序章 広島で学んで良かったと思える日本一の教育県の創造 本県では, 平成 22 年 10 月に 将来にわたって 広島に生まれ, 育ち, 住み, 働いて良かった と心から思える広島県の実現 を基本理念とした ひろしま未来チャレンジビジョン を策定した このビジョンに基づき, 県教育委員会では, 平成 26 年 12 月にグローバル化する 21 世紀の社会を生き抜くための新しい教育モデルの構築を目指して 広島版 学びの変革 アクション プラン を策定し, これからの社会で活躍するために必要な資質 能力の育成を目指した主体的な学びを促す教育活動を積極的に推進することとしている 1 広島で学んで良かったと思える日本一の教育県の創造 (1) アイデンティティ 自律 挑戦 本県で学んだ子供たちが, 将来社会の中で活躍し, 広島で学んで良かった 今の自分があるのは, 広島のあの学校で, あの先生に学んだお陰だ と, 本当に自信を持って言える, 自慢ができる, そういう子供たちを育てていきたいと考えている 本県では, これまで 新たな 教育県ひろしま の創造 に向けた取組を積極的に進め, 一定の成果を上げてきたが, 今後, さらに教育の充実を図り, 広島 で学んで良かったと思える日本一の教育県の創造 を実現するためには, 教職員や児童生徒一人一人が, しっかりとした アイデンティティ を持ち, 自律 し, 失敗を恐れず果敢に 挑戦する ( チャレンジ精神 ) ことが重要である アイデンティティ とは, 郷土の歴史, 伝統 文化への理解 愛情をもち, それらを拠り所としながら, 過去に縛られたり, 他者に依存したりするのではなく, 自らに依拠し未来に向かって 自分はこうありたい と思う姿であり, すなわち 自分の夢 目標 をしっかり確立するということである 決められた目標に向かって決められたことができる 自立 に対し 自律 とは, 自らのアイデンティティに基づき, 課題を発見して目標を設定する, それを達成するための創意工夫 ( 方策や手段 ) と判断を行う, これらを全て自分で考えるということである 目標があり, 自律ができれば, あとはそれを実行するための 挑戦 が必要となるが, 単にチャレンジ精神を高めるだけでは十分ではなく, それを実現するためのスキルを磨くことが必要である チャレンジ精神とスキルが合わさった最適な状態を学校の中にいかに作るかが重要である 挑戦して次のステップに上がっても, そこで何もしなければ必ず後退する 教職員も児童生徒も, 果敢に挑戦し続けていくことが大切である (2) 上質イメージを持つ 広島で学んで良かったと思える日本一の教育県 の創造のためのキーワード チャレンジ精神チャレンジ精神 自律自律 アイデンティティアイデンティティ すべての子供たちは本来, ~ できるようになりたい, ~ が分かるようになりたい
といった願いや希望を持っており, それに対し, 教育のプロである教師は, 全力で応えていく必要がある しかしながら, 子供たちは, 日々の授業等において, 何らかの原因でつまずいてしまうと, それがきっかけとなって自信を失い, どうせ自分にはできない, やっても無駄だ などと投げやりになるなど, 何に対しても前向きに取り組もうとしなくなってしまう状況に陥りやすい そういった意欲を失っている子供たちに対し, ~ しなさい, なぜ ~ できないの などと強制や批判を繰り返すだけでは, 到底, 教育的な効果は望めず, そういった時に, 子供たちが自らの主体的な選択と納得によって自ら学ぶように導くのが教師であり, 教育のプロとして真剣に考えていく必要がある その中で, 子供たち一人一人に, 今の自分が実現したい夢や目標を, こうなりたい, こうありたい という具体的でありありとした鮮明なイメージ ( 上質イメージ ) として持たせることが大切である 上質イメージを持った子供たちは, それを実現しようとして, いつまでに何をする, この段階までにこうなっておく といった実現までのプロセスを自ら考え, それに沿って行動できると考える そのためにも, まずは, 教師自身が, 教育のプロとして こうなりたい, こうしたい といった上質イメージをしっかり持ち, それに向けて日々研鑽していくことが大切である そういう努力をしている教師の姿を見て, 子供たちは, あの先生のようになりたい, ああいう人になりたい という上質イメージを持ち, それを目指して自らも行動していく子供に育っていくのである 教師や学校は, 子供たちに上質イメージを持たせることや, 子供たち自身が上質イメージを持つことができるように, 日々の教育活動の中で子供たちと真剣に向き合い, ~ って面白い, ~ ができるようになるとこんなに良いことがある, 自分でも努力すればできるようになる ということを体感させ, それを認める こういった経験を積み重ねることにより, 子供たちは自信を回復し, こうなりたい, こうありたい と, さらに上質なイメージを持つことができるようになると考えている このように, 子供たちが自らの夢や目標に向けて挑戦し, 学び続け, 成長し続けるよう, 教職員が一体となって学校全体で支え続けることで, 広島で学んで良かったと思える日本一の教育県の創造 につながるものと考える 2 教育委員会の施策 平成 27 年度の主要施策の概要 ひろしま未来チャレンジビジョン の 4 つの挑戦 のうち, 教育委員会が大きく関わる 人づくり の分野には, 教育 多様な主体の社会参画 人が集まり定着する環境整備 の三つの領域が設定されている また, 豊かな地域づくり の分野には, 中山間地域の地域力強化 が設定されている
ビジョンに掲げる 目指す姿 を着実に実現していくために, 平成 27 年度に特に重点的 に取り組むべき施策やその方向性を示した 県政運営の基本方針 2015 のうち, 県教育委 員会が特に重点的に取り組むものとして, 社会で活躍する人材の育成 と 中山間地域の 地域力強化 がある 社会で活躍する人材の育成 については, 平成 26 年 12 月に策定した 広島版 学び の変革 アクション プラン (P4 に概要 P12 から具体的な施策展開についての説明 ) を着実に推進するため, 新たに, 学びの変革 牽引プロジェクト, 小 中学校課題発 見 解決学習推進プロジェクト, 異文化間協働活動推進事業 ~ 高校生海外留学 1 万人プ ロジェクト ~, 高等学校課題発見 解決学習推進プロジェクト に取り組むこととして いる また, 今年度から新たに 幼児教育環境充実プロジェクト を実施することとしている 全県的な幼児教育の質の確保に向けて, 今年度は, 家庭教育や幼稚園 保育所等への支援 の状況や課題など, その背景や要因等について, 調査することとしている 特別支援教育ビジョン推進事業 では, 新たに 特別支援学校就職サポート隊ひろし まチャレンジフェア を開催し, 生徒が技能検定で身に付けた就労への意欲 態度を企業 関係者に知っていただくことにより, 就職支援に対する理解促進と就労先の拡大を図って いくこととしている この他, 児童の豊かな心を育成するために, 山 海 島 体験活動 ひろしま全県展 開プロジェクト や 生徒指導集中対策プロジェクト 等についても, 昨年度に引き続い て, 実施していくこととしている 中山間地域の地域力強化 については, 今年度から新たに 高校生による中山間地域 わくわく事業 をスタートさせることとしている 中山間地域の次代を担う高校生が, 地 域 市町と一体となり, 地域の活性化に向けた取組を行うことを通して, 地域への愛着や 理解を深め, 地域の次世代のリーダーとして活躍できるような人材を育成していくことと している これらの 教育改革施策 を進めるための基盤づくりとして, 引き続き, ことばの教育 や キャリア教育 を推進していくとともに, 信頼される学校づくり や 県民総参加の 教育の推進 に着実に取り組んでいくこととしている また, 平成 26 年 8 月に国が策定した 子供の貧困対策に関する大綱 ( 参考 HP: 内閣 府ホームページ 子どもの貧困対策の推進 ) を踏まえ, 次代を担う子供が, 将来, 生ま れ育った環境によって左右されることなく, 健やかに育ち, 夢や希望, 高い倫理観や豊か な人間性を持ち, 意欲にあふれ自立した若者へと成長 できるよう, 教育費負担の軽減 といった教育の支援に取り組むこととしている 広島版 学びの変革 アクション プラン の概要 県教育委員会では, 平成 26 年 12 月に, グローバル化する 21 世紀の社会を生き抜くための新しい教育モデルの構築を目指して 広島版 学びの変革 アクション プラン ( 以下 アクション プラン という ) を策定した
近年, グローバル化の進展などにより, あらゆる資源が国境を越えて行き交い, 様々 な課題がますます変化 複雑化 高度化する先行き不透明な社会へと移行している ま た, 科学技術などの急速な発展により, 新たな知識 情報が次々に生まれ, 情報通信技術の目覚ましい進化と相まって瞬時に世界中に拡散するため, 既存の知識はともすれば 陳腐化し, これまで常識だと思われていたことがいつのまにか新たに書き換えられてし まうということも珍しくはない このような 変化の激しい社会 では, 学校で学んだ知識や技能を定型的に適用して 解決できる問題は少なくなり, 自ら深く考え, 知識や情報を統合して新しい価値を創り 出す力, さらにはそのために多様な他者と協働できる力を有する人材が求められている アクション プランでは, このような人材を育成するため, 何を知っているか を重視したこれまでの 知識ベースの学び に加えて, 知識を活用し, 協働して新たな価値 を生み出せるか を重視した, 資質 能力 ( 知識, スキル, 意欲 態度, 価値観 倫理観 ) の育成を目指した主体的な学び を促す教育活動の積極的な推進を目指している そのための具体的な取組として, 児童生徒が自ら問題を見付け, 異なる価値観を持つ 人々と協働して答えを導き出していく 課題発見 解決学習 や, 自ら体験し, 違いに 気付き, 多様性を受容する中で, グローバル マインドや実践的なコミュニケーション 能力を育成する 異文化間協働活動 を小学校段階から系統的に推進することなどを掲 げている アクション プランでは, 各取組の方向性について示しているが, 今後, 各学校において, 教員一人一人がアクション プランの趣旨を理解した上で, 教員間での十分な議 論を行うなどして, 各校の特色を生かした児童生徒の主体的な学びを促す教育活動を実 践していくことが必要である < これからの社会で活躍するために必要な資質 能力の育成を目指した教育活動の方向性 > 児童生徒の主体的な学びを促す 課題発見 解決学習 や 異文化間協働活動 を通して, 次のような人材の育成を目指す 自ら深く考え, 自分の言葉で自分自身や広島 日本のことを語ることのできる自立した人材 多様性を受け入れ, 自信を持って異なる文化の人とコミュニケーションを取ることのできる人材 様々な人々と協働して, 答えのない諸課題に対し失敗を恐れず果敢に挑戦し続け, 新たな価値を創造することのできる人材 課題発見 解決学習 異文化間協働活動 各教科で習得した知識やスキルを活用し, 異なる価値観を持つ 人々と協働して, 答えのない問題から最善解を創造 自ら体験し, 違いに気付き, 多様性を受容する中で, グローバル マインドを涵養し, 実践的なコミュニケーション能力も向上 課題設定 情報収集 整理分析 創造 発表 ( グループ学習, インタビュー, 体験 経験, プレゼン等 ) 実社会に生かす 目標設定 実際の体験 国 語 地理 歴史 社会 公民 算数 数学 理 科 外国語 保健体育 技術 家庭 芸術 情報 主体的な試み 概念化 汎用化 振り返り 複雑化 高度化する実社会との繋がりを意識して児童生徒が自ら課題を設定 体験を通して自分自身の行動や考えを深く振り返ることが重要