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E-M AT 活動マニュアル Ver.2015.10

E-MAT 目次 Ⅰ. E-MAT とは 3 Ⅱ. 離床のエビデンス 4 Ⅲ. 離床基準 5 Ⅳ. 離床の中止基準 7 Ⅴ. 離床プログラム 8 Ⅵ. E-MAT の活動の仕方 10 Ⅶ. E-MAT の活動報告用紙 ( 例 ) 12 Ⅷ. E-MAT の活動データ報告用紙 ( 例 ) 13 Ⅸ. 文献 14 2

I. E-MAT とは E-MAT とは各施設で離床を行う 離床チーム (: 略称 E-MAT) の事である 多職種で構成された隊員が 病棟 部署単位で存在し 離床を推進する原動力として活躍する E-MAT の役割 1. 離床が可能な患者 ( 利用者 ) の早期発見 2. 不必要な臥床期間を短縮することによる合併症の予防 3. 疾患 疾病に対する離床計画の作成及び同計画に基づく離床の 実施に関すること 4. 疾患 疾病に対する離床前 離床中 離床後の状態を記録 評 価に関すること 5. スタッフに対する適切な離床に関する指導 提言 6. 患者 家族に対する適切な離床に関する指導 提言 7. 早期退院 社会復帰の援助 8. 離床に関する知識の習得と教育 9. チームの活動による患者満足度の向上 10. チーム活動の評価 ( 活動報告 ) 11. その他離床に関すること 3

Ⅱ. 離床のエビデンス この 10 年で離床のエビデンスは確固たるものになってきている 諸家 様々な報告を行っているが 明らかな転機となったのは Morris ら 1) は 急性呼吸不全により人工呼吸器管理となった 330 例の患者を 2 群に分けて早期離床の介入効果を分析した 1 群は通常のケアのみの群 もう 1 群は人工呼吸器装着 48 時間以内から介入を始め 意識の覚醒が得られてから ヘッドアップ 端座位 椅子座位への進めた群である その結果 早期介入群を行うと ICU 在室期間 入院期間は短縮され 患者の自立が早くなると論じられている Schweickert ら 2) も 72 時間以上の人工呼吸器装着患者に対し 集中的に離床介入した群は人工呼吸器の離脱までの時間が短く ADL の自立が早いことを報告している こうした報告を受け 多くの研究者が重症呼吸不全を持つ患者に対する離床の効果を著名な科学雑誌に発表するようになった その効果は目覚ましく 入院期間を短縮させる 3-5) せん妄を予防する 3-6) QOL( 生活の質 ) 7) を向上させる など様々なアウトカムを改善させている このページ前面にわたり詳細な オーストラリアの Stiller は 近年報告された研究論文 8) をまとめた その中で これだけのエビデ ンスが出てきている以上 可能な限り優先して離床を行うべきである と述べており なんとなく良 エビデンスが掲載されています い と漠然と考えられていた離床は 今や 根拠ある明確な治療 と認識されるようになった また呼吸不全を合併した症例の離床だけでなく 循環器や脳神経領域の離床にもエビデンスがある Ahmed ら 9) は 心臓切開手術後の 40 名の患者を 2 群にわけて早期介入の効果を検証した 20 名 E-MAT への登録をお待ちしてお は術後 2 時間から寝返り ROM から開始し 座位 立位 歩行と段階的に離床を開始した その結果 ります 呼吸器合併症の予防 ICU 滞在期間の減少を認めたと報告している AVERT II (A very early rehabilitation trial Phase II) 10) では 脳卒中発症 24 時間以内に看護師 理学療法士による早期離床を 2 回 / 日実施した介入と発症 48 時間以内の離床 (1 回 / 日 ) を行う通常ケアを比較した研究が行われた 早期離床群は介助を要さず 50m の歩行が可能であった割合が高く 歩行能力の改善に早期離床が独立した因子であることを報告している 脳神経領域の離床は 機能予後だけでなく 多くのアウトカムを改善させる Titsworth ら 11) は脳神経系の集中治療室入室患者 3291 例に対し 離床による集中介入前後のパラメータを比較した その結果 ICU 入室期間と入院期間が短縮し 入院後の肺炎の発生率が低下したと報告している また Klein ら 12) も 637 例の患者に対し離床を行い 入院期間の短縮だけでなく 褥瘡の発生率が低下し 自宅退院率も上昇したと報告している 加えて Indradavic ら 13) は ストロークユニットにおいて多職種による包括的かつ集中的な脳卒中治療の中でどの治療が有効なのか調査し 自宅退院の要因に早期離床が独立した関連因子であることが報告している その一方で The AVERT Trial Collaboration group 14) が発表した研究成果 (AVERT Ⅲ) は 脳卒中発症後 24 時間以内の超急性期の介入に関してネガティヴな結果を報告している 18 時間前後の超早期介入群と 発症後 22 時間前後の通常早期介入群の比較で 通常早期離床介入群のほうが 機能予後が良く 有害事象も少ないという結果である この論文は 早ければ早いほど良い という風潮に警鐘を鳴らした これまで紹介したように多くの研究が離床の効果を証明する中で こういったネガティヴデータの存在は重要である 離床は行えば必ず良くなるという訳ではなく 時期を見誤れば患者の状態悪化を招くこともあるため 諸刃の剣 といえる 離床に携わる E-MAT は そのことを十分念頭に置き しっかりとしたアセスメントを基に離床時期を判断 助言していくべきである 後述する離床基準やプログラムを参考に 各チーム安全な離床を実現していって欲しい 4

3 プログラムの表記はアルゴリズム化してもわかりやすく表現できます一般病棟へ他動 ROM 3 回 / 日 CU意識なし意識ありI入室V. 離床プログラム 離床を開始する前には 必ず離床の可否についてアセスメントを行い 離床基準を確認し 問題ない症例はステップ (Level)1 へと進み 介入を行った結果 バイタルサインや各パラメータがどう変わったのかアセスメントを行う 基準と照らし合わせ 介入後も安定していればステップ (Level)2 へ進み 介入してアセスメントという流れを繰り返し 次のステップへ可及的早期に進めていく そのため 離床の進め方は基準とプログラムの設定が必要となる 日本離床研究会の離床プログラム 19) 離床除外基準循環が不安定呼吸が不安定出血しているなど ステップ 1 Head Up 左右への体位変換上下肢の運動 ステップ 2 端座位 ステップ 3 立位 歩行 問題なければ 再評価 再評価 基準により離床できない項目がある ステップ 1 中止基準により離床を継続できない項目がある ステップ 2 中止基準により離床を継続できない項目がある ステップ Head up 左右への体位変換上下肢の他動運動上下肢の自動運動 端座位上下肢の抵抗運動椅子座位 (20 分 : 移乗は全介助 ) YES 離床後に有害事象がないか確認 ( 中止基準による ) 時間をあけて再評価 YES 時間をあけて再評価 YES 立位 歩行椅子座位 (60 分目標 : 移乗は部分介助 監視 ) 車椅子等への移乗練習上下肢の抵抗運動 ポジショニング上肢の他動運動 ROM-ex Morris 1) らの ICU における人工呼吸器患者の離床プログラム Level 1 Level 2 Level 3 Level 4 2 時間ごとの体位変換 レジスタンストレーニング ヘッドアップ最低 20 分間 3 回 / 日 重力に抗して上肢が挙げられる 重力に抗して下肢が挙げられる ベッド上端座位最低 20 分間 3 回 / 日 自立で椅子座位最低 20 分間 / 日 8

Ⅵ.E-MAT の活動の仕方 臨床指導 離床に関する相談を受け 助言を行ったり 実際に離床場面に赴き指導が行われる E-MAT による臨床指導の要点 相談者のニーズに合わせ指導を行うことが重要である 相談者以外の人たちも積極的に参加させ 実践的で患者診療 ケ アに役立つことをベッドサイドにて指導すると良い 具体的内容とし ては 離床と阻害する要点のアセスメント 実際の離床介入のサポー トを指導する 指導終了後は 相談者の良かった着眼点について伝え 改善が必要な点を見出し ディスカッションを行う これらの指導により病棟全体で成功体験を共有できるとより離床が広がりやすくなる カンファレンス 回診 問題解決に有効な手段となるほか 定期的に行うことでチームの認知度も上がり 相談件数増加につながる 他科のカンファレンスと連携して 離床に有効な手段の選択ができる E-MAT が参加 / 開催するカンファレンス 回診を行う要点 最初からすべての患者さんに対して 離床を始めるのは難し く 日々の多忙な業務の中で 早期離床 を実現していく ためには まず カンファレンスや回診で 離床の必要性の 高い患者さんを絞り込む必要がある まずは 不必要な臥床を減らす ことを目的に下記の体制 から適した方法を選択して行っていくと良い 1. ポータブル型 ( 導入チーム向け ) 既に活動しているカンファレスや回診に E-MAT 隊員が参加して意見を述べていく 2. 独立型 ( 成熟したチーム向け ) E-MAT が中心となって呼びかけ カンファレンスや回診を行う 10

様式 1 E-MAT 活動報告用紙 ( 共通 ) 報告者氏名 登録施設名 活動範囲 ( 診療科 ) 活動報告内容期間 報告内容 介入方法 ( 具体的介入内容 ) 施設内活動について 臨床指導について カンファレンス活動について 勉強会開催について 患者 家族指導について 離床太郎 日本離床研究会 その他 ( 一般外科 内科病棟 ) 平成 27 年 9 月 1 日 平成 27 年 10 月 14 日 臨床指導 カンファレンス 人工呼吸器管理の患者を離床させる際には E- MAT のメンバーができる限り参加し 率先して離床を開始しました 結果 安全に 早期に離床を開始でき 人工呼吸器離脱後もスムーズに離床を継続出来ました 年間の相談件数は 48 件でした 従来から開催されていた週 1 度の外科カンファレンスに E-MAT チームとして参加を開始しました 離床の可否 離床のレベル設定 (Head up, 端座位, etc) を積極的に意見していきました 結果 内科カンファレンスからも参加要請がありました 勉強会開催 患者 家族指導 E-MAT による臨床指導 カンファレンスへの積極的参加を実施した結果 院内での勉強会依頼がありました 内容は 血液ガスデータについて 人工呼吸器モードについて 心電図について その他 依頼が続いています 2 ヶ月に 1 度の定例の勉強会の他 各病棟での勉強会を 6 回開きました E-MAT ととしての 患者 家族指導への関わりは 直接介入することが難しく 手術前の患者さん 家族に離床開始のプロトコルを作成して説明することを始めました また 緊急手術や緊急入院の患者さんに対しての離床への説明はこれからの課題と考えています フォントサイズ12にて要領よく枠内に入力ください メールにて添付する際には jsea@rishou.org まで送付ください ( メールで送付する場合には メール内に登録施設 氏名を必ず記載ください ) FAXで申請する際には 03-6272-9683 まで送付ください 記載年月日平成年月日 一般社団法人日本離床研究会 E-MAT 認定委員会 12