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犬と猫における簡易血糖測定器の検討 左向敏紀馬渕剛森昭博本池俊仁水谷尚廣瀬昶 日本獣医生命科学大学 獣医内科学教室 ( 東京都武蔵野市境南町 1-7-1 180-8602) UseofCompactBloodGlucoseMonitortoMeasureBlood GlucoseLevelsinCatsandDogs ToshinoriSAKO, TuyoshiMABUCHI, AkihiroMORI, ToshihitoMOTOIKE, HisashiMIZUTANI, HisashiHIROSE Laboratory of Veterinary Internal Medicine, Nippon Veterinary and Life Science University, 1-7-1 Kyonan-cho, Musashino-shi, Tokyo 180-8602, Japan Received 31 March 2007 / Accepted 2 July 2007 SUMMARY:Compactbloodglucosemonitorsarewidelyusedbydiabeticstoself-monitortheirbloodglucoselevels.The authorsassessedtheperformanceofoneofthesedevices,themedisafemini,foruseondogsandcats.simultaneous reproducibility,usingvenousblood,yieldedgoodresults,withcvvaluesfordogsinthenormalandhighbloodsugar rangesof4.2%and7.9%,respectively;andforcatsinthenormalandhighbloodsugarrangesof2.8%and5.3%,respectively.therelationshipbetweencanineandfelinevenousbloodglucosevaluesderivedfromthemedisafeminiandthose derivedusingliquidreagentsshowedasignificantlevelofcorrelation,withthecorrelationcoefficientofr=0.990(p< 0.0001)andr=0.993(P<0.0001)respectively.Thebloodglucoselevelsoftwodifferentsourcesofcanineblood-venous bloodandbloodtakenfromearpricks-alsoshowedasignificantdegreeofcorrelation,withacorrelationcoefficientofr =0.983(p<0.0001).CatbloodglucosereadingsfromtheMedisafeMiniwerecomparedwithvaluesderivedusingliquid reagentsandacorrelationwasdetermined.glucoselevelmeasurementsofbothvenousandbloodtakenfromearpricks werealsofoundtobecorrelated,althoughthereadingsderivedusingliquidchemicalreagentswerehigher,inthecase ofcats.errorswerereducedbycarefuladherencetothepropermeasurementprocedures.themedisafeminiblood glucosemonitorwasconsideredsufficientlyaccurateformeasuringglucoselevelsinbloodtakenfromearpricksof diabeticcatsanddogs. KEYWORDS:cats,compactbloodglucosemonitor,diabetes,dog (J Anim Clin Med,16(3)77-81,2007) 要約 : 簡易血糖測定器は, 人糖尿病患者の血糖自己測定に一般的に用いられている 簡易血糖測定器の 1 つである メディセーフミニ を犬および猫で応用した場合の基本的性能を評価した 静脈血を用いた同時再現性は, 犬の正常 高血糖領域で CV 値が 7.9%,4.2% 猫の正常 高血糖領域で CV 値が 5.3%,2.8% と臨床使用には十分な結果が得られた 犬の静脈血を用いた簡易血糖測定器と液状試薬とのグルコース値は, 相関係数 r = 0.990(p < 0.0001) と有意な相関性を示した 犬の静脈血と耳の穿刺血を用いた場合のグルコース値は, 相関係数 r = 0.983(p < 0.0001) と有意な相関が得られた 猫血液での液状試薬との比較でも相関係数 r = 0.993(p < 0.0001), 回帰式 y=0.98 x -22.2 と有意な相関性が認められた ただし, 猫の場合相関性は認められるものの液状試薬より低値を示した また測定手順の遵守によっ

て誤差を少なくすることができた 簡易血糖測定器 メディセーフミニ には, 十分な精度が考えられ, 糖尿病の犬および猫の耳穿刺血液を用いたグルコース値測定に利用可能と考えられた キーワード : 猫, 簡易血糖測定器, 糖尿病, 犬 ( 動物臨床医学 16(3)77-81,2007) はじめに 血液グルコース値の測定は, 糖尿病の治療, 管理する場合に欠かすことができない ヒトにおいて, 簡易血糖測定器は, 自宅での血糖値測定を容易にし, 糖尿病患者における高グルコースおよび低グルコースから生じる危険性を回避する手段に使用され, 食事 運動療法の効果確認, 治療意欲を高く保つための重要な機器として普及している [1,2] 犬および猫の糖尿病は, 近年最も増加している疾病の 1 つであり, 多くの症例でインスリン療法ならびに食事療法などが実施されている 動物の糖尿病の維持管理は, 動物病院内での血糖値等の検査と家庭での尿糖検査で行われることが多い しかし, 家庭での尿糖検査では, 血液グルコース値との時差, 残尿の問題, 低血糖値の出現の未感知等の問題で不十分のことが多い 動物の糖尿病において家庭での正確かつ迅速な血糖モニターリングは, 高グルコースならびに低グルコースのリスクを回避するだけではなく, 飼い主の安心が得られると考えられる ヒトでは, 家庭での自己血糖値を測定するために数種類の簡易血糖測定器が応用されている 機種によっては, 測定法, サンプル量, 測定時間が異なる 今回, 犬および猫に応用するため酵素比色法で, わずか1.2μ の微量血液を用い10 秒で測定が可能な簡易血糖測定器についてその基本的性能を評価した 材料と方法検討には1.2μ のヒト微量血液で血糖値 20 600mg/ の測定が可能である簡易血糖測定器メディセーフミニ GR-102( テルモ株式会社 )(Fig.1) を用いた 測定時間は10 秒で, 測定値が 150 回まで自動的に記憶される [3, 4] 測定原理は光電比色を用いた酵素法で, 吸引された血液をチップの試験紙に展開し, 血液中のグルコースがグルコースオキシダーゼの作用で過酸化水素とグルコン酸となる さらに過酸化水素は, ペルオキシダーゼの作用で反応試薬中の色原体と反応し, キノン系色素に呈色する これを比色定量し血糖値とする 対照測定法として, 酵素法試薬イアトロクロム GLU- LQ( 三菱化学ヤトロン製, 東京 ) を用い, 分光光度計 U- 2800( 日立ハイテクノロジーズ製, 東京 ) を使用して測定した 供試動物は, 日本獣医生命科学大学獣医内科学教室で管理されている健常犬 4 頭, ストレプトゾトシン誘発性 インスリン依存性 型糖尿病犬 (IDDM 犬 )4 頭および健常猫 9 頭を用いた 採血は, 無麻酔下で, 橈側皮静脈, 頸静脈および耳介静脈から採血し, 耳介静脈からは付属の穿刺具を用いて行った 得られた血液は凝固防止のため直ちに血液 1あたり10 単位のヘパリンを加えヘパリン加血液とした 耳介静脈血は採血部位間差検討用に用い, 橈側皮静脈血液, 頸静脈血液はその一部を液状 試薬用に血液分離し実験に供した 試験 1 同時再現性ヘパリン加血液を用いて同一測定器の測定値の再現性を検討した a) 犬の血液を用いた同時再現性の評価正常血糖値血液, 高血糖値血液および低血糖値血液を以下の方法で得た 健常犬から採血した血液を正常血糖値血液とした インスリン未投与の IDDM 犬,50% グルコース溶液を 0.5 /kg および 1 /kg 投与した健常犬から採血した血液を高血糖値血液とした ブドウ糖負荷犬は, ブドウ糖負荷 8 分及び 10 分の2 回採血を行った また, 健常犬に速効型インスリンを0.1IU/kg 静脈内投与して得た血液を低血糖値血液とした 低血糖犬はインスリン投与後 10 分および 20 分の 2 回採血を行った 簡易血糖測定器による測定は, 取り扱いに習熟した者がTable1 の注意事項を遵守し, 各 10 回ずつ行った それぞれの血糖値血液の測定結果ごとに平均値 (MEAN), 標準偏差 (SD) および変動係数 (CV) を算出した

結果試験 1 a) 犬の血液を用いた同時再現性の評価正常血糖値血液では,CV7.9% の良好な再現性であった 高血糖値血液では,CV4.2% 4.6% と良好な結果が得られた 低血糖値血液 2 検体では,CV13.0%,15.3% であった (Table2) b) 猫の血液を用いた同時再現性の評価正常血糖値血液, 高血糖値血液および低血糖値血液を以下の方法で得た 健常猫から採血した血液を正常血糖値血液とした 50% グルコース溶液を 1 /kg 投与した健常猫から採血した血液を高血糖値血液とした 糖負荷猫は, 糖負荷後 5 分および 18 分の2 回採血を行った 健常猫に速効型インスリンを0.1IU/kg 静脈内投与し得た血液を低血糖値血液とした 低血糖猫はインスリン投与後 20 分および 145 分の2 回採血した 測定方法, データ処理は犬の評価方法と同様に行った 試験 2 簡易血糖測定器および液状試薬による測定値間の相関性の評価および犬での異なる採血部位より得た血液の測定値間の相関性の評価 a) 犬の血液を用いた相関性の評価低 正常 高血糖血液はそれぞれの犬の橈側皮静脈から1 採血をした 簡易血糖測定器で血糖値を測定後, その血液の血清を用いて液状試薬での血糖値を測定した 同時にそれぞれの犬の耳介外側を剃毛し, 耳介静脈を確認しながら穿刺ペンを用いて穿刺し, 簡易血糖測定器で吸引し血糖値を測定した 静脈血による簡易血糖測定器と液状試薬での測定値の相関性を評価した また静脈血と耳の穿刺血の相関性も評価した b) 猫の血液を用いた相関性の評価低 正常 高血糖血液はそれぞれの猫の頚静脈から1 採血し, 犬と同様な方法で行った 簡易血糖測定器で血糖値を測定, その血液の血清を用いて液状試薬での血糖値を測定した 試験 3 簡易血糖測定器の血糖値測定における取り扱い習熟度による精度の違い簡易血糖測定器の取り扱いに習熟していない試験担当者 4 人により, 犬血液を用いて試験 1と同様の試験を行った 習熟者と同様に Table1 に示した注意事項を遵守するように指示した b) 猫の血液を用いた同時再現性の評価 正常血糖値血液では,CV5.3% の良好な再現性であった 高血糖値血液では,CV2.8 4.2% と良好な結果が得ら れた 低血糖値血液 2 検体では,CV13.7%,16.7% であっ た (Table3) 試験 2 a) 犬の血液を用いた相関性の評価 静脈血による簡易血糖測定器と液状試薬の測定値の相 関性は,n = 60, 相関係数 r = 0.990,(p < 0.0001), 回 帰式 y=1.1341 x 8.8301 の有意な結果が得られた (Fig.2) 簡易血糖測定器の検体として静脈血と耳の穿刺血を用 いた場合の相関性は,n = 60, 相関係数 r = 0.983,(p < 0.0001), 回帰式 y= 0.9236 x+ 2.5484 であり有意 な相関が得られた (Fig.3)

b) 猫の血液を用いた相関性の評価健常猫の静脈血による簡易血糖測定器と液状試薬の測定値の相関性は,n = 20, 相関係数 r = 0.993,(p < 0.0001), 回帰式 y= 0.9876 x 22.278 であり有意な結果が得られた (Fig.4) 試験 3 犬の血液を用いた簡易血糖測定器の血糖値測定におけ る取り扱い習熟度による精度の違い Table1 の注意を複数項目遵守できない未習熟者 4 名に 試験 1 と同様の試験を行った場合の結果を Table4 に示 した 未習熟者 4 人の結果と試験 1 の習熟者 5 人の同時 再現性を比較すると未習熟者の CV 値は高く特に低血糖 値では約 1.6 倍 CV 値が高くなった 考察近年, 食性の変化や寿命の延長に伴ってコンパニオン アニマルの犬, 猫に糖尿病の症例が増加傾向にある 多 くの場合, 治療にはインスリンの投与が行われるが, 動 物病院での病態の把握のみならず日常の血糖値の変動を知ることは治療方針を決める重要な情報となる 糖尿病では日常血糖値のモニターリングが必要であり, 従って在宅管理上, より簡便な血糖測定器の必要性がある 今 回, 既知の測定原理を用いて自動化した簡易血糖測定器 メディセーフミニ GR-102( テルモ社製 ) の犬, 猫の血 液に対する有効性を評価した 同一血液, 同一機種を用いた血糖測定値の同時再現性 は, 犬, 猫共に正常範囲血糖値群及び高血糖値群 ( 犬 ; 77.5 324.8mg/ ) で良好な再現性が確認され, 臨床的使用には問題がないと考えられた しかし, 低血糖値 群では 10% 以上の CV 値を示した 血糖濃度が低いと試 験紙上での発色が安定しないことを示唆しているが, 低 血糖の指標となると思われ,2 回以上の測定で低血糖値を示した場合には次のステップに進み確定診断する必要があると思われた 犬の静脈血全血での簡易血糖測定器と液状試薬におけ る血糖値の相関係数は, 相関係数 r = 0.990,(p < 0.0001), 回帰式 y = 1.1341 x 8.8301 の回帰直線が 得られた 簡易血糖測定器による血糖値測定は今回の液 状試薬を用いた測定値に比較して約 10% 程度低めの値を 示すが, 前述の同時再現性の水準と併せて迅速な臨床検 査としては十分な精度を持つものと考えられた 簡易血糖測定器による静脈血での血糖値と耳の穿刺血の血糖値でも, 相関係数 r = 0.983,(p < 0.0001), 回 帰式 y= 0.9236 x+ 2.5484 と 5% 程度の誤差があるも

ののほぼ同等の値が得られた このことは, 橈側皮静脈あるいは頸静脈といった太い静脈系からの採血を必要とせず, より末梢の静脈血液で十分測定可能であることを示しており, 在宅管理という観点で飼い主による血糖管理に本簡易測定器が利用可能であることを示唆している 猫の血液を用いた簡易血糖測定器と液状試薬における血糖値の比較では, 液状試薬より20mg/ 程度低値を示したが, このことを考慮して使用する必要がある 他の種類の簡易血糖測定器を使用して血糖値をした測定しても低値を示した ( 成績未提示 ) 毛細管現象の遅延や試薬内の展開速度遅延が考えられたが理由は確認できなかった 今回用いた簡易血糖測定器メディセーフミニは,1.2μ の微量血液で測定でき, チップへの血液吸引が容易で測定時間が10 秒と短時間であることから飼い主にとって簡便で優れた機器であると思われた しかし, 簡便であるがゆえに信頼性のある測定値を得るためは正しい使用法を遵守する必要がある 今回, 簡易血糖測定器の取り扱いに習熟した者とそうでない者との測定値で明らかな差が認められ, 正しい取り扱いを励行することによって精度の高い成績を得ることができるということが明らかとなった 従って, 飼い主による在宅管理においても飼い主が正しい測定技術を習得する必要があると考えられた 今回の評価により簡易血糖測定器の意義性が明らかとなった 動物病院で飼い主へ使用上の手技的アドバイスが行われ, 家庭での血糖コントロール状況を把握することにより在宅管理中のデータが得られれば, より良い血糖コントロールの実現, きめ細やかな指導が可能と考えられた また, 臨床症状に異常が認められた場合, 高血糖あるいは低血糖であるかといった判断が早期に診断できると考えられ, オーナーの安心をもたらす可能性があると考えられた 引用文献 1) 児玉公二, 富岡光枝 他 : 光電比色法を用いた簡易血糖測定器メディセーフ の使用経験, プラックティス, 14(4)409-415(1997) 2) 小野百合 :SMBG( 血糖自己測定 ) 糖尿病患者のQOL をたかめる, 初版,41-44, 診断と治療社, 東京 (2004) 3) 松崎由紀子, 山田真由美 他 : 短時間 (18 秒 ) 簡易血糖測定器 メディセーフ の基本的検討, 新薬と臨床 J. NewRemedies&Clinics,46(5)193-197(1997) 4) 河口栄子, 野村啓子 他 : 血糖測定システム メディセーフ ミニ の基本的検討, 医学と薬学,51(1)153-158(2004)