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シルト質砂では, 同一の方法で供試体を作製したが, 供試体ごとに乾燥密度のバラツキが生じており, 礫混じり土の場合では, 締固めエネルギーが同一となるように供試体を作製したが, 全体的に 5cm の供試体の方がゆる詰めとなった 2 つの供試体の粒度曲線は礫分の範囲ではほぼ平行しており, 供試体に対する各粒径の礫の混入割合はほぼ同一と思われるが, 直径が小さい供試体ほど, ゆる詰めになりやすいと考えられる シルト質砂, 礫混じり砂ともに供試体は三軸セルに設置して二重負圧法により飽和化を行った後, 所定の有効拘束圧 (5,,2kPa) で圧密してから, シルト質砂ではひずみ速度.1%/min および 1.%/min の 2 種類で非排水せん断を行い, 礫混じり土では, ひずみ速度.1%/min で非排水せん断を行った 表 - 1 シルト質砂の各実験ケースの供試体の諸元 実験 ase 載荷速度.1 (%/min) 1 (%/min) 有効拘束圧 (kpa) 5 2 5 2 乾燥密度 (g/cm 3 ) 1.432 1.48 1.438 1.451 1.473 1.433 表 2 礫混じり砂の各実験ケースの供試体の諸元 実験 ase 直径 (cm) 5 1 有効拘束圧 (kpa) 5 2 5 2 乾燥密度 (g/cm 3 ) 1.63 1.62 1.72 1.72 1.8 1.84 ピーク時の応力比.72 1.22.93 残留時の応力比.78 1.45 1.9 3. 試験結果 (1) シルト質砂の試験結果図 -3 にすべての試験の応力 ~ひずみ関係を示す 3 種類の初期有効拘束圧ごとに比較すると, いずれの拘束圧においても, 載荷速度の大きい実験ケースの方が, 同じ軸ひずみレベルでは軸差応力が大きくなっており, せん断強度に載荷速度の影響が現れている 特に軸ひずみレベルが大きくなるせん断後半にその傾向が顕著になり, 逆にせん断初期の弾性領域に近いところではほぼ同じ曲線を描き大きな差は生じていないことが分かる 35 3 (1%/min) 35 3 25 2 15 5 (1%/min) (.1%/min) (1%/min) (.1%/min) (.1%/min) 5 1 15 2 ε a (%) 25 2 15 5 5 15 2 25 3 35 p' (kpa) 図 3 応力 ~ ひずみ関係 ( シルト質砂 ) 図 4 有効応力経路 ( シルト質砂 )

図 -4 にすべての試験の有効応力経路を示す 有効拘束圧ごとに比較をすると, 同じ軸差応力で見れば, 載荷速度が小さい方がより過剰間隙水圧の発生量が大きく, 有効応力の減少量が大きくなっている すべての実験ケースにおいて, 有効応力はせん断初期に一旦減少した後, 再び増加に転じており, ダイレイタンシーの傾向が圧縮から膨張に変わっていくことが分かる この正のダイレイタンシーに起因する軸差応力の増大は, 比較的粗いシルトや砂分を多く含む土の非排水せん断時の特徴的な性質である 一方, 破壊線の傾き ( 破壊時の応力比 ) は各実験ケースによって異なるものの, 大別して 2 つに分かれる この破壊線の傾きの違いは供試体の密度のバラツキにも関係していると思われ, 表 1 に示す乾燥密度が比較的大きい ase,, において破壊線の傾きが大きくなっている ase と ならびに ase と を比較する限り, 載荷速度は破壊線の傾きに大きな影響は与えていない しかし, 超過圧密粘土等は, 載荷速度に応じて破壊線を含めた有効応力経路が大きく異なることも知られており,ase と の破壊線の相違は, 供試体密度の相違だけによるものか, 載荷速度の相違によるものか簡単には判断できない 次に載荷速度が強度定数の算定に及ぼす影響について考察する 図 -5 ならびに図 -6 にそれぞれ全応力でならびに有効応力で整理したモール クーロンの破壊基準を載荷速度のごとに示す なお, 軸差応力はピークなしで単調増加していることから, モールの応力円は軸ひずみ 15% 時の応力状態を用いて描いている 図 -5 の全応力のモール クーロンの破壊規準を見ると, 載荷速度が大きいほど軸差応力も大きくなることを反映して, モールの応力円が大きくなっている そのため, 内部摩擦角はいずれの場合もほぼ同じであるが, 粘着力は (a) のグラフで 5.8kPa,(b) のグラフで 2.1kPa となり載荷速度の大きい場合のほうが大きくなる このように, 載荷速度の増大にしたがって軸差応力が大きくなる地盤材料であれば, 全応力で整理する限りは載荷速度の増加につれて多少なりとも粘着力の増大が見込まれる 河川堤防の法面すべり破壊の検討では, 小さい拘束圧レベルでのせん断強度が特に重要となるため, たとえ小さな粘着力であっても円弧すべり解析の結果に与える影響は大きい 実務で用いられる U 試験では載荷速度は 1%/min が用いられるが, その際には粘着力が若干大きめに見積もられている可能性があることに注意する必要がある 2 15 5 c cu =5.3 5 =21.9 o 15 2 25 5 15 2 25 3 35 4 45 5 3 35 (a) 載荷速度.1%/min 4 45 5 2 15 5 c cu =2.1 5 15 =21.5 o 2 25 5 15 2 25 3 35 4 45 5 3 35 (b) 載荷速度 1%/min 4 45 5 図 5 全応力で整理したモール クーロンの破壊規準 ( シルト質砂 ) 2 15 5 5 φ'=34.8 o φ'=29.1 o 15 2 25 5 15 2 25 3 35 4 45 5 3 35 (a) 載荷速度.1%/min 4 45 5 2 15 5 5 φ'=33.4 o φ'=28.5 o 15 2 25 5 15 2 25 3 35 4 45 5 3 35 (b) 載荷速度 1%/min 4 45 5 図 6 有効応力で整理したモール クーロンの破壊規準 ( シルト質砂 )

図 -6 に示すように有効応力で整理した場合には, 図 -4 に示した有効応力空間上の破壊線と同様の傾向となり, 載荷速度の相違よりも供試体密度のバラツキの影響の方が大きく,c = と仮定すれば, 密度の違いで大別できる ase,, と ase,, で 2 つの内部摩擦角のグループに分かれる いずれにせよ, 図 -3 の有効応力経路に示すように, このシルト質砂の非排水状態におけるせん断強度は, 正のダイレイタンシーを拘束することによって発揮されるものであり, 実際の河川堤防のように不完全非排水条件の下では, ここまで大きなせん断強度は期待できないことに注意しなければならない また, 破壊時の応力比, すなわち図 -6 に示す内部摩擦角は, 排水条件であればピーク強度から算定されるものに対応しており, この意味でも内部摩擦角が大きめの見積り値であることを認識する必要がある (2) 礫混じり砂の試験結果図 -7 および図 -8 にそれぞれの供試体径における応力 ~ひずみ関係と有効応力経路図を示す 乾燥密度が小さい直径 5cm の ase および においては, 軸差応力全体ならびに破壊時の応力比のいずれも, 直径 1cm の同一有効拘束圧の実験 ase および と比べて小さくなっている しかしながら, 直径 5cm の ase の場合には, 突出して軸差応力全体ならびに応力比は大きくなり, 他の ase とは大きな差が生じた これは, 他の実験ケースと比較して, 乾燥密度が大きいことが影響していると考えられる 一方, 直径 1cm の ase, および では乾燥密度にバラツキがあったにもかかわらず, 破壊時の応力比はほぼ同一となり, 供試体の密度のバラツキの影響は小さい 表 1 にピーク強度時ならびに残留時の応力比も示しているが, 有効応力経 25 25 2 15 2 15 1.45 1.22.78 5 5.72 5 1 15 2 5 15 2 25 ε a (%) p' (kpa) (a) 応力 ~ひずみ関係 (b) 有効応力経路図 7 直径 5cm の供試体の実験結果 ( 礫混じり砂 ) 25 25 2 15.93 5 5 5 1 15 2 5 15 2 25 ε a (%) p' (kpa) (a) 応力 ~ひずみ関係 (b) 有効応力経路図 8 直径 1cm の供試体の実験結果 ( 礫混じり砂 ) 2 15 1.9

図にも示したように, 直径 5cm の場合では, と で大きな差があるのに対して, 直径 1cm では,, とも同一となっている これにおいても ase が突出して大きくなっているのは乾燥密度の影響によるものと考えられ, 直径 1cm では有効応力経路と同様に乾燥密度のバラツキによる影響は少ない 全般的に, ピーク時の応力比の方が残留時の応力比よりも小さく, ピーク時での強度定数の設定は一見安全側ではあるものの, この礫混じり砂のように塑性圧縮を伴いながらひずみ軟化を呈する材料は, ピーク強度以下でもクリープ破壊等の進行性破壊が懸念される地盤材料であり, ピーク時での強度定数の設定には注意が必要である 次に全応力と有効応力の両者でモール クーロンの破壊規準を整理して, それぞれの特徴を考察する 図 -9 ならびに図 -1 にそれぞれ直径 5cm ならびに直径 1cm の試験結果を示す 直径 5cm の場合には, 供試体密度のバラツキがモールの応力円に大きく影響し, 密詰めとなった ase の応力円が突出して大きくなっている この ase を除外すると, 全応力ならびに有効応力での内部摩擦角はそれぞれ =11.6 o ならびに φ =18.7 o となる 一方, 直径 1cm の場合には, 全応力, 有効応力ともに 3 つの試験で統一した強度定数が求められ, 全応力ならびに有効応力での内部摩擦角はそれぞれ =11.2 o ならびにφ =22.9 o となる 特に全応力で整理することにより, 直径 5cm の ase, と直径 1cm の内部摩擦角 はほぼ同じ値となるが, 直径 1cm の場合では c cu =6.2kPa の粘着力が見込まれる結果となっている 河川堤防の法面すべり破壊の検討では, 小さな拘束圧レベルでのせん断強度が特に重要となるため, たとえ小さな粘着力であっても円弧すべり解析の結果に与える影響は大きい 今回の礫混じり砂のように, ゆる詰め構造に起因するひずみ軟化を呈する地盤材料では, 本来粘着力などを見込むべきではないことは明白であるが, 全応力で整理した最終的な結果 ( 図 -9(a) と図 -1(a)) しか見なければ, 試験結果として現れている粘着力の妥当性についての判断もできないために,U 試験の結果の取扱には注意を要する 15 5 5 15 5 15 2 25 3 35 σ 2 25 =15. o 3 =11.6 o 35 15 5 φ'=29.8 o φ'=18.7 o 5 15 2 25 3 35 5 15 2 σ (a) 全応力による整理 (b) 有効応力経路図 -9 直径 5cm の供試体モール クーロンの破壊規準 ( 礫混じり砂 ) 25 3 35 15 5 c cu =6.2 =11.2 o 5 15 2 25 3 35 σ 5 15 2 25 3 35 (a) 全応力による整理 15 5 φ'=22.9 o 5 15 2 25 3 35 σ (b) 有効応力経路 図 -1 直径 1cm の供試体モール クーロンの破壊規準 ( 礫混じり砂 )

4. まとめ堤防の浸透に対する安全性評価手法においては, 全応力解析を念頭に U 試験が行われているが, それによる問題点も明らかになってきている すなわち, シルト質砂においては, 全応力で整理する場合, 載荷速度が大きいほど粘着力が大きくなるが, それにより粘着力が大きく見積もられる危険性があることがわかった 特に, 実務で多用される U 試験は大きな載荷速度で実施されるため, それで得られる粘着力は比較的大きな値が見積もられていることを注意すべきである 一方, 礫混じり砂の場合においては, 供試体径が小さくなると密度のバラツキの影響が試験結果に大きく現れて良質なデータが得にくい傾向があった しかし, ある程度供試体径が大きい場合には, 比較的良質なデータが得られるものの, その場合であっても全応力で整理する場合には, 見かけの粘着力を過大に評価するなどの危険性がある 今回の実験の有効応力経路では, この礫混じり砂のせん断挙動に関しては, ゆる詰め構造に起因する塑性圧縮を伴うひずみ軟化が観察されたが, そのような重要な情報も U 試験だけからでは把握することができない そもそも, 堤防の洪水時に非排水条件が成り立つとは考えにくいことからも, 洪水時を想定した安定解析に, たとえ安全側であるとしても完全非排水条件を仮定することの是非も議論されるべきである 将来的な堤防の設計に当たっては, 過剰間隙水圧を測定する U 試験を実施する必要や地盤材料のせん断挙動を合理 2), 3) 的に取り入れることのできる連成解析等が今後より一層求められる 謝辞本論文に示した三軸試験の遂行にあたり, 元名城大学学生 ( 現, 市川工務店 ) の坂井田旭秀氏には卒業研究を通して多大なご協力をいただきました 記して謝意を表します 参考文献 1) ( 財 ) 国土技術研究センター : 河川構造の構造検討の手引き,22. 2) 小高猛司 岡二三生 木元小百合 角南進 加藤亮輔 : 不飽和浸透 - 変形連成解析による河川堤防の安全性評価, 第 5 回地盤工学シンポジウム論文集,pp.347-354, 25. 3) 小高猛司 : 地盤防災に対する数値地盤力学 ~ 地盤材料 - 間隙流体相互作用のモデリング~, 地学雑誌, Vol.115, No.3, pp. 295-38, 26.