2008年10月2日

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婦人科63巻6号/FUJ07‐01(報告)       M

赤色ボタン 1) データ保存 : ボタンをクリックすれば 保存データ シートに データが保存 2) 入力データクリア : ボタンをクリックすれば 入力されたデータが消去されます 水色ボタン ( 画面移動用 ) 保存データシートへ 成長曲線 6 歳以上 肥満度曲線 成長速度 成長曲線 0~6 歳 BM


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ノルディトロピン フレックスプロ注

(別添様式1)

小慢分担研究報告書書式

資料 3 1 医療上の必要性に係る基準 への該当性に関する専門作業班 (WG) の評価 < 代謝 その他 WG> 目次 <その他分野 ( 消化器官用薬 解毒剤 その他 )> 小児分野 医療上の必要性の基準に該当すると考えられた品目 との関係本邦における適応外薬ミコフェノール酸モフェチル ( 要望番号

ータについては Table 3 に示した 両製剤とも投与後血漿中ロスバスタチン濃度が上昇し 試験製剤で 4.7±.7 時間 標準製剤で 4.6±1. 時間に Tmaxに達した また Cmaxは試験製剤で 6.3±3.13 標準製剤で 6.8±2.49 であった AUCt は試験製剤で 62.24±2

3. 安全性本治験において治験薬が投与された 48 例中 1 例 (14 件 ) に有害事象が認められた いずれの有害事象も治験薬との関連性は あり と判定されたが いずれも軽度 で処置の必要はなく 追跡検査で回復を確認した また 死亡 その他の重篤な有害事象が認められなか ったことから 安全性に問

平成19年度学校保健統計調査結果

未承認の医薬品又は適応の承認要望に関する意見募集について

(別添様式1)

平成19年度学校保健統計調査結果

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胎児計測と胎児発育曲線について : 妊娠中の超音波検査には大きく分けて 5 種類の検査があります 1. 妊娠初期の超音波検査 : 妊娠初期に ( 異所性妊娠や流産ではない ) 正常な妊娠であることを診断し 分娩予定日を決定するための検査です 2. 胎児計測 : 妊娠中期から後期に胎児の発育が正常であ

DRAFT#9 2011

緒言

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あった AUCtはで ± ng hr/ml で ± ng hr/ml であった 2. バイオアベイラビリティの比較およびの薬物動態パラメータにおける分散分析の結果を Table 4 に示した また 得られた AUCtおよび Cmaxについてとの対数値

Microsoft Word - JAID_JSC 2014 正誤表_ 原稿

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2. 栄養管理計画のすすめ方 給食施設における栄養管理計画は, 提供する食事を中心とした計画と, 対象者を中心とした計画があります 計画を進める際は, それぞれの施設の種類や目的に応じて,PDCA サイクルに基づき行うことが重要です 1. 食事を提供する対象者の特性の把握 ( 個人のアセスメントと栄

症例報告書の記入における注意点 1 必須ではない項目 データ 斜線を引くこと 未取得 / 未測定の項目 2 血圧平均値 小数点以下は切り捨てとする 3 治験薬服薬状況 前回来院 今回来院までの服薬状況を記載する服薬無しの場合は 1 日投与量を 0 錠 とし 0 錠となった日付を特定すること < 演習

D961H は AstraZeneca R&D Mӧlndal( スウェーデン ) において開発された オメプラゾールの一方の光学異性体 (S- 体 ) のみを含有するプロトンポンプ阻害剤である ネキシウム (D961H の日本における販売名 ) 錠 20 mg 及び 40 mg は を対象として

2. 改訂内容および改訂理由 2.1. その他の注意 [ 厚生労働省医薬食品局安全対策課事務連絡に基づく改訂 ] 改訂後 ( 下線部 : 改訂部分 ) 10. その他の注意 (1)~(3) 省略 (4) 主に 50 歳以上を対象に実施された海外の疫学調査において 選択的セロトニン再取り込み阻害剤及び

発育状態調査 身長 身長 ( 平均値 ) は 前年度と比較すると 男子は 12~15 歳で前年度を上回り 女子は 5,6,8,9,14,16 歳で前年度を上回っている (13 年齢区分中 男子は増加 4 減少 6 女子は増加 6 減少 5) との比較では 男子は全ての年齢で 女子は 5,9 歳を除い

試験デザイン :n=152 試験開始前に第 VIII 因子製剤による出血時止血療法を受けていた患者群を 以下のい ずれかの群に 2:2:1 でランダム化 A 群 (n=36) (n=35) C 群 (n=18) ヘムライブラ 3 mg/kg を週 1 回 4 週間定期投与し その後 1.5 mg/k

AID 4 6 AID ; 4 : ; 4 : ; 44 : ; 45 : ; 46 :

要望番号 ;Ⅱ-183 未承認薬 適応外薬の要望 ( 別添様式 ) 1. 要望内容に関連する事項 要望者学会 ( 該当する ( 学会名 ; 日本感染症学会 ) ものにチェックする ) 患者団体 ( 患者団体名 ; ) 個人 ( 氏名 ; ) 優先順位 1 位 ( 全 8 要望中 ) 要望する医薬品

15 第1章妊娠出産子育てをめぐる妻の年齢要因

ロペラミド塩酸塩カプセル 1mg TCK の生物学的同等性試験 バイオアベイラビリティの比較 辰巳化学株式会社 はじめにロペラミド塩酸塩は 腸管に選択的に作用して 腸管蠕動運動を抑制し また腸管内の水分 電解質の分泌を抑制して吸収を促進することにより下痢症に効果を示す止瀉剤である ロペミン カプセル

アンケート 2 疾患名 :1 型糖尿病 1. 日本における有病率 成人期以降の患者数 ( 推計 ) 小児期 : 人成人以降の患者数 : 小児期発症 1 型糖尿病 3 万人程度 ( 但し 成人発症 1 型糖尿病については不明 ) 2. 小児期の主な臨床症状 治療と生活上の障害 生命維


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秋植え花壇の楽しみ方


査を実施し 必要に応じ適切な措置を講ずること (2) 本品の警告 効能 効果 性能 用法 用量及び使用方法は以下のとお りであるので 特段の留意をお願いすること なお その他の使用上の注意については 添付文書を参照されたいこと 警告 1 本品投与後に重篤な有害事象の発現が認められていること 及び本品

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1. 今回の変更に関する整理 効能 効果及び用法 用量 ( 添付文書より転載 ) 従来製剤 ( バイアル製剤 ) と製法変更製剤 ( シリンジ製剤 ) で変更はない 効能 効果 用法 容量 B 型肝炎の予防通常 0.5mL ずつ4 週間隔で2 回 更に 20~24 週を経過した後に1 回 0.5mL

未承認薬 適応外薬の要望に対する企業見解 ( 別添様式 ) 1. 要望内容に関連する事項 会社名要望された医薬品要望内容 CSL ベーリング株式会社要望番号 Ⅱ-175 成分名 (10%) 人免疫グロブリン G ( 一般名 ) プリビジェン (Privigen) 販売名 未承認薬 適応 外薬の分類

た 18 歳以上の AD/HD 患者を対象に 日本人を含むアジア人によるプラセボ対照二重盲検比較試験及びその長期継続投与試験が現在実施されており 本剤の製造販売者によれば これらの試験成績に基づき 本剤の成人期 AD/HD 患者への追加適応に関する承認事項一部変更承認申請が行われる予定とされている

(別添様式)

シプロフロキサシン錠 100mg TCK の生物学的同等性試験 バイオアベイラビリティの比較 辰巳化学株式会社 はじめにシプロフロキサシン塩酸塩は グラム陽性菌 ( ブドウ球菌 レンサ球菌など ) や緑膿菌を含むグラム陰性菌 ( 大腸菌 肺炎球菌など ) に強い抗菌力を示すように広い抗菌スペクトルを


使用上の注意 1. 慎重投与 ( 次の患者には慎重に投与すること ) 1 2X X 重要な基本的注意 1TNF 2TNF TNF 3 X - CT X 4TNFB HBsHBcHBs B B B B 5 6TNF 7 8dsDNA d

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平成14年度研究報告

平成 29 年中の救急出動件数等 ( 速報値 ) の公表 平成 30 年 3 月 14 日 消防庁 平成 29 年中の救急出動件数等の速報値を取りまとめましたので公表します U 救急出動件数 搬送人員とも過去最多 平成 29 年中の救急自動車による救急出動件数は 634 万 2,096 件 ( 対前

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検査項目情報 トータルHCG-β ( インタクトHCG+ フリー HCG-βサブユニット ) ( 緊急検査室 ) chorionic gonadotropin 連絡先 : 基本情報 ( 標準コード (JLAC10) ) 基本情報 ( 診療報酬 ) 標準コード (JLAC10)

始前に出生したお子さんについては できるだけ早く 1 回目の接種を開始できるように 指導をお願いします スムーズに定期接種を進めるために定期接種といっても 予防接種をスムーズに進めるためには 保護者の理解が不可欠です しかし B 型肝炎ワクチンの接種効果は一生を左右する重要なものですが 逆にすぐに効

その最初の日と最後の日を記入して下さい なお 他の施設で上記人工授精を施行し妊娠した方で 自施設で超音波断層法を用いて 妊娠週日を算出した場合は (1) の方法に準じて懐胎時期を推定して下さい (3)(1) にも (2) にも当てはまらない場合 1 会員各自が適切と考えられる方法を用いて各自の裁量の

公募情報 平成 28 年度日本医療研究開発機構 (AMED) 成育疾患克服等総合研究事業 ( 平成 28 年度 ) 公募について 平成 27 年 12 月 1 日 信濃町地区研究者各位 信濃町キャンパス学術研究支援課 公募情報 平成 28 年度日本医療研究開発機構 (AMED) 成育疾患克服等総合研

系統看護学講座 クイックリファレンス 2012年 母性看護学


モビコール 配合内用剤に係る 医薬品リスク管理計画書 (RMP) の概要 販売名 モビコール 配合内用剤 有効成分 マクロゴール4000 塩化ナトリウム 炭酸水素ナトリウム 塩化カリウム 製造販売業者 EA ファーマ株式会社 薬効分類 提出年月 平成 30 年 10 月 1.1. 安全

会社名

臨床調査個人票 新規 更新 下垂体前葉機能低下症 ( 成人 GH 分泌不全症 ) 行政記載欄 受給者番号判定結果 認定 不認定 基本情報 姓 ( かな ) 名 ( かな ) 姓 ( 漢字 ) 名 ( 漢字 ) 郵便番号 住所 生年月日西暦年月日 * 以降 数字は右詰めで 記入 性別 1

平成 29 年度第 1 回小児治験ネットワーク中央治験審査委員会 会議の記録の概要 開催日時 平成 29 年 4 月 18 日 ( 火 )14:00~15:15 開催場所国立研究開発法人国立成育医療研究センター管理棟 2 階会議室 21 金子剛 石川洋一 鈴木康之 安達昌功 三浦大 掛江直子 廣部兼

Microsoft Word - P11~19第2部② 母子保健の現状

鑑-H リンゼス錠他 留意事項通知の一部改正等について

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初めて親となった年齢別に見た 就労状況 ( 問 33 問 8) 図 97. 初めて親となった年齢別に見た 就労状況 10 代で出産する人では 正規群 の割合が低く 非正規群 無業 の割合が高く それぞれ 22.7% 5.7% であった 初めて親となった年齢別に見た 体や気持ちで気になること ( 問

(2) 体重 平成 25 年度の幼稚園 小学校 中学校及び高等学校における幼児 児童及び生徒の体重 ( 県平均値 以下同じ ) については次のとおりである 1 前年度との比較 ( 表 2) 男子の体重は 6 歳 11 歳 13~17 歳で 前年度の同年齢より.2~2. kg増加しており 最 も増加し

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4 身体活動量カロリズム内に記憶されているデータを表計算ソフトに入力し, 身体活動量の分析を行った 身体活動量の測定結果から, 連続した 7 日間の平均, 学校に通っている平日平均, 学校が休みである土日平均について, 総エネルギー消費量, 活動エネルギー量, 歩数, エクササイズ量から分析を行った

タペンタ 錠 25mg タペンタ 錠 50mg タペンタ 錠 100mg に係る 販売名 タペンタ 錠 25mg タペンタ 錠 50mg 医薬品リスク管理計画書 (RMP) の概要 有効成分 タペンタ 錠 100mg 製造販売業者 ヤンセンファーマ株式会社 薬効分類 821 提出年月 平成 30 年

要望番号 ;Ⅱ-286 未承認薬 適応外薬の要望 ( 別添様式 ) 1. 要望内容に関連する事項 要望者 ( 該当するものにチェックする ) 学会 ( 学会名 ; 特定非営利活動法人日本臨床腫瘍学会 ) 患者団体 ( 患者団体名 ; ) 個人 ( 氏名 ; ) 優先順位 33 位 ( 全 33 要望

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10 年相対生存率 全患者 相対生存率 (%) (Period 法 ) Key Point 1 10 年相対生存率に明らかな男女差は見られない わずかではあ

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表 1 入院時検査所見 11,500L 471 L 17.0 gdl.3 L ph 7.49 PaCO 37.8 mmhg PaO 67.4 mmhg HCO 3.6 meql B E 1. meql 141 meql K 3.9 meql Cl 108 meql Ca 8.4 mgdl P 4.5

スライド 1

平成11年度学校保健統計調査結果(愛知県分)

DRAFT#9 2011

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フタル酸ジペンチル

本発表内容は, 一部演者の個人見解も含まれている可能性があります 演者はファイザー ( 株 ) の社員でありますが, 本演題は製薬協小児治験チームの立場で発表しており, 企業活動とは無関係なものであり, 利益相反もありません 2

第 91 巻第 3 号 第

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患者向医薬品ガイド

Ⅰ. 改訂内容 ( 部変更 ) ペルサンチン 錠 12.5 改 訂 後 改 訂 前 (1) 本剤投与中の患者に本薬の注射剤を追加投与した場合, 本剤の作用が増強され, 副作用が発現するおそれがあるので, 併用しないこと ( 過量投与 の項参照) 本剤投与中の患者に本薬の注射剤を追加投与した場合, 本

日産婦誌58巻9号研修コーナー


発育状態調査 身長 身長 ( 平均値 ) を前年度と比較すると 男子は 5~8,10,11,16 歳で 女子は 7~12,15,17 歳で前年度を上回っている (13 年齢区分中 男子は増加 7 減少 4 女子は増加 8 減少 3) 全国平均と比較すると 男子は全ての年齢で 女子は 9~11 歳を除

33 NCCN Guidelines Version NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology (NCCN Guidelines ) (NCCN 腫瘍学臨床診療ガイドライン ) 非ホジキンリンパ腫 2015 年第 2 版 NCCN.or


医療機器添付文書の手引書第 5 版 第 3 章第 3 節 < テンプレート > についての補足解説 1. パルスオキシメータ (WG2 6.1から6.4) テンプレートを利用する場合 以下 5 点の解説を参照すること パルスオキシメータ ( 本体 ) 6.2 パルスオキシメータ ( 一体


日本内科学会雑誌第98巻第12号

Transcription:

2008 年 10 月 16 日 日本小児内分泌学会 成長ホルモン委員会 SGA 性低身長症における GH 治療の実施上の注意 SGA 性低身長症における成長ホルモン (GH) 治療が 2008 年 10 月 16 日に承認されました 詳細については 改訂されたジェノトロピン ( ファイザー株式会社 ) の添付文書により確認して下さい 日本小児内分泌学会では SGA 性低身長症におけるGH 治療に関するガイドライン をすでに公表しています 1) しかし GH 治療の実施に際しては 添付文書に記載された承認事項に従いながら 適切に行う必要があります 本文書では ガイドラインを補う目的で 実施上の注意について述べます 1. 適応基準に用いる標準身長 体重表について適応基準に用いる出生時体格基準は 治験で採用された基準と同じに SDスコアの判定には文献 2) パーセンタイルの判定には文献 3) を 現時点では用いることにする これらに基づいて在胎週数別の基準を表にまとめたので 資料 1 に示す (SDスコアについては 文献 2) に記載された平均値と ±1.5SDの値から 平均 -2SD を計算して 体重は小数点以下 1 位 身長は小数点以下 2 位を四捨五入して表示した ) なお 在胎 22 週および 23 週で出生した小児については 上記の文献に基準値の記載がないため 出生体重の 10 パーセンタイル値として 初産 経産を問わず 22 週男児 430g 女児 405g 23 週男児 489g 女児 465g 4) を用いることにし 体重のみにより判断する ただし より適切な標準値が新たに公表された時点では 使用するこれらの基準値は変更される可能性がある 2. 成長ホルモン分泌刺激試験の施行について成長ホルモン分泌不全性低身長症 (GHD) であれば SGA 性低身長症とは異なった診療が行われるべきであるので SGA 性低身長症に対する GH 治療を開始する前に インスリン アルギニン クロニジン グルカゴン L-DOPA GHRP-2 のうちから少なくとも 1 種類の GH 分泌刺激試験を行い GHD でないことを GH 治療開始前に確認する必要がある 3. 染色体分析の施行について添付文書には 出生後の成長障害が子宮内発育遅延以外の疾患等に起因する患者でないこと と記載されている 除外診断を目的にしてすべての例に染色体分析を施行する必要はないが Turner 症候群が否定できない例では診療の方法が異なる可能 1

性があるので 染色体分析を施行して診断を明らかにすべきである また 既知の症候群 疾患の中で たとえば Russell-Silver 症候群は 治験において対象に含められたように 適応から除外しなくてよい 4. GH 用量増量の基準について添付文書には 通常 1 週間に体重 kg 当たり ソマトロピン ( 遺伝子組換え ) として 0.23 mg を 6~7 回に分けて皮下に注射する なお 効果不十分な場合は 1 週間に体重 kg 当たり 0.47 mg まで増量し 6~7 回に分けて皮下に注射する と記載されている どのような場合に 効果不十分 と判定して増量するかについては 以下にその判断のために参考とすべき事項について述べるが 増量しなくても良好な成長を示す症例も稀でないことを認識した上で 総合的に判断すべきである (1) 身長 SDS(HSDS) の 1 年ごとの改善 (ΔHSDS) の程度治験における 33μg/kg/day( 用量の記載では 0.23mg/kg/week に相当する ) 群の GH 開始後 1 年ごとの身長 SDS の改善 (ΔHSDS) は 初年度に 0.54±0.30 であった 1 年目の改善が平均 (0.54SD) に達しなかった群でも 2 年目に 67μ g /kg/day( 用量の記載では 0.47 mg/kg/week に相当する ) に増量すると ΔHSDS は 0.50±0.41 に増加した ( ファイザー株式会社データ 資料 2 参照 ) SGA 性低身長症で 2 年目以降も 0.23 mg/kg/week で治療された場合の成長反応は国内のデータがないが GHD における治療 ( 投与量 0.175 mg/kg/week) の 1 年ごとのΔ HSDS を見ると 1 年目の平均は 0.51 で SGA 性低身長症の治療における 33μ g/kg/day 群とほぼ同等であり 以後 年ごとに改善の程度は減弱した ( 成長科学協会データ 資料 3 参照 ) これらの結果から 0.23mg/kg/week による GH 治療においては 治療中の 1 年ごとについて ΔHSDS が 1 年目 0.5SD 未満 2 年目 0.25SD 未満 3 年目 0.15SD 未満 4 年目以降 0.1SD 未満であれば 成長反応は平均を下回ると推定し 効果不十分として 増量を考慮する上で参考にする なお 思春期になって成長スパートが開始すると GH 治療による効果判定は困難になるので この判定基準は 原則的に思春期前の症例に適用することとする (2) 増量を検討する際に考慮すべきその他の事項以下のような場合に 増量を考慮することができる 低身長の程度が著しい場合 予測された成人身長が著しく低い場合 骨年齢や性成熟からみて成長できる期間がかなり短い場合 低身長に伴う心理的ストレスが大きい または自己肯定感が損なわれている場合 (3) 血中 IGF-I 測定値による投与量の調整 2

GH 投与量の過量に伴う潜在的な有害事象の発生リスク上昇を考慮し 特発性低 身長症の診断と治療に関するガイドライン 5) を参考にして 血中 IGF-I 濃度が常に 著しく上昇していれば GH 投与量の減量を検討する 文献 1) 田中敏章 横谷進 西美和 他.SGA 性低身長症における GH 治療に関するガイドライン. 日本小児科学会雑誌 2007; 111: 641-646. 2) 仁志田博司 坂上正道 倉智敬一 他. 日本人の胎児発育曲線 ( 出生時体格基準曲線 ). 日本新生児学会雑誌 1984; 20: 90-97. 3) 日本小児科学会新生児委員会. 新生児に関する用語についての勧告. 日本小児科学会雑誌 1994; 98: 1946-1950. 4) 小川雄之亮 岩村透 栗谷典量 他. 日本人の在胎別出生時体格基準値. 日本新生児学会雑誌 1998; 34: 624-632. 5)Cohen P, Rogol AD, Deal CL et al. Consensus statement on the diagnosis and treatment of children with idiopathic short stature: A summary of the Growth Hormone Research Society, Lawson Wilkins Pediatric Endocrine Society and the European Society for Pediatric Endocrinology Workshop. J Clin Endocrinol Metab 2008; 93: 4210-4217. 3

資料 1 在胎週数別出生時体格基準表 ( 文献 2) 3) に基づいて作成 詳細は本文参照 ) 在胎 24-32 週の場合 ( 初産 経産によらず以下の表を用いる ) 在胎週数 24 25 26 27 28 29 30 31 32 男 10%ile 529 614 710 824 940 1,054 1,179 1,313 1,457 体重 児 -2SD 433 500 577 677 773 873 983 1,103 1,233 (g) 女 10%ile 436 520 623 737 861 986 1,110 1,226 1,341 児 -2SD 317 387 480 580 690 800 910 1,007 1,103 身長 10%ile 29.0 30.2 31.3 32.6 34.0 35.3 36.6 37.8 38.9 (cm) -2SD 27.3 28.4 29.4 30.6 32.0 33.4 34.6 35.8 37.0 在胎 33-42 週の場合 在胎週数 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 初 10%ile 1,554 1,690 1,854 2,036 2,266 2,444 2,566 2,647 2,717 2,769 男 産 -2SD 1,307 1,423 1,573 1,750 1,980 2,163 2,280 2,357 2,427 2,473 児 経 10%ile 1,597 1,769 1,943 2,146 2,386 2,586 2,743 2,807 2,849 2,863 体重 産 -2SD 1,340 1,507 1,667 1,860 2,100 2,300 2,467 2,517 2,553 2,553 (g) 初 10%ile 1,437 1,553 1,717 1,937 2,164 2,372 2,529 2,639 2,709 2,759 女 産 -2SD 1,180 1,277 1,427 1,647 1,883 2,100 2,267 2,377 2,447 2,497 児 経 10%ile 1,497 1,634 1,812 2,043 2,317 2,532 2,697 2,766 2,807 2,829 産 -2SD 1,240 1,353 1,507 1,733 2,027 2,260 2,440 2,513 2,550 2,567 身長 10%ile 40.1 41.3 42.6 43.9 45.1 46.1 47.0 47.5 47.8 48.0 (cm) -2SD 38.3 39.5 40.9 42.2 43.6 44.8 45.6 46.1 46.5 46.7 資料 2. 治験における身長 SDS(HSDS) の 1 年ごとの変化 (ΔHSDS) 33μg/kg/day で GH 投与を開始し 2 年目に 67μg/kg/day に増量した群の中で 投与 開始時身長が -2.5SD 未満であった症例を対象として検討し 以下の結果を得た ( 資料提供 : ファイザー株式会社 ) GH 投与量 33μg/kg/day 67μg/kg/day 対象全症例 HSDS -3.55±0.57-3.02±0.73-2.51±0.76 (n=19) ΔHSDS - 0.53±0.30 0.51±0.35 1 年目 ΔHSDS による層別 <0.53 の症例 HSDS -3.73±0.72-3.43±0.79-2.93±0.74 (n=9) ΔHSDS - 0.28±0.22 0.50±0.41 0.53 の症例 HSDS -3.39±0.37-2.64±0.41-2.13±0.58 (n=10) ΔHSDS - 0.75±0.15 0.51±0.31 4

資料 3.GHD の治療 (0.175 mg/kg/week) における 1 年ごとの身長 SDS の改善 (ΔHSDS) ( 成長科学協会登録症例 ) 対象 : 成長科学協会に登録された GHD で 1993 年 10 月より 2000 年 9 月に GH 治療開始された 8839 例のうち GH 治療開始時に男子 9 歳未満 女子 8 歳未満で 3 年間の治療データがある 男子 1438 例 女子 585 例 ただし リュープリン スプレキュア アンドロクール プレドニン ウィンストロール メドロールの使用者を除外した また 4 5 年目については 報告時の年齢が 9 歳以上の症例を除外した 方法 : 治療開始後 1 年ごとの身長 SDS の変化 (ΔHSDS) を求め平均値を計算した 結果 :1 年目 2 年目 3 年目 4 年目 5 年目のΔHSDS の平均値 GH ΔHSDS 対象の年齢条件対象人数治療の平均値 1 年目治療開始時 0.513 男子 1438 2 年目男子 9 歳未満 0.252 女子 585 3 年目女子 8 歳未満 0.156 4 年目 報告時 合計 365 0.103 5 年目 男女 9 歳未満 合計 89 0.130 5