脂質の分解小腸 脂肪分解とカルニチン < 胆汁 > 脂肪の乳化 < 膵液 膵液リパーゼ ( ステアプシン )> 脂肪酸 グリセリン 小腸より吸収吸収された脂肪酸は エステル結合により中性脂肪として蓄積されます 脂肪酸は 体内で分解されエネルギーを産生したり 糖質や余剰のエネルギー産生物質から合成され

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2. 看護に必要な栄養と代謝について説明できる 栄養素としての糖質 脂質 蛋白質 核酸 ビタミンなどの性質と役割 およびこれらの栄養素に関連する生命活動について具体例を挙げて説明できる 生体内では常に物質が交代していることを説明できる 代謝とは エネルギーを生み出し 生体成分を作り出す反応であること

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保健機能食品制度 特定保健用食品 には その摂取により当該保健の目的が期待できる旨の表示をすることができる 栄養機能食品 には 栄養成分の機能の表示をすることができる 食品 医薬品 健康食品 栄養機能食品 栄養成分の機能の表示ができる ( 例 ) カルシウムは骨や歯の形成に 特別用途食品 特定保健用

グルコースは膵 β 細胞内に糖輸送担体を介して取り込まれて代謝され A T P が産生される その結果 A T P 感受性 K チャンネルの閉鎖 細胞膜の脱分極 電位依存性 Caチャンネルの開口 細胞内 Ca 2+ 濃度の上昇が起こり インスリンが分泌される これをインスリン分泌の惹起経路と呼ぶ イ

研究背景 糖尿病は 現在世界で4 億 2 千万人以上にものぼる患者がいますが その約 90% は 代表的な生活習慣病のひとつでもある 2 型糖尿病です 2 型糖尿病の治療薬の中でも 世界で最もよく処方されている経口投与薬メトホルミン ( 図 1) は 筋肉や脂肪組織への糖 ( グルコース ) の取り

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1 編 / 生物の特徴 1 章 / 生物の共通性 1 生物の共通性 教科書 p.8 ~ 11 1 生物の特徴 (p.8 ~ 9) 1 地球上のすべての生物には, 次のような共通の特徴がある 生物は,a( 生物は,b( 生物は,c( ) で囲まれた細胞からなっている ) を遺伝情報として用いている )

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脂質の分解小腸 脂肪分解とカルニチン < 胆汁 > 脂肪の乳化 < 膵液 膵液リパーゼ ( ステアプシン )> 脂肪酸 グリセリン 小腸より吸収吸収された脂肪酸は エステル結合により中性脂肪として蓄積されます 脂肪酸は 体内で分解されエネルギーを産生したり 糖質や余剰のエネルギー産生物質から合成されたりします それに関わるのがカルニチンです 1. カルニチンとは? カルニチン (carnitine) の化学式は (CH 3 ) 3 N + -CH 2 -CH(OH)-CH 2 -COOH 古くは ビタミン B T と呼ばれていた物質です 蛋白質のリジン残基 ( 必須アミノ酸のリジンとメチオニン ) から 肝臓 心筋 骨格筋 腎臓などで カルニチン前駆体の γ- ブチロベタインが合成され 最終的に 肝臓 腎臓 脳に存在し 更に γ- ブチロベタインヒドロキシラーゼにより カルニチンが合成されます 肝臓などで合成されたカルニチンは 血中を運ばれ 末梢細胞 ( 筋細胞など ) で 細胞膜のナトリウム依存性トランスポートシステム (Transporter) により 細胞内に取り込まれます 細胞内カルニチン濃度は 細胞外液より 20~50 倍 高く維持されています カルニチンは 羊肉 赤肉 鶏肉 魚 乳製品などにも豊富に含まれていて 食事からも供給されます 尚 植物はカルニチンの生成に必要な 2 種類のアミノ酸 ( リジンとメチオニン ) の含量が少ないので ベジタリアンの人は 血漿カルニチン濃度や 尿中カルニチン排出量が 低下する可能性があります 最近では カルニチンが脂肪酸の分解 (β- 酸化 ) を促進させることから ダイエットを目的としたサプリメントとしてもよく耳にします 2. カルニチンの役割 a. カルニチンは 脂肪酸を ミトコンドリア内に輸送するのに必要 カルニチンは カルニチントランスポーターにより 細胞内に取り込まれます 細胞質の長鎖脂肪酸は 細胞質ゾルで ACS(Acyl-CoAsynthase) により CoA(CoenzymeA) と結合して アシル -CoA(Acyl-CoA) に活性化されます アシル -CoA は CPT-I(carnitineO-palmitoyltransferasetypeI: カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ 1 型 :EC2.3.1.21) によってカルニチンと結合して アシルカルニチン (Asylcarnitine) となって ミトコンドリアの内膜を通過し ミトコンドリア内のマトリックスに移行します 従って カルニチンは ミトコンドリア外の長鎖脂肪酸を ミトコンドリア内に輸送するのに必須な物質 ( ビタミン ) であり カルニチンがないと 長鎖脂肪酸は ミトコンドリア内のマトリックスで β- 酸化されにくくなります ミトコンドリア内のマトリックスに入ったアシルカルニチンは CPT-II(carnitineO-palmitoyltransferasetype II: カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ 2 型 ) によって カルニチンとアシル -CoA に分離します

アシル -CoA に活性化された長鎖脂肪酸は β- 酸化によりアセチル -CoA に変換されオキサロ酢酸と結合して TCA 回路 ( クエン酸回路 ) に取り込まれます 注 : 肝臓では 遊離脂肪酸から生成されるアシル -CoA が カルニチンシャトルにより ミトコンドリア内に取り込まれ アセチル -CoA となり TCA 回路で代謝されます インスリンは このアシル -CoA のミトコンドリア内への取り込みを抑制します インスリン不足 インスリン拮抗ホルモン過剰の際には アシル -CoA のミトコンドリアへの取り込みが促進され 大量のアシル -CoA ( 遊離脂肪酸から生成される ) が ミトコンドリア内に流入し TCA 回路で代謝されないと アセチル -CoA から ケトン体が生成され 血中ケトン体が増加し ケトーシスを来たします b. カルニチンは 脂肪酸を ミトコンドリア外に輸送するのに必要 ミトコンドリア内のアセチル -CoA は カルニチンアセチルトランスフェラーゼ (CAT) の作用により カルニチンと結合して アセチルカルニチンとして ミトコンドリア外の細胞質ゾルに輸送されます アセチル -CoA+ カルニチン アセチルカルニチン +CoASH アセチルカルニチンは 細胞質ゾルから 血液中に排泄されます また 細胞質ゾル内のアセチルカルニチンは カルニチンとアセチル -CoA に分解され アセチル -CoA は アセチル -CoA カルボキシラーゼ (acetyl-coacarboxylase:acc) により マロニル -CoA 経路で 脂肪酸に合成されます 脂肪酸アシル -CoA(LCACoA) がミトコンドリア内に蓄積すると ミトコンドリア内膜に存在するカルニチンアシルトランスフェラーゼ (carnitineacyltransferase EC2.3.1.) の作用により 活性脂肪酸 (acyl-coa) のアシル基 (acylgroups) を カルニチン (L-carnitine) に転移させ ACR( アシルカルニチン ) を生成することで ミトコンドリア外に輸送させます アシル -CoA+ カルニチン アシルカルニチン +CoASH カルニチンは ミトコンドリア内のアセチル -CoA や アシル -CoA を ミトコンドリア外に輸送する ( ミトコンドリア内の CoA/ アシル -CoA 比を調節する ) のに必要な物質でもあります 注 : カルニチンアセチルトランスフェラーゼ (carnitineo-acetyltransferase:cat:ec2.3.1.7.) は

カルニチンアシルトランスフェラーゼであり acetyl-coa(c 2 ) 以外に propanoyl-coa(c 3 ) や butanoyl-coa(c 4 ) を カルニチンと結合させて アセチルカルニチンやアシルカルニチンを生成します acetyl-coa+carnitine=coa+o-acetylcarnitine カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ (carnitineo-palmitoyltransferase:cpt:ec 2.3.1.21.) も アシルトランスフェラーゼであり 炭素数が 8~18(C 8 ~C 18 ) の 広い範囲の脂肪酸に作用しますが パルミチン酸 (C 16 ) の活性脂肪酸 (palmitoyl-coa) に最も作用します palmitoyl-coa+l-carnitine=coa+l-palmitoylcarnitine カルニチンオクタノリルトランスフェラーゼ (carnitineo-octanoyltransferase:ec2.3.1.137.) は 中鎖 ~ 長鎖 (medium-chain/long-chain) の活性脂肪酸 (acyl-coas) に作用し 特に 炭素数が 6~8(C 6 ~C 8 ) のアシル基 (acylgroups) のオクタン酸 (C 8 ) の活性脂肪酸 (octanoyl-coa) などを始めとして 作用します octanoyl-coa+l-carnitine=coa+l-octanoylcarnitine c. カルニチンをエネルギー産生から見た場合 カルニチンによってミトコンドリア内へ輸送された長鎖脂肪酸の β- 酸化によるアセチル -CoA の生成は エネルギー産生につながるだけでなく ピルビン酸脱水素酵素を抑制し 解糖 ( グルコースのピルビン酸への分解 ) が抑制され ピルビン酸からの乳酸生成が減少します しかし 低酸素 (hypoxia) などによる TCA 回路 ( クエン酸回路 ) の障害 脂肪酸の過剰摂取や脂肪酸からのエネルギー産生を必要としない場合 余剰となるアセチル -CoA はカルニチンによって アセチルカルニチンに変換されたり マロニル -CoA 経路で再び脂肪酸に合成されたりします これにより アセチル -CoA によるピルビン酸脱水素酵素の抑制は軽減されます 炭水化物の過剰摂取は ピルビン酸脱水素酵素により ピルビン酸からアセチル -CoA が生成され アセチルカルニチンとして 細胞質ゾルに輸送され アセチル -CoA から アセチル -CoA カルボキシラーゼにより マロニル -CoA 経路で再び脂肪酸に合成されます マロニル -CoA は CPT-I を抑制し 脂肪酸の β- 酸化を抑制します ( 糖質の代謝参照 ) 3. カルニチンに関わる様々な疾患 a. カルニチンの代謝 カルニチンの体内総プール量は 100mmol であり その内 98% が筋肉内に 1.6% が肝臓と腎臓に 0.6% が細胞外液中に存在します カルニチンは 大半は尿中 ( 腎臓 ) から排泄され 1% 以下は 便中から 排泄されます 腎臓でのクリアランスは アシルカルニチンは遊離カルニチンより 10~20 倍速い アセチルカルニチンは 腎尿細管から再吸収されますが 長鎖脂肪酸のアシルカルニチンは 再吸収が悪い その為 脂肪酸代謝異常症 (FAOD) では 代謝が阻害された脂肪酸の炭素鎖が長い程 アシルカルニチンとして カルニチンが 尿中に排泄されるので 血中のカルニチンは減少し易い 尿中に排泄されるアシルカルニチンを分析することにより 脂肪酸代謝異常症 (FAOD) や 有機酸代謝異常症を 診断することが可能です

ライ症候群でも ミトコンドリアの脂肪酸代謝 (β- 酸化 ) が障害され アシルカルニチンが 尿中に増加します 正常児のアシルカルニチンのアシル基は アセチル基 ( アセチール ) である ( アセチルカルニチン ) が ライ症候群のアシルカルニチンのアシル基は アシル基とされます また ライ症候群に類似した症状を示す カルニチン欠損症と異なり ライ症候群では 血中カルニチン値は 基本的には低下しませんが 二次的に低下することがあります b. 慢性疲労症候群 (CFS) カルニチン ( アシルカルニチン ) が欠乏すると 慢性疲労症候群 (CFS) と言う病気 ( 風邪などを契機に 激しい倦怠感や 脱力感を 半年以上 持続ないし繰り返す ) になるとも言われています 慢性疲労症候群の病因は確定されていませんが 過度なストレスから生体機能を守る為に 自己防衛機制が作動し コルチゾールや DHEA-S の産生を抑制したり 脳血流を低下させて脳代謝を抑制したりしていると考えることもできます ACR( アシルカルニチン ) は グルタミン酸 GABA(γ アミノ酪酸 ) などの神経伝達物質の合成に利用されますが 慢性疲労症候群では ACR( アシルカルニチン ) の脳内 ( 前頭葉の前帯状回と 前頭前野 ) への取り込みが低下していると言われており ACR は疲労の程度と相関していると考えられます また アセチルカルニチンの脳内への取り込みが Broadmann24 野 ( 自律神経系の調節や情動などに関連する ) と Broadmann9 野 ( 意欲やコミュニケーションに関連する ) において 局所脳血液量低下とは無関係に 低下していると言われています 慢性疲労症候群では アシルカルニチンやアセチルカルニチンの不足と脳内への取り込みの低下が同時に起こっていることから ストレスなどによる体内の代謝の抑制により アシルカルニチンやアセチルカルニチンの産生 ( 合成 ) や 細胞内への取り込みが低下していると仮定することもできる 慢性疲労症候群では 血清コルチゾールや DHEA-S( デヒドロエピアンドロステロンサルフェート ) など 副腎皮質から産生されるホルモンが減少し 思考力や集中力が低下すると言われる DHEA-S は アセチルカルニチントランスフェラーゼ (acetylcarnitinetransferase: carnitineo-acetyltransferase:cat) 活性と相関していて DHEA-S が減少すると アセチルカルニチンが低下する DHEA-S を投与 ( 補充 ) すると アセチルカルニチンが上昇する この説では アセチルカルニチンの低下は 慢性疲労症候群の原因ではなく 結果を意味します ストレスにより 内分泌系が崩れ DHEA-S などのホルモン産生のバランスの失調が 慢性疲労症候群の第一原因と考えることができる 慢性疲労症候群では NK 細胞活性が低下し 潜伏感染していたウイルス (HHV-6 EBV など ) が 再活性化すると言われ それに伴い 抗炎症性サイトカインの TGF-β が増加すします TGF-β は DHEA の硫酸抱合を調節している酵素 ( スルフォキナーゼ ) の活性を抑制する為 DHEA-S が減少し アセチルカルニチンの合成が低下します また IFN-α( インターフェロンアルファ ) は 2-5AS(2',5'- オリゴアデニル酸合成酵素 ) を誘導し 誘導された 2-5A(2',5'- オリゴアデニル酸 ) により RNase を活性化させ ウイルス RNA を分解して ウイルス増殖を抑制するが 慢性疲労症候群では 2-5AS が上昇している しかし HHV-6 EBV などのウイルスは 初感染後 体内に 潜伏感染するウイルスであり 特に HHV-6 は 過労状態の人では 高率に唾液中に分泌 ( 検出 ) される 従って ウイルスの再活性化や 2-5AS の上昇は 慢性疲労症候群の原因と捉えるより ストレスにより 免疫力が低下 ( 疲弊 ) した結果と 捉える方が 妥当と思われる c. 全身性カルニチン欠損症全身性カルニチン欠損症では カルニチントランスポーターに障害があり 骨格筋 心筋 腎臓で 血液中からカルニチンを 細胞内に取り込めない また 血中カルニチンも減少している これにより細胞内カルニチンが欠乏するため 長鎖脂肪酸を ミトコンドリア内へ転送する能力が低下し 脂肪酸は ミトコンドリアで β- 酸化をされないため 飢餓などで グルコースからアセチル -CoA を生成できない状況になると エネルギー産生 (ATP 産生 ) が低下します また 糖新生も低下して ケトン体の上昇が少ない 低ケトン性低血糖を来た

します また 脂肪酸がエネルギー化されないため 中性脂肪 ( トリグリセリド ) が組織に蓄積し 肝腫大 心筋障害 ミオパチーなどを引き起こします さらに ミトコンドリア内に有害なアシル -CoA が蓄積し TCA 回路 ( ピルビン酸脱水素酵素 ) や 尿素回路 (N- アセチルグルタミン酸合成酵素 ) が阻害され エネルギー産生の低下 高乳酸血症 高アンモニア血症などを呈します ( ライ症候群に類似した症状を来たします ) d. 抗生剤による カルニチン欠乏ピボキシル基を持つ抗生剤 (CFPN-PI など ) は 消化管から吸収される際に代謝を受け 抗菌活性物質とピバリン酸に分解されます ピバリン酸は カルニチン抱合を受け 尿中にピバロイルカルニチンとして排出されます 従って ピボキシル基を持つ抗生剤を長期間投与すると 血清中カルニチンが低下すします