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現し Gasc1 発現低下は多動 固執傾向 様々な学習 記憶障害などの行動異常や 樹状突起スパイン密度の増加と長期増強の亢進というシナプスの異常を引き起こすことを発見し これらの表現型がヒト自閉スペクトラム症 (ASD) など神経発達症の病態と一部類することを見出した しかしながら Gasc1 発現

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上原記念生命科学財団研究報告集, 26 (2012) 159. 眼内炎症疾患の病態解明と治療法の開発 臼井嘉彦 Key words: 眼内炎症疾患, ぶどう膜炎,T 細胞, 補助シグナル分子,PD-1/PD-1L 東京医科大学医学部眼科学講座 緒言ベーチェット病, サルコイドーシス, 遷延型 Vogt- 小柳 - 原田病に代表される難治性内因性ぶどう膜網膜炎は眼炎症発作を繰り返すため, 現在でも失明原因として大きな位置を占めている. 合併する全身疾患やぶどう膜炎所見は異なるが, 眼炎症を繰り返す病態は共通であり, 発症にはベーチェット病では連鎖球菌, サルコイドーシスではアクネ菌や抗酸菌,Vogt- 小柳 - 原田病では tyrosinase が自己抗原となって発症する可能性が示唆されている. さらにその発症機構に活性化 CD4 T 細胞が中心的な役割を果たし,CD4 T 細胞から産生される IFN-γ,TNF-α,IL-2 を代表とする T helper (Th) 1 サイトカインと IL-17, IL-23 を代表とする Th17 サイトカインがぶどう膜炎の病態形成に重要な役割を果たしていると考えられている. このようなヒト難治性ぶどう膜網膜炎の動物モデルとして, 実験的自己免疫性ぶどう膜網膜炎 (experimental autoimmune uveoretinitis: EAU) があり,interphotoreceptor retinoid-binding protein (IRBP) や S 抗原などの網膜視細胞層に局在する蛋白質が抗原となり発症する自己免疫疾患である. その発症にはヒトぶどう膜炎と同様に CD4 T 細胞が重要な役割を果たし,Th1 および Th17 優位な疾患モデルである. 免疫反応の中心的な役割を果たす CD4 T 細胞は, 抗原刺激のみならず, 補助シグナル分子と呼ばれる細胞表面機能分子の働きによって, その活性化 不活性化が制御されている. 従って, これらの分子の過剰な反応や欠失は免疫異常を招き, 難治性内因性ぶどう膜網膜炎の発症に関与していると考えられている 1). 本研究ではぶどう膜炎の動物モデルである EAU の発症メカニズムにおける PD-1/B7-H1-B7-DC 経路のシグナル関与について検討し,EAU を抑制させる機序を解明し, より有効な治療方法を見いだすことを目的とする. 方法マウス EAU における PD-1/B7-H1-B7-DC 経路の役割を明らかにする.C57BL/6 マウスに IRBP ペプチド 1-20 を 200μg/ 100μl と 100μl の結核死菌 5 mg を加えた完全フロインドアジュバンドを混合乳化させたものを首背皮下に免疫する. また同時に生トキシン 0.1 mg を腹腔内投与することにより EAU を発症させる. 1. 上記で作製した免疫後 21 日目の EAU マウスの眼組織より cdna を抽出し, 組織における免疫担当細胞の PD-1/B7- H1-B7-DC の発現を real time PCR により確認する. 2. マウスぶどう膜炎モデルを用いた各抗 PD-1,B7-H1,B7-DC 抗体投与およびその組み合わせにおける発症効果と PD-1 ノックアウトマウスを用いた in vivo および in vitro の検討. 上記で作製したマウスにそれぞれのモノクローナル抗体を投与し, 発症の抑制効果を細隙灯顕微鏡による臨床スコアと病理組織学的検討による病理スコアにより評価する. また同様に PD-1 ノックアウトマウスに対して同様に EAU の系を作製し, 野生型と比較検討する. 3. 各々の群の免疫 14 日目と 21 日目の EAU マウスの所属リンパ節より CD4+T 細胞を単離し,IRBP ペプチドにて再刺激 を行い培養し, トリチウムによる T 細胞増殖反応を検討する. また, 培養上清を採取し,IFN-γ や IL-2 などの Th1 サイトカイ ンや IL-4,IL-5,IL-10 などの Th2 サイトカインが産出されているかどうか検討する. 1

結果 免疫後 21 日目の EAU マウスでは, 正常組織と比較して, 有意に PD-1 と B7-DC の発現が上昇していた.PD-1KO では 臨床的および病理学的にコントロール群と比較して有意にぶどう膜炎は早期に発症し重症化した ( 図 1). 図 1. PD-1 ノックアウトマウスによる EAU の悪化. (A) 臨床スコアにおいて,PD-1 ノックアウトマウスは野生型あるいはヘテロと比較し有意にぶどう膜炎発症が早く, 病態の悪化を示した. (B) 病理スコアにおいても臨床スコア同様,PD-1 ノックアウトマウスは免疫後 28 日目でぶどう膜炎の重症を認めた. * は統計学的有意差 (p<0.05;mann-whitney U test) を示す. (C) 代表的な PD-1+/+,PD-1+/-,PD-1-/-マウスにおける EAU 病理像.Scale bars:100μm. 抗原刺激によるリンパ球増殖反応ならびに IFN-γ,IL-17 産出が PD-1KO で促進された ( 図 2). 2

図 2. PD-1 ノックアウト EAU マウスの抗原特異的 T 細胞増殖反応とサイトカイン産生. 免疫後 28 日目に眼周囲リンパ節を採取し,IRBP に対する T 細胞増殖反応および IFN-γ,IL-2,IL-5,IL-10, IL-17 産生を測定した.PD-1 ノックアウトマウスでは, 野生型マウスと比較して T 細胞増殖反応,IFN-γ,IL-17 産生能が有意に増強した.* は統計学的有意差 (p<0.05;mann-whitney U test) を示す. さらに劇症化のメカニズムについて各種阻害抗体を用い解析したところ, 抗 PD-1 抗体投与群と抗 B7-DC 抗体投与群で有意 にぶどう膜炎は劇症化した ( 図 3). 3

図 3. PD-1/PD-1L 阻害抗体投与における EAU の臨床 (A) および病理組織学的重症度 (B). C57BL/6 マウスを IRBP で免疫し, 抗 PD-1 抗体, 抗 B7-H1 抗体, 抗 B7-DC 抗体およびそのアイソタイプコントロール抗体を投与したところ, 臨床スコア病理スコアともにコントロール抗体投与群と比較して特に抗 PD-1 抗体投与群と抗 B7-DC 抗体投与群で重症化した.* は統計学的有意差 (p<0.05;mann-whitney U test) を示す. このことから,PD-1/B7DC の系が抑制的に働いている可能性が示され,Th1 と Th17 反応の増強をきたし, ぶどう膜炎の病態 が増悪すると考えた. 考察 PD-1/B7-H1-B7-DC 経路の阻害が EAU を悪化する機序として, 抗原特異的 CD4 T 細胞増殖反応と Th1 サイトカインで ある IFNγ の産生および Th17 サイトカインである IL-17 の産生が増強され, ぶどう膜炎が悪化することが推測される. また, 特に PD-1/B7-DC 経路を阻害したところ PD-1/B7-H1 経路よりも EAU の悪化を示したことから, ぶどう膜炎においては PD-1/ B7-DC 経路が病態に重要な役割を果たしていると考えられる. 以上より PD-1-Ig や B7-DC-Ig を用いて抑制性補助シグナ ル分子を増強させることにより将来的に難治性眼内炎症疾患の治療標的になりうる可能性が示唆された. 本研究では一つの抑 制型補助シグナル分子のみを制御したが, 活性型補助シグナル分子の抑制によるぶどう膜炎の抑制 2) や樹状細胞などの抗原提 示細胞に発現する補助シグナル分子を制御することにより, ぶどう膜炎が軽減されること 3) が明らかとなっているため, 今後の臨 床応用が期待される. さらにぶどう膜悪性黒色腫においても B7-H1 が発現し, 腫瘍に浸潤する T 細胞上の PD-1 と相互作用 し, これを制御することにより将来的に癌免疫療法に応用可能であるとの結果も得られている 4). PD-1 は免疫系の負の制御に関与し, 眼内炎症疾患発症の重要な要素であることが明らかとなった. 同じ負の抑制性補助シグ ナル分子である CTLA-4-Ig が乾癬,RA,SLE,MS に対する治療効果が認められ 5), 我が国でも臨床治験が進行中であ る. 今後,CTLA-4 に次いで PD-1 も自己免疫疾患の治療標的分子になる可能性が高く注目される. 共同研究者 稿を終えるにあたり, ご指導を賜りました順天堂大学免疫学教室の秋葉久弥准教授に深甚なる謝意を表します. 最後に上原記 念生命科学財団より御助成頂きましたことにより, 上記研究を推進することが可能となりました. ここに厚く御礼申し上げます. 文献 1) 臼井嘉彦 : 眼免疫疾患における補助シグナル分子の免疫制御. 日本眼炎症学会雑誌, 13:12-16, 2011. 2) Usui, Y., Akiba, H., Takeuchi, M., Kezuka, T., Takeuchi, A., Hattori, T., Okunuki, Y., Yamazaki, T., Yagita, H., Usui, M. & Okumura, K.:The role of the ICOS/B7RP-1 T cell costimulatory pathway in murine experimental autoimmune uveoretinitis. Eur. J. Immunol., 36:3071-3081, 2006. 3) Usui, Y., Takeuchi M., Hattori, T., Okunuki, Y., Nagasawa, K., Kezuka, T., Okumura, K., Yagita, H., Akiba, H. & Goto, H.:Suppression of experimental autoimmune uveoretinitis by regulatory dendritic cells in mice. Arch. Ophthalmol., 127:514-519, 2009. 4

4) Ma, J., Usui, Y., Kezuka, T., Okunuki, Y., Zhang, L., An, X., Mizota, A. & Goto, H.:Costimulatory molecule expression on human uveal melanoma cells: functional analysis of CD40 and B7-H1. Exp. Eye Res., 96:98-106, 2012. 5) Sakthivel, P.:Bench to bedside of CTLA-4: a novel immuno-therapeutic agent for inflammatory disorders. Recent Pat. Inflamm. Allergy Drug Discov., 3:84-95, 2009. 5