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Quality Stabilization of Formulation Process by Using Mahalanobis Taguchi (MT) Method and Applications to Continuous Drug Production *1 小西優 *2 須藤政信 Masaru Konishi Masanobu Sudo *3 村上譲司 *4 藤沢尚人 Joji Murakami Naoto Fujisawa 製薬産業において, 製剤工程を中心に製造方式を刷新する動きが始まっている 適正製造規範 (GMP: Good Manufacturing Practice) の管理下で製品品質を担保している医薬品製造プロセスは, 他産業と比べ生産性において非効率であるという課題があった そこで従来の製造方式であるバッチ生産プロセスを連続生産プロセスに切替えて, 製品品質を維持しつつ効率性を改善する取り組みが行われている 製剤工程における連続生産プロセスの実現には, 安定した品質で連続的に製品を生産するための品質安定化技術の導入が必要である 本稿では, まず MT (Mahalanobis Taguchi) 法を活用した品質安定化の事例を紹介する 次に, 連続生産システムの構築に必要な技術戦略について解説する A paradigm shift in manufacturing processes has been proceeding mainly in formulation processes in the pharmaceutical industry. Pharmaceutical manufacturing, in which product quality is ensured under the control of good manufacturing practice (GMP), is facing the challenge of poor productivity compared with other industries. Thus, pharmaceutical manufacturers are making efforts to increase productivity while maintaining high product quality by transforg their production from batch to continuous processes. For this purpose, technology that ensures ideal continuous production while maintaining quality is required. This paper introduces a case example of a quality stabilization approach by using the Mahalanobis Taguchi (MT) method, and describes technical strategies necessary for constructing a continuous drug production system. 1. はじめに医薬品製造における製剤プロセスは, 独立した製剤機械がそれぞれ単位工程として組み合わされたバッチプロセスである 工程間の移行は主に手作業で行われ, また工程毎にサンプル検査が実施されるため, 生産効率は極めて低い 一方で, 連続プロセスが主流である石油精製等の他製造業においては, 完全自動化と高度制御を組み合わせた最適化運転により, 生産効率を限界まで高めてきた 医薬品製造が効率面で他の製造業に劣っている状況を懸念した米国食品医薬品局 (FDA: Food and Drug Adistration) は, 製薬企業が解決すべき課題として, *1 横河ソリューションサービス株式会社首都圏統括本部第 1 営業本部薬品営業部 *2 マーケティング本部 IAMK センター IA 戦略部 *3 マーケティング本部事業開発センター技術戦略室 *4 横河ソリューションサービス株式会社ソリューションビジネス本部コンサルティング1 部 数年前から 製剤の連続プロセス化 を提言してきた 連続プロセス化の実現のためには工程内リアルタイム監視 制御の技術が要求され, これは FDA が奨励する QbD (Quality by Design) コンセプト (1), および PAT (Process Analytical Technology) イニシアチブ (2) と協調している QbD コンセプトは, 製造プロセスの設計段階から品質をプロセス内に作りこむアプローチであり,PAT イニシアチブは, 製造プロセスの重要特性をリアルタイムに計測 解析 管理するシステムの導入を促進する FDA の構想である 横河電機では,FDA が PAT イニシアチブの構想を打ち出した 2004 年以降, 製剤プロセスの品質をリアルタイムで直接測定する粉体用オンライン NIR (Near Infra-Red) 分析装置の開発や, 工程データの統計モデルを用いた工程品質監視システムの研究を行ってきた 加えて,MT (Mahalanobis Taguchi) 法による製品品質の安定化サービスを製剤プロセスに適用することなどによって, 製剤プロセスの連続化をしていくために必要な品質の安定化の仕組みに取り組んできている 21 横河技報 Vol.59 No.1 (2016) 21

本稿では, まず製剤工程の品質を改善した事例紹介を 通じて, 品質に影響する因子 を特定する具体的方法を解説する 影響因子を特定し, これを監視 制御することで, 工程中に品質が劣化する状況を未然に防ぐことが可能となり, 品質の安定化を図ることができる 次に, 製剤工程の制御系をどのように設計するかについて, 工程モデルを用いて解説する このアプローチは FDA が奨励する QbD コンセプトに基づいており, 品質に関係するパラメータ間の関連性を定義することにより, 最適な制御系を設計することを目指している 最後に, 品質の安定化の技術と製剤工程の制御系設計アプローチを踏まえて, 横河電機が実現しようとしている医薬品連続生産システムの概念を説明する 2. 医薬品製造における品質安定化の課題 医薬品の品質を, 製造工程内において体系的な手法で担保する QbD コンセプトは, 製品及び工程の理解と工程管理が基本であり, 管理対象として次の特性やパラメータが定義されている 目標製品品質プロファイル (QTPP: Quality Target Product Profile) : 要求される製品品質を保証するために達成されるべき品質特性の要約 重要品質特性 (CQA: Critical Quality Attribute) : 要求される製品品質を保証するため, 適切な限度内, 範囲内, 分布内であるべき特性 重要工程パラメータ (CPP: Critical Process Parameter) : 工程パラメータのうち, その変動が重要品質特性に影響を及ぼすものこれらに加えて, 重要品質特性に影響を及ぼす原料特性として, 重要原料特性 (: Critical Material Attribute) が定義されている 製薬会社のユーザに, 医薬品製造プロセスの品質に関して一番の課題は何かという質問をしたところ, 同一スペックの原材料を使用し, 定められた製造指図に従って製造しても, 結果として最終製品の品質がばらつくことがあり, その原因がなかなか特定できない という課題があることが分かった 課題の対象となっているプロセス ( 図 1) は, 顆粒を造粒機で撹拌させながらコーティング剤を噴霧し, 顆粒の周りにコーティングを行うプロセスである このプロセスでは, 重要品質特性 CQA である溶出率 ( 薬品の溶け出し具合 ) をコーティングの厚みにより調整する 厚みの調整は, コーティング剤の噴霧速度の変更により可能である 図 2に示すように, コーティング噴霧速度が一定のままで, 顆粒の溶出率が基準値 (Target 溶出率 ) 内に収まる場合を 正常ロット と定義し, 途中で噴霧速度を変更しないと基準値に入らない場合を 手動介入ロット と定義した 図 2 溶出率の変化と噴霧速度変化のイメージ 横河電機が提供する品質安定化サービスでは, 課題解 決するにあたり, 実際の工程を理解し, ターゲット品質は何か, その品質に影響する重要因子が何か, その重要因子がどのような状態で管理されているかを把握することから始まる 今回のケースの Target 溶出率 (CQA) と, 原料組成 (), 工程パラメータ (CPP) の関係を図 3 に示す 図 1 対象プロセス 図 3 CQA,, CPP の関係解析にあたって, 次の2つの仮説を立てて, 製造データの解析を行った 仮説 1 原料組成データにより, 正常ロットと手動介入ロットの判別ができる 仮説 2 原料組成データと工程パラメータにより, 溶出率の推定ができる この仮説による解析結果について, 次章で説明する 22 横河技報 Vol.59 No.1 (2016) 22

3. 品質安定化サービスによる解析結果 3.1 原料組成データによる正常ロットと手動介入ロットの判別コーティング剤は 12 種類の原料から構成され, その組成は全部で 81 項目ある 今回の品質安定化サービスでのアプローチにおいては, 全ての原料組成から, 溶出性への影響度の高いと判断される原料組成を抽出した 抽出にあたっては, ユーザ ( 製造部門 品質管理部門 研究部門など ) の複数の役割の方々と共にリスクアセスメントを実施した アセスメントの結果, 溶出性への影響度の高いと判断された原料組成のみを抽出した 今回は, 影響度 7 以上の原料組成 ( 原料 :7 種, 組成 :38 個 ) のみを抽出した ( 図 4) 原料 影響度 原料 影響度 8 8 7 7 10 9 10 8 9 8 9 7 9 7 図 4 リスクアセスメントの結果抽出した原料組成データを入力データとして, 正常ロットと手動介入ロットの違いについて,MT 法を利用した比較 解析を実施した MT 法を適用した結果, 原料組成データのある数値間の MD (Mahalanobis Distance: マハラノビス距離 ) 値でクラスタリングすることで, 正常ロットと手動介入ロットを判別できることが明らかになった ( 図 5) 法のロジックを横河ソリューションサービスが提供する CIMVisionLIMS に取り入れることで, 受入原料仕分システムとして事前に原料組成の状態が把握できるようになる その結果, 噴霧速度の変更が必要な原料を使う場合には, 事前に速度変更の準備ができ, 生産効率の改善が可能になる ( 図 6) 図 6 LIMS データを活用した生産効率の改善提案 3.2 原料組成データと工程パラメータによる溶出率の推定ここでは仮説 2に関する解析手法と結果を説明する 本解析は, 溶出率, すなわち品質の推定と, 溶出率のばらつきに影響する因子を特定させることが目的である 解析手法として, 溶出率そのものを推定する方法と, 溶出傾向を表す回帰直線の傾き, および切片 ( 図 7) を推定する2 種類の解析方法を採用した 回帰直線とはコート率 (X) と溶出率 (Y) の Y=aX+b の関係を表す直線であり, 推定対象の値は傾き (a) と切片 (b) となる 図 7 溶出傾向を表す回帰直線の傾きと切片 図 5 MD 値による判別分析の結果 ( イメージ ) 原料組成データは, 通常, 原料受入れ時にサンプリングテストを行っている そのサンプリングデータは, LIMS (Laboratory Information Management System) にデータが蓄積される そのため, 図 5の解析で用いた MT 解析結果によれば, 溶出率そのものの推定は期待する推定精度が得られず, 回帰直線の傾きおよび切片の推定の方が精度的に良くなる傾向にあることが判明した 原料組成データや工程パラメータ以外の影響による溶出率のばらつきについて, 回帰することでその影響を抑えることができ, 精度が向上したものと推測できる 溶出率のばらつきに影響する因子を特定するため, 原料が同一のロットを解析の対象とし, 原料組成データと工程パラメータから, 溶出傾向を表す回帰直線の傾きおよび切片を解析した 傾き, 切片の各解析結果に加えて, 23 横河技報 Vol.59 No.1 (2016) 23

傾きと切片に対する影響因子の影響度を数値順に出力した 図 8に解析結果を示す 考察の結果では 噴霧空気量 が影響因子として上位にあった このことから, 原料組成だけではなく, 工程パラメータ ( 噴霧空気量 ) が溶出傾向に影響していることが判明した 推定値 値 図 8 特定原料のばらつきの影響度を排除した解析結果 プラント ( バッチ, リアルタイムテスティングリリース, 連続プロセス, 連続装置 ) について説明する 最後に, 連続プロセスの全体の生産管理システムの構築と運用方法について紹介する 4.1 QbD に基づいた生産管理システムここでは, 製品の品質の管理方法の考え方について説明する 製品の目標品質プロファイル QTPP を, 製品の複数の重要品質特性 CQA の集合として定義する したがって,QTPP は, 各重要品質特性のベクトルとして定義される QTPP (CQA1, CQA2, CQA3,...) (1) 単位プロセス工程では,CQA は原料の重要物質特性 と重要工程パラメータ CPP とに関連付けられて管理される 具体的な品質のパラメータの関連性は, 実験計画法などにより構築され, 図 10 に示すように通常フィッシュボーンなどで表現される 今回の解析結果から, 原料組成及び工程データに基づいて溶出率を推定することで, 噴霧速度のガイダンス, あるいは自動設定が可能となることが分かった その効果として, 品質安定( 向上 ), 製造リードタイム短縮 を実現する仕組みを構築することができた 横河電機が提案する製剤工程における自動品質安定化システムを図 9に示す x q x x x q q q 図 10 単位プロセス工程とフィッシュボーン 原料 単位プロセス工程は, プロセス特性と装置特性により下記のような動的システムとして記述され, スーパーバイザリ制御系の設計問題は, 一般には次の最適問題として定式化される DCSPLC y g (, x) 図 9 自動品質安定化システムの提案 4. 連続プロセス生産の生産管理システム本章では,QbD に基づいた生産管理が可能となる製剤工程の制御系を, 工程モデルを用いて設計するアプローチについて説明する このような制御系を実現するためには, 前章までに述べたような仕組みを活用して, 製品の目標品質に関わるデータをシームレスかつリアルタイムに計測し, 分析 管理することが必要となる まず,QbD に基づいた生産管理システムの構築方法について述べ, 次に連続プロセス生産に向う各段階の製造 f(, x) x f (, q) q 上記の目的関数を最小化するプロセスパラメータ x (t) を導出し, 各パラメータが x (t) になるようにスーパーバイザリの制御系を設計する 一般に目的関数は, y (CQA CQA) dt (2) x の様に定義され, ターゲットとなる製品の重要品質特性 24 横河技報 Vol.59 No.1 (2016) 24

CQA との誤差の時間累積値を最小化するプロセスパラメータ x (t) を導出し, その導出したプロセスパラメータの時間変化にトラッキングするように制御を行う また,CQA は (3) 式に示すように, 原材料特性変数 から重要な因子として選択された複数の重要原料特性 の重回帰式として定義される h(cqa, 1, 2, 3,...) 0 () CQA を満たすために, 各工程における を下記の式の様に, 上限値と下限値を定め, その上限値と下限値の中に が納まるように操業する h(,,, ) = 0,,,, 図 11 に示すように, 固形製剤のプロセスは, 実際には混合, 造粒, 打錠, コーティングの単位プロセス工程が接続された形になり, 同様のフィッシュボーンにより, 具体的な品質のパラメータの関連性が可視化される 目標品質の製品が生産されているかどうかは, これらの因子 (CPP,,CQA) を, 全プロセス工程に渡ってシームレスかつリアルタイムに計測し, 分析 管理することが重要になってくる 各単位プロセス工程 ( 混合, 造粒, 打錠, コーティング ) は, プロセス特性と装置特性により下記のように動的なシステムとして記述され, 各単位プロセス工程の制御系の設計は, 一般には各工程の最適化問題として定式化される 各工程の目的関数を最小化する各工程のプロセス パラメータ x (t) を導出し, この x (t) になるようにスーパーバイザリ制御系を設計する 一般に各単位プロセス工程の目的関数は,(4) 式のように定義し, y ( ) dt x ターゲットとなる中間体の重要品質特性との誤差の時間累積値を最小化するプロセスパラメータ x (t) を導出する 上記の方法で設計された制御系により, 各単位プロセス工程が制御され, 製品の目標品質プロファイル QTPP は, 図 12 に示すように製品の複数の CQA で評価する 図 12 目標品質のプロファイルの表示 4.2 連続プロセス生産の生産管理システム製剤工程を連続プロセスの生産システムとして実現した時の生産管理システムの概念図を図 13 に, 運転ライフサイクルを図 14 に示す 図 14 では, 単位プロセスごとにリアルタイムモニタリングを行いながら制御を行い, 工程全体をさらに上位のスーパーバイザリ制御機能が管理している また, 図 14 では, 混合, 造粒, 打錠, コーティングの工程を順次立ち上げて, 全部の工程が稼働すると製品が製造されていることを示している () 図 11 全プロセス工程とフィッシュボーン 25 横河技報 Vol.59 No.1 (2016) 25

Excellence (3) が導入され, 全体最適な生産プロセスの設計及びその運用が求められている このために, 図 15 に示すように, 生産プロセスが設計および計画通りに運用されていることを保証するための継続的な業務改善プロセスが実装され, 所望の製剤が安定かつ生産効率よく生産されることが期待されている 図 13 生産管理システムの概念図 図 14 連続プロセスの運転ライフサイクル 製剤工程を連続プロセスで実現する場合, その運転ライフサイクルは, 立ち上げ, 定常運転, プロセス停止からなり, 定常運転での品質の安定化と収率の向上が必要になってくる バッチプロセスで運転する時のように, プロセス全体の最適化を単位プロセス工程ごとに最適化を行うことで実現することが, 連続プロセスでは難しくなってくる その理由は, 各工程のプロセス特性が相互に関連しており, 運転目的も多目的化してくるからである 例えば, 定常運転時の生産収率の向上とプロセスの安定化を同時に満足するための運転条件 CPP と, 中間製品 を決めることが必要になってくる 通常, 定常時にはプロセスの静特性を制約として,CPP, の条件を導き, 品質を逸脱しない範囲で, 生産収率の高い運転条件で生産されることが求められる また, 製品の品質の逸脱管理では, 求める品質を満足している合格製品を, 求める品質に達していない NG 製品として廃棄する量を最少にし, かつ,NG 製品を合格製品としてしまうリスクをゼロにすることが求められる それを実現するためには,CQA の管理幅を, プロセスに関する知識やラボで得られた実験データを基に決める必要がある 現在, 製薬業界では, ラボでのプロセス設計から生産プロセスまでの業務プロセスの改善を目指す Operational 図 15 設計および改善のための業務プロセス 5. おわりに製剤プロセスの連続プロセス化は, 製造技術の革新を伴うパラダイムシフトであり, 横河電機が多様な業種の製造現場から得た知識と経験を活かせる挑戦課題でもある 本稿で紹介した品質安定化サービスは, 医薬業種事例だけでなく, 連続プロセスを主体とする化学業種での改善事例が豊富にある そこで得られた知見や仕組みを活用すると共に,4 章で述べた制御系設計コンセプトによって, バッチプロセスから FDA が期待するような安定した品質で製品を提供できる連続生産へのパラダイムシフトを可能にし, これからの 連続的に安定した品質で製品を生産する 製剤プロセスの構築に貢献できるものと考えている 参考文献 (1) L. X. Yu, Pharmaceutical Quality by Design: Product and Process Development, Understanding, and Control, Pharm Res., Vol. 25, No. 4, 2008, pp. 781-791 (2) Food and Drug Adistration (FDA), Guidance for industry: PAT - A Framework for Innovative Pharmaceutical Development, Manufacturing and Quality Assurance, U.S. Department of Health and Human Services, 2004 (3) Thomas Friedli, Christian Mander, 他, オペレーショナル エクセレンスの管理 - 現状と成功要因,PHARM TECH JAPAN, Vol. 30,No. 7,2014,p. 35-42 * CIMVisionLIMS は, 横河電機株式会社の商標です 26 横河技報 Vol.59 No.1 (2016) 26