平野由夫様
1. 測定内容 (1) 測定日 :2013 年 5 月 3 日 (2) 場所 :( 株 ) アシックス ランニングラボ (3) 測定内容 : 次の 6 項目を実施 1 足型測定 : 三次元足型測定器で足の形を測定しました 2 下肢アライメント測定 : 骨の配列や 関節可動域を測定しました 3 体組成測定 : 身体の筋肉量と脂肪量を測定しました 4 筋力測定 : 専門的な筋力測定器で 膝を曲げる力 伸ばす力を左右脚について測定しました 5 ランニングフォーム測定 : 前 横 後ろ 上の 4 方向から同時にランニングフォームを撮影しました 6 全身持久力測定 : 専門的な呼吸代謝装置を用いて ランニング中の酸素摂取量や心拍数を測定しました
2. 測定結果まとめ 足型 下肢アライメント測定 前回の測定時と同様のほぼ傾向が見られ 一部柔軟性の改善も見られます 足型 足囲は左右とも G で非常に広いです 右足のアーチが高く 着地衝撃を緩衝しにくい傾向にあります 右拇指が内反傾向にあり シューズに当たりやすくなっています アライメント 下腿角度が小さく 着地衝撃力がダイレクトに伝わりやすい傾向にあります 関節可動域 足関節 : 右足の内反方向の可動域が小さくなっています 左足の底屈方向の可動域が小さくなっています 股関節 : 標準的な柔軟性が保たれています 体組成測定 前回よりも良好な数値になっています 体重 1kg あたりの基礎代謝量は 23.3kcal で 脂肪は非常に燃えやすいと言えます 体脂肪率は 16.5% です ランニングパフォーマンスを高めるには 男性ランナーとしては 13% 前後を目安にしましょう 筋力測定 前回の測定時に比べ 筋力の向上が見られます 体重 1kg あたりの筋力は 膝を伸ばす筋力 膝を曲げる筋力ともに両脚とも標準以上のレベルです また 左右差などの筋力バランスも良好な範囲内です ランニングフォーム測定 前回の測定時に比べ 大きな走りができていますが 同様の傾向も見られます リズム良く軽快に走られていますが 肩周りに力みが見られ 腕振りが硬くなっています ピッチ ストライドともに標準的で 脚の回内 ( プロネーション ) も問題ありませんでした 全身持久力測定 前回の測定時と AT 値に変化は見られません 快適 ~ ややきついと感じ出すランニング速度 (AT ペース ) で 1 キロ 5 分 27 秒ペース程度 これをもとにしたフルマラソンの予測タイムは 3 時間 59 分程度と考えられます きついと感じ出すランニング速度 (RCT ペース ) は 1 キロ 4 分 53 秒ペース程度で 両者をもとにハーフマラソンのタイムを予測すると 1 時間 48 分程度と考えられます
3. 測定データ : 1 足型測定
3. 測定データ : 1 足型測定 ~3D 足型分析結果の見方 ( 目安 )~
3. 測定データ : 1 足型測定 ~3D 足型分析結果の見方 ( 目安 )~
3. 測定データ : 2 下肢アライメント測定 股関節の柔軟性左右 1 太もも表側の筋肉の硬さ ( 図 1) 標準標準 2 太もも裏側の筋肉の硬さ ( 図 2) 柔らかい柔らかい 3 太もも内側の筋肉の硬さ ( 図 3) 柔らかい柔らかい 4 内旋方向の硬さ標準標準 図 1 図 2 図 3 5 外旋方向の硬さ標準標準 足関節の柔軟性左右標準域 6 横方向の硬さ : 内反 ( 図 4) 24 14 20~30 背屈 底屈 外反 ( 図 5) 10 8 8~14 7 前後方向の硬さ : 背屈 ( 図 6) 22 20 8 以上 底屈 ( 図 6) 48 50 50 以上 下肢アライメント 左 右 標準域 8 O 脚 X 脚 ( 図 7) O 脚 1.5 横指 O 脚 :3 横指以下 X 脚 :1 横指以下 9 Qアングル ( 図 8) 18 15 男性 :19 以下 女性 :22 以下 10 下腿角度 ( 図 9) 1 0 5~10 11 踵部角度 ( 図 9) 2 4 -( 内反 ) 1 ~ +( 外反 )4 図 4( 内反 ) 図 5( 外反 ) いずれも右足 図 6 下腿角度 12 前足部ねじれ ( 図 10) 2 2 0~4 13 脚長差なし - 踵部角度 図 7 図 8 図 9( 右足 ) 図 10( 右足 ) 7 背屈が小さい場合はふくはらぎの筋肉やアキレス腱に疲れがたまりやすくなります 9Q アングルとは太ももの前の筋肉 ( 大腿四頭筋 ) と膝 ( 膝蓋靭帯 ) のなす角度 この数値が大きくなると膝への負担が大きくなります 11 踵部角度とは腰幅を基準 ( 0.8) に直立した姿勢での踵の倒れ角度 内側に倒れている場合を外反 外側に倒れている場合を内反 数値が大きくなると足首の不安定性が大きくなります 12 前足部の捻れとは足を脱力させた際に 前足部が踵部に対して捻じれている角度 プラスの数値で 前足部が足裏を内側に返す方向に マイナスの場合で足裏を外側に返す方向に捻れている状態を表します 13 脚長とは足の内くるぶしから腰骨 ( 上前腸骨棘 ) までの距離 股下高とは異なります
3. 測定データ : 3 体組成測定
3. 測定データ : 4 筋力測定 絶対値筋力 (kgm) 左 右 膝を伸ばす力 22.0 21.8 膝を曲げる力 11.6 11.6 体重当たり筋力 (kgm/kg) 膝を伸ばす力 0.281 0.279 膝を曲げる力 0.148 0.148 筋力評価膝を伸ばす力 7 7 膝を曲げる力 6 6 筋力バランス (%) 曲げる力 / 伸ばす力 52.7 53.2 左右差 (%) 膝を伸ばす力 -0.9 膝を曲げる力 0.0 膝関節回りの筋力は 等速性筋力測定器と呼ばれる速度を一定にした状態での筋力を測定しています 運動速度 ( 角速度 ) は 1 秒間に 60 度の速さの条件でした 筋力評価は 同じ性別のランナーの筋力値と比較して 10 段階で評価しています 最高ランクが 10 で最低ランクは 1 となっています 筋力バランスは 膝を曲げる筋力と伸ばす筋力の比を % で表しています 通常は曲げる筋力は伸ばす筋力より小さく 今回の測定条件では 50 ~ 65 % が標準的な範囲です 一般ランナーでは 膝を曲げる筋力が弱い傾向があります 50% を下回る場合は 膝を曲げる筋力の強化が必要だといえます 左右差は 右脚と左脚の筋力の差を 右脚を基準に算出しています よって プラスの場合は右脚の筋力が強く マイナスの場合は左脚の筋力が強いことを表しています ±10% 以内が標準です
3. 測定データ : 5 ランニングフォーム測定 (1) ピッチ ストライド ピッチ ストライドともに標準的です 210 ピッチ ( 歩 / min ) 150 ストライド (c m) 90 身長比ストライト (% ) 190 130 80 70 110 60 170 90 50 40 150 70 30 8.5 1 0.5 1 2.5 8.5 1 0.5 1 2.5 8.5 1 0.5 1 2.5 走行速度 (km/ h ) 走行速度 (km/ h ) 走行速度 (km/ h ) 各グラフの緑線は標準域を示しています (2) ランニングフォームの特徴 前からの映像 ( 写真 1) 右肩がやや下がっています 肩周りの動きに力みが見られ 腕振りに硬さが見られます 膝の向きはまっすぐで 着地時の動揺も見られません 横からの映像 ( 写真 2) リズム良く軽快な走りをしています 自然な前傾姿勢が保たれています 股関節の動きが大きな走りをしています 後方足部アップ ( 写真 3) 着地はかかと外側で行われており標準的です 足の回内( プロネーション ) は標準的です 着地時に足先が外に向く傾向があり 右足で顕著です 蹴り上げの高さの左右差はありません 上からの映像 ( 写真 4) 腕の振り方に 左右で違いがあり 左脇がやや開いています 写真 1 写真 2 写真 3 写真 4
3. 測定結果の詳細 : 6 全身持久力測定 項目 測定値 ATペース 時速 11.00 km/ 時 1キロ当たり時間 5 分 27 秒 /km 心拍数 159 拍 / 分 RCTペース 時速 12.25 km/ 時 1キロ当たり時間 4 分 53 秒 /km 心拍数 167 拍 / 分 走行中の最大心拍数 188 拍 / 分 タイム予測 フルマラソン 3 時間 59 分 測定したランニング速度時速 8.5 キロ (1 キロ 7 分 03 秒ペース ) を 2 分間走行後 時速 9.5 キロ (1 キロ 6 分 18 秒ペース ) から 1 分毎に時速 0.5 キロずつ速度を上げ 時速 14.0 キロ (1 キロ 4 分 17 秒ペース ) まで走行 走行時間は 12 分でした 補足 タイム予測は 呼吸循環系能力だけから推定しています 長時間ランニングに対応できる脚力が養成されていない場合は 予測精度が落ちることになります AT ペースでフルマラソンを最後まで走りきった場合は 3 時間 50 分程度です ハーフマラソン 1 時間 48 分 *AT ペース等の説明は小冊子 Running Science 内 第一章 ランニング能力の科学 をご参照下さい
4. トレーニングの指針 (1) ランニングトレーニング全身持久力を高めるには 1AT ペースより速いランニング (RCT ペース付近 ) 2AT ペースもしくは AT ペースより少し速いランニング ( もしくは持続走 ) 3AT ペースより遅いランニング の 3 つのトレーニングをバランスよく組み込むことが大切です 平野由夫様の場合 全身持久力測定の結果から AT ペースは時速 11.00 キロ (1 キロ 5 分 27 秒ペース ) 心拍数で 159 拍 / 分 また 1 の AT ペースより速いランニングの速度 (RCT ペース ) は 時速 12.25 キロ (1 キロ 4 分 53 秒ペース ) 心拍数で 167 拍 / 分でした (*1) ランニング情報シートならびに 測定当日に確認しました現在の主なトレーニング内容は以下の通りです 普段 週 2~3 回 : 月間距離 200km 10~40km(1 キロ 7 分 00 秒 ~6 分 40 秒ペース ) ビルドアップ走 トレイルも実施 走り込み期 週 3 回 : 月間距離 250~300km 10~60km(1 キロ 7 分 00 秒 ~6 分 40 秒ペース ) ビルドアップ走 トレイルも実施 ランニング頻度は適度で トータルのランニング量は十分だと言えます ランニング速度が AT 以下の比較的ゆっくりしたペースに偏っています 今後の走力向上のためには今回測定した AT を中心に速度と距離に変化をつけたトレーニングに取り組みましょう フルマラソンに向けてのトレーニングの進め方などは Running Science P36~37 のレベル 2 ならびに以下の要領を参考にしていただければと思います (*2) 1 まず AT ペースを意識したランニングを取り入れ 週に 1~2 回は AT よりやや速い ( ややきつい (~ きつい ) と感じる ) ペースで 40 分を目安に走り 週末などの時間が取れる日に快適と感じる ( 余裕のある ) ペースで 20~30km 程度走ります 2 30km 以上の快適なランニングが無理なくこなせるようになれば 徐々にペースを上げるようにします AT の 80% 程度のペースから始め AT ペースで 30~35km を走り切れるようになることを目標とします トレイルランニングで大切なことは バランスの良いフォームとアップダウンに耐えられる脚力の養成です そのため日常のロードトレーニングでもある程度の負荷をかけることが有効です 今回測定した AT ペースよりも少し速いスピード ( 呼吸が弾む程度 ) でのランニングを取り入れるようにしましょう また トレッドミルを使う際は少し傾斜をつけてみることも有効です ただしその分脚への負担も大きくなりますので トレーニング後のストレッチ等ケアを十分に行いましょう また 効果をあげるためには体調の悪いときは行わないなどの注意も必要です
4. トレーニングの指針 (2) ランニングトレーニング ( 補足 ) (*1) 目標心拍数について : アメリカスポーツ医学会 (ACSM) のガイドラインでは 健康のための有酸素運動の上限は 最高心拍数 (220- 年齢 ) の 90% 程度とされています 平野由夫様の場合 (220-46) 0.9=157 拍 / 分となります ACSM の推奨する運動強度の上限を超えるような練習の場合は くれぐれも体調には気を配り 体調のすぐれない日は練習を休むようにしましょう 休む勇気も大切です (*2) 運動強度の高いランニング練習を行うと その分脚への負担も大きくなりますので AT ペースを超える練習を導入する際には 脚の様子をみながら徐々に増やしていくことが大切です 気をつけながら行ってください 筋力トレーニング筋力トレーニングは 筋力の強化や維持だけでなく 動きづくりの改善や故障対策になります 次の筋力トレーニングを実施しましょう レッグランジ (P432): ( 主に強化する筋肉 ) 大腿四頭筋 ハムストリングス 大殿筋 ( 狙い ) 脚力の全般的な強化 腰の位置を高く保つためのトレーニング 股関節の動きの安定化 タオルギャザー (P479): ( 主に強化する筋肉 ) 足底筋群 ( 狙い ) 足のアーチの強化 腹筋トレーニング (P4710): ( 主に強化する筋肉 ) 腹直筋 腹斜筋 腹横筋 ( 狙い ) ランニング中の上体の安定化 背筋トレーニング (P4812): ( 主に強化する筋肉 ) 脊柱起立筋 ( 狙い ) ランニング中の上体の安定化 筋力トレーニングは セット数は 1(~2) セット 回数はきついと感じてからしばらく辛抱できる程度を行います 最初は軽めのランニングの時や走らない日に定期的に行い 慣れてくれば ポイント練習後に脚を追い込むようにしておこなうようにシフトして行きます 詳しくは小冊子 Running Science の P42~50 をご参照下さい 柔軟性の向上柔軟性を高めることは 筋肉への余分な負担を軽減し故障防止につながるとともに 滑らかなフォームづくりとしても重要です 今回の測定では 今回の測定では 股関節周り の柔軟性は優れていました しかしながら 足関節周りの柔軟性がやや低くなっていました 小冊子 Running Science の P54~55 のストレッチ 7 8 を十分行い 足首を回す運動も行いましょう また 足裏の疲労には P53 のストレッチ 8 が有効です 柔軟性を維持することは よりよいコンディションづくりだけでなく 故障や怪我の予防という観点からも重要です 日々のストレッチを習慣化させましょう ストレッチのタイミングは 運動前後やお風呂あがりなどの身体が温まっている時が効果的です 反動をつけず 気持ちのいいところまでゆっくりのばしましょう
4. トレーニングの指針 (3) フォームの改善マラソンなど長い距離を走る場合は より効率の良い走りが求められます 自然な前傾を保ち 着地も重心に近い位置で行うことで ブレーキ力を小さくし 腰高姿勢を保ったまま身体を前方に移動させることができます 実際の動作では 身体を前に倒そうとする 転ばないために脚が前に出る その体重移動の繰り返し というイメージを持つようにしましょう 小冊子 Running Science の P.26 をご参照ください また 体幹に近い大きな筋肉を効率的に使うと ふくらはぎなどの局所的な疲労を抑えることができます そのためには 足先から前に出すのではなく 膝が脚を自然にリードしていくようなイメージを持ってみましょう 膝から下はリラックスし 膝につけられた糸が すうっと前方に引っ張られる ようなイメージです 今回の測定では 肩周りに力みが見られ 腕振りが硬くなっています ランニング中の腕振りは 肘からリラックスして引くように振ることで 自然と大きな振りができるようになり 脚との連動につながってきます 片足立ちになって腕振りをしてみましょう リラックスして肘がしっかり引かれていれば肩甲骨が動き それと連動して骨盤が自然に回旋し よりスムーズな走りにつながります ウィンドスプリント (W.S.) を取り入れてみましょう 100~200m ほどの距離を全力の 7~8 割位のスピードで駆け抜けるように走ります 大切なことは 大きく 走ること 胸をしっかり張り 腕を前後に振って ( 特に肘を後ろに引くこと ) 大きなストライドで走ります これにより 腰の高い大きなフォームが身に付きます おすすめシューズアライメント フォームのどの側面からも 故障の原因となりうるような要因は特に見られませんでした また 足の回内 ( プロネーション ) も標準的で 目立って不安定な足の動きは見られませんでしたので 目的 脚力に応じてお選びいただけます ただし 足囲が広いので ワイドタイプのシューズを選ぶようにしましょう アシックスでは以下のシューズをお薦めします <TJG683> GEL-KAYANO 19-SW ( ケ ルカヤノ 19- スーハ ーワイト ) トレイルランニングシューズでは <TJT102> GEL-Fuji Trabuco G-TX ( ケ ルフシ トラフ ーコ G-TX) サイズは 27.5 が妥当と思われますが ご購入の際は店頭で必ず試し履きを行って下さい トレイルランニングシューズ <TJT102> GEL-Fuji Trabuco G-TX ( ケ ルフシ トラフ ーコ G-TX) につきましては 幅がレギュラーサイズになりますので 今回店頭で試し履きしていただきましたように 28.0~28.5cm が妥当と思われます
5. おわりに アシックス ランニング能力測定にご参加頂き 誠にありがとうございました 測定結果表とランニング映像を併せてご覧頂き 自分のランニングの良い点 また改善が必要な点をこの機会にしっかりと把握し 今後のランニングトレーニングに活かして頂ければと思います ますますのご活躍を期待申し上げます 尚 測定結果に関するご質問は お受けいたしますので 何なりとご質問頂ければと思います 分析担当者 : 小谷浩分析監修 測定責任者 : 佐藤智美 測定結果に関するご質問等は ランニング能力測定結果に関する質問 と表記して 分析担当者もしくは測定責任者まで 以下のアドレスまでメールにてご連絡を頂ければと思います E メール : lab-tokyo@asics.co.jp