8CDD8AB B83685D>

東京事務所版 BCP 実施要領目次応急頁 < 第 1グループ> 直ちに実施する業務 1 事務所における死傷者の救護や搬送 応急救護を行う一時的な救護スペースの設置 運営 備蓄の設置 医療機関への搬送 1 2 事務所に緊急避難してきた県民や旅行者等への対応 避難 一次避難スペースの運営 指定避難所への

1. 業務概要 CY または保税蔵置場等に蔵置されている貨物について 関税法第 40 条第 1 項にいう 改装 及び 仕 分け を行う場合に登録する これにより取扱場所へ貨物取扱情報が通知される また 他所蔵置場所に蔵置されている貨物については 本業務をもって 関税法第 36 条第 2 項にいう税


ネットワーク保守サービス 契約約款 2016 年 4 月 関西国際空港情報通信ネットワーク株式会社

資料 3-1 国際コンテナ戦略港湾政策について 平成 30 年 11 月 6 日関税 外国為替等審議会関税分科会国土交通省港湾局

内部監査業務指示書

Transcription:

船舶事故調査報告書 平成 25 年 8 月 22 日 運輸安全委員会 ( 海事部会 ) 議決 委員長 後藤昇弘 委 員 横山鐵男 ( 部会長 ) 委 員 庄司邦昭 委 員 石川敏行 委 員 根本美奈 事故種類発生日時発生場所船舶事故の概要事故調査の経過事実情報船種船名船籍港総トン数 IMO 番号船舶所有者船舶管理会社船級 L B D 船質機関 出力進水年月日 作業員 ( 工務監督 ) 死亡不明 ( 平成 24 年 10 月 6 日 03 時 15 分ごろ~07 時 25 分ごろの間 ) 山口県徳山下松港徳山下松港の下松石炭中継基地 ( 概位北緯 33 58.7 東経 131 53.2 ) セージサジタリウス貨物船 SAGE SAGITTARIUSは 徳山下松港の下松石炭中継基地で船倉の石炭をアンローダーによって揚げ荷役中 平成 24 年 10 月 6 日 0 7 時 25 分ごろ 自動荷役装置に関する保守 指導等のために乗船していた工務監督 (Superintendent) がアンローダーのフィーダーコンベアローラーに巻き込まれているところを発見され 死亡が確認された 平成 24 年 12 月 13 日 本事故の調査を担当する主管調査官 ( 広島事務所 ) ほか1 人の地方事故調査官を指名した なお 後日 新たに主管調査官ほか1 人の船舶事故調査官を指名した 原因関係者から意見聴取を行った SAGE SAGITTARIUS の旗国に対し 意見照会を行った 貨物船 SAGE SAGITTARIUS パナマ共和国パナマ 73,427トン 9233545 HESPERUS MARITIMA S.A.( パナマ共和国 ) はちうま 八馬汽船株式会社 ( 以下 A 社 という ) 日本海事協会 (Class NK) 234.93m 43.00m 25.40m 鋼ディーゼル機関 15,300kW 2000 年 12 月 27 日 - 1 -

写真 1 本船全景アンローダーに関する情報 (1) SAGE SAGITTARIUS( 以下 本船 という ) は アンローダー 2 基 縦コンベア1 基 横コンベア1 基及びブームコンベア1 基から構成される自動荷役装置を上甲板に装備していた (2) アンローダーは 船倉の石炭を揚げる装置であり トロリー グラブ ホッパー フィーダーコンベア及びガーダーで構成されていた フィーダーコンベア内のベルトコンベア脇には フィーダーコンベア通路が設置されていた トロリー ガーダー ホッパー フィーダーコンベア グラブ 船首 図 1 アンローダー フィーダーコンベア通路船尾 オペレータ室 フィーダーコンベア通路 船尾船首写真 2 アンローダー (3) アンローダーの仕様 ( 抜粋 ) は 次のとおりであった 1 荷役サイクル平均 87sec/ サイクル 2 巻上荷重 49t( グラブ自重 22t 石炭 27t) 3 フィーダーコンベア装置 搬送能力 975t/h ベルト速度 40m/min (4) 石炭の揚げ荷役の流れは 次のとおりであった 1 アンローダーは 揚げる石炭の上方の位置に移動し グラブが下降して石炭をつかむ - 2 -

乗組員等に関する情報死傷者等損傷事故の経過 2 石炭をつかんだグラブは 上昇して所定の位置で停止し ホッパー及びフィーダーコンベアがグラブの下に移動してグラブが開く その際 フィーダーコンベア通路は フィーダーコンベアと共に移動する 3 石炭は ホッパーを経てフィーダーコンベアに落とし込まれ 右舷側の縦コンベアに払い出される その後 ホッパー フィーダーコンベア及びフィーダーコンベア通路は 元の位置に戻る 4 石炭は 右舷側の縦コンベア 居住区前の横コンベア 旋回式ブームコンベア及び海上に敷設された陸側のコンベアを順に介して貯炭サイロに運ばれる (5) アンローダーの移動時には 警報音及び回転灯による警報が作動するが ホッパー フィーダーコンベア及びフィーダーコンベア通路の移動時には 警報が作動するようにはなっていなかった (6) フィーダーコンベア通路には 照明灯が1 基設置されていた 船長 ( フィリピン共和国籍 ) 男性 56 歳締約国資格受有者承認証船長 ( パナマ共和国発給 ) 交付年月日 2011 年 6 月 7 日 (2016 年 4 月 27 日まで有効 ) 工務監督男性 37 歳 機関士として平成 13 年から9 年間の海上勤務後 平成 22 年 6 月から工務監督 (Superintendent)( 以下 SI という ) として勤務していた 本船を約 1 年半前から担当していた 通常は 08 時 ~18 時の間に就労しており 緊急時には その都度対応していた 本事故当時には 健康状態に問題はなさそうに見えた 死亡 1 人 (SI) なし (1) 本船の動静 1 本船は 船長ほか24 人 ( 全員フィリピン共和国籍 ) が乗り組み SIほか1 人が同乗し 石炭を積み オーストラリア連邦のニューカッスル港を9 月 17 日に日本へ向けて出港した 2 本船は 10 月 3 日 07 時 30 分ごろ徳山下松港の下松石炭中継基地に着桟した (2) 荷役の状況 1 山九株式会社 ( 以下 B 社 という ) は 3 日 17 時ごろ本船に積載されている石炭の揚げ荷役を開始し 6 日中に全量を揚げる計画であった 2 アンローダー 1 号機 ( 以下 1 号機 という ) を用いて荷役を担当する B 社の荷役作業員 ( 以下 荷役作業員 という ) は フォアマン オペレータ及びデッキマンの3 人で構成されていた - 3 -

(3) 事故に至る状況本船は 下松石炭中継基地で船倉の石炭を1 号機によって揚げ荷役中 SIが 1 号機のフィーダーコンベアで異音が発生しているとの連絡を荷役作業員から受け 異音が発生しているフィーダーコンベアローラー ( 以下 本件ローラー という ) を特定し 1 号機が運転されている状態で本件ローラーへ注油して異音を止めた 本船は 揚げ荷役を続けていたところ 再度 本件ローラーで異音が発生したため SIは 約 3 時間ごとに本件ローラーへ注油する旨を荷役作業員に連絡した SIは 6 日 02 時ごろ 本件ローラーで異音が発生しているとの荷役作業員の連絡を受け 後で様子を見に行くとの返答をした 本船の甲板手は 03 時 15 分ごろ SIが 懐中電灯を携帯し 1 号機方向に歩いて行くところを視認した 1 号機のオペレータ室に居たオペレータは 07 時 25 分ごろ 1 号機のフィーダーコンベア通路に飛び出している人の足を発見し 1 号機を緊急停止した後 無線でデッキマンに確認を依頼した デッキマンは 本件ローラーに巻き込まれているSIを発見した 連絡を受けた下松市消防署の救急隊員は 07 時 42 分ごろ本船に乗船し SIの死亡を確認した 本船の乗組員は 07 時 50 分ごろ本件ローラーの取り外し等の作業を開始し SIは 08 時 54 分ごろ 救急隊員に運び出された また 1 号機のフィーダーコンベア付近で壊れた注油缶が発見された SIの死因は 胸部圧迫による窒息であると検案された フィーダーコンベアローラー 船尾 船首 写真 3 本事故発生場所 フィーダーコンベア通路 船尾 船首 図 2 本事故発生場所 - 4 -

その他の事項分析乗組員等の関与船体 機関等の関与気象 海象の関与判明した事項の解析 (1) 本船の乗組員は ニューカッスル港で全員が交代したため SIは 自動荷役装置等に関する保守 教育及び指導のために同港で乗船していた (2) A 社は 自動荷役装置の維持及び保守を担当し B 社は 同装置による揚げ荷役を担当していた (3) 自動荷役装置のマニュアルには 運転時の注意事項とし 次のように記載されていた 異常音や振動を無視して運転を継続することは大事故を起こす原因となりますので 運転を中止して異常音や振動の原因を調査し適当な処置を行って下さい (4) フィーダーコンベアローラーの交換には 1 時間程度荷役を停止する必要があった (5) フィーダーコンベアローラーのベアリングは シールドタイプであり 注油する構造にはなっていなかった ありありなし (1) SIの死因は 胸部圧迫による窒息であった (2) 本船は 徳山下松港の下松石炭中継基地で船倉の石炭を1 号機によって揚げ荷役中 フィーダーコンベアで異音が発生し SI が 1 号機が運転されている状態で本件ローラーへ注油して異音を止めたが 再度 異音が発生したことから 3 時間ごとに本件ローラーへ注油する旨を荷役作業員に連絡したものと考えられる (3) SIは 6 日 02 時ごろ本件ローラーで異音が発生しているとの荷役作業員の連絡を受け 後で様子を見に行く旨の返答を行ったものと考えられる (4) 本船は自動荷役装置によって揚げ荷役中 SIが 03 時 15 分ごろ1 号機方向に歩いて行くところを本船の甲板手に視認され 07 時 25 分ごろ1 号機の本件ローラーに巻き込まれているところを荷役作業員に発見されたので この間に本件ローラーに巻き込まれたことから 死亡するに至ったものと考えられる (5) SIは 1 号機のフィーダーコンベア付近で壊れた注油缶が発見されたことから フィーダーコンベア通路において 1 号機が運転されている状態で本件ローラーに注油作業を1 人で行っていた際 本件ローラーに巻き込まれたものと考えられるが 目撃者がおらず 本件ローラーに巻き込まれた状況を明らかにすることはできなかった (6) SIは 次のことから 本件ローラーを交換せずに注油して対処しようとした可能性があると考えられる 1 乗組員は ニューカッスル港で全員が交代したため フィーダーコンベアローラーの交換作業に不慣れであった 2 本件ローラーの交換には 1 時間程度荷役を中断する必要があった (7) SIは フィーダーコンベア通路において 1 号機が運転され - 5 -

原因 参考 ている状態で本件ローラーの注油作業を行っていたものと考えら れるが フィーダーコンベア通路で作業をする場合 グラブの動 きに合わせてフィーダーコンベア及びフィーダーコンベア通路が 船首尾方向に移動するので その際 体勢を崩すことも考えら れ フィーダーコンベア通路等の移動時には警報が作動すること となっていなかったことから グラブの動きに注意する必要があ ったものと考えられる しかし フィーダーコンベア通路には照 明灯が 1 基のみであり 夜間の作業中にグラブの動きを確認する には照明が十分でなかった可能性があると考えられる 本事故は 本船が 徳山下松港の下松石炭中継基地で船倉の石炭を 1 号機によって揚げ荷役中 フィーダーコンベアで異音が発生し SI が 1 号機が運転されている状態で本件ローラーへ注油して異音 を止め 3 時間ごとに注油することとしていたところ 本件ローラー で異音が発生しているとの連絡を受け フィーダーコンベア通路で本 件ローラーの注油作業を行っていた際 本件ローラーに巻き込まれた ため 発生したものと考えられる A 社は 本事故後 次の対策を実施した (1) フィーダーコンベア及び縦コンベアに巻き込まれ防止用グレー チングを設置した (2) フィーダーコンベアにコンベア危急停止用のスイッチ及び作動 ワイヤーを設置した (3) フィーダーコンベア通路に照明を追設した (4) コンベアローラー等から異音が発生した場合は 荷役を停止し てローラーを交換することなどを記載した安全対策マニュアルを 策定した - 6 -