バランスシート戦略に沸く金融市場 1 月 30 日 米連邦公開市場委員会 (FOMC) の会合結果が発表されました ハト派的内容に違いない という事前予想を遥かに上回る緩和的意味合いが強い会合となりました 今回のコラム記事では FOMC からの発表内容と 今後のマーケットの動きについて考えてみたいと

Similar documents
PowerPoint プレゼンテーション

ドラギ総裁の主な発言 インフレ率が ECB 目標に向けて上昇してくることに 自信をもっている 経済指標を見る限り 今年に入ってからユーロ圏の景気は穏やかになってきた これは 昨年後半にみせた強い景気回復の反動と 一時的要因によるものである 保護主義の脅威を含む世界的な要因によるリスクは顕著となってい

退職等年金給付積立金 平成30年度第2四半期運用状況

1. 30 第 1 運用環境 各市場の動き ( 4 月 ~ 6 月 ) 国内債券 :10 年国債利回りは狭いレンジでの取引が続きました 海外金利の上昇により 国内金利が若干上昇する場面もありましたが 日銀による緩和的な金融政策の継続により 上昇幅は限定的となりました : 東証株価指数 (TOPIX)

PowerPoint プレゼンテーション

(2) 資産構成割合の推移 ( 給付確保事業 ) 1 資産配分実績の基本ポートフォリオからの乖離の推移 2 実践ポートフォリオと資産配分実績の推移 3. 運用受託機関 平成 29 年 3 月末現在 2

サマリー 1 市場の関心は米大統領選の行方に集まっています 世論調査においてドナルド トランプ氏の優勢が報じられると 市場の更なる丌確実性が懸念され リスク資産からの資金流出が記録されました 10 月の MSCI 世界株価指数はマイナス 2.01% MSCI 新興国株価指数は 0.18% と新興国が

Microsoft Word - 20_2

平成 21 年 9 月 5 日 角山智 投資環境レポート (2009 年 9 月 ) 1. 主な株価指数 8 月は 中国株が大幅に値下がりしました 反面 出遅れていた英国株が好調です 市場 日本株 日本新興市場 J-REIT 米国株 英国株 中国株 ( 指数 ) (TOPIX) (JASDAQ) (

PowerPoint プレゼンテーション

Microsoft Word - 15_2

平成 28 年度第 3 四半期退職等年金給付組合積立金運用状況 警察共済組合

2017年上半期の為替相場展望

FOMC 2018年のドットはわずかに上方修正

nichigingaiyo

PowerPoint プレゼンテーション

1. 30 第 2 運用環境 各市場の動き ( 7 月 ~ 9 月 ) 国内債券 :10 年国債利回りは上昇しました 7 月末の日銀金融政策決定会合のなかで 長期金利の変動幅を経済 物価情勢などに応じて上下にある程度変動するものとしたことが 金利の上昇要因となりました 一方で 当分の間 極めて低い長

平成23年11月1日

グローバル株式市場を俯瞰する~2015年8月末データで見る市場動向~

米中貿易戦争とマーケット 今週は イギリスでもアメリカと中国の間で起きつつある 貿易戦争の可能性 が 大きく報道されるようになりました 今までずっと英国の EU 離脱 (Brexit) についての報道が多かったのですが 完全に主役の入れ替わりという印象すら受けます 今回のコラムでは この貿易戦争の報

第 79 回 2017 年 5 月投資家アンケート調査結果 アンケート調査にご協力下さりました皆様 今年 5 月に実施致しましたアンケート調査にご回答下さり誠にありがとうございます このたび調査結果をまとめましたのでお送りさせていただきます ご笑覧賜れましたら幸 いです 今後もアンケート調査にご協力

目次 1. 平成 29 年度第 1 四半期 ( 平成 29 年 4 月 ~6 月 ) における運用環境について 2. 平成 29 年度第 1 四半期 ( 平成 29 年 4 月 ~6 月 ) におけるポートフォリオ別の運用状況 3. ベンチマーク インデックスの推移 ( 参考 ) 用語の説明 頁 1

Microsoft PowerPoint - Pictet_Market_Flash_ (直近の下落).pptx

スライド 1

MONEXグローバル個人投資家サーベイ

< E97708AC28BAB82C982C282A282C42E786C73>

株式市場 米国株 トランプ氏の政策への期待感後退で調整も MSCI 米国 2, % 先月の回顧 米国株式市場は上昇しました 11 月 8 日 ( 現地 ) に行われた大統領選挙でトランプ氏が当選し 減税やインフラ投資の拡大などの同氏の政策に注目が集まりました 債券市場では金利が上

MONEX 個人投資家サーベイ 2016 年8 月調査

保護主義に警鐘を鳴らしたドラギ総裁 9 月 13 日 ( 木 ) は FX に従事する人間にとって非常に忙しい 1 日でした この日は トルコ 英国 ユーロ圏それぞれの中央銀行金融政策理事会が開催され ほぼ同じ時間帯に結果発表となったからです これらの中銀の中で今回は 欧州中銀 (ECB) を選んで

39_3

MONEX 個人投資家サーベイ 2018年3月調査

定期調査の質問のうち 代表的なものの結果 1. 日本の株価を 企業のファンダメンタルズと比較してどう評価するか 問 1. 日本の株価は企業の実力( ファンダメンタルズ ) あるいは合理的な投資価値にくらべて 1. 低すぎる 2. 高すぎる 3. ほぼ正しく評価されている 4. わからないという質問で

目 次 1. 平成 27 年度 ( 平成 27 年 4 月 ~ 平成 28 年 3 月 ) における運用環境について 2. 平成 27 年度 ( 平成 27 年 4 月 ~ 平成 28 年 3 月 ) のポートフォリオ別の運用状況 3. ベンチマーク インデックスの推移 ( 参考 ) 被保険者ポート

2014 年 2 月 2 月 5 日ロックハート アトランタ連銀総裁 経済データの内容は強弱まちまちだが 一般には 2014 年に関して前向きな見方が強まっている それには妥当な理由があると考えられる 講演で 月 6 日ドラギ ECB 総裁 今日 行動しないことを決めた理由は実のとこ

グローバル・マクロ・ウォッチ

第 2 四半期運用実績 ( 概要 ) 運用利回り +0.09% 実現収益率 ( ) ( 第 2 四半期 ) 運用収益額 億円 実現収益額 ( ) ( 第 2 四半期 ) 運用資産残高 ( 第 2 四半期末 ) 357 億円 年金積立金は長期的な運用を行うものであり その運用状況も長期的に

ここからの Brexit タイムラインと要注意日 英国で最も政治に注目が集まる党大会シーズンが終了しました ここからは時間があまり残っていない Brexit 交渉の最終合意に向け アクセルを踏む時期となります EU 側もイギリスの党大会シーズン終了をじっと待っていたため ここから一気に動きが加速しそ

PowerPoint プレゼンテーション

Microsoft PowerPoint - ï¼fiã••PAL镕年+第ï¼fiQ;ver5.pptx

平成28年度公金管理運用計画

金融テーマ解説

【16】ゼロからわかる「世界経済の動き」_1704.indd

「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入

U

株式市場 米国株 高値警戒感の高まりなどから上昇一服も MSCI 米国 2, % 先月の回顧 米国株式市場は上昇しました トランプ政権で閣僚などの人事において一部で混乱が見られましたが トランプ大統領の発言などにより減税 金融規制緩和などへの期待が高まったことや 発表された米国企

Microsoft Word ECB利下げ.doc

2018 年は激動の年 年初来 トルコ株式指数はトルコリラベースで最大で約 24% 下落し トルコリラは日本円に対して最大で約 45% 下落しました トルコ株式 * の推移 ( トルコリラベース ) /12 18/03 18/06 18

Invesco Australian Bond Fund (Monthly)

調査結果の要約 1. グローバル調査結果調査対象 : 日本 中国 ( ) の個人投資家 (1-1) 世界の株式市場見通し DI ( 注 ) は 3 地域そろって大幅上昇 各地域の個人投資家に今後 3 ヶ月程度の世界の株式市場に対する見通しを尋ねたところ 各地域とも前回調査 (17 年 5 月 ~6

PowerPoint プレゼンテーション

Microsoft Word - 18_2

2012 年 10 月 15 日号

Microsoft PowerPoint - CSIS 【三井住友銀行】 FOMC後のスペシャルレポート(USHY).pptx

円 N 先週のメキシコペソ相場今週の見通し 12 月 17 日 - 12 月 21 日取引レンジ 5.53 円 円想定レンジ 5.50 円 円 対円レートは強含み 大幅な歳出拡大計画の発表が期待されており 歳出拡大による景気浮揚への期待が高まったことから 投機的なペソ売り

Microsoft Word - 44_2

スライド 1

平成30年度第1四半期における運用状況等

2013 年 8 月 19 日号

2018 年度第 3 四半期運用状況 ( 速報 ) 年金積立金は長期的な運用を行うものであり その運用状況も長期的に判断することが必要ですが 国民の皆様に対して適時適切な情報提供を行う観点から 作成 公表が義務付けられている事業年度ごとの業務概況書のほか 四半期ごとに運用状況の速報として公表を行うも

一部新興国市場が動揺 アルゼンチンは前四半期から経済危機に陥っていましたが トルコでは 6 月に再選された大統領が米国と対立したこと等を契機に 8 月に通貨が急落しました ブラジルや南アフリカ インドの通貨も下落が加速する局面が見られ 中国元も緩やかに値を下げました これまでのところ個別国の問題とい

定期調査の質問のうち 代表的なものの結果 1. 日本の株価を 企業のファンダメンタルズと比較してどう評価するか 問 1. 日本の株価は企業の実力( ファンダメンタルズ ) あるいは合理的な投資価値にくらべて 1. 低すぎる 2. 高すぎる 3. ほぼ正しく評価されている 4. わからないという質問で

TFX_フィスコ通貨ウォッチャー

短期均衡(2) IS-LMモデル

各資産のリスク 相関の検証 分析に使用した期間 現行のポートフォリオ策定時 :1973 年 ~2003 年 (31 年間 ) 今回 :1973 年 ~2006 年 (34 年間 ) 使用データ 短期資産 : コールレート ( 有担保翌日 ) 年次リターン 国内債券 : NOMURA-BPI 総合指数

ファンドマネージャーのコメント 現時点での投資判断を示したものであり 将来の市況環境の変動等を保証するものではありません < 投資環境 > 第 5 期の米国債券市場では 国債や社債の金利が上昇 ( 債券価格は下落 ) しました 期首より 追加利上げの可能性の高まりや税制改革法の成立などを背景に 金利

マクロ インサイト FRB FRB 長期金利 FRB bp 図表 1 FRB と市場の金利予測の乖離 FOMC 予測 vs 市場予測 年末 年末 2.0 市場が

ヘッジ付き米国債利回りが一時マイナスに-為替変動リスクのヘッジコスト上昇とその理由

人民元週間レポート 2017 年 6 月 16 日発行 みずほ銀行 ( 中国 ) 有限公司 中国為替資金部

<4D F736F F F696E74202D E835A838B94C5817A837D815B B834A E738FEA816A2E >

Invesco Premia Plus Fund

今回の金融政策報告書では 米国内の投資活動が弱いために輸出が想定ほど伸びていないとしながらも 金融業などサービス関連の好調さを示す分析や 商品価格下落がカナダ企業の投資活動を抑制する動きは底打ちしたとの指摘など カナダ景気に前向きな材料も散見されます 当面は 政策金利の据え置きを続けると見通します

日本の低金利の状況が続く中 外貨の好金利で運用し 当面の間 なるべく ふやす 外貨への関心が高まっているのをご存知ですか そして将来は たくわえた資産を 実は 家計における外貨資産は20年で約4倍に増加しています 商商商商品品品品パパパパンンンンフフフフレレレレッッッットトトト 詳細は P.25-2

平成29年度における運用状況等

(2) 円安を予想する割合が大幅に増加 [ 参照 : 別紙レポート 5 ページグラフ 3] 今後 3 ヶ月程度の米ドル / 円相場の見通しについて 円安になる と回答した個人投資家の割合が 51% と 前回調査時の 32% から大きく高まりました 米国の年内追加利上げの可能性がかなり高まってきたとみ

株式市場 米国株 国内の政策動向や海外の政治動向などに注目 MSCI 米国 2, % 先月の回顧 米国株式市場はほぼ変わらずとなりました 月初には 2 月末のトランプ大統領の議会演説を好感して 株価は大幅上昇となりました しかし その後は 新政権の経済政策に対する期待が徐々に後退

MONEX 個人投資家サーベイ 2016年2月調査

特別勘定の内容 目標値 110% または 120% の場合の特別勘定 種類 特別勘定の名称 投資対象となる投資信託 TMA 日本株式インデックスVA * 運用会社 資産運用関係費用 ( ( 年率 ) 注 ) 総合型 世界バランス 40TMA TMA 外国株式インデックスVA * TMA 日本債券イン

2011 年 1 月 17 日号

米国株 投資家心理が落ち着けば 上昇基調に回帰と想定 株式市場 MSCI 米国 2, % 先月の回顧 長期金利の上昇を契機に急落米国株式市場は下落しました 月初に発表された1 月の雇用統計において 時間当たり賃金が市場予想を上回る伸び率となったことを受けて 長期金利が約 4 年ぶ

スライド 1

第 1 四半期運用実績 ( 概要 ) 運用利回り +1.54% 収益率 ( ) ( 第 1 四半期 ) (+1.02% 実現収益率 ( )) 運用収益額 +3,222 億円 総合収益額 ( ) ( 第 1 四半期 ) (+1,862 億円 実現収益額 ( )) 運用資産残高 ( 第 1 四半期末 )

現代資本主義論

Microsoft Word doc

株式市場 米国株 国内外の政治動向に注目 MSCI 米国 2, % 先月の回顧 好調な企業決算発表を受けて上昇米国株式市場は上昇しました 月前半までは2017 年 1-3 月期の決算発表内容が総じて好調であったことが株価を支えました 月半ばには コミー前 FBI( 連邦捜査局 )

3_2

現実の金融政策 2016 年 1 月より政策委員 9 名 ( 総裁 副総裁を含む ) 年 8 回 ( 通常 1 月 4 月 7 月 10 月 ) ただし実施月は2 回ずつ 金融政策決定会合 金融政策を具体的にどのように運営していくのか 金融政策の方針を決定 ( 金融市場調節方針 ) 本来 金利ターゲ

第1章 財務諸表

43_1

[000]目次.indd

PowerPoint プレゼンテーション

株式市場 米国株 新政権の政策期待による上昇も一服 MSCI 米国 2, % 先月の回顧 米国株式市場は上昇しました ISM( 全米供給管理協会 ) 指数など月初に発表された経済統計がおおむね良好であったことを受け 月前半の株式市場は堅調に推移しました 月半ば以降は 高値警戒感な

株式市場 米国株 上値が重く神経質な展開 MSCI 米国 2, % 先月の回顧 米国株式市場は下落しました FOMC( 米国連邦公開市場委員会 ) における利上げの有無 大統領選挙の動向 ドイツの大手銀行の資本不足懸念などに一喜一憂する展開となりました 月半ばにかけて 利上げ観測や原油

Outlook201901

PowerPoint Presentation


金融市場2017年11月号

マイナス金利付き量的 質 的金融緩和と日本経済 内閣府経済社会総合研究所主任研究員 京都大学経済学研究科特任准教授 敦賀貴之 この講演に含まれる内容や意見は講演者個人のものであり 内閣府の見解を表すものではありません

PowerPoint プレゼンテーション

Invesco Global Select Equity Open (Hedged / Monthly Distribution)

Microsoft PowerPoint - CSIS 【三井住友銀行】 USHYファンドの分配金について IM pptx

Transcription:

バランスシート戦略に沸く金融市場 1 月 30 日 米連邦公開市場委員会 (FOMC) の会合結果が発表されました ハト派的内容に違いない という事前予想を遥かに上回る緩和的意味合いが強い会合となりました 今回のコラム記事では FOMC からの発表内容と 今後のマーケットの動きについて考えてみたいと思います FOMC からの発表まず最初に声明文の説明から致します 3 つの声明文 1 月 30 日の FOMC では 3 つの声明文が発表されました 1 通常のメイン声明文 https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20190130a.htm 2 長期的な金融政策のゴールと戦略 https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20190130b.htm 3 バランスシートの正常化について https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20190130c.htm 3 つも声明文を出すだけ 重要な決定だったと私は理解しています 注目は 3 バランスシートの正常化について上記 3 つの声明文の中でも マーケットが最も衝撃を受けたのが 3 バランスシート ( 以下 BS) の正常化について でした https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20190130c.htm 声明文内容特にマーケットを驚かせたのが 以下の文章でした The Committee is prepared to adjust any of the details for completing balance sheet normalization in light of economic and financial developments. 理事会では 経済活動や市場動向に応じて バランスシートの正常化の詳細を修正する用意がある

昨年 12 月の FOMC でパウエル議長は BS 縮小は順調に進んでおり 見直す必要性なし と仰いました しかし 今年 1 月 4 日にイエレン元 FRB 議長やバーナンキ元議長と一緒に参加されたパネルディスカッションでは BS 縮小の変更を検討するようなニュアンスの発言をし 大きく方向転換しました そして 30 日の FOMC では 正式に 正常化の修正 をほのめかしたのです 一部のマーケット関係者の間では 来年に大統領選を控えたトランプ大統領の政治的圧力に屈した決定という話も出ているようですが 個人的にもその可能性が結構あるような気がしてなりません BS 縮小の修正 = 緩和へ逆戻り? 私のブログのフォロワーさん達から この質問を受けました たぶん BS 縮小のメカニズムをきちんと把握していないため 何がなんだかわからなくなってしまったのかもしれませんね ここでは 簡単に説明します 2008 年のリーマンショック以降 世界的金融危機が深刻化し ありとあらゆる中央銀行が政策金利の引き下げに動きました 日本やユーロ圏 スイスなどでは 金利のマイナス化を断行しましたが それ以外の国々では限りなくゼロまで下げ それ以上の緩和策として量的緩和策 (QE) の導入に踏み切りました 今更説明は必要ないと思いますが QE 策を通じて中央銀行は国債などの債券を購入したため BS はどんどん拡大しました そうこうしているうちに アメリカでは景気回復が順調に進み いち早く QE 策の終了を発表たのです しかし QE 策はストップしても そこで購入した国債が満期となった部分については再投資 ( 新たな国債を購入 ) を続け BS に大きな変動がないよう 維持していました その後 景気も雇用もしっかりしてきたことを確認し 2017 年 6 月の FOMC で具体的に BS 縮小計画を発表したのです その内容は 今後はきちんとした計画の下で 満期となった国債の再投資の額を徐々に減らしていくということです 言い換えれば 今までずっと変動しないように気をつけていた BS の残高が 徐々に減りますよ! ということです BS 残高が縮小すれば 流動性はタイトになりますので 政策金利は引き上げなくても 私達の目に見えないところで 引き締めが起きるということです しかし 今度は 30 日の発表で この縮小を見直すことが決定され 今までの引き締めが今後中断する可能性が浮上しました 言い換えれば マーケットは一気に緩和再開と理解したとも言えます BS 縮小の修正 = 株高? 今まで 10 年近くに渡り中央銀行が QE 策を継続していたため マーケットには豊潤な流動性が確保されており それがリスクアセットや株を上昇させていました しかし アメリカがこ

の政策を変更し 徐々に BS 残高を減らすということが伝わると アメリカ株をはじめとする主要国の株価指数が下落に転じたのです そして 今回 BS 縮小修正の可能性のニュースが出た途端 株は一気に買われています https://twitter.com/realdonaldtrump/status/1090729920760893441 この株高を受け トランプ大統領は上記の Tweet をしていました BS 縮小の修正 = 長期金利低下? = ドル安? FOMC からの BS 縮小修正の発表後 長期金利が低下し ドル安となっています これが意味することは FED が BS 縮小ペースを弱める ( 一時中止する?) のであれば 引き締めから緩和拡大期待が出てくるので 国債利回り ( 長期金利 ) が下落してドル安を引き起こしたという説明が一番ぴったりくるでしょう ここから難しい話になりますが 長期金利が低下すれば必ずドル安になるのか? その答えは NO です このチャートは 米 10 年物国債イールド ( 赤線 ) とドル インデックス ( 青線 ) を一緒に載せたものです

チャート : 米セントルイス連銀米 10 年物国債利回り https://fred.stlouisfed.org/series/dgs10 ドル インデックス https://fred.stlouisfed.org/series/dtwexb 黒い点線で囲んだ部分は 長期金利低下 = ドル安の相関性がありますが ピンクの部分は逆の形 ( 逆相関 ) となっているのが分かります どうしてこういう矛盾した動きになるのか? それについて簡単に説明してみましょう 黒い点線当時は 2008 年のリーマンショック以降に実施された QE1 が終了しても アメリカの景気回復のペースが一向に改善せず鈍化する兆候がありました そのため この時期に FED は 新たな QE 第 2 弾 (QE2) に踏み切りました このような景気減速による金利先安感を受け 長期金利は低下 そしてドル安となったことが分かります 次にピンクの点線当時は トランプ氏が大統領選に当選し トランポノミクス ( 大幅な減税 規制緩和 インフラ投資 ) に対する期待が高まった時期でした この政策がカンフル剤となりアメリカ経済が大きく改善することを先取りする形で ドル高に拍車が掛かりました しかし それと並行し 原油安や中国 / トルコ発の新興国不安も台頭 それを受け 世界各国で金利引き下げのセンチメントが高まり 長期金利が低下 当時の FRB 議長であったイエレンさんからは 銀行に対するストレステストでは アメリカの国債利回りがマイナス金利となった場合も想定して質問している という発言も飛び出したくらいです https://www.central-tanshifx.com/market/market-view/sf-20160212-01.html このように 金利とドルとの関係は 必ずしも相関関係だけでなく 逆に動くこともあるため 注意が必要です FOMC を振り返り感じたこと文頭でも書いた通り 予想以上にハト派的内容が強い FOMC となりました 1 の声明文では オートパイロットと呼ばれていた さらなる穏やかな利上げが必要 という文言が消え 今後は経済指標やその他の情報次第 というアプローチに変更されました その他の情報 の中には 赤くハイライトをした international developments も含まれます たぶん 米中貿易問題や 英国の EU 離脱問題 (Brexit) を指しているのでしょう This assessment will take into account a wide range of information, including measures of labor market conditions, indicators of inflation pressures and inflation expectations, and readings on financial and international developments. https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/monetary20190130a1.pdf

FOMC が終わってからいろいろ考えたのですが 文頭でも書いたようにたった 1 ヶ月でパウエル議長の方針が 180 度変更されたことを受け もしかしたら今年のドルは高値を打ったのかもしれません 年内 1 度くらい利上げがあってもいいのではないか? そういう意見も聞こえます それも十分可能かもしれませんが 現時点での利上げのハードルは かなり高そうに見えて仕方ありません このチャートは 週足のドル インデックスにベガス トンネル (144/169EMA) を載せたものです 今週のトンネルの位置は 94.04/35 執筆時のインデックス レベルは 95.27 です チャート : Stockcharts https://stockcharts.com/h-sc/ui 下がると仮定した場合 最初のターゲットは黄緑のチャネル下限が通る 95 近辺 そしてトンネルが通る 94.04/35 そして藤色の点線が通る過去のサポートとなっていた 93 近辺です 最後になりますが 今回の FOMC 発表以降から 一部の新興国通貨が買われています 私は取引しておりませんが 投資家たちの間で Undervalue( 過少評価 ) されていると思われる通貨の選別が始まるかもしれません 特に ドル インデックスが 93 辺りを切って下がり始めてくると その傾向が顕著となる可能性が出てくると思われます