CSR と BOP( 貧困層 ) ビジネ スを結び付ける方法と機会 ジョルジャ ペトコフスキー世界銀行研究所企業 競争力 開発担当部長
概要 全体的見通し 新しい概念的枠組み 開発への民間セクターの関与 企業の慈善行為と企業の社会的責任の比較 BOPとCSRの一体化 ビジネスで BOP アプローチが有効な理由 実例 ネクスト ステップと潜在的な課題
世界的な問題 人口増加 開発途上国 貧困と開発途上国の現状 : 30 億人が1 日 2ドル未満 ( で生活 ) 12 億人が1 日 1ドル未満 ( で生活 ) 全世界の国内総生産 (GDP) 2000 年 : 30 兆 50 億人 世界 GDPの20% 2050 年 : 140 兆 80 億人 世界 GDPの40%( 成長率 3.5% と仮定 ) 2000 年 50 億 2025 年 70 億 2050 年 80 億 先進国 10 億 10 億 10 億
BOP 市場 -5 兆ドル : 所得区分別総額
所得区分別 BOP 市場 : アジア -3 兆 4700 億ドル
アジア : BOP の支出と人口 (BOP 全体に占める割合 )
企業への新たな期待 世界経済フォーラム 世界の人々の声 調査
企業経営者はどう考えているか? 企業経営者がランキングの上位に挙げる開発上の課題 グッドガバナンスと汚職 腐敗問題への取り組み貧困緩和と教育持続的経済成長平和と安全エネルギー HIV/AIDS 水人権国際貿易ルール国際金融システム 世界経済フォーラム GCCI 調査
世界の上位 100 経済組織のうち 51 は法人であり 国家は 49 に過ぎない ( 法人は売上高 国家は GDP を基準に比較 ) 上位 200 法人の売上高合計は 世界総人口の 24 パーセントが得る所得合計の 18 倍に相当する 多国籍企業は世界の経済活動の 4 分の 1 を占めている 一方で 世界の就労希望人口の 3 分の 1 が未就労状態であるにもかかわらず 多国籍企業が雇用している労働力人口は 世界の労働力人口の 1 パーセント未満に過ぎない
受動的 積極的 企業は受動的に行動するのではなく 戦略的な手段をとらなければならない 企業はステークホルダー エンゲージメントを含む新たな戦略的機会を創造しなければならない 競争面での改善 経済的成功を収めるための前提条件となる健全な社会
新たな圧力 新たな概念的 枠組み 持続可能性に関する幅広い問題に取り組むにあたって 企業が受ける圧力 ある種の地球規模の問題には一面的に取り組むことが ますます難しくなっている すべてのステークホルダーの持つ相対的優位性を開発にも取り入れていく必要性 より積極的かつ協力的な形で開発に関与することが民間セクターにもたらす競争上の利益
民間セクターの開発への関与 民間セクターの開発への関与は 新しい事業の枠組みを示す これは さまざまなステークホルダー グループが共通の開発目標を達成する機会を増やすとともに 次のような包括的かつ体系的な考え方を浸透させる マルチ ステークホルダ パートナーシップ 民間セクターが開発に果たす役割と それが現地の環境やコミュニティに及ぼす影響 コーポレートガバナンス 貧困を緩和するための補完的かつ総合的なアプローチ 企業による平和への貢献 開発参加者間で協力可能なものを連結することにより 現地への長期的な影響を強め 現地での学習を促進すること
しかしながら. グローバル企業には世界中で富を創造する能力があるにもかかわらず こうした企業の恩恵が世界中でもっとも貧しい 40 億の人々 いわゆる 経済ピラミッドの底辺 (BOP) に直接届くことはめったにない
企業の慈善行為と企業責任の比較 民間セクターによる開発への関与は 慈善行為である必要はない こうした関与は企業の中核的戦略になり得る 借入国の競争力強化と具体的な開発目標の達成により実現される貧困緩和と社会開発への 根本的かつ長期的な影響
貧困削減 これに付随する社会的利益 開発途上にある脆弱な新興市場国の安定化 ビジネス環境の改善 競争力の向上と投資の促進
BOP アプローチと CSR BOPアプローチは企業のCSR 戦略や中核事業に不可欠な要素となり得る 新しいビジネスモデル より伝統的な 消費者志向の BOPアプローチ 貧困層に 消費者として市場に参加するだけでなく 生産者としてサプライチェーンの必須部分を構成する能力を与える 新しい市場の創造と 既存市場の改造
BOP 市場のセクター別推定規模 :5 兆ドル
CSR と BOP の一体化 CSR 戦略と BOP 戦略はどちらも 広範な企業戦略や長期的な市場ポジショニングと矛盾するところのないものでなければならない 有効な CSR 戦略や BOP 戦略は 企業の持続的成長を支援することができる
BOP アプローチのための新しい ビジネス事例 トップレベルの成長 ほとんどの大企業は飽和状態の市場で営業している 未開発の市場に参入することにより 新しい巨大な消費者 サプライヤー パートナー基盤を開拓し 革新や投資の機会を無制限に獲得することができる コスト節減 BOPを加えると サプライチェーンが効率化する 労働市場をBOPに委託 BOP 市場は異なるビジネスモデルの上に築かれている 革新 製品の革新を超えて ビジネスモデルの革新にまで拡大する
単なる消費者としてではなく パート ナーとしての貧困層 経済ピラミッドの底辺 アプローチ 企業はおもに食品と消費財の分野で BOP 市場に関心を持ってきた 住宅供給 農業 消費財 金融サービスといったセクターでは 国内の大企業が BOP のニーズを満たすための最も革新的な取り組みを進めてきた
企業が成長するための基盤 金融サービスや通信手段へのアクセス拡大 特に携帯電話は最も顕著な成功例 情報 ( 最新の市場価格など ) や信用貸しを利用出来るようになることにより 貧困層はもっと効果的に競争をしたり 起業家として世界経済にかかわったりすることができるようになっている
実例 : テトラパック ナイジェリアなどで実施されている 開発のための食糧 プログラム テトラパックのビジネス市場開拓 学童の栄養状態を改善できるという開発上の利益 現地の製品を現地製造するサプライチェーンを築くことにより 雇用を創造できるという地元経済への利益
実例 : インドのタタ タタ インド 2000 ドルの車 : 1 台の二輪車で雨の中の滑りやすい道を走る 4 人家族 が販売対象 * 年間 100 万台の販売を計画 この車は 農村部にある技術レベルの低い小規模な組立工場にキット形式で配布される
実例 : セメックス パトリモニオ ホイ 世界第 3 位のセメントメーカーであるセメックスは 世界でもっとも成功している住宅供給プログラムの 1 つ パトリモニオ ホイ プログラムを創設した このプログラムは 家族で住む家を徐々に建てるために定期的に貯蓄するのは 男性ではなく女性であるという事実をもとに創設された セメックスとパトリモニオ ホイは グループ融資 の考え方をヒントに 新しく屋根を葺いたり部屋を増築したりするのに必要な建築資材の購入資金として 70 週間にわたり毎週約 10 ドルを貯蓄することを顧客に求めるという提案を考え出した 企業の社会的責任 (CSR) とマルチステークホルダー パートナーシップ (MSP) 世界銀行研究所 (WBI) は セメックスおよびモンテレー工科大学 (ITESM) と共同で 次のような内容の総合的な訓練プログラムを開発した WBI の CSR オンライン講座 セメックスと ITESM の 企業市民 オンライン講座 WBI と ITESM の MSP オンライン講座 このプログラムはラテンアメリカ全域の企業代表者をおもな対象としており 2007 年 3 月から 2008 年 3 月までオンラインで提供されることになっている このプログラムは 3 つの組織の CSR 専門家との円卓会議に基づいて開始される
日本の状況 日本国内及びOECDやEDCの企業のベスト プラクティスへのアクセスが限定されている 日本の経験への理解を深め 日本企業を関与させることにより 次のようなことが可能になる 企業が開発に最大限貢献するための枠組み おそらくBOPアプローチ を発展させることにより 世界的なCSRアジェンダを再構築する 新しい模範事例を実用的ソリューションや潜在的規模の計測可能性より導き出す
前進 これらの事例は 第 1 段階 CSR や BOP のアプローチは別々のサイロの中に存在してきた 戦略的な前進をするためには これらのアプローチの調整 統合 および / または補完をする必要がある 第 2 段階 は 貧困層の市場参入と正式な経済やサプライチェーンへの参加を促すものとなるだろう これを実現するためには 上から CSR をサプライチェーンを通して浸透させることと 現場から BOP の取り組みを促進することの両方が必要になる
課題と戦略 外部の障害 インフラ面の課題 経営陣 経営陣の視点や経営行動様式を変える必要性 協力 複数のステークホルダー間の協力を促進し こうした協力に応じる必要性 構造的変化 新しいビジネスモデル 新しい研究開発 ベンチャー 社内の新事業部門 リスクの共有 事例を入手 他セクターの参加者と力を合わせることにより リスクを軽減することができる
現在及び未来のビジネス及び公的セクターのリーダーにとっての新しいチャレンジとは : 如何に地球的課題に取り組み 地球の持続性を保ちながら ビジネス商機をつかんでいくか?
ありがとうございました