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間を検討する 締約国が提出した 貢献 は 公的な登録簿に記録される 締約国は 貢献 ( による排出 吸収量 ) を計算する また 計算においては 環境の保全 透明性 正確性 完全性 比較可能性及び整合性を促進し 並びに二重計上の回避を確保する 締約国は 各国の異なる事情に照らしたそれぞれ共通に有して

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などの極端現象も含め 気候変動による影響を評価している さらに AR4 は 長期的な展望として 適応策と緩和策のどちらも その一方だけではすべての気候変動の影響を防ぐことができないが 両者は互いに補完し合い 気候変動のリスクを大きく低減することが可能であることは 確信度が高い とし 最も厳しい緩和努

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このまま温暖化が進むと 地球の平均気温や平均海面水位はどこまで上がってしまうのでしょうか また 温暖化の程度は 世界の社会経済に関する将来の道筋に どのように依存しているのでしょうか していくために 不可欠です 1 さまざまな研究が 迫りつつある危機を予測しています これらの温暖化予測情報を正しく理

のような事象でさえ わずか数分前の警告によって生命を救えることもある リスクの発生を定期的に再検討することが重要である たとえば 気候変動やその他の変化の結果として極端な気象現象 ( 暴風雨 熱波 野火など ) の発生頻度や激しさが高まる可能性があり 新たな地球物理学的データやその他のデータによって

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( 第 1 章 はじめに ) などの総称 ) の信頼性自体は現在気候の再現性を評価することで確認できるが 将来気候における 数年から数十年周期の自然変動の影響に伴う不確実性は定量的に評価することができなかった こ の不確実性は 降水量の将来変化において特に顕著である ( 詳細は 1.4 節を参照 )

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各資産のリスク 相関の検証 分析に使用した期間 現行のポートフォリオ策定時 :1973 年 ~2003 年 (31 年間 ) 今回 :1973 年 ~2006 年 (34 年間 ) 使用データ 短期資産 : コールレート ( 有担保翌日 ) 年次リターン 国内債券 : NOMURA-BPI 総合指数

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NEWS 特定非営利活動法人環境エネルギーネットワーク 21 No. 18-4 2018 年 9 月 IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change) の概要 環境エネルギーネットワーク 21 主任研究員大崎歌奈子 今年の夏は世界各国で猛暑や洪水 干ばつなど災害が多発しました 地球規模での気候変動がその原因で 特にその要因として人為的なCO2の排出の影響が大きいと言われています 冷凍空調分野でも近年冷媒の排出による温暖化影響が問題視されています 冷媒の温暖化影響を示すものとして地球温暖化係数 (GWP= Global Warming Potential) があり IPCC の報告書の中には この値が記されています GWP とは 二酸化炭素を基準にし その他の温室効果ガスがどれだけ温暖化する能力があるかを表した数値のことですが GWP の計算方法については科学的に確定したものがまだないため 値は報告書ごとに毎回変わっています また GWP 値を表すときに GWP100 と記載されていることがありますが これは地球温暖化係数の中でも 100 年間の累積値を使用しているという意味になります 日本では地球温暖化を防止するための普及啓発活動を行っている団体に全国地球温暖化防止活動推進センター (JCCCA=Japan Center for Climate Change Action) があります そのホームページに IPCC 第 5 次評価報告書 特設ページがあり IPCC についての概要が記されていますので少し長いですがそれを紹介いたします IPCC の概要国連気候変動に関する政府間パネル (Intergovernmental Panel on Climate Change) の略 人為起源による気候変化 影響 適応及び緩和方策に関し 科学的 技術的 社会経済学的な見地から包括的な評価を行うことを目的として 1988 年に国連環境計画 (UNEP) と世界気象機関 (WMO) により設立された組織です 世界の科学者が発表する論文や観測 予測データから 政府の推薦などで選ばれた専門家がまとめます 科学的な分析のほか 社会経済への影響 気候変動を抑える対策なども盛り込まれます 国際的な対策に科学的根拠を与える重みのある文書となるため 報告書は国際交渉に強い影響力を持ちます 各国政府を通じて推薦された科学者が参加し 5~6 年ごとにその間の気候変動に関する科学研究から得られた最新の知見を評価し 評価報告書 (assessment report) にまとめて公表します 第 5 次報告の第 1 作業部会の場合 日本からは 10 人の執筆陣が参加しました 特定のテーマに関する特別報告書 (special report) や気候変動に関する方法論に関する指針なども作成 公表します

IPCC の組織 IPCC は 総会と 3 つの作業部会及び温室効果ガス目録に関するタスクフォース ( インベ ントリー タスクフォース ) により構成されています ( 表 )IPCC の構成 評価報告書第 1 作業部会 (WG1): 科学的根拠 第 2 作業部会 (WG2): 影響 適応 脆弱性 第 3 作業部会 (WG3): 緩和策 それぞれの報告書と三つの報告書を統合した統合報告書 (Synthesis Report) の4つの報告書から構成されています 三つの作業部会の報告書は それぞれ 政策決定者向け要約 (SPM)( Summary for Policy- Makers) と より専門的で詳細な情報が記載されている 技術要約(Technical Summary) から出来ています IPCC 総会で 評価報告書の作業計画に関する決定を行います 報告書作成のための執筆者や査読者を決定します また 報告書の各章に通常先進国 1 人 途上国から 1 人の計 2 人の総括代表執筆者が指名されます 総括代表執筆者のもとで 代表執筆者が各章を執筆します 報告書案は 専門家の査読者と政府によって査読が行われます 査読編集者は 査読コメントが十分に考慮されているかを確認します 最終案は IPCC のホームページに公開し 専門家のコメントも求めます これまでの報告書第 1 次報告書 (1990 年 )First Assessment Report 1990 (FAR) 第 2 次報告書 (1995 年 )Second Assessment Report: Climate Change 1995 (SAR)

第 3 次報告書 (2001 年 )Third Assessment Report: Climate Change 2001 (TAR) 第 4 次報告書 (2007 年 )Forth Assessment Report: Climate Change 2007 (AR4) 第 5 次報告書 (2013 年 )Fifth Assessment Report: Climate Change 2013 (AR5) これらは 195 ヶ国の政府が関わって作成し 各国政府の承認を取り付ける機構 2007 年に第 4 次評価報告書を発表した際にノーベル平和賞を受賞し 話題となりました また これまでの主な特別報告は以下のものがあります 改定版 1996 年 IPCC 温室効果ガス国家目録指針 (1996 年 ) 土地利用 土地利用変化及び林業に関する良好手法ガイダンス (2003 年 ) 2006 年 IPCC 温室効果ガス国家目録指針 など 第 1 作業部会 ( 科学的根拠 ) 第 1 作業部会会合が平成 25 年 9 月 23 日 スウェーデン ストックホルムで開催され 温暖化の原因が人間の活動である可能性を 90% 以上 とした 2007 年の第 4 次報告書の 6 年ぶり改定となる第 5 次報告書が 9 月 27 日に公表されました 主な結論地球温暖化の原因人間活動が 20 世紀半ば以降に観測された温暖化の支配的な要因であった可能性が極めて高い ( 可能性 95% 以上 ) 大気中の二酸化炭素 メタン 一酸化二窒素は 過去 80 万年間で前例のない水準まで増加している現状 ( 観測事実 ) 温暖化については 疑う余地がない 1880~2012 年において 世界平均地上気温は 0.85 上昇最近 30 年の各 10 年間の世界平均地上気温は 1850 年以降のどの 10 年間よりも高温 海洋は人為起源の二酸化炭素の約 30% を吸収して 海洋酸性化を引き起こしている 1992~2005 年において 3000m 以深の海洋深層においても水温が上昇している可能性が高い 将来予測今世紀末までの世界平均地上気温の変化予測は 0.3~4.8 である可能性が高い今世紀末までの世界平均海面水位の上昇予測は 0.26~0.82m である可能性が高い CO2 の総累積排出量と世界平均地上気温の変化は比例関係にある 最終的に気温が何度上昇するかは累積排出量の幅に関係する これからの数十年でより多くの排出を行えば その後はより多くの排出削減が必要となる 第 1 作業部会における主なポイント気候変動の原因人間活動が 20 世紀半ば以降に観測された温暖化の要因である可能性が極めて高い (95%)

と発表されました ( 参考下表 ) また 大気中の二酸化炭素 (CO2) メタン (CH4) 一酸化二窒素 (N2O) は 過去 80 万 年間で前例のない水準まで増加していると記載されています これまでの報告書における表現の変化気温過去 30 年のそれぞれの 10 年は 先行する 1850 年以降のすべての 10 年より温暖であり 陸上および海氷面を合わせて世界平均した気温データは 1880-2012 年の期間にかけて 0.85 の上昇を示していると発表しています また 今世紀末には現在 (1986-2005 年 ) と比較して 0.3~4.8 上昇すると予測されています 2007 年に発表された第 4 次評価報告書では 今世紀末には 1.1~6.4 上昇と予測されていましたが 前提とする基準年や排出シナリオ 予測不確実性の許容範囲の幅が異なるため 単純な比較は困難なものの 予測結果としては AR4 と整合しているとしています

世界の地上気温の経年変化 ( 年平均 ) 1950 年から 2100 年までの気温変化 21 世紀末における地上気温の変化 ( 観測と予測 ) 海面水位 1901-2010 年の期間中 世界平均海面水位は 0.19m 上昇したと発表しています また 世界の平均海面水位は 21 世紀中に上昇し 今世紀末には 1986-2005 年と比較して 0.26~0.82m 上昇するとの予測を発表しています

海面水位の変化予測 2100 年までの海面水位の変化予測海洋酸性化海洋は人為起源の二酸化炭素の約 30% を吸収して 海洋酸性化を引き起こしていると記述 また海洋の PH は工業化初期以降 0.1 減少したと発表しています 気候変動は大気中の二酸化炭素の増加を増幅させる形で炭素循環に影響を及ぼす確信度が高いと記述 さらに炭素が取り込まれることで海洋酸性化が進行するだろうと発表しています 海洋表層における CO2 および酸性度の変化海洋表層における ph 変化予測 (2081-2100 年平均 ) 1979-2012 の期間中 北極圏の年平均海氷面積の減少は 10 年あたり 3.5-4.1% の割合であった可能性が非常に高い (90%) と記述されています また 21 世紀中に北極海の海氷は縮小かつ薄くなり続け また北半球の春期の積雪が減少する可能性が非常に高い (90%) と

発表されました また 南極やグリーンランドの氷床からの氷損失 ( 氷床質量の減少 ) が増加している可能性が 南極については 高い グリーンランドについては 非常に高い と発表しています 北極における海氷面積の推移 北半球 9 月の海氷面積予測 21 世紀末における北半球 9 月の海氷面積予測 CO2 の総累積排出量と気温上昇幅の関係 CO2 の総累積排出量と世界平均地上気温の変化はおおむね線形関係にあると記述されています つまり 気温上昇上限から総累積排出量の上限が決まるということです より低い昇温目標のためには累積排出量をより少なくすることが求められます

CO2 以外の効果も考慮すると 産業化前からの世界平均気温上昇を最も高い確率 (66% 以上の確率 ) で 2 以内に抑えるためには 790GtC の累積排出量が上限になると記述さ れています 2011 年までに 既におよそ 515GtC 排出しています 世界の CO2 排出累積総量の関数としての世界の平均気温上昇量 第 2 作業部会 ( 影響 適応 脆弱性 ) 第 2 作業部会会合が平成 26 年 3 月 25 日 -29 日 横浜市で開催され 観測された影響と将来の影響及び脆弱性について地域 分野別に評価されました 影響の軽減のために適応が重要であることが示された平成 19 年の第 4 次報告書から 6 年ぶりとなります 第 2 作業部会における主なポイント観測されている影響 脆弱性 適応ここ数十年 気候変動の影響が全大陸と海洋において 自然生態系及び人間社会に以下のような影響を与えています ( 参考下図 ) 水資源への影響( 水量や水質 ) 陸域 淡水 海洋生物の生息域の変化等 農作物への影響また 熱波や干ばつ 洪水 台風 山火事等 近年の気象と気候の極端現象による影響は 生態系や人類に対して著しい脆弱性や曝露を与えていると報告されています

気候変動に起因する観測された影響 将来のリスクと適応の機会将来的リスクとして 気候システムに対する危険な人為的干渉 による深刻な影響の可能性が指摘され 確信度の高い複数の分野や地域に及ぶ主要なリスクとして 以下の 8 つが予測されています 1. 海面上昇 沿岸での高潮被害などによるリスク 2. 大都市部への洪水による被害のリスク 3. 極端な気象現象によるインフラ等の機能停止のリスク 4. 熱波による 特に都市部の脆弱な層における死亡や疾病のリスク 5. 気温上昇 干ばつ等による食料安全保障が脅かされるリスク 6. 水資源不足と農業生産減少による農村部の生計及び所得損失のリスク 7. 沿岸海域における生計に重要な海洋生態系の損失リスク 8. 陸域及び内水生態系がもたらすサービスの損失リスク適応策は一部の計画に組み込まれつつあり 限定的ではあるが 実施されている適応策があると報告されています アジアにおける適応事例としては 早期警戒システムや統合的水資源管理 アグロフォレストリー ( ) マングローブの植林を通じて促進されているなど 一部の地域計画に組み込まれつつあり 限定的であるが実施されていると記述されています

( ) アグロフォレストリーとは 樹木を植栽し 樹間で家畜 農作物を飼育 栽培する農林業 複数の分野地域におよぶ主要リスク将来のリスクの管理とレジリエンスの構築将来に関しては 温暖化の進行がより早く 大きくなると 適応の限界を超える可能性があります 政治的 社会的 経済的 技術的システムの変革により 効果的な適応策を講じ緩和策を合わせて促進することにより レジリエント ( 強靭 ) な社会の実現と持続可能な開発が促進されるとしています 気温の変化に伴う主要なリスクと適応の見通し

日本への影響環境省では IPCC の新しい RCP シナリオを用いて 日本への影響予測 リスク低減に対する適応策の効果を評価した報告書 ( ) を公表しました 温室効果ガス排出量が最大で濃度上昇の最悪ケース RCP8.5 シナリオでは 2100 年に右図のような影響が日本国内での発生が予測されると報告しています ( ) 環境省環境研究総合推進費 S-8 2014 年報告書地球温暖化 日本への影響 - 新たなシナリオに基づく総合的影響予測と適応策 - 2100 年末に予測される日本への影響 第 3 作業部会 ( 気候変動の緩和 ) 第 3 作業部会会合が平成 26 年 4 月 7 日 -12 日 ドイツ ベルリンで開催されました 平成 19 年の第 4 次評価報告書以来 7 年ぶりとなるもので この間に出された新たな研究成果や政策実行に基づく 地球温暖化の緩和に関する最新の知見が発表されました 第 3 作業部会における主なポイントこれまでの温室効果ガス排出量は 1970 年から 2010 年の間にかけて増え続け 10 年単

位でみると最後の 10 年間 (2000~10 年 ) の排出増加量がより大きくなっています 1970 年から 2010 年の期間における全温室効果ガス排出増加量の 78% は二酸化炭素 (CO2) が占めており 2000 年から 2010 年の期間でもほぼ同じ割合を占めています また この 40 年間に排出された人為起源累積 CO2 排出量は 1750 年から 2010 年までの 260 年間の累積排出量の約半分を占めています ( 参考下図 ) これまでの温室効果ガス排出実態 世界全体の温室効果ガスは GDP と人口増加に伴って増えています 化石燃料燃焼による CO2 排出量の増加が主要な要因となっている状態が続いていると報告されました ( 参考下図 ) 世界の CO2 排出量 世界全体の温室効果ガス排出量推移の要因分析

今後の対策取組と排出量の動向による気温上昇追加的な緩和策のないシナリオでは 2100 年における世界平均地上気温が 産業革命前の水準と比べ 3.7~4.8 上昇するとされています 2 とは 今回の IPCC 報告書では 国際交渉において気温上昇の抑制の目標として関心が高まっている 2 シナリオ ( 気温上昇を産業革命前に比べて 2 未満に抑制する可能性の高いシナリオ ) について詳しく報告されています この 2 シナリオ の目標を達成するためには 影響がどの程度軽減され 適応が少なくて済むか また どの程度 温室効果ガスを減らし どのような技術革新を進める必要があるかについて記述されています 2 シナリオを実現するための将来と緩和シナリオ 2 シナリオ を実現する可能性が高い緩和シナリオは 2100 年に大気中の CO2 換算濃度を約 450 ppm としている このシナリオでは 2050 年には世界全体で 2010 年と比べて 40~70% 温室効果ガス排出量を減らし 2100 年にはゼロまたはマイナス ( ) の排出量にする必要があると報告されています ( 参考下図 ) ( ) 植物などによる CO2 固定や 発生した CO2 を地中に埋めることによってマイナスにする 2100 年の大気中濃度で分離されたシナリオにもとづく温室効果ガス排出経路 シナリオの主な特徴 対策の取組実施と将来予測 2030 年までに今まで以上の緩和策の取組みをしない場合 長期的な低排出レベルへの移行が相当困難になり 2 シナリオ実現の選択肢の幅が狭まると述べられています

様々な想定下における緩和コスト緩和策 2 シナリオ を実現するためには 再生可能エネルギー 原子力 二酸化炭素回収 貯留 (CCS) の合計による低炭素エネルギーの一次エネルギーに占める供給比率を 2050 年までに 2010 年と比較して 3 倍から 4 倍近くに増加させる必要があると報告されています ( 参考下図 ) 電力に占める低炭素エネルギーを 2010 年比で 2050 年に 8~9 割まで増加させるとともに 2100 年までに CCS なしの火力発電をほぼ完全に廃止する必要があるとしています ただし原子力には別のリスクが伴い CCS は現実には商用化されたものではなく 一層の技術開発が求められています 2050 年における低炭素エネルギーの割合

緩和政策第 4 次評価報告書以降 複数の政策目標を統合し コベネフィット ( 共同便益 ) を増大させ 副作用を減少するように設計された政策への注目が増大しています GHG のキャップ アンド トレード制度を始めた国や地域の数は増えているものの キャップが緩いまたは義務的でなかったため 短期的な環境効果は限定されています また GHG の排出削減を特に目的とする税をベースとした政策が 技術や他の政策と組み合わさり GHG 排出と GDP の相関を弱めることに寄与してきた国もあります 各国は 多様性に富んだ部門別政策を形成しており それらの地域 各国 国以外の関係者の気候変動政策の間の政策の連携は 潜在的な緩和及び適応の便益を提供すると報告されています Copyright (C) 2013 JCCCA 全国地球温暖化防止活動推進センター All Rights Reserved. 以上