高齢者の日常生活機能維持 回復のための リハビリテーション 日本リハビリテーション病院 施設協会 会長 全国デイ ケア協会 会長 医療法人真正会 霞ヶ関南病院 理事長 斉藤正身 1

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このような現状を踏まえると これからの介護予防は 機能回復訓練などの高齢者本人へのアプローチだけではなく 生活環境の調整や 地域の中に生きがい 役割を持って生活できるような居場所と出番づくりなど 高齢者本人を取り巻く環境へのアプローチも含めた バランスのとれたアプローチが重要である このような効果的

各論第 3 章介護保険 保健福祉サービスの充実

第 2 章高齢者を取り巻く現状 1 人口の推移 ( 文章は更新予定 ) 本市の総人口は 今後 ほぼ横ばいで推移する見込みです 高齢者数は 増加基調で推移し 2025 年には 41,621 人 高齢化率は 22.0% となる見込みです 特に 平成 27 年以降は 後期高齢者数が大幅に増加する見通しです

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計画の今後の方向性

7 対 1 10 対 1 入院基本料の対応について 2(ⅲ) 7 対 1 10 対 1 入院基本料の課題 将来の入院医療ニーズは 人口構造の変化に伴う疾病構成の変化等により より高い医療資源の投入が必要となる医療ニーズは横ばいから減少 中程度の医療資源の投入が必要となる医療ニーズは増加から横ばいにな

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17★ 訪問看護計画書及び訪問看護報告書等の取扱いについて(平成十二年三月三十日 老企 厚生労働省老人保健福祉局企画課長通知)

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平成17年度社会福祉法人多花楽会事業計画(案)

人口構造の変化 1

加算 栄養改善加算 ( 月 2 回を限度 ) 栄養スクリーニング加算 口腔機能向上加算 ( 月 2 回を限度 ) 5 円 重度療養管理加算 要介護 であって 別に厚生労働大が定める状態である者に対して 医学的管理のもと 通所リハビリテーションを行った場合 100 円 中重度者ケア体制加算

介護における尊厳の保持 自立支援 9 時間 介護職が 利用者の尊厳のある暮らしを支える専門職であることを自覚し 自立支援 介 護予防という介護 福祉サービスを提供するにあたっての基本的視点及びやってはいけ ない行動例を理解している 1 人権と尊厳を支える介護 人権と尊厳の保持 ICF QOL ノーマ

(2) 高齢者の福祉 ア 要支援 要介護認定者数の推移 介護保険制度が始まった平成 12 年度と平成 24 年度と比較すると 65 歳以上の第 1 号被保険者のうち 要介護者又は要支援者と認定された人は 平成 12 年度末では約 247 万 1 千人であったのが 平成 24 年度末には約 545 万


スライド 1


まちの新しい介護保険について 1. 制度のしくみについて 東温市 ( 保険者 ) 制度を運営し 介護サービスを整備します 要介護認定を行います 保険料を徴収し 保険証を交付します 東温市地域包括支援センター ( 東温市社会福祉協議会内 ) ~ 高齢者への総合的な支援 ( 包括的支援事業 )~ 介護予

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点検項目 点検事項 点検結果 リハビリテーションマネジメント加算 Ⅰ 計画の定期的評価 見直し 約 3 月毎に実施 リハビリテーションマネジメント加算 Ⅱ ( リハビリテーションマネジメント加算 Ⅰ の要件に加え ) 居宅介護支援事業者を通じて他のサービス事業者への情報伝達 利用者の興味 関心 身体

< 集計分析結果 > ( 単純集計版 ) 在宅介護実態調査の集計結果 ~ 第 7 期介護保険事業計画の策定に向けて ~ 平成 29 年 9 月 <5 万人以上 10 万人未満 >

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事業者名称 ( 事業者番号 ): 地域密着型特別養護老人ホームきいと ( ) 提供サービス名 : 地域密着型介護老人福祉施設 TEL 評価年月日 :H30 年 3 月 7 日 評価結果整理表 共通項目 Ⅰ 福祉サービスの基本方針と組織 1 理念 基本方針

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平成28年版高齢社会白書(概要版)

! 3

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訪問介護事業所の役割 1 訪問介護計画や手順書への記載居宅サービス計画に通院介助及び院内介助の必要性が位置付けられている場合に限り 訪問介護サービスとして 介助が必要な利用者が 自宅から病院 受診手続きから診察 薬の受け取り 帰宅までの一連の行為を円滑に行うために訪問介護員が行うべき援助内容を訪問介

通所リハビリテーションとは 介護保険で認定を受けられた要支援 要介護の方を対象に機能訓練 歩行訓練や日常生活訓練 脳への刺激で認知症予防などを目的に リハビリテーション ( 以下 リハビリ ) を行う通いのサービスです 通所リハビリテーション ( 以下 通所リハビリ ) は 利用者様が可能な限り自宅

A5 定刻に評価するためには その時刻に責任をもって特定の担当者が評価を行うことが必要 となる Q6 正看護師 准看護師 保健師 助産師以外に医師 セラピストなどが評価してもよいか A6 よい ただし 医療職に限られ 評価者は所定の研修を修了した者 あるいはその者が実施した院内研修を受けた者であるこ

地域包括ケアシステムの構築について 団塊の世代が 75 歳以上となる 2025 年を目途に 重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう 医療 介護 予防 住まい 生活支援が包括的に確保される体制 ( 地域包括ケアシステム ) の構築を実現 今後

居宅介護支援事業者向け説明会

3 介護の基本 2 介護職の職業倫理 講師名資格等 兼任 瀬口知子 教員免許福祉 看護 有里さつき 教員免許福祉 看護 宮 ゆかり 教員免許福祉 3 介護の基本 3 介護における安全の確保とリスクマネジメント 教員免許福祉 瀬口知子 教員免許福祉 看護 有里さつき 教員免許福祉 看護 宮 ゆかり 教

問 2 次の文中のの部分を選択肢の中の適切な語句で埋め 完全な文章とせよ なお 本問は平成 28 年厚生労働白書を参照している A とは 地域の事情に応じて高齢者が 可能な限り 住み慣れた地域で B に応じ自立した日常生活を営むことができるよう 医療 介護 介護予防 C 及び自立した日常生活の支援が

平成29年版高齢社会白書(全体版)

平成 28 年度診療報酬改定情報リハビリテーション ここでは全病理に直接関連する項目を記載します Ⅰ. 疾患別リハビリ料の点数改定及び 維持期リハビリテーション (13 単位 ) の見直し 脳血管疾患等リハビリテーション料 1. 脳血管疾患等リハビリテーション料 (Ⅰ)(1 単位 ) 245 点 2

11 平成 21 年度介護予防事業実施状況について 平成 22 年 7 月 大阪市健康福祉局健康づくり担当

介護保険制度における通院等乗降介助の適用範囲の拡大(概要-行政苦情救済推進会議の意見を踏まえた通知-

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調査実施の背景 目的 超高齢社会である我が国では 65 歳以上の高齢者の総人口に占める割合は 24.1% 1 で 3,000 万人を超過 2 しました また 要介護 ' 要支援 ( 認定者数も増加し 直近の実績では 万人となっています 今後 益々介護を必要とされる方が増えることも予想され

保監第   号 

Clinical Indicator 2017 FUNABASHI MUNICIPAL REHABILITATION HOSPITAL


7 時間以上 8 時間未満 922 単位 / 回 介護予防通所リハビリテーション 変更前 変更後 要支援 Ⅰ 1812 単位 / 月 1712 単位 / 月 要支援 Ⅱ 3715 単位 / 月 3615 単位 / 月 リハビリテーションマネジメント加算 (Ⅰ) の見直し リハビリテーションマネジメン

特別養護老人ホーム 優雅 社会福祉法人 桜寿会 ( 特別養護老人ホーム優雅 ) 福島県南会津郡南会津町田島字北下原 111 番 TEL: FAX: ( 郡山オフィス ) 福島県郡山市菜根一丁目 22 番 10 号 T

通所型サービスの例 ( 典型例として整理したもの ) 現行の通所介護相当 市場 ( 地域支援事業の外 ) で提供されるサービス Ⅰ 通所介護 Ⅱ 通所介護 Ⅲ 通所型サービス A ( 緩和したによるサービス ) Ⅳ 通所型サービス B ( 住民主体による支援 ) Ⅴ 通所型サービス C ( 短期集中

当院人工透析室における看護必要度調査 佐藤幸子 木村房子 大館市立総合病院人工透析室 The Evaluation of the Grade of Nursing Requirement in Hemodialysis Patients in Odate Municipal Hospital < 諸

Ⅰ 通所リハビリテーション業務基準 通所リハビリテーションのリハビリ部門に関わる介護報酬 1. 基本報酬 ( 通所リハビリテーション費 ) 別紙コード表参照 個別リハビリテーションに関して平成 27 年度の介護報酬改定において 個別リハビリテーション実施加算が本体報酬に包括化された趣旨を踏まえ 利用

高齢者を取り巻く状況 将来人口 本市の総人口は 今後も減少傾向で推移し 平成32年 2020年 には41,191人程度にまで減少し 高齢 者人口については 平成31年 2019年 をピークに減少に転じ 平成32年 2020年 には15,554人程度 になるものと見込まれます 人 第6期 第7期 第8

届出書 体制等状況一覧表 ( 別紙 1-3) の添付書類一覧 定期巡回 随時対応型訪問介護看護 中山間地域等における小規模事業所加算 11 月当たりの平均延訪問回算定表 前年度の 4 月 ~2 月分 緊急時訪問看護加算 特別管理体制 ターミナルケア体制 サービス提供体制強化加算 (Ⅰ) サービス提供

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通所リハ生活行為向上リハ加算 1 2,000 1 月につき 通所リハ生活行為向上リハ加算 2 1,000 1 月につき 通所リハ若年性認知症受入加算 60 1 日につき 通所リハ栄養改善加算 150 月 2 回限度 通所

第 2 章近江八幡市を取り巻く状況と今後の課題 1 データからみえる地域福祉の状況 1 人口の状況近江八幡市は 平成 22 年 3 月に旧近江八幡市と旧安土町が合併し 人口 8 万人を超える市となりました 旧市町の人口を合計した数値を見ると 平成 12 年から平成 22 年は横ばいで推移していますが

栃木県高齢者居住安定確保計画 ( 二期計画 ) 概要版 1 計画の目的と背景 高齢化が急速に進行する中 平成 24 年 3 月に県土整備部と保健福祉部が連携のもと高齢者の居住の安定確保に関する法律に基づく 栃木県高齢者居住安定確保計画 ( 以下 現計画 という ) を策定し 高齢者が安心して快適に暮

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本来目指すべき療養病棟の転換の方向性 ( イメージ ) 一般病床 医療療養病床 (5:) 介護療養病床 H9 年度末で廃止 (6 年間の経過期間 ) 地域医療構想の推進と療養病床の再編 現行の介護療養病床は平成 9 年度末で廃止 ( 経過措置あり ) となり 新たな類型として介護医療院が設置され こ

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リハビリテーションを受けること 以下 リハビリ 理想 病院でも自宅でも 自分が納得できる 期間や時間のリハビリを受けたい 現実: 現実: リ ビリが受けられる期間や時間は制度で リハビリが受けられる期間や時間は制度で 決 決められています いつ どこで どのように いつ どこで どのように リハビリ

高齢化率が上昇する中 認定看護師は患者への直接的な看護だけでなく看護職への指導 看護体制づくりなどのさまざまな場面におけるキーパーソンとして 今後もさらなる活躍が期待されます 高齢者の生活を支える主な分野と所属状況は 以下の通りです 脳卒中リハビリテーション看護認定看護師 脳卒中発症直後から 患者の

2) 各質問項目における留意点 導入質問 留意点 A B もの忘れが多いと感じますか 1 年前と比べてもの忘れが増えたと感じますか 導入の質問家族や介護者から見て, 対象者の もの忘れ が現在多いと感じるかどうか ( 目立つかどうか ), その程度を確認する. 対象者本人の回答で評価する. 導入の質

訪問リハビリテーションに関する調査の概要

要支援 介護保険負担額 (1 割月額 ) 介護保険負担額 (2 割月額 ) 要支援 1 1,843 円 要支援 1 3,686 円 要支援 2 3,779 円 要支援 2 7,557 円 サービス加算について (2 割負担の方は約 2 倍の料金となります ) 項目金額単位適用 内容 運動機能向上加算

西和賀町 高齢者実態調査結果報告書 平成 29 年 3 月 岩手県西和賀町

点検項目点検事項点検結果 リハビリテーションマネジメント加算 (Ⅰ) 計画の進捗状況を定期的に評価し 必要に応じ見直しを実施 ( 初回評価は約 2 週間以内 その後は約 3 月毎に実施 ) 介護支援専門員を通じ その他サービス事業者に 利用者の日常生活の留意点や介護の工夫等の情報を伝達 利用者の興味

特別養護老人ホーム ( 入所施設 ) 事業継続計画概要 ( 優先業務 ) 優先業務の考え方 : 介護保険法及び 指定介護老人福祉施設の人員 設備及び運営に関する基準 の定め (= 最低基準 ) を遵守することを最低限守るべき業務レベルとする その上で 利用者の生命維持に重大 緊急の影響がないと考えら

神奈川県における高齢者を取り巻く状況 1 総人口の推移 ( 人口減少時代へ ) 本県における総人口は 平成 27 年度に約 915 万人となり その5 年後までには 人口のピークから人口減少時代へ入っていくことが予測されています 本県における総人口の推移 注 1 平成 22 年度までは 国勢調査によ

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別紙 1-2 移乗介助 ロボット技術を用いて介助者による抱え上げ動作のパワーアシストを行う非装着型の機器 移乗開始から終了まで 介助者が一人で使用することができる ベッドと車いすの間の移乗に用いることができる ( ベッドと車いすの間の移乗における使い勝手は ステージゲート審査での評価対象となる点に留

資料編

介護老人保健施設 契約書

資 _ 図表 37-1 人口動態 二次医療圏市区町村人口 人口密度 2025 年総人口 2040 年総人口 年総人口増減率 年総人口増減率 2015 年 人口 2025 年 人口 2040 年 人口 年 人口増減率 年 人口増減率 全国

書類点検等における通所介護事業所への主な指摘事項について

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事業内容

興味・関心チェックリスト

クリニカルインディケーター 2017 の刊行にあたって 当院は開院以来 重症者にも対応できる医療 リハケア体制の整備 スタッフの量的および質的充実に向けた教育 研修体制の構築 チームアプローチの徹底や情報共有の強化 急性期病院および地域医療 介護との連携推進 生活 期リハの充実等 様々な取り組みを組

平成 28 年度介護保険事業状況報告 ( 年報 ) のポイント 1 第 1 号被保険者数 (28 年 3 月末現在 ) (29 年 3 月末現在 ) 3,382 万人 3,440 万人 ( 対前年度 +59 万人 +1.7% 増 ) ( 単位 : 万人 ) 3,500 3,000 2,500 2,0

1 基本健康診査基本健康診査は 青年期 壮年期から受診者自身が自分の健康に関心を持ち 健康づくりに取り組むきっかけとなることを目的に実施しています 心臓病や脳卒中等の生活習慣病を予防するために糖尿病 高血圧 高脂血症 高尿酸血症 内臓脂肪症候群などの基礎疾患の早期発見 生活習慣改善指導 受診指導を実

平成27年版高齢社会白書(全体版)

平成 28 年 10 月 17 日 平成 28 年度の認定看護師教育基準カリキュラムから排尿自立指導料の所定の研修として認めら れることとなりました 平成 28 年度研修生から 排泄自立指導料 算定要件 施設基準を満たすことができます 下部尿路機能障害を有する患者に対して 病棟でのケアや多職種チーム

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フレイルのみかた

名介護老人保健施設野洲すみれ苑デイケア 住所野洲市小篠原 TEL FAX :30 ~ 16:00 月 火 水 木 金 定員 30 人 1~2 名 5~7 名 5 名 0 名可可可可可可 1 日の生活の中で リハビリ 入浴をメインに行っ

軽度者に対する対象外種目の 福祉用具貸与取扱いの手引き 平成 25 年 4 月 綾瀬市福祉部高齢介護課

リハビリテーションマネジメント加算 計画の進捗状況を定期的に評価し 必要に応じ見直しを実施 ( 初回評価は約 2 週間以内 その後は約 3 月毎に実施 ) 介護支援専門員を通じ その他サービス事業者に 利用者の日常生活の留意点や介護の工夫等の情報を伝達 利用者の興味 関心 身体の状況 家屋の状況 家

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政策課題分析シリーズ15(要旨)

9(1) 介護の基本的な考え方 9() 介護に関するこころのしくみの基礎的理解 9() 介護に関するからだのしくみの基礎的理解 9(4) 生活と家事 5 9(5) 快適な居住環境整備と介護 9(6) 整容に関連したこころとからだのしくみと自立に向けた介護 4 4 理論と法的根拠に基づき介護を行うこと

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高齢者の日常生活機能維持 回復のための リハビリテーション 日本リハビリテーション病院 施設協会 会長 全国デイ ケア協会 会長 医療法人真正会 霞ヶ関南病院 理事長 斉藤正身 1

介護 における リハビリテーションの必要性 機能障害ばかりでなく 活動の制限や参加制約に対して 国際生活機能分類 (ICF) その人らしい暮らしの再構築と支援をするために 介護の負担を軽減するためにも リハビリテーションは不可欠 斉藤正身 2

生活機能 活動と参加に焦点を当てたリハビリテーションの推進 図表 Ⅱ-8 生活機能とその構成要素 心身機能 活動 参加 の要素にバランスよく働きかける 効果的なリハビリテーションの提供を推進する <ADL 向上への働きかけ > 食事 排泄 着替え 入浴等ができるように 意欲への働きかけと環境調整をする < 機能回復訓練 > 座る 立つ 歩く等ができるように 訓練をする < 役割の創出 社会参加の実現 > 地域の中に生きがい 役割をもって生活できるような居場所と出番づくりを支援する家庭内の役割づくりを支援する <IADL 向上への働きかけ > 掃除 洗濯 料理 外出等ができるように 意欲への働きかけと環境調整をする 心身機能へのアプローチ 時間軸 活動へのアプローチ 参加へのアプローチ 対象者例 脳卒中 骨折など ( 脳卒中モデル ) 閉じこもり 虚弱高齢者 ( 廃用症候群モデル ) 急性期 回復期リハ生活期リハ 典 : 国際機能分類を基に厚生労働省老健局老人保健課が作成した資料出典 : 平成 27 年 3 月厚労省高齢者の地域における新たなリハビリテーションの在り方検討会 3

今後の高齢者人口の見通しについて 65 歳以上の高齢者数は 2025 年には 3,657 万人となり 2042 年にはピークを迎える予測 (3,878 万人 ) また 75 歳以上高齢者の全人口に占める割合は増加していき 2055 年には 25% を超える見込み 2012 年 8 月 2015 年 2025 年 2055 年 65 歳以上高齢者人口 ( 割合 ) 3,058 万人 (24.0%) 3,395 万人 (26.8%) 3,657 万人 (30.3%) 3,626 万人 (39.4%) 75 歳以上高齢者人口 ( 割合 ) 1,511 万人 (11.8%) 1,646 万人 (13.0%) 2,179 万人 (18.1%) 2,401 万人 (26.1%) 高齢者人口は 都市部では急速に増加し もともと高齢者人口の多い地方でも緩やかに増加する 各地域の高齢化の状況は異なるため 地域特性に応じた対応が必要 埼玉千葉神奈川秋田山形鹿児島 2005 年時点 116 万人 106 万人 149 万人 31 万人 31 万人 44 万人 2015 年時点 ( 括弧内は増加率 ) 179 万人 (+55%) 160 万人 (+50%) 218 万人 (+47%) 34 万人 (+11%) 出典 : 厚労省 34 万人 (+10%) 4 48 万人 (+10%)

高齢化の進行に関する国際比較 日本では 諸外国に例をみないスピードで高齢化が進んでいるが 今後 中国も同様に高齢化が進んでくる 1950 年以前はUN, The Aging of Population and Its Economic and Social Implications (Population Studies, No.26, 1956) およひ Demographic Yearbook,1950 年以降はUN, World Population Prospects: The 2006 Revision( 中位推計 ) による たた し, 日本は総務省統計局 国勢調査報告 およひ 国立社会保障 人口問題研究所 日本の将来推計人口 ( 平成 18 年 12 月推計 ) による人口 ([ 出生中位 ( 死亡中位 )] 推計値 ) 1950 年以前は既知年次のデータを基に補間推計したものによる それそ れの人口割合を超えた最初の年次を示す - は2050 年までその割合に到達しないことを示す 倍化年数は,7% から14% へ, あるいは10% から20% へそれそ れ要した期間 国の配列は, 倍化年数 7% 14% の短い順 5 出典 : 厚労省

日本の年齢別人口の変化 生産年齢人口が急激に減少する ( 千人 ) 100,000 80,000 60,000 40,000 0~19 歳 20~64 歳 65 歳以上 20,000 0 出典 : 国立社会保障 人口問題研究所 6

超少子高齢社会のイメージ 7

高齢者が高齢者を介護する 介護の必要な人が少しでも自立してもらえると 介護の負担を軽減するためにも リハビリテーションは不可欠 介護を受ける人にとって 介護をする人にとって 端座位の取り組みを通して見えてきたこと 8

日常生活動作の状況 通所リハビリテーションの実態調査 (N=7813) 9 出典 : 全国デイ ケア協会

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座位保持能力は著明に向上 自発的行動数はわずかながらも向上 覚醒度は端座位になることで向上 寝ぐせがなくなった!! 急性疾患はなく臨時薬処方がなかった 食事摂取量は全体的に増加した 血中アルブミン値は維持できた 11

座位へのかかわり 12

13

基本動作 ( 守るも攻めるもこの一線 ) 臥座立起 位位膝立 日常の生活 地域リハビリテーション原論 Ver.2 大田仁史著より 14

利用者の特性 ( 提供時間別 ) 介護度 年 齢 6-8 時間 n=1,189 16.0% 47.9% 36.1% 6-8 時間 n=1,186 14.1% 3.7% 41.8% 40.4% 1-2 時間 n=192 46.4% 40.1% 13.5% 1-2 時間 n=192 5.2% 26.6% 41.1% 27.1% 0% 25% 50% 75% 100% 要支援 1 2 要介護 1 2 要介護 3-5 0% 25% 50% 75% 100% 40-64 歳 65-74 歳 75-84 歳 85 歳以上 主疾患 認知症高齢者の日常生活自立度 6-8 時間 n=1,161 25.8% 33.3% 13.0% 27.8% 6-8 時間 n=1,112 25.6% 26.5% 36.1% 11.8% 1-2 時間 n=197 27.8% 50.3% 1.1% 20.9% 1-2 時間 n=179 57.5% 24.0% 14.5% 3.9% 0% 25% 50% 75% 100% 脳血管疾患運動器疾患認知症その他 0% 25% 50% 75% 100% 自立 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ M 訪問 通所リハビリテーションの実態調査. 全国老人保健施設協会 日本訪問リハビリテーション協会 全国デイ ケア協会合同事業,2017 6-8 時間の利用者は 1-2 時間と比較して 要介護 3-5 85 歳以上 認知症を有する方 の割合が高い 15

3 ヶ月後 3 ヶ月後 利用開始から 3 ヶ月後の ADL 変化 ( 項目別 ) 新規利用開始から 3 ヶ月後の変化 ( 入院入所 状態悪化による終了者は除く ) 改善群, 低下群 6-8 時間 n=932,1-2 時間 n=147 〇移乗 (6-8 時間 ) 〇移乗 (1-2 時間 ) 〇トイレ動作 (6-8 時間 ) 〇トイレ動作 (1-2 時間 ) 自立 0.1% 0.6% 7.3% 58.2% 自立 0.0% 0.7% 2.7% 83.0% 最小限介助 0.0% 2.4% 20.7% 1.0% 最小限介助 0.0% 2.0% 8.8% 0.0% 自立 0.1% 6.0% 63.9% 自立 0.0% 2.0% 91.8% 部分介助 0.4% 6.8% 0.5% 0.1% 部分介助 0.0% 1.4% 0.7% 0.0% 部分介助 1.2% 23.4% 1.1% 部分介助 0.7% 4.1% 0.7% 全介助 1.4% 0.3% 0.2% 0.0% 全介助 0.0% 0.0% 0.0% 0.7% 全介助 3.5% 0.5% 0.2% 全介助 0.7% 0.0% 0.0% 全介助 部分介助 最小限介助 自立 全介助 部分介助 最小限介助 自立 全介助部分介助自立 全介助部分介助自立 利用開始時 利用開始時利用開始時利用開始時 〇歩行 (6-8 時間 ) 〇歩行 (1-2 時間 ) 〇階段昇降 (6-8 時間 ) 〇階段昇降 (1-2 時間 ) 自立 0.2% 0.8% 6.4% 31.1% 自立 0.0% 0.7% 10.9% 56.5% 部分介助 0.9% 4.8% 37.2% 0.6% 部分介助 0.0% 4.1% 21.1% 0.0% 自立 0.2% 5.0% 23.7% 自立 0.7% 9.5% 46.3% 車椅子使用 1.3% 10.4% 0.6% 0.0% 車椅子使用 0.7% 5.4% 0.0% 0.0% 部分介助 3.9% 46.4% 0.3% 部分介助 2.7% 32.7% 0.0% 全介助 5.3% 0.2% 0.1% 0.0% 全介助 0.0% 0.0% 0.0% 0.7% 全介助 19.7% 0.5% 0.2% 全介助 7.5% 0.7% 0.0% 全介助 車椅子使用 部分介助 自立 全介助 車椅子使用 部分介助 自立 全介助部分介助自立 全介助部分介助自立 利用開始時 利用開始時利用開始時利用開始時 訪問 通所リハビリテーションの実態調査. 全国老人保健施設協会 日本訪問リハビリテーション協会 全国デイ ケア協会合同事業,2017 6-8 時間は 移乗 トイレ動作 の項目において 16 利用開始時に自立していた割合が低く 3ヶ月後に改善した割合が高い

長時間型 ( 重介護者 ) の通所リハビリテーション 地域ケア会議 旅行 地域のサロン 買い物 通所でみてくれるから 自分の時間が作れて助かるわ + 家でできることが増えたみたい 介護しやすくなったわ 17 出典 : 全国デイ ケア協会

短時間型 ( 軽度者 ) 通所リハビリテーション リハビリテーションマネジメント かかりつけ医 通所医師による医学的管理 具体的活動の提案アセスメント 練習連携 フォローアップ バイタルチェック 看護師によるチェック 8:30 9:00 送迎 担当者会議 カンファレンス 自己管理 具体的活動の提案アセスメント 練習連携 フォローアップ 交通機関と情報収集 連携 グループ体操 10:00 現場練習 旅行会社情報提供 連携 具体的活動の提案アセスメント 練習連携 フォローアップ 基本動作練習 個別の機能訓練 具体的活動の提案アセスメント 練習連携 フォローアップ 現場練習 環境調整 11:00 情報提供協力要請 模擬練習 18 出典 : 全国デイ ケア協会

終わりに リハビリテーションの理念は まだまだ国民の中に十分に浸透しておらず リハビリテーションとは即ち運動訓練を指すといった誤った認識が持たれがちである 今後は 活動 参加 も推進するリハビリテーションに関する国民への啓発活動が私たちに求められている 高齢者の気概や より楽しく生きたい より豊かに生きたい より高い生活機能を実現したいとする高齢者の主体性を引き出し これを適切に支える取組が重要だが それは重度の要介護者に対しても同様であることを忘れてはならない たとえ重介護であっても 社会 の一員であるのだから! 19