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リンパ腫グループ:リンパ腫治療開発マップ

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○○グループ:○○がん治療開発マップ

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付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 ): 施設 UICC-TNM 分類治療前ステージ別付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 原発巣切除 ): 施設 UICC-TNM 分類術後病理学的ステージ別付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 UIC

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佐賀県肺がん地域連携パス様式 1 ( 臨床情報台帳 1) 患者様情報 氏名 性別 男性 女性 生年月日 住所 M T S H 西暦 電話番号 年月日 ( ) - 氏名 ( キーパーソンに ) 続柄居住地電話番号備考 ( ) - 家族構成 ( ) - ( ) - ( ) - ( ) - 担当医情報 医

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メディカルセミナーがん薬物療法の進歩 H28 年 11 月 29 日 ( 火 ) 腫瘍 血液 感染症内科田中俊裕

生存率 有効な抗悪性腫瘍薬の数 抗悪性腫瘍薬による癌治療成績は進歩している再発乳癌 1994 年パクリタキセル 1996 年ドセタキセル 1998 年トラスツズマブ 時間 ( 月 ) 再発時からの生存期間 がんの分子標的治療法とは細胞の増殖シグナルが異常活性する遺伝子異常 発がんの原因になる遺伝子異常 ( ドライバー変異 ) または 腫瘍に特異的 多く発現する分子を標的とした治療 2 Cancer. 2004 1;100(1):44-52. 改

抗悪性腫瘍薬による癌治療成績は進歩している進行再発大腸癌 2000 年以前 BSC 6 有効な抗癌剤治療がなく対象療法のみ フッ化ピリミジン系抗癌剤のみ イリノテカンやオキサリプラチンの登場 分子標的薬の登場 ベバシズマブセツキシマブ / パニツムマブレゴラフェニブ 3 World J Gastroenterol. 21, 2016; 22(23): 5332-5341

抗悪性腫瘍薬による癌治療成績は進歩している進行再発肺癌 抗癌剤治療のみ 分子標的薬治療 4 JAMA. 2014;311(19):1998-2006

分子標的薬作用機序からみた分類 1 腫瘍細胞の表面抗原を標的とした抗体治療 ( 腫瘍細胞の標的化 ) 1-1) ADCC CDC 活性の利用 2 チロシンキナーゼ活性を阻害する治療 2-1) 細胞増殖に関わるリガンドとレセプターの結合を阻害する抗体治療 2-2) レセプターの二量体形成を直接阻害する抗体治療 2-3) 細胞内チロシンキナーゼを標的とした低分子化合物治療 3 がん微少環境の是正を目的とした治療 3-1) 血管新生の阻害 3-2) プロテアソームの阻害 3-3) 免疫調節薬 (IMiDs) 5

1 表面抗原を標的とした抗体治療 1-1)ADCC CDC 活性を利用した抗体薬の例 抗体を介して NK 細胞やマクロファージが攻撃 抗体を介して 活性化した補体が細胞膜を攻撃 がん細胞 がん細胞 補体 治療薬標的抗原適応疾患 リツキシマブ CD20 CD20 陽性の B 細胞性非ホジキンリンパ腫 オファツムマブ CD20 慢性リンパ性白血病 アレムツズマブ CD52 慢性リンパ性白血病 モガムリズマブ CCR4 成人 T 細胞白血病 リンパ腫 セツキシマブ EGFR 大腸がん 頭頸部がん トラスツズマブ HER2 乳癌 胃癌 6

リツキシマブ ( 抗 CD20 抗体 ) を CHOP 療法に上乗せする事で CD20 陽性びまん性大細胞型 B 細胞リンパ腫の生存率を改善する びまん性大細胞型 B リンパ腫の高齢患者に対する CHOP 化学療法 + リツキシマブ併用療法と CHOP 単独療法とを比較したランダム化試験 1.0 生存率 0.8 0.6 CHOP(197 例 ) CHOP+ リツキシマブ (202 例 ) 0.4 P=0.007 0.2 0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 年 7 NEJM 346:235-242, 2002

症例 :70 歳代女性びまん性大細胞性 B 細胞リンパ腫 (stageiv) リツキシマブ +CHOP 療法を 8 サイクル施行 8

多くのがん細胞ではプロテインキナーゼ ( チロシンキナーゼ ) が活性化している プロテインキナーゼとは タンパク質にリン酸基を付加する ( リン酸化 ) 酵素 アミノ酸のうち主に セリン スレオニン チロシンをリン酸化させる チロシンキナーゼはチロシンをリン酸化する酵素 細胞の分化, 増殖に関わるシグナル伝達に関与する がんではチロシンキナーゼが過剰 ( 異常 ) に活性化されている 上皮成長因子受容体 (EGFR) epidermal growth factor receptor EGFRファミリー (EGFR/HER1 HER2 HER3 HER4) 細胞質 チロシンキナーゼ チロシンキナーゼの異常活性化の原因 1. リガンドの過剰発現 2. レセプターの過剰発現 3. キナーゼ部位の恒常的なリン酸化 EGFR の構造 EGFR の活性化

2 チロシンキナーゼ活性を阻害する治療 リガンドとレセプターの結合を阻害する抗体治療 抗 EGFR 抗体が EGF との結合を阻害する トラスツヅマブ レセプターの二量体形成を直接阻害する抗体治療 ペルツヅマブ リガンド チロシンキナーゼ部位 TKI が ATP と競合阻害する 細胞内チロシンキナーゼを標的とした低分子化合物治療 HER2 HER3 HER2 HER1/3/4 Int. J. Mol. Sci. 2012, 13(10), 12268-12286 改変 Nat Rev Cancer. 2006;6(9):714-27 改変. 10

チロシンキナーゼ活性を阻害するがん分子標的治療薬の例 メカニズム治療薬標的部位剤型適応疾患 ADCC/CDC 活性リガンドとの結合阻害 ADCC/CDC 活性チロシンリン酸化阻害 セツキシマブ EGFR(HER1) 抗体大腸癌 トラスツズマブ HER2 抗体乳癌 胃癌 二量体形成阻害ペルツズマブ HER2 抗体乳癌 ATP の結合阻害ラパチニブ HER2 チロシンキナーゼ低分子化合物乳癌 ATP の結合阻害ゲフィチニブ EGFR チロシンキナーゼ低分子化合物非小細胞肺癌 ATPの結合阻害 クリゾチニブ EML4-ALKキメラ蛋白チロ シンキナーゼ ATPの結合阻害 イマチニブ BCR-ABLキメラ蛋白チロシ ンキナーゼ 低分子化合物 低分子化合物 非小細胞肺癌 慢性骨髄性白血病 11

生存率 抗 EGFR 抗体 ( セツキシマブ ) は進行大腸癌の生存率を改善する 標準抗癌剤治療に不応となった進行大腸がんに対する BSC( ベストサポーティブケア ) と BSC+ セツキシマブとの比較試験 BSC+ セツキシマブ BSC N Engl J Med. 2008 23;359(17):1757-65. 改変 12 爪囲炎 挫創樣皮疹

全生存率 (%) 無増悪生存率 (%) 抗 HER2 抗体 ( トラスツヅマブ ペルツズマブ ) は HER2 過剰発現している進行再発乳癌の生存率を改善する HER2 陽性の転移性乳癌患者に対する初回の化学療法として 化学療法のみと化学療法にトラスツズマブを加えた治療の無増悪生存率を比較した試験 抗癌剤 トラスツヅマブ + 抗癌剤 NEJM 2001:344,783-792 改変 CLEOPATRA 試験 HER2 陽性の転移性乳癌患者に対する初回の化学療法として ドセタキセル + トラスツズマブの 2 剤にペルツズマブを加えた 3 剤併用療法の全生存率を比較した試験 トラスツズマブ + 抗癌剤 ペルツズマブ + トラスツズマブ + 抗癌剤 13 N Engl J Med 2012;366:109-19 改変

症例 :60 歳代 HER2 陽性局所進行乳癌トラスツズマブ + ドセタキセルを 4 サイクル施行 14

Probability of PFS Probability of PFS EGFR チロシンキナーゼ阻害薬 ( ゲフィチニブ ) は EGFR 遺伝子変異を持った進行非小細胞肺癌の生存率を改善する EGFR バイオマーカー EGFR の遺伝子変異があること チロシンキナーゼ部位 1.0 0.8 0.6 0.4 0.2 0 1.0 0.8 EGFR 変異 (-) Paclitaxel/ 抗癌剤 carboplatin ゲフィチニブ 0 4 8 12 16 20 24 Time (m) EGFR 変異 (+) 15 EGFR チロシンキナーゼ阻害薬が有効 EGFR チロシンキナーゼ阻害薬が無効 Clin Chest Med. 2011; 32(4): 703 740 改変 0.6 0.4 Paclitaxel/ 抗癌剤 0.2 carboplatin ゲフィチニブ 0 0 4 8 12 16 20 24 Time (m) N Engl J Med 2008;359:1757-1765 改変

症例 :40 代女性非小細胞肺腺癌ゲフィチニブでの治療例 16

副作用で死亡した例もある 17

3 がん微少環境の是正を目的とした治療 3-1) 血管新生阻害薬 ( 抗体薬 ) がん細胞 正常細胞 ベバシズマブ 血管新生阻害薬 ラムシルマブ 抗体薬標的分子適応疾患 ベバシズマブ VEGF 大腸癌乳癌卵巣癌肺癌 血管内皮細胞 VEGFR2 ラムシルマブ VEGFR2 胃癌肺癌大腸癌 18

3 がん微少環境の是正を目的とした治療 3-1) 血管新生阻害薬 ( 低分子化合物 ) 血管内皮細胞 低分子化合物 スニチニブ 標的分子 ( チロシンキナーゼ ) PDGFR VEGFR KIT アキシチニブ VEGFR1 2 3 PDGFR KIT パゾパニブ VEGFR1 2 3 PDGFR Kit レンバチニブ VEGFR FGFR PDGFRα KIT RET レゴラフェニブ VEGFR1 2 3 TIE2 PDGFR KIT RET 適応疾患 GIST 腎細胞癌膵神経内分泌腫瘍 腎細胞癌 腎細胞癌軟部肉腫 甲状腺癌 大腸癌 19 Nature Reviews Clinical Oncology 13, 348 360 (2016) 改変

3 がん微少環境の是正を目的とした治療 3-2) プロテアソーム阻害薬 VISTA 試験造血幹細胞移植非適応の未治療多発性骨髄腫患者に VMP ( ボルテゾミブ メルファラン プレドニゾン療法と MP 療法の生存率を比較した試験 ボルテゾミブ VMP 療法 MP 療法 San Miguel JF et al. Proc ASH 2011;Abstract 476. J. Cell. Mol. Med. Vol 18, No 6, 2014. 947-961 改変 20

無増悪生存率 (%) 3 がん微少環境の是正を目的とした治療 3-3) 免疫調節薬 Immunomodulatory drugs(imids) 骨髄腫細胞に対する作用増殖抑制細胞周期の停止細胞性免疫の誘導 FIRST 試験未治療の 65 歳以上または造血幹細胞移植が適応にならない初発の多発性骨髄腫患者に対し レナリドミドとデキサメタゾンを継続的に行う群と MPT 療法 ( メルファラン プレドニゾン サリドマイド ) 群の比較試験 骨髄微少環境に対する作用間質細胞との接着の抑制血管新生阻害抗炎症作用 レナリドミド + ステロイド MP+ サリドマイド 21 N Engl J Med 2014;371:906-17.

抗悪性腫瘍薬による癌治療成績は進歩している多発性骨髄腫 Mayo Clinic において 36 年間に新規診断された多発性骨髄腫患者約 3000 例の予後解析 レナリドミドの登場 ボルテゾミブ サリドマイドの登場 自家末梢血幹細胞移植 22 Leukemia. 2014 May ; 28(5): 1122 1128 改変

まとめ がん薬物療法は 2,000 年代以降急速に進歩している 特に 分子標的治療薬の開発がめざましく 進行癌 ( 乳癌 大腸がん 肺癌 ) や悪性リンパ腫 多発性骨髄腫の生命予後が大きく延長してきている 一部の分子標的薬ではバイオマーカーが同定され 個別化治療への時代に入っている 一方 分子標的治療薬は副作用がない訳ではない 免疫チェックポイント阻害剤が登場し 科学的根拠に基づいた がんに対する免疫療法の時代が幕開けした 23