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( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 森脇真一 井上善博 副査副査 教授教授 東 治 人 上 田 晃 一 副査 教授 朝日通雄 主論文題名 Transgene number-dependent, gene expression rate-independe


研究の背景 古くから精神疾患を診断する補助として 病前の性格や体型に興味が持たれ 多くの仮説が提唱されています 有名な所では メランコリー親和性気質 ( まじめで几帳面など ) は うつ病に罹患しやすいというものがあり 臨床的にも受け入れられています 体型との関係も実は有名で 奇妙に思われるかもしれ

統合失調症の発症に関与するゲノムコピー数変異の同定と病態メカニズムの解明 ポイント 統合失調症の発症に関与するゲノムコピー数変異 (CNV) が 患者全体の約 9% で同定され 難病として医療費助成の対象になっている疾患も含まれることが分かった 発症に関連した CNV を持つ患者では その 40%

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イルスが存在しており このウイルスの存在を確認することが診断につながります ウ イルス性発疹症 についての詳細は他稿を参照していただき 今回は 局所感染疾患 と 腫瘍性疾患 のウイルス感染検査と読み方について解説します 皮膚病変におけるウイルス感染検査 ( 図 2, 表 ) 表 皮膚病変におけるウイ

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22 S2-4 教育講演 ( 認定制度講習会 ) 9 月 14( 土 ) 10:00 ~ 12:00 座長 EL-1 EL-2 EL-3 HLA 1,2) 1) 2) HLA HLA 17th QC ワークショップ集会 9 月 14 日 ( 土 ) 13:00 ~ 16:00 タイピング結果解析 1

著者 : 黒木喜美子 1, 三尾和弘 2, 高橋愛実 1, 松原永季 1, 笠井宣征 1, 間中幸絵 2, 吉川雅英 3, 浜田大三 4, 佐藤主税 5 1, 前仲勝実 ( 1 北海道大学大学院薬学研究院, 2 産総研 - 東大先端オペランド計測技術オープンイノベーションラボラトリ, 3 東京大学大

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医薬品タンパク質は 安全性の面からヒト型が常識です ではなぜ 肌につける化粧品用コラーゲンは ヒト型でなくても良いのでしょうか? アレルギーは皮膚から 最近の学説では 皮膚から侵入したアレルゲンが 食物アレルギー アトピー性皮膚炎 喘息 アレルギー性鼻炎などのアレルギー症状を引き起こすきっかけになる

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また 同じく本調査を監修した日本最大の乾癬患者支援団体である日本乾癬患者連合会の柴崎弘之会長は このたびの調査から 50% の中等症 重症の乾癬患者さんが皮膚病変の完全な消失を達成したいという治療目標を本当は持っていることが示されました 患者さんご自身が 疾患と治療オプションについて正しい知識を得て

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超高齢社会における共生を考える健康長寿の要因の探求 40 神出 楽木 健康長寿の要因の探求 41 未来共生学第 4 号 論文 高齢者疫学研究からの知見 Reich et al i, ii 神出計 ii 楽木宏実 大阪大学大学院医学系研究科 i 保健学専攻総合ヘルスプロモーション科学講座

前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ


【参考資料1】結核菌病原体サーベイランスシステムと現状

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一次サンプル採取マニュアル PM 共通 0001 Department of Clinical Laboratory, Kyoto University Hospital その他の検体検査 >> 8C. 遺伝子関連検査受託終了項目 23th May EGFR 遺伝子変異検




文庫●注文一覧表2016c(7月)/岩波文庫


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化を明らかにすることにより 自閉症発症のリスクに関わるメカニズムを明らかにすることが期待されます 本研究成果は 本年 京都において開催される Neuro2013 において 6 月 22 日に発表されます (P ) お問い合わせ先 東北大学大学院医学系研究科 発生発達神経科学分野教授大隅典

平成 28 年度感染症危機管理研修会資料 2016/10/13 平成 28 年度危機管理研修会 疫学調査の基本ステップ 国立感染症研究所 実地疫学専門家養成コース (FETP) 1 実地疫学調査の目的 1. 集団発生の原因究明 2. 集団発生のコントロール 3. 将来の集団発生の予防 2 1

難病 です これまでの研究により この病気の原因には免疫を担当する細胞 腸内細菌などに加えて 腸上皮 が密接に関わり 腸上皮 が本来持つ機能や炎症への応答が大事な役割を担っていることが分かっています また 腸上皮 が適切な再生を全うすることが治療を行う上で極めて重要であることも分かっています しかし

今後の展開現在でも 自己免疫疾患の発症機構については不明な点が多くあります 今回の発見により 今後自己免疫疾患の発症機構の理解が大きく前進すると共に 今まで見過ごされてきたイントロン残存の重要性が 生体反応の様々な局面で明らかにされることが期待されます 図 1 Jmjd6 欠損型の胸腺をヌードマウス

関節リウマチ ( RA) 治療薬の効果評価法と応答性の個人差に関する 遺伝要因の検討 Studies on Scoring Methods of Drug E fficac y and G enetic Factors Associat ed with Inter-p atient Variab i

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の感染が阻止されるという いわゆる 二度なし現象 の原理であり 予防接種 ( ワクチン ) を行う根拠でもあります 特定の抗原を認識する記憶 B 細胞は体内を循環していますがその数は非常に少なく その中で抗原に遭遇した僅かな記憶 B 細胞が著しく増殖し 効率良く形質細胞に分化することが 大量の抗体産

Transcription:

HLA/MICA imputation 法による MHC 領域内遺伝リスクの fine-mapping 岡田随象 Paul IW de Bakker Soumya Raychaudhuri SNP2HLA working group 東京医科歯科大学疾患多様性遺伝学分野テニュアトラック講師

MHC 領域における疾患罹患リスク 関節リウマチ (RA) におけるゲノムワイド関連解析結果 (19,234 RA cases vs 61,565 controls) 縦軸のスケールを変換すると (Nature. Okada et al. 2014) 6 番染色体短腕上のMHC 領域は 自己免疫疾患 悪性腫瘍 感染症 精神疾患といった多彩なヒト疾患に対する疾患罹患リスクとの強い関連を有する 関節リウマチ (Rheumatoid arthritis; RA) においては 遺伝因子の1/3を説明 MHC 領域内は構造が複雑であり 複数のHLA 遺伝子やHLA 様遺伝子が存在するため 感受性遺伝子の同定が困難であった

MHC 領域における疾患罹患リスクの fine-mapping MHC 領域 クラス I HLA 遺伝子 : HLA-A HLA-C HLA-B クラス II HLA 遺伝子 : HLA-DRB1 HLA-DQA1 HLA-DQB1 HLA-DPA1 HLA-DPB1 HLA 様遺伝子 : MICA, MICB 2-digit alleles: HLA-DRB1*04 HLA-DRB1*09 4-digit alleles: HLA-DRB1*04:01 HLA-DRB1*04:05 HLA-DRB1*04:10 HLA-DRB1*09:01 Amino acid sequences: FLEQVKHECHF FLEQVKHECHF FLEQVKHECHF FLKQDKFECHF MHC 領域内には 複数のHLA 遺伝子やHLA 様遺伝子が存在する 各 HLA 遺伝子が複数のHLAアレル (2-digit/4-digit classical alleles) やHLAアミノ酸多型を持つ MHC 領域内の原因リスク多型の同定 (fine-mapping) は困難であった

HLA アレルの命名方法 4 桁 (4-digit) の HLA アレルが特定の HLA 遺伝子アミノ酸配列に対応 配列情報は IMGT/HLA database(http://www.ebi.ac.uk/ipd/imgt/hla/) から取得可能

HLA imputation 法による HLA 遺伝子多型の推定 HLA 遺伝子のタイピングには 高額のアッセイが必要 (=~10 万円 / サンプル ) HLA imputation 法 (SNP2HLAソフトウェア) を用いることにより 通常のSNP ジェノタイプデータから 追加費用なし で HLA 遺伝子多型をコンピューター上で高精度で推定することが可能になる (PLoS One Jia et al. 2013)

HLA imputation 法の抗 CCP 抗体陽性 RA GWAS への適用 ( 欧米人 ) HLA-DRb1 HLA-B HLA-DPb1 欧米人集団の抗 CCP 抗体陽性 RA GWASにHLA imputation 法を適用 (1) HLA-DRb1の11, 13 番目のアミノ酸多型が最も有意なリスクを有する (2) HLA-B, HLA-DPb1, HLA-Aにおける独立したリスクが確認された (Nat Genet Raychaudhuri et al. 2012. Am J Hum Genet Han et al. 2014)

欧米人集団 GWAS アジア人集団における HLA imputation 法の実装 アジア人集団 GWAS 欧米人集団 HLA 参照データ + + アジア人集団 HLA 参照データ HLA imputation HLA imputation? HLA imputation 法の実施には 参照データ (reference panel) が必要 アジア人集団においてHLA imputation 法を実装するため アジア人集団を対象とした参照データを新たに作成 (n = 530) 高精度なHLA imputationを実施可能にした (4-digitアレル一致率:80-90%)

HLA imputation 法の HLA 様遺伝子 (MICA) への拡張 HLA 遺伝子 HLA 様遺伝子 HLA 様遺伝子 (HLA-like gene) であるMICA(the human MHC class I chainrelated gene A) は HLA 遺伝子と類似の構造を持つが 抗原を提示しない 遺伝子多型の構造は HLA 遺伝子とMICAで共通 MICA 遺伝子多型を含む参照データを作成することにより HLA imputation 法をHLA 様遺伝子に拡張 (Am J Hum Genet Okada et al. 2014)

HLA imputation 法の抗 CCP 抗体陽性 RA GWAS への適用 ( アジア人 ) アジア人集団における抗 CCP 抗体陽性 RA GWAS( 患者群 :2,782 名 対照群 : 4,315 名 ) に HLA imputation 法を適用 HLA-DRb1 の 11, 13, 57, 74 番目のアミノ酸多型における発症リスクを同定 (Hum Mol Genet Okada et al. 2014)

HLA imputation 法の抗 CCP 抗体陽性 RA GWAS への適用 ( アジア人 ) HLA アレルに基づく解析 Shared epitope(se) 仮説 :HLA-DRB1*0401, *0405,. 人種特異的な非 SE リスクアレル :HLA-DRB1*0901, *03,. HLA アミノ酸多型に基づく解析 HLA imputation 法により HLA アミノ酸多型に基づく抗 CCP 抗体陽性 RA の発症 リスクが 人種間で ( 予想以上に!!) 共有されていることが明らかになった (Hum Mol Genet Okada et al. 2014)

HLA/MICA imputation 法の乾癬への適用 HLA/MICA imputation 法を 欧米人集団における乾癬 (psoriasis)gwasに適用 ( 患者群 :9,247 名 対照群 : 13,589 名 ) 乾癬の発症にはHLA-Cを含む複数のHLA 遺伝子が関与 乾癬発症後の病態進展 ( 乾癬性関節炎 / 尋常性乾癬 ) にはHLA-Bが関与 予想に反し HLA 様遺伝子 (MICA) の関与は明らかでなかった (Am J Hum Genet Okada et al. 2014)

結語 HLA imputation 法はMHC 領域リスクのfine-mappingに有用である HLA imputation 法の アジア人集団への適用拡大とHLA 様遺伝子への機能拡張を行った HLAアミノ酸多型に基づく抗 CCP 抗体陽性 RAの発症リスクが人種間で共有されていることが明らかになった 乾癬の発症にはHLA-Cが 乾癬発症後の病態進展にはHLA-Bが関与することが明らかになった 日本人集団特異的な大規模参照データの作成と 新たな疾患への HLA imputation 法が期待される ~ HLA imputationソフトウェア (SNP2HLA) 参照データは下記 URLにて公開中 ~ http://www.broadinstitute.org/mpg/snp2hla/

参考文献 HLA imputation ソフトウェア (SNP2HLA) の論文 Jia X et al. PLoS One 8:e64683, 2013. HLA imputation 法および HLA 遺伝子多型の関連解析に関する総説 de Bakker PI et al. Hum Mol Genet 21:R29-R36, 2012. The IMGT/HLA database に関する総説 Robinson J et al. Nucleic Acids Res 41:D1222-D1227, 2013. HapMap 複数人種サンプルにおける HLA 遺伝子多型の概要の論文 de Bakker PI et al. Nat Genet 38:1166-1172, 2006. HLA imputation 法の関節リウマチへの適用 ( 欧米人 ) Raychaudhuri S et al. Nat Genet 44:291-296, 2012. Han B et al. Am J Hum Genet 94:522-532, 2014. HLA imputation 法の関節リウマチへの適用 ( アジア人 ) Okada Y et al. Hum Mol Genet doi:10.1093/hmg/ddu387, 2014. HLA/MICA imputation 法の乾癬への適用 Okada Y et al. Am J Hum Genet 95:162-172, 2014.

謝辞 ( 敬称略 ) 東京医科歯科大学疾患多様性遺伝学分野 田中敏博樋口千洋浦山ケビン須藤毅顕山根健治金井仁弘東京医科歯科大学疾患バイオリソースセンター 稲澤譲治松田真希子佐野雅子東京大学大学院医学系研究科アレルギー リウマチ学教室 山本一彦理化学研究所統合生命医科学研究センター 久保充明高橋篤鈴木亜香里高地雄太鎌谷洋一郎 Brigham and Women s Hospital, Harvard Medical School Buhm Han Eli A Stahl Broad Institute University of Singapore YY Teo