はじめに fmri について 佐藤病院リハビリテーション科理学療法士土岐哲也 H28.2.8 日 ( 月曜日 ) 近年 磁気共鳴画像法 (magnetic resonance imaging:mri) の発展により 全脳レベルでの脳活動や神経線維連結等を評価することが可能となっている 水分子の拡散方向や程度を画像化する拡散強調画像 (diffusion weighted imaging:dwi) 技術を用いて脳内の白質線維走行を評価する拡散テンソル画像 (diffusion tensor imaging:dti) は白質神経線維の統合性を評価する目的で近年広く用いられている 今回 当院にも fmri が使用することができるため紹介したいと思う MRI とは MRI とは manetic resonace imaging の略称で 磁気共鳴画像と呼ばれる現象を利用した断層撮影法のことである MRI 装置の中で視覚 聴覚 触覚 味覚 嗅覚などの五感や運動または認知的な刺激を加えた時に 脳内のどの部位が活動していたのかということを把握することができる 頭部だけではなく頸部 胸部 腹部 骨盤 四肢など全身あらゆる部位を撮影することが可能である MRI の理論 水素原子は血液や細胞液 脂肪などを構成している元素の一つであり 人体を構成する元素のうち最も多く存在している 地球上には地磁気が存在しているが 地場中にある 1 個の水素原子は歳差運動することが知らされている 水素原子は陽子の周囲を 1 個の電子が回転している構造をしておりスピンとも呼ばれる 原子が歳差運動する角速度を核周波数とよび地場の大きさに比例して核周波数も大きくなる ここで ω は核周波数 Bo は地場の大きさ γ は磁気回旋比と呼ばれる核に固有の定数である 水素原子そのものが小さな磁石と同じ性質を持っているので 1 個の水素原子は電子が原子核を周回する面に垂直な方向の磁化ベクトルと考えることができる 歳差運動をしている磁化ベクトルを総和すると 1 つの巨視化磁化ベクトルとして表すことができる MRI の理論 MRI の理論 2 水素原子に対し スピンの歳差運動と同じ周波数で磁場を小刻みに振動させる RF(radio frequency) 波を印加することでスピンにエネルギーを与えることができる RF 波の印加によりエネルギーが与えられた状態を励起状態とよぶ 励起されたスピンは共鳴して磁化ベクトルの方向が変化する そのときの振動数を共鳴周波数と呼び その大きさは磁場の大きさと比例して大きく 1T(10000 ガウス ) あたり約 42MHz となる Z 軸方向にある磁化ベクトルに対し X 軸方向に RF 波を印加してスピンを励起すると 共鳴を起こし磁化ベクトルは Y 軸方向に回転する この現象を磁気共鳴現象と呼び 印加する RF 波の時間と強さとの積分により回転角度が決まる RF 波は印加することにより回転する磁化ベクトルの角度をフリップアングルとよび 回転角度が 90 回転するような RF 波を 90 パルス 180 回転するような RF 波を 180 パルスとよぶ RF 波を印加され励起した水素原子は共鳴周波数と同じ速度で歳差運動しながら元の磁化ベクトルの状態に戻ろうとする このとき受信コイルを置くと電磁誘導により起電力が生じる 受信コイルで検出した微弱電流波形を保存したデータが MRI 信号である 1
MRI 装置の構成 スライス断面の決定 スライス断面のみの水素原子を励起するためには 左図に示したように傾斜磁場コイルを利用して 磁場強度の強い場所と弱い場所を作り 目的とするスライス断面以外の場所の共鳴周波数を印加する RF 波の共鳴周波数以外の周波数にすることで実現できる 上記の図のように 静磁場コイルの内側に磁場の均一性を高めるためのシムコイルがあり その内側には磁場の大きさを空間的に直線的に変化させるための傾斜 ( 勾配 ) 磁場コイルが X Z Y 軸方向に 3 つあり さらにその内側に RF 波を送信したり MRI 信号を受信したりするボディコイルから構成される MRI 装置と空間的な座標との関係は 図に示した筒型の静磁場コイルの場合に身体の左右方向を X 方向 前後方向を Y 方向 頭側方向を Z 方向とするのが一般的である 目的のスライス断面のみを 1.5T の磁場強度となるように傾斜磁場をつくり 磁場強度 1.5T の共鳴周波数である 64MHz の RF 波を印加すると目的のスライス断面のみの水素原子だけが励起される 診療報酬 T1 強調画像 1 3 テスラ以上の機器による場合 1600 点 2 1.5 テスラ以上 3 テスラ未満の機器による場合 1330 点 3 1 又は 2 以外の場合 920 点注 :1 1 及び 2 については 別に厚生労働大臣か定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において行われる場合に限り算定する 1 2 及び 3 を同時に行った場合にあっては 主たる撮影の所定点数のみにより算定する 3 MRI 撮影 ( 脳血管に対する造影の場合は除く ) について造影剤を使用した場合は 250 点を所定点数に加算する 心臓の MRI 撮影を行った場合は 心臓 MRI 撮影加算として 300 点を所定点数に加算する 高信号 ( 白 ): 出血 ( 亜急性期 ) 低信号 ( 黒 ): 出血 ( 慢性期 ) ほとんどの病変 脳回の萎縮 脳室の拡大といった解剖構造をみるのに適する 造影剤投与前後に撮像されることが多い T2 強調画像 FLAIR 高信号 ( 白 ): ほとんどの病変低信号 ( 黒 ): 出血 ( 慢性期 ) 線維化 石灰化 多くの病変を鋭敏に ( 高信号として ) とらえる T2 強調画像では発症後 3~6 時間頃から高信号域として認められる 高信号 ( 白 ): ほとんどの病変低信号 ( 黒 ): 出血 ( 慢性期 ) 線維化 石灰化 水の信号を抑制した ( 低信号にした )T2 強調像 脳室や脳溝周辺の病変などをみるのに適する FLAIR 像では発症後 3~6 時間頃から高信号域として認められる 2
拡散強調画像 (DWI) 水分子の拡散を反映した画像 拡散低下部分が高信号となる 高信号 ( 白 ): なし低信号 ( 黒 ): 水 脂肪脳梗塞 ( 急性期 ) 類表皮腫 拡散強調画像 (DWI) は超急性期脳梗塞の診断に最も有用である DWI では水分子がランダムに動き ( 拡散運動 ) の多い領域が低信号としてとらえる 超急性期の脳梗塞部は細胞性浮腫により水分子の拡散が低下し 高信号となる 発症後 1~3 時間以内には脳梗塞巣を検出できると言われる 亜急性期 ~ 慢性期には徐々に信号が低下し 等信号 ~ 低信号域となる 急性期梗塞の確認のしやすさは DWI FLAIR 像 T2 強調画像 T1 強調像の順である 長所 fmri とは fmri は functional MRI の略称で機能的 MRI とも呼ばれている 現在の所 fmri という言葉は脳機能に対する撮影法 計測器 解析法などさまざまな意味で用いられており その意味の解釈ははっきりしていない 放射線被爆がない 空間分解能に優れる コントラスト分解能に優れる 非侵略的である あらゆる角度の断面が撮像できる 短所 fmri の特徴 全脳撮像の場合には時間分解能はそれほど高くない (3 秒程度 ) 金属を持ち込めない 刺激に用いる道具に制限がある 心臓ペースメーカーなど磁性体の体内金属は禁忌 銀歯などの金属の周囲にはアーチファクトが現れる アーチファクト fmri でわかること fmri でみる情報というのは賦活を直接的にみているわけではなく 脳が賦活した高さをみている 脳が賦活した部位を検出する原理はホールド効果を用いる ホールド効果の流れ 神経細胞の活動増加 酸素消費量の増加 deoxy-hb 濃度が微少に上昇 脳血流の急激の増加 oxy-hb 濃度が急激に増大 MR 信号の増強 fmri の安全性 脳機能画像解析法の種類と特徴 脳機能画像解析法の長所と短所 静磁場が人体に及ぼす影響としては 4T 以上の磁場強度において めまい 頭痛 金属的な味覚などが報告されている 傾斜磁場コイルに電流を流したり止めたりすることでコイルがきしみ音が発生する 長所 短所 fmri 空間分解能が高い (2mm程度) 時間分解能が低い (3 秒程度 ) NIRS 時間分解能が高い ( 数 10msec 程度 ) 空間分解能が低い (3cm程度) MEG 時間分解能が高い (1msec 程度 ) 広がりをもつ活動源に対して有効な手立てがない EEG 時間分解能が高い (1msec 程度 ) 空間分解能が低い (3cm 程度 ) PET 雑音が少ない 時間分解能が低い ( 数 10 秒程度 ) 3
fmri の実験手順 1 実験に必要な器具の配置や MR 装置などの設定をするなど実験系の準備をする 2 被験者に対しての説明と同意 3 測定 4 アンケート 実験方法 ブロックデザインの実験はタスクのブロックと何もしていないレストの組み合わせを何度か繰り返して行う タスクを行っている状態の画像とレストの状態の画像と比較して解析を行っていない時には被験者にタスクを正確に遂行させることはもちろんのこと レストではできるだけ無心でいるように心がけてもらうなど タスクのことを考えさせないように注意を促す必要がある fmri の禁忌事項 fmri の実験に必要な機材 神経刺激装置 ペースメーカー 骨成長刺激装置 除細動器 人工内耳 脳動脈クリップ など 上肢の運動時の脳活動 上肢の運動イメージ中の脳活動 4
言語想起 ( 動物の名前 ) 終わりに ご清聴ありがとうございました 5